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在宅・救急・警察の連携を
2017年02月25日(土)
以下に書いたように、7月22日(土)午後に都内で
第1回の連携の会をするので空けておいてくださいね。
詳細は追って連絡します。
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日本医事新法2月号 高齢者の救急搬送の諸課題 長尾和宏
看取り寸前の救急搬送
真冬は高齢の在宅患者さんも体調を崩しがちだ。施設や在宅でもインフルエンザに感染する人がいる。2次性肺炎を一生懸命治療しても改善しなければ入院を希望される家族が多い。末期がんであれば救急搬送や入院になることは稀であるが、非がんの在宅患者さんは肺炎をはじめとした様々な急病で救急搬送そして入院となる場合が少なくない。私の診療所がある阪神間は特にこの寒い季節はどこの病院も満床で、搬送先探しに半日を要することもある。超高齢者の場合は搬送すべきか、しないで在宅での治療継続か医師も家族も迷うケースも多い。ゆるやかな老衰への旅であれば家族もなんとか見守ることができても、2~3日単位での急速な全身状態の低下と聞けば入院医療となるケースも多い。
在宅看取りが謳われて久しいが、看取りはあくまで良き在宅ケアの帰結にすぎず、看取りだけが単独で存在するわけではない。特に非がん疾患の在宅医療では救急搬送、そして入院加療から退院、というサイクルを数回も繰り返すケースがある。というのも前回詳述したように医療技術の発達に伴いどこが「終末期」なのか判断が難しくなっているからだ。もちろん本人と家族とよく相談するのだが、その時間的余裕が無かったり家族が判断できなかったり家族がいなかったりで「先生にお任せ」となることも多い。その結果、看取り寸前の救急搬送や看取り搬送となることが現実にある。しかし病院側から見れば、たまったものではない。たらい回しではなく、物理的に受け入れ不能が続出している。救急車が行き先を見つけるまでかなりの時間がかかることもある。病床の機能分化が議論されているが、市民側には病床区分の知識など無い。たとえばかかりつけ医が地域包括ケア病棟を勧めても高度急性期医療を掲げるブランド病院を強く希望する家族がよくいる。家族という強大な権力の前では日本の医療者は無力である。市民に地域の病床数が有限であることや機能区分があることなどをもっと啓発すべきではないか。いずれにせよ急増する高齢者の救急搬送が深刻な社会問題になっている。
搬送の6割が高齢者
総務省消防庁の「2016年版 救急救助の現況」によると、救急搬送人員数のうち最も多い年齢区分は高齢者(56.7%)である。高齢者の救急搬送は年々増加する一方、新生児、乳幼児、少年、成人は減少している。事故種別・年齢区分別では、急病では高齢者が60.3%で最も高い割合である。国勢調査における高齢化率26.6%に対して、搬送人員に占める高齢者の割合は過半数を超え(56.7%)、概ね11人に1人が搬送されていることになる。特に65歳以上の割合を見ると、搬送人員数に占める割合が最も高かったのは75~84歳(22.6%)。傷病程度別では、高齢者は中等症の割合が高い。事故発生場所別に見ると、自宅が半数、続いて公衆出入り場所が25.9%(老人ホーム5.9%、病院・診療所9.2%)などの現状が明らかになっている。
在宅医療と救急搬送は実はまさに隣り合わせである。救急搬送を要請するということは「救急救命処置をしっかりして欲しい」という意思表示である。しかし気管内挿管されたことを恨む家族もいる。あるいは「延命治療は断るができる治療は全てして欲しい」と言う家族もいる。今こそ救急車を呼ぶ意味を広く議論すべき時だ。消防署にそう提案したことがあるが、「我々は求められたら1秒でも早く病院に連れて行くことが任務なので在宅医療とは関係無い」と一笑された。しかし本当にそうだろうか?かかりつけ医と消防はお互いの考え方を知っておく必要があると考える。
看取りは救急車?警察?
