医療機関の管理者には医師会の仕事を行う義務がある。
学校医や産業医や健康診断など地域との繋がりも多い。

昨日は、本年度第１回の介護認定審査会があった。
まったく新しいメンバーなのでいつもの倍の時間がかかり、焦った。

今日は代議委員会が開催されて、自分は代議員なので出席することが義務である。
「院長はなにしてんね」と言われるが開業医の仕事の半分以上はこうした雑務だ。

終了後、医師会館からＪＲ塚口駅まで歩いた。
この駅と次のＪＲ尼崎駅との間で、１２年前、あの痛ましい事故が起きたのだ。

だから福知山線に乗る時は、いつも緊張する。
事故現場を通過する時は犠牲者の冥福を祈る。

そしてＪＲ大阪駅にあと１００ｍまで迫った所で急ブレーキがかかり緊急停止した。
「駅構内で人身事故発生！」とのアナウンスがあり見渡すと全電車が停止している。

ああ、またか・・・

いつも、もう少しのところで緊急停止して缶づめになる。
運がいいのか、悪いのか。

１２年前のこの電車であれば、緊急停止すれば運が良かったことになる。
大きな事故に巻き込まれなくて良かった、と考えるべきだろう。

しかし、焦る。

いつまで閉じ込められるか、その時点では全く分からないからだ。
もしかしたら、テロが起きたのかもしれないし。

情報が無いとは、そういうことだ。
不安のなか、諦めて待つしかない。

名古屋の青木さんのお通夜に向かうだけなので、急ぐ用事でも無い。
そう思いながら、ポカッと空いた時間を無為に過ごしていた。

ああ、昨日も近くの家族、遠くの家族とともに大往生を看取ったなあ。
ああ、昨夜往診したおひとり様が、本人の希望どおり今朝旅立ったな・・・・・・

そんなことを思い返しているうちに
結局、１５分後に電車は動き出した。

大混雑の大阪駅で２台の電車を見送り、やっとの思いで新大阪駅に到着。
朝から腹ペコなので思わず目の前にあった立ち食いそば屋に入り犬食い。

結局、なんやかんやで、医師会を出てから新幹線に乗るまで１時間半かかった。

でもいい。

それでも、生きているからいい。

青木仁子さんのお通夜に行き、青木さんの顔を見たら
彼女がそう言っているような気がした。

仁子さんにはよく笑われた。
ついこの間のような気がする。

仁子さんは日本の弁護士さんの中でもっともリビングウイル活動に熱心だった。
彼女がいたから東海支部の活動は活発でシンクタンクの会は２冊の本を出した。

血液の病気が判明し余命３ケ月と言われてから１年以上生きられた。
最期までリビングウイルに執念を燃やして、つどい場のような場も造られた。→こちら

そんな彼女だが、さすがに亡くなったあとのことは想定していなかったのか。
今朝は家族葬だったのが、午後に一般葬に変わったなので新聞に間に合わず。

私は仁子さんにこう声をかけて名古屋を後にした。

「日本一、リビングウイルという人権を説かれた弁護士さん。
　ご苦労さまでした。遺志を継いで私なりに頑張ります」と。

さようなら、仁子さん。