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在宅療養における最高の意思決定の場はケア会議

2017年06月19日(月)

きらめきプラス6月号の連載には
「在宅療養における最高の意思決定の場はケア会議」で書いた。→こちら
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きらめきプラス2017年6月号
 
金沢市にお住まいの女性(67歳)からの質問です。
 
【質問】
現在、90歳近くになる私の両親(要介護2)が有料ホームに入所しています。父は頭はしっかりしておりますが、脊柱間狭窄症のためほとんどベッドで過ごしているような状態です。母は軽い認知症です。二人とも帰宅願望が強かったので夫と相談して、去年、両親を家に連れて帰ったのですが、私の考えが甘かったのか2週間で私の気持ちが行き詰まり、体調を崩し、両親をまたホームに戻す結果になってしまいました。その後、ホームに戻してしまった両親や協力してくれた家族に申し訳ないことをしてしまったという気持だけが残り、以前通院していたうつ病のせいか、しばらく気持ちが落ち込んだままの状態が続きましたが、おかげさまで今は体調も戻り、元気に過ごせるようになりました。病気のことを考えるとまだ正直不安ですが、家族ももう一度協力すると言ってくれているので、あらためて両親を自宅で介護したいと考えておりますが、介護にあたっての心構えなど何かアドバイスをいただけないでしょうか。よろしくお願いいたします。
 

【回答】
 
何度でもケア会議を開こう
まず在宅介護は美談で報じられることが多いと感じますが、家族にとってはたいへんな「労働」だと思います。まして2人の親を在宅介護することは一般的には重労働と言えるでしょう。もしあなた一人だけで両親を24時間、絶えず看守ると、ほんとうに真面目にやれば1ケ月で倒れるかもしれません。2000年に介護保険制度が整備されてケアマネを介して在宅介護を補助してくれますが、介護保険が面倒を看てくれる時間は要介護5であってもせいぜい2時間程度。だから介護保険で全てが解決するわけではありません。まずはホームに戻した自分を責めないでください。むしろ自身が介護うつになる前に両親をホームに戻られて良かったと思います。
 
前回、老人ホームから自宅に帰る前にホームや自宅でケア会議をされたでしょうか。病院から在宅に帰る時には退院前カンファレンスが義務づけられていますが、介護施設から在宅に移行する場合もそのような話し合いの場を必ず設けてください。また自宅に帰ってから開催される「ケア会議」はケアマネさんが招集するものです。これは、家族の介護負担を減らすためのケアプランを本人・家族と主治医を含む多職種で話し合うとても重要な話し合いの場です。前回の在宅介護がうまくいかなかった原因は、ケア会議が充分に機能していなかったのではないでしょうか。前回の苦い経験を、今回のケア会議の議題にしてみなさんで知恵を絞りましょう。そして今後、在宅療養における最高の意思決定の場はケア会議であることを是非知っておいてください。困ったことがあるたびに、あるいは順調でも困ったことがあれば開催するのがケア会議。決してひとりで抱え込まないことが大切です。
 
介護保険とコミュニケーション技術
お母さまには認知症があるとのこと。自宅に帰ったあとも帰宅願望があるのであれば家族や多職種のコミュニケーションの質を上げることがお母さまと介護者の生活の質を高めます。コミュニケーションの力を使って認知症の人と良い関係を保つことができれば介護者のイライラや不安も軽減します。マイナスの感情を引きずらない方法を学び、時には引きずっている自分自身を自覚することがあなた自身の心の安定を保つ上で重要だと思います。介護保険を上手に利用して自分の時間をつくる努力を、堂々とすべきです。

認知症の介護者は同じことをくりかえす、話のつじつまがあわない、作り話をいう、話がよく通じない、もの取られ妄想により家族に辛く当たる、家族を疑い、家庭内のトラブルになるなど、様々なストレスにさらされ、うつに陥りやすい状態になります。

しかし認知症の人への対処法を理解できれば精神的な負担は改善します。同時に認知症の人もハッピーになるのでお互いに好循環に入ることができます。拒否が減り、結果、介護時間が短縮されて介護負担が減るのです。すなわち介護保険制度の上手な利用というハードとコミニュケーションスキルというソフトの両面を見直すことで今回の在宅療養が前回とまったく違う楽しいものに変わる可能性があります。
 
 
認知症高齢者への接し方の7原則です。
1高齢者を受け入れ、よく聴く姿勢を持つ
2安心感を与える
3高齢者のニーズやテンポに合わせる
4柔軟性のある態度で接する
5自尊心を傷つけない
6わかりやすく、具体的な話し方をする
7温かみのある言葉づかいとやさしくスキンシップをする
 
 
ACPの視点も忘れない
 
長い目で見ると高齢のご両親には今後、様々なことが起こり得ます。転倒、骨折、食事量の低下、誤嚥性肺炎、がん合併の発覚など、様々なことが起こり得ます。そのような時にどのように対応するのかあらかじめみんなで話し合っておくことも大切です。みんなとは主治医、ケアマネ、訪問看護師、介護ヘルパー、デイサービススタッフ、歯科医、薬剤師、理学療法士、栄養士などの多職種です。つまり「ケア会議」のメンバーです。

この「あらかじめ」その時の対応の話し合いを繰り返すことをACP(アドバンス・ケア・プラニング)と言います。なにごともイザその時になって慌てないためにも、あらかじめ備えておくことが大切です。防災訓練や避難訓練と同じように、さまざまな変化への対応を予めシミュレーションしておくのです。ACPを繰り返すことで知恵ができ覚悟が育ちます。すると現実に急変に直面した時に慌ててパニックになり軽率な判断や行動が回避できます。

ACPの核となるのは、あくまで本人の意思です。時々、本人にさりげなく「食べる量が減ってきた時にどうして欲しいか」など本人の希望というか、本人の考え方や哲学のような言葉を引きだすようにしてください。たとえ超高齢だったり高度の認知症があっても、意識がある限りある程度の意思表示ができる場合が多いので、本人の言葉を上手に引き出すことです。これもある程度の技術が要るかもしれません。私自身は日常のなにげない会話の中にそのような視点を織り込み、自然に出てきた肝心な言葉を携帯電話で録画することがあります。それをすぐにDVDに焼いて遠くの家族に送ったり介護スタッフに渡しておきます。それが1年後に本当に何か事が起きた時に「そういえばあの時、こう言っていたなあ。それに従うと・・・』と役に立つことが多いです。

在宅介護は介護者の余裕がなく、ついつい目先のことに追われがちです。しかし長期的な視点も必要なので、ケア会議などにもACPの視点を必ず盛り込んでください。以上は「意思決定支援プロセズ」とも言いますが、在宅医療も在宅介護も意思決定支援の連続です。最近、こうした研修を受けた医師や訪問看護師やケアマネが増えてきて日本も本格的にACPの時代に入ってきました。

以上のことを参考に後悔の無い介護を楽しんでください。

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