当院では年間約100人の在宅看取りがある。6割が末期がんで4割が老衰などの非がんである。最近看取りの現場で驚いた2例を紹介したい。1例は末期がんでのお看取りだった。まもなく息を引き取りそうとの連絡を受けて駆けつけると先に救急車が到着していた。事情を説明してお引き取り頂いたが、近所のケアマネさんが119番したという。ケア会議で在宅看取りを確認していたのだが、その経験が無かったため慌て電話したようだった。あるいは既に亡くなっていれば警察に連絡が行き検視になる可能性がある。「看取りと決めたら救急車を呼ばない」ということがご家族だけではなく介護スタッフのみならず隣近所の友人にも伝達しておく必要があると感じたケースだ。
もう1例は、末期がんの方のお看取りのあと約1時間泣き続けた家族がおもむろに発したこんな言葉。「先生、ではこれから警察に出頭します」。あるいはお看取りをした直後に初めて会う遠くの親戚から「先生、これから警察に連絡しますね」と言われたこともあった。どうも少なからぬ市民は「在宅看取り=警察沙汰」だと認識しているようだ。在宅関係の学会や研究会に行けば、看取りに関する美談や難しい議論がたくさんあるが現場のケアスタッフや市民はこんなレベルの悩みを抱えている。多死社会を前に「看取りのはずが救急搬送」、「看取りのはずが警察沙汰」という現実にも目を向けるべきだ。
日本在宅・救急・警察連携協議会(仮称)
我が国の医療政策は縦割りが続いている。医療も旧態依然とした縦割りのままで、高齢者医療に最も必要な横断的な視点、つまり総合診療や全人的医療という視点は軽視され続けている。在宅医療をいくら政策誘導しようとも取り組む医師が思うように増えない理由はそうした判断が難しいことも一因だ。あるいは在宅医療の利点ばかりを強調するばかりで、欠点や闇を正視しないからである。そもそも24時間365日対応は、過労死基準を遥かに超えた過重労働そのもので、まともにやれば死ぬ。最も嫌われる深夜対応だが、地元の大病院の若い医師や看護師が往診することで解決できるのではないか。実際、台湾の在宅医療は末期がんに限られるが、開業医の責務は昼間のみで夜間は地域の基幹病院、日本でいえば地域包括ケア病棟から若い医師や看護師が往診するシステムになっている。
総死亡者の1割強を占める在宅死とは、死亡診断書の「死亡の場所」が「自宅」に丸がついている割合であり、大都市圏では約半数が警察が介入した検視であるのが実態である。換言すればかかりつけ医が看取っているのはわずか数%に過ぎない。老衰での在宅死に救急や警察が入り長い取り調べが行われている現実を見聞きするたびに心が痛む。消防は看取りではなく本当に助けるべき怪我や急病の人に活用されるべきだし、警察にはテロや凶悪犯罪を厳しく取り締まって欲しい。しかし在宅医療と消防・警察との連携は皆無に近い。監督官庁が異なるので連携しにくいのであろうが、今後の20年を考えるともはやそんなことは言っていられない。言葉が適当でないかもしれないが、「無用な救急搬送」や「無用な検視」を減らすために連携を模索すべき時ではないか。
そういう想いの在宅医や救急医療センターの医師らが中心となり「日本在宅・救急・警察連携懇話会(仮称)」なるものを立ち上げて情報交換を行う予定である。詳細は未定だが平成29年7月22日(土)に都内で開催する予定だ。民間の開業医と公務員の消防や警察が一同に会することがどこまで可能なのか現時点では自信が無い。もし本稿を読まれて本企画に協力可能な方がいれば連絡を頂きたい。とりあえず本懇話会を立ち上げる。そして全国各地で同様の連携の会が発足して活発に議論されるのが目下の目標である。初回は私たち有志で行うがそれが起爆剤となり医師会が主導し、厚労省や警察や消防などの監督官庁にご協力頂けれることを願っている。
「地域包括ケアという言葉はよく耳にするが、何度聞いてもよく分からん」という声が多い。ならばズバリ、在宅看取りにもっとも大切な「在宅・救急・警察連携懇話会」のような横断的な連携の会をやってみるのも一方ではないか。いや、こうした官民の壁を超えた横の連携こそが地域包括ケアの土台であると考える。
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この記事へのコメント
そんなにお高くない有料老人ホームの営業とのおしゃべり内容。
看取りも何例か経験あるとのこと。
在宅訪問診療医師が死亡診断書を書いて平穏死。
でも、警察が来るのだ、と。
警察が来て、「特に問題無し」確認をしてすぐ帰るのだと。
誰が警察に連絡しているの? と聞くと、
誰が警察に連絡しているのか、わからない、とのこと。
「家族が連絡したんでしょ、たぶん。」
「いや、施設の介護師か看護師が、後で自分たちが疑われたくないから連絡したんだよ。」
「近所の人かもしれない・・・・」
「同じフロアの入居者かもね・・・」
なんか、コメディ映画が作れそう。
Posted by 匿名 at 2017年02月25日 02:01 | 返信
避難訓練や防災訓練と同じように、看取り訓練が必要では。頭で分かったつもりでも、いざ看取りとなれば、頭がまっ白になり、ついつい110番通報してしまうと思います。
Posted by 社会福祉士河本健二 at 2017年02月25日 01:03 | 返信
在宅、救急、警察連携懇話会なるもの…賛成です
在宅看取りと決めていて
キーパンソンだけ 理解され たまたま 遠くの親戚がやってきて 救急車を叫んだ瞬間、自分の携帯電話で救急車を呼ぶ…というケースもある
電話は おうちの固定電話だけではない
一人がひとつ 電話を持っている時代です
ぜひとも…
最期をどうするのかのご希望を文字に書いて 壁に貼っておいて欲しいものです
Posted by 訪問看護師 宮ちゃん at 2017年02月25日 11:59 | 返信
去年家族を見送った経験から、是非参加したいのですけど、今年はちょっと忙しいので、関西でセミナーとか、支部会があれば参加します。
99%家族介護でへとへとに疲れて、警察で検視をしたいと言われたとかいうケースでしょうけど、中には大物政治家が妾宅で腹上死して、秘書がこっそり本宅に死体を運ぶなんてお話もあるかも。
あるいは、いつ亡くなってもおかしくないお年寄りでも財産があると、突然早く亡くなったり、「家政婦は見た」シリーズに出てくるお話もあるかもしれません(笑い)。
Posted by 匿名 at 2017年03月08日 12:54 | 返信
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