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発作性上室性頻拍

2017年05月09日(火)

産経新聞・不整脈シリーズ第7回は「発作性上室性頻拍」で書いた。→こちら
この発作は開業医もよく遭遇するが、アブレーションの適応が
ありそうなら循環器科の不整脈部門に紹介している。
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産経新聞・不整脈シリーズ第7回   発作性上室性頻拍
                  頻発、持続するなら治療の対象
 
 「さっきから急に胸がドキドキするんですが」という訴えで駆け込んでくる人がいます。手首の脈を触ると1分間に140~200もあります。心電図をとるとただ早いだけで不整はありません。心房内および房室接合部付近(これらを合わせて上室という)に異所性興奮が生じて高頻度の刺激が発じるために突然脈が速くなります。文字通り発作的におこる頻拍なので発作性上室性頻拍と呼ばれています。動悸を感じる不整脈のなかで最も多いのがこのタイプです。

 その原因として甲状腺機能亢進症やWPW症候群などの種々の心臓病が知られていますが、特に原因がみあたらないのに起こる場合も少なくありません。頻拍の誘因として不眠、過労、ストレス、アルコールやコーヒーの飲みすぎなどがあります。健康診断の心電図でWPW症候群を指摘されている人は頻拍を起こし易いことが分かっています。しかしWPW症候群を除くと頻拍が生じていない時の心電図は正常なので健康診断では異常を指摘されていません。確定診断のためには24時間ホルター心電図や在宅心電図モニターや運動負荷心電図などが行われます。持続時間は数秒間から数時間とさまざまですが期外収縮との鑑別が必要です。医療機関に着くまで、あるいは医療機関で様子をみている間に自然に正常調律に戻ることもあります。一方、頻拍が数日間以上続く場合には心機能が低下して慢性心不全に陥ることもあります。多くは良性の不整脈の範疇ですが、動悸などの自覚症状が強い人や頻拍を繰り返す人は治療対象になるので不整脈の専門家がいる病院に紹介します。

 発作性上室性頻拍の治療は今ある頻拍の停止と発作の予防、そして根治療法に分けて考えます。房室結節の電気刺激の伝導を抑える薬物として、カルシウムチャネル遮断薬、β(ベータ)遮断薬、ジギタリス、ATP製剤などが使われます。緊急を要する症状や薬物がききにくい場合は、確実に発作性上室性頻拍を止めるために通電による電気ショックが必要な場合もあります。町医者においても心電図をつけたまま抗不整脈薬を飲んで頂いたり点滴をすることがあります。ある瞬間に正常調律に戻ると、患者さんは「あっ、今止まりました」と言われます。頻拍発作を繰り返す人は抗不整脈を予防的に服用したりカテーテルアブレーション治療による根治療法が検討されます。アブレーション治療とは先端に電極のついたカテーテルを血管に通して心臓に入れて頻拍の起こる回路に高周波電流を流して焼く方法で、治癒率も安全率もかなり高い治療法になっています。ただし不整脈の専門家がそろっている大きな病院でないとできません。

 実は昔から発作性上室性頻拍を自分で治す方法が知られています。息を止める、冷たい水を飲む、あくびやくしゃみを繰り返すなど迷走神経を刺激する方法により自宅で発作を治めている人もいます。いずれにせよ動悸を感じたらまずはかかりつけ医に相談してください。動悸を訴える人の中には詳しく調べても実際には不整脈が無くて精神的に病んでいる人もおられます。いずれにせよ不眠にならぬようにストレスと上手く付き合うことが大切です。
 
 
キーワード  WPW症候群
Kent束と呼ばれる副伝導路が存在する疾患で、心電図上ではデルタ(Δ)波と呼ばれる特有の波形が特徴。心室性頻拍ないし心室細動を引き起こすと心臓突然死に至ることもある。

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