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オリンピックとタバコ

2017年03月29日(水)

月刊公論4月号は「オリンピックとタバコ」で書いた。→こちら
受動喫煙対策は国際常識なのだが、無知な国会議員さんが沢山いて困る。
人に迷惑をかけてはいけない、ただそれだけなのに理解できないようだ。
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公論4月号 オリンピックとタバコ
      分煙では受動喫煙防止できない
 
騙されている日本の喫煙者 

 長年町医者をしているとタバコの健康被害と受動喫煙の酷さに圧倒される。20代の若者が口腔がんで看取りは壮絶であった。50歳代の食道がん、咽頭がん、喉頭がんで命を落としていく患者さんは異口同音に「タバコが悪いなんて知らなかった」と喫煙を後悔しながら旅立たれた。喫煙に満足・納得して旅立った人を診たことが無い。国会議員にタバコによるがんで若くして命を落としている患者さんたちを一度でいいから見て欲しいといつも思う。

 一方、飲食店やパチンコ店などで働く非喫煙者がタバコの健康被害にあっている人も多く、本当に気の毒でならない。喫煙による死亡はよく知られているが年間、受動喫煙で年間1万5千人もの命を奪われている事実もあまり知られていない。私は「禁煙で人生を変えようー騙されている日本の喫煙者―」(エピック)という本を書き市民啓発を続けてきた。大昔、私自身も喫煙者であったが、恥ずかしながらタバコの害を知らなかった。単なる無知であったのだ。今、昔の自分と同様に騙されている若者たちを見ていると心が本当に痛む。医師としてなんとかしなければ、という想いが常にある。しかし国会での議論を聞いていると「タバコを吸う自由」だけを主張している議員さんがいて呆れるばかりだ。吸いたい人は誰もいない屋外で吸えばいいだけの話であり、罪のない人がタバコの被害者にならないようにする受動喫煙防止こそが今、必要なのだ。受動喫煙の健康被害を無くすためには「分煙」では意味がなく、建物内禁煙しかない。

 タバコで得をしているのは国会議員と財務省とタバコ産業への天下り役人だけである。若い喫煙者たちはタバコでお金と10年分の命を奪われても騙されていることに気がつかない。タバコを止めたくても止められないのは意思が弱いのではなく「ニコチン依存症」という病気である。しかしマナーの問題に置き換えられている。「分煙」では受動喫煙被害は決して解決しない。「分煙を死語に」が私たちの合言葉である。
 
 
オリンピックと受動喫煙政策
 
 国際オリンピック委員会(IOC)は 1988 年以来、オリンピックにおける禁煙方針を掲げ、会場の禁煙化だけでなくタバコ産業がスポンサーになることを拒否してきた。2010 年7月、世界保健機関(W HO)と「タバコのないオリンピックをめざす協定」に調印した。 こうしたIOCの方針に伴い、バルセロナ、アトランタ、シドニー、アテネ、北京、ロ ンドン、リオデジャネイロ、あるいはロシアのソチなどのオリンピック開催都市ではすべて罰則付きの「受動喫煙防止法」(北京市のみ「条例」)が定められた。世界一喫煙率の高い中国においても北京オリンピック開催のために北京市を含む6 都市に「受動喫煙防止条例」が制定された。

 このようにWHOとIOCは心臓病、ガン、糖尿病などの生活習慣病のリスクを減らすための禁煙政策を推進するために協力してきた。WHO事務総長マーガレット・チャン氏は「このIOCとの合意は、全世界の最大の死亡原因となっている疾患を減らす活動を強化するものである。21世紀における世界の持続的な発展を達成するためには、これらの疾患を減らす対策が不可欠である」と語っている。またIOC会長のジャック・ロゲ氏は「健康的なライフスタイルと草の根のスポーツ運動を広げることはIOCとWHOの共通の目標である」と述べている。
 
 
タバコ業界からの政治献金

 さて2020年東京五輪に向け、政府が検討している受動喫煙対策を強化する法案が議論されている。河野太郎議員は「日本から受動喫煙を一掃するくらいの決意で」と発言した。また塩崎恭久厚労相は「おもてなしの心として、「受動喫煙はありません」という国に変えていかなければならない」と発言している。しかし小規模な飲食店への規制に反発する国会議員は少なくない。岩屋毅議員は「分煙社会を洗練、成熟させるのが正しい方向。さらに強制すれば、地下に潜ってよからぬ勢力がはびこる」と主張。片山さつき議員も飲食業への打撃を指摘し同調している。一方、民進党内も割れている。法案成立を目指す超党派議員連盟には長妻昭議員らが参加するが、松原仁議員らは「分煙推進議員連盟」を結成し対立構図になっている。タバコの生産者や販売者団体からの声に従うばかりで本来の目的が忘れられているようだ。こうした政界の迷走に日本禁煙学会は規制強化に向けタバコ業界からの政治献金を独自に集計しホームページで公表している。対象となっている国会議員は約140人。ちなみに私も日本禁煙学会の専門医であるが、この政治献金リストを眺めていると頭が痛くなる。


「世界最低レベル」からの脱却を

 建物内禁煙はまぎれもなく世界潮流である。05年に発効したWHOの「たばこ規制枠組み条約」(FCTC)の指針では、屋内の職場や公共の場の全面禁煙と、罰則付きの法律を条約発効5年以内に施行するよう締結国に求めている。だが、日本の受動喫煙対策は罰則がない努力義務にすぎず、締結はしたもののいまだに実現できていない。そのため、WHOから「世界最低レベル」と酷評されている。東京五輪開催を前に、是非とも受動喫煙対策を進めて欲しい。「分煙」では受動喫煙防止にはならないことを強調したい。

 国民全体の喫煙率は20%を切り、男性は32.1%、女性は8.5%である。最も煙草を吸うのは男性の30〜50歳で、30代が44.3%、40代が44.2%である。一方、男性医師の喫煙率は10.9%である。受動喫煙対策とともに、また高い喫煙そのものへの対策、つまりニコチン依存症対策も引き続き推し進めて欲しい。社会保障費が足りないというが、その多くがタバコ病に占められている現実を直視して欲しい。今回の迷走劇に町医者の視点から、そう強く提言したい。
 

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