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膵臓が機能しないとどうなるか

2017年09月13日(水)

産経新聞・膵臓シリーズ第6回は、「膵全摘後と慢性膵炎
ー膵臓が機能しないとどうなるかー」で、書かせて頂いた。
8年間続けてきたこの連載も、あと2回で完全に終了する。
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産経新聞・膵臓シリーズ第6回  膵全摘後と慢性膵炎
                膵臓が機能しないとどうなるか
 
 お腹の中にある臓器は外科手術で切除した後もたいていは生きていけます。消化器系だと胃や腸や胆のうは全摘後も生きていけます。泌尿器系だと腎臓は左右2つあるので片方がちゃんと働けば生きていけます。もし両方を失っても人工透析がありますし、膀胱ならば人工膀胱があります。実はお腹の中には全摘したら生きていけない臓器がひとつあります。それは肝臓です。肝臓無しでは生きていけないので肝臓移植が考慮されます。ではもし膵臓を全摘したらどんなことになるのか。今回はそんな状況に陥った2人のケースを紹介し膵臓の働きについて考えてみましょう。

 1例目は膵臓がんのため膵臓を全摘された60代の男性です。ほぼ膵臓全体にかけてがん病巣を認めたため膵臓が全摘され、私は術後の血糖管理を任されました。膵臓を全摘するとインスリンなどの内分泌機能と消化液などの外分泌機能をすべて失います。手術当夜は1時間毎に血糖値を測定しそれに応じた速効型インスリンの点滴量を微調節しました。しばらく経過しても血糖値が100から500の間で乱高下するので、2種類のインスリンを細かに調節しながら血糖コントロールを続けました。数日後に食事が開始されると、今度は激しい下痢が続きました。膵臓食ですが脂肪が少しでも含まれているとそれを分解する消化酵素がゼロなので下痢が誘発されます。そこで消化液そのものである「消化剤」を沢山飲んでもらう必要がありました。なんと通常量の10倍以上の消化剤を飲んでやっと下痢がまあまあ落ち着いてきました。幸い膵臓がんで命を失うことは免れましたが、術後の血糖管理はかなり煩雑で毎食後に大量の消化剤を飲み続ける生活になったのです。

 2例目は高度な慢性膵炎の40代の女性です。20代から大量のアルコールを飲み続けため高度な慢性膵炎と診断されました。画像診断で膵管の高度拡張とたくさんの膵石を認めました。1日10回以上の下痢と栄養失調が続いたため入院加療になりました。体はガリガリに痩せて顔面は火傷のあとのように皮膚が見事に全部はげ落ちていました。銅や亜鉛などの微量元素の不足による皮膚症状なので高カロリー輸液の中に様々な微量元素を加えて補給しました。一方、慢性膵炎独特の激しい背中とお腹の痛みにも悩まされました。通常の痛み止めではとても治まらないので医療用麻薬も必要でした。当直をしていても毎晩「痛い、痛い」と訴え、強い痛み止めの注射を要しました。今なら硬膜外ブロックが必要な激しい痛みに悩まされ続けたのです。必死で治療してもはげ落ちた顔面の皮膚も栄養状態もまったく回復せず、全身状態は悪化の一途を辿りました。結局、治療の甲斐無く4ケ月後に旅立たれました。4ケ月間の入院中、一度も笑顔はありませんでした。良性疾患での40代の旅立ちに私は大きなショックを受けました。

 以上はもう30年以上前の話ですが今でも忘れられない患者さんです。もし膵臓が機能しないと人間はどんなことになるのかを私に教えてくれた2人です。その後、市民病院、そして現在は町医者として多くのアルコール依存症の人を診てきましたが、アルコールによる脳の萎縮や肝硬変だけでなく膵臓機能の喪失も心配でならないのです。
 
 
キーワード 慢性膵炎
アルコール多飲などにより膵臓に炎症が持続した結果、膵臓の細胞が破壊されて繊維が増えて硬くなった状態。罹患率は人口10万人あたり35.5人(2002年)。男女比は2:1だが近年は女性の増加が目立つ。
 

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この記事へのコメント

アルコール飲料は若いころに止めた。
それまで、風呂上がりにビールを飲むとクセになりつつあった。
いつもビールがないと物足りなくなるので、いつも買い置きしていたからカネがかかった。
私はおカネを稼ぐのが上手くないとわかっていたので、タバコかアルコールか、どちらかを止めようと思った。
その時はタバコはやめられなかった。ので、ビールを止めた。ビール腹にもならずに済むから。もちろん他のアルコール飲料もやめた。ウィスキーの香りが好きだったけど。
それからウン十年、タバコも止めた。理由はおカネ。
アルコール飲料とかタバコとか、そういった依存性あるものって、それがストレス解消になると言いつつ、それを続けるためにカネが要るから、やりたくない仕事を無理してやってるって人が多いのではないかしら。

Posted by 匿名 at 2017年09月13日 02:25 | 返信

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