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「永井友二郎先生と村上智彦先生を悼む」

2017年06月12日(月)

日本医事新報6月号の連載は『永井友二郎先生と村上智彦先生を悼む』で書いた。→こちら
5月に、2人の在宅医療の巨星が相次いで旅立たれ、とっても寂しく、落ち込んでいた。
そんな原稿を書いた直後の5月31日に、今度は西村元一先生が旅立たれた・・・


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日本医事新報6月号  永井友二郎先生と村上智彦先生を悼む  長尾和宏
 
2つの巨星逝く

5月上旬、尊敬する2人の医師が3日違いで旅立たれた。永井友二郎先生と村上智彦先生。2人の想いや生き様には共通するものが多いと感じる。今回、お2人が残された言葉を引用させて頂きながら死を悼みたい。

永井先生は5月8日、自宅で家族が看守るなか永眠された。うっ血心不全、98歳であった。4月20日に介護ベッドが搬入されたわずか2週間後の旅立ち。亡くなる前日まで完食されたという。利尿剤などの心不全治療は拒否する一方、在宅酸素は喜んで受けられたとのこと。延命治療は拒否し緩和ケアの恩恵には預かりながらの大往生であったようだ。

永井先生は患者さんの側にたつ医療を実現するため「実地医家の会」を立ち上げ、やがてプライマリケア学会に発展した。現在広く議論されている在宅医療や総合診療の源流を切り開かれた。永井先生は千葉医大を卒業後、3年半帝国海軍軍医を務められた。トラック島における平安弾の被弾による臨死体験が「死ぬ時は苦しくない」という持論に影響を及ぼしたという。息子様への口癖は「長生きをしている人には苦しくない最期を迎えることができるというご褒美がある」であった。生涯現役の医師として人生を全うされた先生の生き様は多くの医師に大きな励みを与えた。まさに巨星であった。

厚かましくも永井先生と3つの点でシンパシーを感じる。1つめは永井先生はネットを駆使して人を診る医療について広く情報発信しておられたことだ。不肖私も同様な動機でネットで様々な発信をしている。2つめは著書のタイトルだ。永井先生の名著「死ぬ時は苦しくない」というタイトルは私の近著「痛くない死に方」と似ている。これは訃報の後に気がついたことで決して真似たわけではない。3つめは町医者として患者さんと深く関わり在宅看取りに誇りと喜びを感じていたことだ。奥さまと2人で地域の人を「看取る」医療を55年間、町医者として実践された。私はまだ23年目なので永井先生の半分にも満たない。
 

かかりつけ医、在宅医療の原点

以下は2015年暮れに永井先生が国際医療福祉大学の大熊由紀子氏に伝えたメッセージである。在宅医療の原点が描かれている。
 
これからの日本の医療は、かかりつけ医の在宅医療を柱として進めることが大事だと思っています。医学の切り売りでなく、病人の身になっての医療が中心でなくてはいけないと思います。
 

 1、同じ町に住み、かかりつけ医として家族全員の診療、相談をつづける。
 2、いつも、時間外でも、深夜でも、診療し、往診する
 3、対話や相談にはいつも時間を惜しまない。どんな質問にも、納得がいくまでこ
   たえる。
 4、よい診診、病診連携がある。
 
 以上のことは、大学病院や多くの病院の医師たちの、決まった時間だけの、また 日によって人がかわる診療とは本質的に違います。私は以前、日本医事新報、4218号、平成17年2月号に「往診の途中で死んだ二人の医者」という小文をかきましたが、すべての町医者はいつもこの命がけの診療をしており、死んだのはこの二人だけでないと思います。以上のことは、この日本の町医者の医療こそが医療の本道であり、病人の求める医療であることを示していると思いまます。それで、このことを、辻哲夫さんにお話しし、このかかりつけ医の在宅医療にたいし、十分な「在宅医療基本料」を新設することを提言しました。これに対し、辻さんは大変いい提言であり、各方面と議論を十分進めたいと、いってくださいました。また、日本医師会の横倉会長も、だいじな提言に感謝します。担当理事にとりくませます。といってくれました。以上のなりゆきを今日、訪ねて見えた、朝日新聞の林敦彦さんにお話ししました。わたくしとしては、国としてやればできることで、日本のよい医療を着実にそだてられるとかんがえています。このままでは、献身的な町医者、医療の良風はつかれてしまうとおもいます。
 
