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高齢者は副作用リスクが高まる
2017年06月03日(土)
産経新聞・減薬シリーズ第2回 恥ずかしい失敗談
高齢者は副作用リスクが高まる
クスリは反対から読むと「リスク」、つまり「危険」です。薬にはもちろん利益がありますが、常に危険と隣り合わせです。今回はとっても恥ずかしい(患者さんにとっては悲劇ですが)薬に関する失敗談を3つ紹介します。
腰痛を訴える患者さんにロキソニ(ロキソプロフェン)1日3錠を処方しました。1週間後、その患者さんが今度はめまいを訴えて来院されました。顔色が悪く貧血を認めました。その場で胃カメラをしたところ胃袋の中央部に数センチに及ぶ大きな胃潰瘍を認めました。その中心に露出血管が見えましたが、そこから出血しきって自然に止血した後のようでした。血液のヘモグロビン値は12から7に低下していたのでおそらく1リットル以上出血したのでしょう。めまいの原因は脳や内耳の異常ではなく、胃潰瘍からの大量出血だったのです。もちろん胃薬も一緒に処方していましたが胃潰瘍を予防できませんでした。このように痛み止めによる胃潰瘍は腹痛などのお腹の自覚症状が無いことが特徴です。実は内視鏡医としてこれまで同じような患者さんを何百人と観てきました。
また、食欲が低下して体力が低下した患者さんが来られました。胃カメラで胃に異常は無く、軽いうつ病と診断して、弱い抗うつ作用もある胃薬であるドグマチール(スルピリド)50mgを1日2錠処方しました。1週間後、ご家族から電話がかかってきました。ついに歩けなくなったとのこと。急いで往診すると表情が消えて仮面のような印象。室内をトボトボと歩くのがやっとで1週間前とは別人のように固まっていました。一瞬、パーキンソン病として神経内科に紹介しようかと思いましたが、なんとか気が付きました。ドグマチールによる錐体外路症状という副作用だったのです。すぐに服用の中止を指示したところ、2週間後には元の表情に戻りひとまず安心しました。
あるいは、抗認知症薬であるアリセプト(ドネペジル)5mgを数ケ月間飲んで頂いている患者さんが強いめまいを訴えて家族に支えられて来院されました。脈を測ると1分間に20回しかなく心電図をとると房室解離という高度な徐脈でした。たたちに救急車で搬送して人工ペースメーカーを挿入してもらおうかとも思いました。しかし横にいた看護師がこう言いました。「先生、アリセプトの副作用じゃないですか?」。その一言で我に返りました。本人もご家族も入院を希望されなかったので服薬中止と自宅安静で厳重に経過観察することになりました。毎日家族に電話で脈拍数を報告してもらいましたが、5日後にいつもの70回台に戻り心電図で正常波形を確認しました。はやり抗認知症薬の副作用による高度徐脈だったのです。脈拍20回でよくも転倒せずに当院に来られたものと感心。
3例とも単純に薬の副作用でした。そして3人とも後期高齢者でした。高齢者は腎機能も肝機能も低下しているので薬物の代謝速度が若い人に比べて低下し血中濃度が高まり副作用が出る確率が高まります。もちろんこれらの薬を飲んだ人みながそうなるわけではなく確率的には低い出来事です。しかし薬には常にリスクがあることを思い知らされ、高齢者の訴えを聞く時はまず薬の副作用疑います。そして高齢者にはいつもサジ加減を心がけています。
キーワード 抗認知症薬
現在、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンの4種類の抗認知症薬が保険適応である。これらのアセチルコリンエステラーゼ阻害薬は稀に、消化器症状、歩行障害、徐脈などの副作用が知られている。
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この記事へのコメント
おつかれさまです。
ほんとになにかしらの副作用 副反応は
現れますね。
Posted by 尾崎 友宏 at 2017年06月03日 02:45 | 返信
ナイチンンゲールさまも…
悪しき薬を用いてはいけないとおっしゃってます
薬だけでなく 口にするものすべて リスクがあるものだと考えた方がいいですね
特に ご高齢の方は 代謝も排泄も 弱ってきています
なのに お菓子のように たくさん お薬を服用されています
これって やっぱり危険…かも…と考えますが
なかなか減薬も難しいです
Posted by 訪問看護師 宮ちゃん at 2017年06月05日 11:09 | 返信
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