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植え込み型心電図
2017年05月05日(金)
産経新聞・不整脈シリーズ第6回 植え込み型心電図
原因不明失神の診断に有用
失神を訴えて来院される患者さんが時々おられます。多くは起立性低血圧や排尿失神などの自律神経の不調によるものですが、失神を繰り返す患者さんは専門の病院に紹介します。脳梗塞の前兆やてんかんを疑われたら頭部MRIや脳波などの精密検査が行われます。失神とは脳に充分な血液が供給されなくなり一時的に意識を失うことです。日本では毎年20万人もの失神患者が救急搬送されていますが、そのうち20~30%は従来の検査法では診断できない「原因不明失神」と言われています。
こんな患者さんがおられました。半年前から1ケ月に1回程度の失神を繰り返すという78歳女性です。歩行中に失神した際には転倒して頭を強打しました。不整脈に由来する失神が疑われたため24時間心電図を調べましたが異常なし。大病院で様々な検査を受けましたがやはり原因不明と。こんな場合が植え込み型心電図検査の出番です。
植え込み型心電図とは小指より小さな小型の心電図を前胸部の皮下に埋め込む検査機器。数分程度の簡単な埋め込み処置で不整脈の自動検出と自動記録ができる優れものです。心電図波形を遠隔モニタリングで送られて定期的に異常がないか確認されます。彼女はこの検査機器により失神時に一致して高度の房室ブロックという徐脈性不整脈が記録されました。そこでペースメーカー埋め込み術を受けたところ失神が完全に消失しました。新しい検査法の登場により危険な失神発作が回避できたのです。
あるいはこんな人もいました。脳ドックにおける頭部MRIで多発性脳梗塞を指摘された68歳の男性です。画像上、脳の血管の動脈硬化による脳梗塞像とは少し異なっていたため心臓にできた血栓が脳に飛んだことが疑われました。24時間心電図をつけましたがその1日のなかでは心房細動は全く検出されませんでした。そこで潜在性心房細動を疑い植え込み型心電図で精査したところ果たして一過性の心房細動が検出されました。現在、抗血栓薬で新たな潜在性脳梗塞を予防しつつアブレーション手術の適応を検討中です。原因不明の脳梗塞は全体の16~39%と報告されていますが、彼のように植え込み型心電図で脳梗塞の原因が判明して治療につながる場合もあるのです。
失神というとなんとなく脳の異常をイメージしがちです。しかし自律神経や心臓の異常、すなわち不整脈に由来する場合もあります。植え込み型心電図の登場で従来の検査法では検出できなかった病気の原因を特定することが可能になりました。これまで原因不明と言われて不安なまま生活されていた人には朗報かと思います。
植え込み型心電図検査は厚生労働大臣が定めた施設基準を満たした保険医療機関においてのみ保険適応になっていて、誰でもどこででも受けられる検査ではありません。短期間に失神発作を繰り返し、その原因として不整脈が強く疑われるものの24時間心電図検査や心臓超音波検査では原因が特定できない人だけが対象です。詳しいことは、まずはかかりつけ医や専門医とよく相談して下さい。最近は大きな病院に不整脈外来が開設されています。医療技術の進歩も年々著しく、たいへん心強い時代です。
キーワード 植え込み型心電図
患者の皮下に埋め込まれた小型の記録装置により長時間連続して心電図記録とコンピューターによる解析を行う検査法。電池の寿命は3年間で条件付きではあるがMRI検査も可能。
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