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今も尽きない「胃ろうの相談」

2017年03月15日(水)

毎日、どこからか「胃ろう」に関する相談が舞い込む。
つくづく「胃ろうが大好きな国民だなあ」、と感じる。
その辺りのことを「きらめきプラス」5月号に書いた。→こちら
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きらめきプラス5月号
 
【質問】
「胃ろう」に関して長尾先生の著書やブログを読んでも判断出来ず、質問させて頂きました。母(84歳)が10月初めに右脳幹脳梗塞になり左半身マヒとなりました。呂律はまわりにくくなっていますが、コミュニケーションは取れていますが短期記憶は衰えています。元々丁度1年程前に外傷性のくも膜下により高次脳機能障害・認知症?等で当初は要介護3、今年に入り脱水や転倒があり要介護5となっていました。それでも杖を使い、介助があれば何とか歩く事が出来ておりましたが介護付きの有料ホームへ今年5月から入居し施設ではほぼ歩かせてもらえず、車椅子移動が通常となり衰えてきた所、施設での昼食時に誤嚥?があったようで吸引等で事なきを得、一安心していました。翌日以降、様子がおかしいと連絡がありどうして良いか常駐の看護師さんにアドバイスを求めてもこれと言って対応してくれず、提携医療機関に問い合わせてもこちらもアドバイスがなく、1週間後に脳外科を受診して脳梗塞と診断されました。

現在やっと引き受けて頂けたリハビリ病院でリハビリを受け始めて1ヶ月経ちました。 嚥下障害(こちらもリハビリもしていますが、余り向上はしていません。咳払いの練習も全く駄目で、舌の出し入れも1、2回で止めるなど意欲、集中力が全くなく、続けて出来ない状態です)のため口からの摂取だけでは栄養不足と言われ胃ろうの話が出ました。総入れ歯でありミキサーのとろみ食で美味しくないこともあり食べる量に波がありカロリーも不足してるうえ、完食も出来ないことがあるとのことです。食べ始めは順調でも時間の経過と共に飲み込みが悪くなり本人も疲れてきて、食べなくなることがあります。年齢のこともあり主治医の先生は積極的に勧めている訳ではありません。10年、20年若ければ積極的に勧めるが高齢なので家族で決めて欲しいと言われました。ただ、今は元気でも突然食べられなくなったり、リハビリに影響が出たりする恐れがあるということでした。胃ろうにしたから格段にリハビリで良くなる可能性は低いが、栄養失調になっては意味がない、リハビリするにも運動量が違ってくるなど言われました。何とかもう少し口から食べれるように回復しないかと願っていますが。寝たきりの方なら延命にしかならないので勧めないが、リハビリ病院にいて車椅子に座ることが出来ているのでやった方が良いのではないかと言われる看護師さんもおられます。本人に聞くとどこまで理解しているかは不明ですが嫌だと言います。栄養状態が良くなれば、今よりも少しでもリハビリの効果が出るのか・・・気持ちが揺れ動いています。FIM評価では32→40になり、今後はなかなか厳しいとのことで介助量をいかに減らすか、そちらの方がメインと言われました。

もし胃ろうにしても口から最大限摂取してもらい、不足分を胃ろう、でと考えても良いのかと思ったりもしますが・・・。胃ろうにした後の事を調べたるすると、なかなか大変な気がするのと退院後は、他の有料ホームへの入居を検討しているので(本当は在宅に戻したいのですが、家庭の事情があり難しいです。)入居後に口からではなく全て胃ろうで済ませてしまわれるのはないかとの不安もあります。逆に嚥下障害があるなら、入居拒否されるとかの話も聞くとどうして良いのか答えが出ません。周りに胃ろうをした方もおらず、実際のことが全く分かりません。先生のご本では、嚥下リハ等の絡みだと「ハッピーな胃ろう」に該当するような気もしますが、年齢を考慮すると実際のところどうなのか決め手がありません。少しでも生きて欲しい気持ちはありますが、アンハッピーになる確率が高いいのなら、可哀想な気がします。何卒、良きアドバイスを頂ければと思います。
よろしくお願い致します。
 


【回答】どちらがいいとは言い切れない。

長いお手紙、何度か読み返しました。よくあるケースだと思います。それにしても親孝行な娘さんですね。胃ろう造設を迷っておられる気持ちと愛情がよく伝わってきました。お母さんは84歳と女性の平均寿命より少し若いのですね。もし94歳だったらここまで迷わないかもしれませんね。84歳だから私も回答に少し悩みますが、94歳ならばあまり迷わないでしょう。

