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介護が医療を主導する

2017年03月08日(水)

介護が医療を主導すると感じるのは私だけか?
混合介護がそれに拍車をかけないか。
医療タイムス3月号の連載にはそう書いた。→こちら
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医療タイムス3月号  介護が医療を主導する  長尾和宏
 
 肺炎のようだと聞いて往診をしたら既にケアマネの判断で救急搬送された後だった。あるいは看取りだと思って訪問したら施設長が勝手に「看取り搬送」を命じていて、搬送された病院の若い医師から「病院の霊安室での死体検案」を要請された。いずれも最近の出来事であるが、療養の場の意思決定や施設での看取りは、医師ではなく介護側が主導しているようなケースが散見される。

 病院から一歩外に出ればそこは医療保険と介護保険の2本立ての世界になる。指揮者が主治医とケアマネと2人になり両者の協働が謳われている。しかし経済的なパワーバランスから眺めてみると両者は対等ではない。寝たきり全介助の高齢者の在宅医療の場合、1ケ月の医療費は数万円程度だが、介護費は35万円で数倍の差がある。そこに混合介護がある場合は、患者さん一人あたりの費用は10倍もの差が生じている。医療はどこまでも非営利を貫き混合診療は厳しく取り調べられる。一方、40歳年下の介護は真反対の世界である。営利が悪いという意味では無いが、営利企業ウエルカム、混合介護ももっとウエルカムと介護の土台は医療とは異質である。倫理的な視点からも、両者は年々離れている。

 しかし医療と介護の連携が年々謳われている。外交に喩えるならば社会主義国がマフィアが合法化されている国とどう付き合うか、という問いを連想させる。そんな違和感はおそらく都市部の在宅医療の現場にいる医師が多少なりとも感じているのではないか。しかし医療保険と介護保険は縦割りなので、両者の整合性をとろうという動きは無いように見える。隣の芝生には口出ししないのが霞が関の掟ということで、両者の解離を是正できる権力といえば政治家であろうか。しかしこんな現場の意見に耳を傾けたところで選挙の票にはならないので、こちらもあまり期待はできないようだ。

 今、混合介護の拡大が報道されている。介護保険財政は逼迫しているのだろう。しかし医療と介護の距離感が国の期待とは裏腹に年々離れていかないだろうか。筆者は2000年に介護保険が誕生した時の制度設計にいくつか問題があったと考える。そして上記のような歪がますます拡大しないか、今後の動向が気になる。先日、西宮市で開催された「かいご楽快(がっかい)」に参加した時、多くの介護家族が介護保険制度の限界や矛盾を口にした。17年前に「介護がビジネスになった」というのが多くの市民の声である。

 医療の閉鎖性が指摘されて久しいが、介護の世界も外からは見えにくい。当事者や家族になるまでに生の情報はなかなか得られない。ならば介護家族に介護保険事業者の監視役をお願いしてみてはどうだろうか。介護も質が問わる時代であるが、市場に判断を任せるのが一番素直な方法ではないか。たとえば地方自治体が地域の良質なNPO法人などのボランテイア団体等に介護保険事業者の評価役を依頼してみるのはどうだろうか。ホテルの予約サイトを覗くと利用者の生々しい感想が書き込まれていてとても有益である。評価の低いホテルは自然淘汰される。介護保険事業者もそうした市民目線からの評価が必要ではないか。そうした工夫もせずにただ混合介護の拡大政策だけでは、結局は介護が医療を主導する傾向が強まるだけではないだろうか。悪循環にならないことを祈りたい。

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この記事へのコメント

「17年前に「介護がビジネスになった」というのが多くの市民の声である」と書かれていますが、介護がビジネスで、それが何の問題なのか、私にはわかりません。
介護がビジネスになって、被介護者を抱える家族は救われています。
介護がビジネスで何が悪いのでしょうか?
医療がビジネスではないと、お考えですか?
医療は介護以上に立派なビジネスですよ。過剰なほどに国家によって保護されたビジネスの典型が医療です。

Posted by 匿名 at 2017年03月08日 12:54 | 返信

「寝たきり全介助の高齢者の在宅医療の場合、1ケ月の医療費は数万円程度だが、介護費は35万円で数倍の差がある」のは当然だと思います。
寝たきり全介助の高齢者に、医療が、何をしてくださるのでしょうか? 不要なクスリを飲ませて悪化させた上に、介護師や家族にああしろこうしろと命令するだけではありませんか? 
一例として、誤嚥性肺炎を防ぐには口腔ケアが重要、なんて、いくらでも言葉では言えます。長尾先生もご立派に文章化しておられる。
けれども、もともと頑固な上に意思疎通が難しい高齢者に、口を開けてもらって入歯を取り出してうがいをさせる、これを毎晩やるって、大変な作業なのですよ。
医者になるには夜勤を含めて介護師を1年以上経験するべきだと思います。

