このたびURLを下記に変更しました。
お気に入り等に登録されている方は、新URLへの変更をお願いします。
新URL http://blog.drnagao.com

慢性膵炎と自己免疫性膵炎

2017年09月21日(木)

産経新聞の連載もあと1回を残すだけとなり、どこか嬉し寂しい。
膵臓シリーズ第7回は、「アルコール多飲や免疫異常、慢性膵炎と
自己免疫性膵炎」で書いたが、アルコールには注意しなければ・・・
2つの応援
クリックお願いします!
   →   人気ブログランキングへ    →   にほんブログ村 病気ブログ 医者・医師へ
 
 

産経新聞膵臓シリーズ第7回   アルコール多飲や免疫異常
                慢性膵炎と自己免疫性膵炎
 

 今回も慢性膵炎の話をします。あまりなじみがない病名かもしれませんが、町医者の立場からは決して稀な病気ではありません。毎年1万8000人が新たに慢性膵炎と診断されています。男性は女性より4.6倍多く、75%がアルコールが原因とされています。一方、女性の半数はアルコールが原因ではなく特発性とされています。アルコールと聞くとすぐに肝臓の障害を連想しがちですが、膵臓の細胞も破壊されます。缶ビール2本ないし日本酒2合を毎日飲み続ける人が慢性膵炎になり易いく、女性のほうがアルコールに弱い分、大量飲酒者でなくても慢性膵炎にまで至る人がいます。

 慢性膵炎の自覚症状とは、みぞおちや背中の痛みや吐き気などです。便に肉眼的に脂肪が混じる“脂肪便”の有無も必す聞きます。病状が進行するに従い下痢や体重減少が起き栄養状態が悪化してきます。多くの場合、糖尿病を合併してきます。慢性膵炎の診断は血液検査や尿検査で消化酵素の異常上昇や画像診断を用いて行います。腹部エコー、腹部CT,腹部MRI検査で膵管の拡張や膵石を認めます。慢性膵炎の人はアルコール依存症の人が少なくなく、脳の萎縮や肝硬変なども合併していることがよくあります。以前は精神病院に長期入院して禁酒を要する病気でした。しかし最近は軽症例は外来で嫌酒薬や精神安定剤や睡眠薬などを服用しながら、完全禁酒を目指す人も増えています。時にはノンアルコールビールで我慢してもらうよう粘り強く説得します。ボクサーのセコンド係のように主治医は患者さんの伴走者になります。また地域の断酒会を紹介し仲間同士で励まし合いながらお酒と縁を切ってもらいます。腹痛や下痢などの症状に対して消化剤やたんぱく分解酵素阻害薬などを処方しますが、完全禁酒できないとせっかくのお薬も無駄になります。進行した慢性膵炎の症状はとても辛いものです。また血糖管理や栄養管理など様々な制限が必要になりとても厄介です。だから慢性膵炎こそ早期に診断して、完全禁酒など早期介入が必要な病気だと思います。

 慢性膵炎とよく似た症状を呈する膵臓の病気を挙げます。自己免疫性膵炎(AIP)といいます。1995年に免疫異常が原因で発症する膵炎が本邦から報告され、それが発端となり現在は世界中で研究されています。人口10万人あたり4.6人で、男女比は3.2:1 、平均年齢は66.3歳です。この病気は腹痛のほかに黄疸でも発症します。血液検査を行うとIgG4が高値を示します。画像検査で膵臓に腫瘤が認められることがあり、膵臓がんとの鑑別が必要な病気でもあります。もし自己免疫性膵炎と診断されたら、ステロイド投与が奏功します。黄疸があってもステロイドで消失します。その効果判定にはMRCPというMRI検査が有用です。もしステロイド治療に反応しないようなら膵臓がんなどの他の病気も考えないといけません。しかしステロイドを中止すると再燃することがあり長期投与を余儀なくされる人もいます。そこで2016年には難病に指定されました。いずれにせよ膵臓がんと鑑別することが大切です。そして慢性膵炎も自己免疫性膵炎も経過中に膵臓がんが合併してくることを念頭においておかなければいけない病態です。
 
 
キワード MRCP
Magnetic Resonance cholangiopancreatographyの略で、MRI装置を用いて胆嚢や胆管、膵管を同時に描出する検査。胆のうや胆管や膵臓の病変の検出に優れる。内視鏡を用いて行う逆行性胆管膵管造影(ERCP)と比較して苦痛が少なく侵襲が低い。

2つのランキングに参加しています。両方クリックお願い致します。皆様の応援が日々ブログを書く原動力になっています。

お一人、一日一票有効です。

人気ブログランキングへ ← 応援クリックお願い致します!

(ブログランキング)

にほんブログ村 病気ブログ 医者・医師へ ← こちらもぜひ応援クリックお願い致します!

(日本ブログ村)

※本ブログは転載・引用を固くお断りいたします。

この記事へのコメント

突然のコメント失礼致します。
夫の膵臓に腫大があり、自己免疫性膵炎を疑われ、血液検査中です。この度健康診断で他臓器の指摘でたまたま発見されました。夫は41歳でとくに膵炎の自覚症状や黄疸はでていません。もし、自己免疫性膵炎の場合、ステロイドでコントロールしても、膵臓癌は合併してくるのでしょうか?

Posted by かなこ at 2018年08月04日 11:45 | 返信

コメントする

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:

このたびURLを下記に変更しました。
お気に入り等に登録されている方は、新URLへの変更をお願いします。
新URL http://blog.drnagao.com


過去の日記一覧

ひとりも、死なせへん

安楽死特区

糖尿病と膵臓がん

病気の9割は歩くだけで治るPART2

男の孤独死

痛い在宅医

歩き方で人生が変わる

薬のやめどき

痛くない死に方

医者通いせずに90歳まで元気で生きる人の7つの習慣

認知症は歩くだけで良くなる

がんは人生を二度生きられる

親の老いを受け入れる

認知症の薬をやめると認知症がよくなる人がいるって本当ですか?

病気の9割は歩くだけで治る!

その医者のかかり方は損です

長尾先生、近藤誠理論のどこが間違っているのですか

家族よ、ボケと闘うな!

ばあちゃん、介護施設を間違えたらもっとボケるで!

抗がん剤 10の「やめどき」

「平穏死」10の条件

胃ろうという選択、しない選択

  • にほんブログ村 病気ブログ 医療・医者へ