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通訳ボランテイアに支えられた在宅看取り
2017年07月13日(木)
医療タイムス7月号の特集は「訪日外国人への医療支援」だったので
連載は「通訳ボランテイアに支えられた在宅看取り」で書かせて頂いた。→こちら
いろんな「最期のカタチがある」ことを旅立たれた人から学ばせて頂いた。
連載は「通訳ボランテイアに支えられた在宅看取り」で書かせて頂いた。→こちら
いろんな「最期のカタチがある」ことを旅立たれた人から学ばせて頂いた。
医療タイムス7月号 通訳ボランテイアに支えられた在宅看取り
外国人の診療に携わることが時々ある。英語であればなんとかなるかもしれないが、それ以外の言語であると誰か通訳を介さないと意思疎通が難しい。今回、通訳ボランテイアに支えられながら在宅療養を続けた結果、在宅看取りまでに至った経験をお伝えしたい。
「大阪市の何十という医療機関に断られたケースなのですが・・」。いきなり見知らぬ大阪市の職員からそんな電話がかかってきたので私は思わず身構えた。しかし「きっと大変な症例だろうけど、もしかしたら遣り甲斐のある仕事かも」と思ってしまった。これまでこうした安請け合いでエライ目に何度もあっているのだが全く学習していない。「日本語が全く通じない、スペイン語を話す脳腫瘍末期のペルー人の在宅主治医になってくれませんか?」という依頼であった。大阪市の職員が兵庫県の医療機関にそんな電話をしてくるくらいだからよほど困っているのだろう。何十という医療機関が断った理由とは「スペイン語しか話せない外国人夫妻と生活保護」であった。まして末期がんの在宅看取りとなれば何らかのトラブルに巻き込まれることを恐れるのが普通の医療機関が行う危機管理であろう。しかし私は特段あてもないまま、「引き受けます」と即答してしまった。
県境を越えて(本来はあまり越えてはいけないのだろが、行政からの依頼でもあったので)大阪市のある古い団地まで車を走らせると、40歳台のペルー人夫妻が途方に暮れていた。ボデイランゲージでふらつきが酷くて歩けないことや激しい頭痛に悩まされていることが分かった。ペルーからの出稼ぎ労働者として来日していたが脳腫瘍が発覚。手術や抗がん剤治療を行ったが終末期と診断され飛行機に乗れないので帰国できないと。さっそく訪問看護師にグリセオールとステロイドの点滴を指示すると共に役所の福祉課の職員やその団地の民生委員さんに言葉の壁について相談した。しかしスペイン語を話せる人など世の中にそうはいない。ましてや医療スタッフの訪問時にあわせて来てくれることは最初から無理だと分かっていた。そこにある人が「それなら通訳ボランテイアにお願いすれば」と提案してくれた。「通訳ボランテイア?」。初めて聞く言葉ではあったが、京都府にお住まいのスペイン語通訳として登録している方と電話でお話ししたら、快諾を頂いた。
通訳ボランテイアの方には予め私の訪問時間を伝えておき、訪問すると私が携帯電話でその人に言いたいことを話す。するとその携帯を介護者である奥さんや時には患者さん本人に渡して耳にあてて伝えてもらう。そして彼らが発した言葉を再び私に渡った携帯を通じて伝えてもらう。少し時間はかかるが、通訳がその場に居なくても携帯だけで充分に意思疎通が可能であることが分かった。訪問する毎にその通訳ボランテイアさんが通訳してくれたので、意思疎通やさまざまな意思決定支援もできた。
そうこうしながら3ケ月が経過し、いよいよ寝たきりになりターミナルに至った。私は通訳ボランテイアを介して奥さんに「在宅看取り」の説明をした。奥さんは看護師が行う200mlの点滴姿をビデオ撮影した。ペルーでも嫁姑問題があるので夫がちゃんと最期まで医療を受けて亡くなったことを帰国してから伝えるためだと言った。最期の2日間は奥さんの強い指示で団地に泊まらされた。そして穏やかな最期を看取った。通訳ボランテイアの有難さとともに可能性を感じた症例であった。
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この記事へのコメント
よくぞお引き受け成されました。
お疲れさまでした。
Posted by 匿名 at 2017年07月13日 01:55 | 返信
先生、本当にご立派です。海外在住の身として他人ごとではない思いで拝読しました。そのペルー人ご夫妻に代わってお礼申し上げます。
Posted by サウォ at 2017年07月13日 11:04 | 返信
良いお話でした。
おつかれさまでした。
Posted by 匿名 at 2017年07月14日 02:15 | 返信
長尾先生は、日本国内だけではなくて、WHOか国連で活躍すべき人材ですね。
Posted by 匿名 at 2017年07月14日 04:09 | 返信
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