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不整脈外来
2017年05月21日(日)
産経新聞・不整脈シリーズ最終回は「不整脈外来」について書いた。→こちら
放置していいのか、危険な不整脈なのか迷う場合は循環器科の中でも
「不整脈外来」という看板がかかっている部署に紹介することになる。
放置していいのか、危険な不整脈なのか迷う場合は循環器科の中でも
「不整脈外来」という看板がかかっている部署に紹介することになる。
産経新聞・不整脈シリーズ第8話 不整脈外来
放置していいのか、危険なのか
長く町医者をしていて医療の進歩を強く感じる領域のひとつが不整脈診療です。不整脈を検出する検査機器やペースメーカーや植え込み型徐細動器、そしてアブレーション技術はこの30年間、素晴らしい進歩を遂げています。失神を訴える人に24時間心電図を装着したところ夜間の脈拍数が1分間にたった10回しかないことが分かり直ちに病院でペースメーカーの埋め込みに。まさに危機一髪で救命して頂きました。あの時もし24時間心電図をつけていなければ、と想像するとゾッとします。心臓の中の電気回路はたいへん複雑ですが、電灯がちらつくように夜間だけ高度の徐脈に陥っていたのです。検診で特に異常が無い70歳代の元気な女性です。しかし心臓の中のある一ケ所だけが微妙に故障していた。まだ十分に走れる自動車のエンジンのネジが1本だけゆるんでいたようなもの。そのたった1本のネジの故障が検査で検出できたので治療につながりました。もし心臓全体の老朽化であればそれは老化なので根治できませんが、1本のネジの故障だけだったので医療の恩恵に預かれました。10年以上経過した今も元気にされています。
またあるスポーツ選手は繰り返す発作性上室性頻拍がアブレーション手術により完治。「安心してまた激しい運動ができる」と大喜びされ、何時間もかけて治療された専門医に深く感謝されました。日本で初めてアブレーション手術を行ったのは土浦協同病院院長の家坂義人先生です。頻脈とその後に起こる徐脈に伴う失神とめまいを繰り返す78歳の患者さんに対して1984年に初めてアブレーション手術を成功。その患者さんは98歳まで生きました。1984年は私が医者になった年ですからアブレーション手術の歴史は私の医者人生と重なります。しかし当時の家坂先生は「心臓の中を燃やすなんて野蛮な奴だ」と同業者から強い非難を受けたそうです。内視鏡手術や腹腔鏡手術を最初に試みた医師も当初はみな犯罪者扱いでした。しかし20年後にはそれが標準治療になり、むしろそれをしない方が訴えられるようになります。いつの時代も医療の進歩とはそんなものです。そして100年後には全く違う治療法が開発されているのでしょう。もしかしたら体の外から簡単に電気回路を修理できるのではと、夢想しています。
人間はみな不整脈があります。不整脈ゼロという人はいません。大半は放置しても構わない良性の不整脈です。しかしなかには放置すると突然死したり重大な合併症が起きる可能性がある危険な不整脈、つまり放置してはいけない不整脈も混じっています。かかりつけ医の役割はそれらを鑑別することです。危険な不整脈を疑えば不整脈の専門家がいる病院に紹介します。最近の循環器科は様々な部門に分かれています。狭心症や心筋梗塞を扱う部門や心不全など心臓の筋肉を扱う部門、そして大動脈などの血管を扱う部門などなど。そのなかでも最近「不整脈外来」という看板を掲げる循環器科があり紹介する機会が増えています。しかしなかには病気なのか老化なのかよく分からない不整脈があるのも事実。超高齢化社会が進むなか「どこまでを治療対象とするのか」という議論も活発化するでしょう。いずれにせよ気になる不整脈の根治ができる時代に生きています。(不整脈シリーズ了)
キーワード アブレーション手術
専用のカテーテルを太腿の付け根から血管を通じて心臓に挿入しカテーテル先端から高周波電流を流して不整脈を根治する。手術時間は大体2~4時間程度で多くは局所麻酔で行われる。
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