 
永井先生に送る言葉

 在宅関係者のメーリングリストに流れてきた大熊氏によるこの書き込みに私は思わず反応し、以下のように書き込んだ。永井先生に送る言葉である。
 
 家庭医、かかりつけ医、総合医、総合診療専門医など言葉はたくさんあれどそれらの本質は永井先生の言葉の中にすべてあるものでしょう。現在50歳以上の開業医は、自然とその言葉の意味が分かる境地にあるはずです。しかし現代は専門医の時代なので、若き家庭医志望ドクターが少し可哀そうです。複雑すぎて分からなくなった専門医制度に翻弄されているようにも見えます。私は「家庭医科」とか「町医者科」という標榜科目があればいいのにと思います。幸い日本医師会が「かかりつけ医」を推進していますが、これが多くの市民に受け入れられることを期待しています。町医者がいかに楽しい仕事であるのかを若きドクターに伝えることも私達の役割だと思います。ただ一点だけ気になるのは、「深夜」の対応です。私はこれからの時代は深夜はできるだけ寝た方がいいと思います。ある年齢になれば夜はしっかり寝たほうがいい。もちろん体力抜群で短眠OKのつわものなら可能でしょうが、多くの現代の医者にはこれがたいへんなので、在宅医療推進の阻害因子になっていると思います。深夜帯は地域密着型の病院や、医師会運営の夜間診療所に詰めている医師が病室に行くのと同様に患者さんの自宅に行く制度のほうが合理的だと考えます。台湾の嘉儀に行った時、そこはそのようなスステムでした。永井先生の言葉を噛みしめながらも、現代流にアレンジすることも必要ではないか。そのような感慨を持ちました。
 
 
村上智彦先生が残した言葉

村上智彦先生が5月11日に旅立たれた。白血病、56歳であった。村上先生は2006年6月に財政破綻した北海道夕張市の夕張市立病院の経営、運営を託された。「治す」ではなく「ささえる」、「キュア」ではなく「ケア」主体の医療に取り組んだ。2007年に医療法人財団「夕張希望の杜」を設立、有床診療所と介護老人保健施設という体制に変更、地域包括ケアシステムを構築し、病院主体から地域主体の医療介護モデルの作りに取り組んだ。しかし2年前、54歳の時に白血病を発症。 幸い兄の骨髄移植で寛解するも再発。今度は弟の骨髄を移植、完全寛解に向けてリハビリを続け、講演などの活動を再開した矢先の4月末に再々発した。最後は、「家に帰りたい……」と言われたが、無菌管理の故、叶わなかったとのこと。

村上先生はこの3月、『最強の地域医療』(ベスト新書)を上梓。闘病生活を通じて見えてきた医療の問題や地域社会の有り様を描き、20年以上にわたる活動の経験をこう結んでいる。
 
 地域のおばちゃんたちがいきいきと働き、彼女たちの息子や娘たちが都会から帰ってきて働けるようなコミュニティが増えると良いですね!「最強の地域医療」とはまさに地域住民の愛着、覚悟、物語で支えられる医療やケアのことであり、専門家や行政が与えてくれるものではありません。
医療やケアを守ることがコミュニティを守るためにも必要であり、それは決して専門的な仕事ではないように思えます。それが20年以上、地域医療に取り組んできた私の結論です。(
『最強の地域医療』より)
 
村上先生は永井先生の思想の第一の実践者であったと思う。そんな彼が我々に残した言葉を同じ町医者として今後もかみしめていたい。
1.医療は町づくりのための一つの資源
2.医療は手段であって目的ではない
3.国の医療費を節約しつつ市民が安心して暮らせる町づくりをデザインする
4.夕張での取組みは他の地域でもできる
5.他の職種とともにチームで患者さんの生活を支える医療を行う


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この記事へのコメント

村上先生は、北海道夕張の市民病院を縮小して、診療所を中心に、在宅医療を取り込んだ地域医療に取り組んだ先生でした。
亡くなられたとは存じませんでした。
村上先生は亡くなられても、村上先生の理想は永遠に輝くでしょう。
惜しい人は亡くなりましたね。
現実の社会はなかなか難しいのでしょうね。
私なんかも、理想の足を引っ張る抵抗勢力の人間かも。
反省します。

Posted by にゃんにゃん at 2017年06月26日 03:45 | 返信

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