病態としては脳梗塞および軽度の脳血管性認知症かと推察いたしました。同じ嚥下障害でも純粋な認知症や老衰によるものと脳梗塞によるものでは病態が多少異なります。脳梗塞による嚥下障害の場合は胃ろうの適応があり得ますが、純粋な認知症や老衰にはあまり胃ろうの適応が無いと考えます。これは単純に「やるな」というわけではありませんが、「やらない」方のニュアンスが強いという意味です。さてお母さんの場合、主に脳梗塞に伴う嚥下障害であると考えるならば、看護師さんが言われるように胃ろうという選択もあり得る、と私も思います。

しかし本人は明確に「嫌だ」と言わられるとのこと。本人がどれくらい理解しているかは分からない、と書いておられますが、それを本人の意思としていいのかどうかという議論には様々な見方があるでしょう。私は充分本人は意思表示できていると思います。ですから本人の意思を尊重して、口から食べられるだけ食べてあとは自然な経過に任せる、ことをどちらかというとお勧めいたします。北欧は「自分で食べられなくなったら終わり」で「食事介助は虐待」と考えるのでそのような迷いはありません。一方、日本は「食事介助は美徳」だし「親を長生きさせることが親孝行」という国なので多くの子供世代が貴方と同様に悩むのです。こんな問題があるのは世界中で日本だけです。
どうしてこんな曖昧な回答になるのかと申しますと、お母さんと同じような人に胃ろう栄養をしながら在宅で診ている人の顔が何人か頭に浮かぶからです。正直申しまして、本人はあまり幸せそうには見えません。しかし家族はまあまあ満足しているように見えます。なかには親が教師をしていた関係で多額の年金を頼りにしている子供もいるのが現実です。だから同様の相談を受けた時には「家族の満足のためにならやってもいいのでは」とお答えすることもあるくらいです。実際、胃ろうを造設すると命を延ばすことができる可能性が高いです。延命至上主義であれば迷いは無いでしょう。しかし本人の希望や幸福度はどうなのか。それと家族の満足度を天秤にかけて結論を出すしかありません。もちろん、造設してから考える、という選択肢もあります。ただし『一度開始した胃ろう栄養はいくらガイドラインがあっても現実には中止できない』と考える医師が多いのも現状です。

胃ろうを造設して「ハッピーな胃ろう」にすることは知識のあるスタッフが嚥下リハビリと口腔ケアをしっかりやれば可能かもしれません。食事介助で上手くいかなない場合、動くほうの右手で「手づかみで食べさせたら結構食べられた」というケースもありました。しかしいつかは御懸念されている「アンハッピーな胃ろう」に至る可能性があります。私は何人かそのような胃ろう患者さんを診てきました。家族の強い希望で栄養剤の注入量を減らして自然な看取りに至ったこともありました。その人は約2年ほどの経過がありました。詳しくは「胃ろうという選択、しない選択」(セブンアイ出版)に書いたとおりです。

まとめますと、どちらがいい、という単純に言える問題ではありません。本人と家族、そしてすべての関係者が集まり本音で話し合いをして決めて下さい。できれば複数回やってください。肝心なことは貴方が後悔しないことです。そのためには貴方の気持ちを本人にしっかり伝えた上で本人の言葉を引き出すことです。「あんたが望むならやるわ」と前言を撤回する親もいました。これらの過程は意思決定支援プロセスと言われて今後の日本の高齢者医療に強く求められています。歯切れが悪い回答で申し訳ありません。
 
 
 

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この記事へのコメント

いつも、長尾先生のブログ読ませていただいてます。
胃瘻が流行りなんですね…日本は…日本だけなんでしょうか?
先日も、誤嚥性肺炎にて、胃瘻を造設された方がご自宅に戻ってこられました…
その方、実は、末期の癌…
余命…幾ばくもない方に、胃瘻を造設し、嚥下のテストで、誤嚥するから、誤嚥性肺炎を起こすであろうと、胃瘻を勧められたとか…
口から、食べてはいけないんだよ。と言われては、ご本人さまや、ご家族さまは、やるしかないんですよね〜結局、大切な大切な、人生の最終章に、お口から、食べたいものも食べさせてもらえず…逝かれてしまう方たちを見送るたびに、憂鬱になります…
その人の背景や、今まで生きて来た、人生も知らず…
これは、インフォームドコンセントでは、ないような…
長尾先生…その人のためにやろうとすればするほど、苦しくなって来ます…
長尾先生の著書を読み、元気になり、また、頑張ります✨
いつも、ありがとうございます✨

Posted by 訪問看護師池ちゃん at 2017年03月15日 07:01 | 返信

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