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膵臓がんの治療
2017年08月29日(火)
産経新聞・膵臓シリーズ第4回 膵臓がんの治療
手術・抗がん剤・放射線を進行度で選択
膵臓がんは罹患数と死亡数がほぼ等しい。つまり最も難治性のがんです。日進月歩のがん治療のなかで唯一取り残されている領域のようにも感じます。しかし私が大学病院で膵臓外来を担当していた30年前と比較すると少しずつ進歩しています。もちろん課題や限界も多く残されています。今日は膵臓がんの治療の現状について概説します。
膵臓がんで長期生存するためには外科手術が不可欠ですが、手術できない膵臓がんのほうが多いのも現実です。おおまかに言うと、手術ができる段階とできない段階に大別され、その間にボーダーライン(どちらとも言えない)があります。がんの進行度はⅠ期からⅣ期と判定されます。Ⅰ期は「手術ができる」、Ⅱ期は「手術ができる」か「ボーダーライン」、Ⅲ期は「ボーダーライン」か「手術ができない」、Ⅳ期は「手術ができない」です。ひとくちに手術と言ってもがんの場所によって術式が異なります。膵頭部にできた場合は、膵頭部に加えて十二指腸や胆のうや胆管や周囲のリンパ節を一括して切除します。術後1ケ月以内の死亡率が約1割という大手術です。膵体部や膵尾部にできた場合は十二指腸や胆管は残されます。もし膵臓を全摘した場合は、インスリンと消化液の分泌がゼロになるので術後のインスリンや消化や栄養管理がかなり煩雑なものになります。
膵臓がんの手術の特徴は、手術で完治せしめたと思っても術後の再発率が高いことです。手術だけだと1年後の70%、2年後に85%が再発します。そのため手術の前後に抗がん剤を併用します。手術後なら半年程度はTS-1という飲み薬の抗がん剤を使うことが一般的です。あるいは「ボーダーライン」で手術するなら術前に抗がん剤治療に加えて放射線治療を併用することも。TS-1により再発転移を予防し生存期間を延長できることは多くの研究で明らです。しかし食欲不振や吐き気などの副作用に悩まされる場合も少なくありません。そんな時は注射薬のゲムシタビンを用います。一般に医者が考えているより患者が体感する副作用は辛いものです。先日、胃がんのために旅立った同じ年の友人である西村元一氏(元金沢赤十字病院副院長、外科医)も講演や著書の中でそれを強調していました。私自身も「抗がん剤・10のやめどき」(ブックマン社)の中でTS-1の副作用について詳しく述べました。町医者がボクシングのセコンド係のようにサポートしながら続ける場合もあります。やむをえず中止する場合もあります。私たちが在宅で診ている膵臓がんの多くは、Ⅳ期で手術ができないと判定されたりⅡ期やⅢ期と判断されて治療を行ったがⅣ期になってしまった場合です。抗がん剤治療はまさに延命のためですが、最近は放射線と組み合わせることもあります。全身状態が悪化した時は残念ですが治療の“やめどき”を話し合うことになります。そして診断当初から良質な緩和ケアを受けることを忘れないでください。
いずれにせよがん治療は初回の治療が大切です。途中で病院を変わる人も見かけますが、膵臓がんの場合、厳しい経過を覚悟しなくてはならないので最初の病院や医者選びがとても大切です。手術や抗がん剤や放射線治療はその実績が多い施設で受けることをお勧めします。膵臓がんと診断されたら情報を集めて後悔の無い選択をしてください。
キーワード TS-1
ティーエスワンは1999年に発売され抗がん剤として広く使われている。フルオロウラシル(5-FU)というがんを治療する薬の効果を高めて副作用を少なくすよう開発された薬。
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この記事へのコメント
私の母の体に癌が見つかり、医師(大学病院)からの説明は手術の一点張り。母は76歳、手術を希望しませんでした。しかし、今まで15回の症例の手術の実績がある。すべて成功しているからと、医師は兄に手術の説明を行い、兄は承諾してしまいました。その際、兄に医師から術後の再発・生存率の説明はあったのか。どこをとって成功というのか。と聞くと、聞いていないとのこと。母は手術後の一年弱、抗がん剤や放射線の治療で体の休まることなく苦しみながら亡くなっていきました。正直後悔しています。無知は限りなく罪、受け身じゃいけない、患者も家族も賢くならないと大切な家族や自分の命は活かせないとつくづく思いました。
>膵臓がんと診断されたら情報を集めて後悔の無い選択をしてください。
・・・もちろん、膵臓がんに限らずです。
Posted by ちゃーちゃん at 2017年09月02日 11:11 | 返信
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