Posted by 匿名 at 2017年03月08日 02:46 | 返信

ケアマネが救急搬送した件、施設長が救急搬送した件、どちらも長尾クリニックと本人や家族が救急搬送しない約束をしていた事は事前にケアマネや施設に連絡はしていたのでしょうか?
連絡していたにもかかわらず救急搬送したなら、ケアマネや施設がおかしいですね。でも、もし連絡してなかったら、長尾クリニックの連絡ミスですね。
大事な事は医療から介護にも連絡して下さいね。それが医療と介護の連携ですよ。
さすがに、長尾クリニックさんは連絡しているのでしょうけど、うちの地域の医療者は医療者から連絡してくる事はほとんど無いので。。。
介護から聞けば教えてくれますが、聞かないと教えてもらえない状況です。連携はお互い連絡し合うことのはず。介護が聞きにこないから連絡しなかったというのは言い訳になりませんよね。
患者さんのためにも、連携して行きましょう。

Posted by みるく at 2017年03月08日 11:40 | 返信

医療職にも福祉職もボランティアでは食べていけません。ビジネス=悪、お金儲けをしてはいけない業界みたいな思い込み、イメージがあるのが、医療、福祉業界ではないでしょうか。専門職ですから、どうどうとビジネスですって、言ってもいいのでは、そんな風に思います。

Posted by 社会福祉士河本健二 at 2017年03月09日 10:28 | 返信

何らかの行為によって、人様から「おあし」すなわちおカネをもらう行為は、その金額が多くても少なくても、公営であろうとも部分的に税金を使っていようとも、ビジネスです。お商売です。
(いまさら何を言ってるの? 一般市民にはトーゼンの論理なのに。)、

ただ、世の中には、おカネを受け取ってそのおカネでご飯を食べさせていただくにもかかわらず、人様にご迷惑をかけるお商売もあります。
人様の人生を台無しにしてしまう可能性を多々孕んでいるお商売の一つが、医療です。

Posted by 匿名 at 2017年03月10日 05:40 | 返信

医療及び介護の総合的な確保の意義

  急速に少子高齢化が進む中、我が国では、平成 37 年( 2025 年)にいわゆる「団塊の世代」が全て 75 歳以上となる超高齢社会を迎えます。こうした中で、国民一人一人が、医療や介護が必要な状態となっても、できる限り住み慣れた地域で安心して生活を継続し、その地域で人生の最期を迎えることができる環境を整備していくことは喫緊の課題です。

  我が国における医療及び介護の提供体制は、世界に冠たる国民皆保険を実現した医療保険制度及び創設から 17 年目を迎え社会に定着した介護保険制度の下で、着実に整備されてきました。しかし、高齢化の進展に伴う老人慢性疾患の増加により疾病構造が変化し、医療ニーズについては、病気と共存しながら、生活の質(QOL)の維持・向上を図っていく必要性が高まってきています。一方で、介護ニーズについても、医療ニーズを併せ持つ重度の要介護者や認知症高齢者が増加するなど、医療及び介護の連携の必要性はこれまで以上に高まってきています。特に、認知症への対応については、地域ごとに、認知症の状態に応じた適切なサービス提供の流れを確立するとともに、早期からの適切な診断や対応等を行うことが求められています。また、人口構造が変化していく中で、医療保険制度及び介護保険制度については、給付と負担のバランスを図りつつ、両制度の持続可能性を確保していくことが重要です。

 こうした中で、医療及び介護の提供体制については、サービスを利用する国民の視点に立って、ニーズに見合ったサービスが切れ目なく、かつ、効率的に提供されているかどうかという観点から再点検していく必要があります。また、高齢化が急速に進む都市部や人口が減少する過疎地等といった、それぞれの地域の高齢化の実状に応じて、安心して暮らせる住まいの確保や自立を支える生活支援、疾病予防(医療保険者が行う高齢者の医療の確保に関する法律第18条第1項に規定する特定健康診査等の保健事業を含みます。)・介護予防等との連携も必要です。

  このように、利用者の視点に立って切れ目のない医療及び介護の提供体制を構築し、国民一人一人の自立と尊厳を支えるケアを将来にわたって持続的に実現していくことが、医療及び介護の総合的な確保の意義です。

Posted by ロモラオ at 2017年03月11日 08:52 | 返信

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