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「認知症」か、「大人の発達障害」か

2017年10月05日(木)

還暦が近づくにつれて、「これって認知症?」と思うことがあったり、
「これって大人の発達障害?」と思うことがあったりで、いろいろだ。
先日の河野先生の講演をヒントに日本医事新報の連載に書いてみた。→こちら
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日本医事新報9月号   「認知症」と「大人の発達障害」
 

55歳以上のもの忘れの12%がADHD
 
 8月27日に第1回認知症治療研究会関西支部講演会が開催された。全国から300名の参加者で会場は満席であった。興味深い講演が続くなか、名古屋フォーレストクリニックの河野和彦先生による「認知症と大人の発達障害」という話はおそらくこのテーマでは本邦初の講演であった。今回、その内容の一部と私見をご紹介したい。

 書店の医学コーナーには発達障害と題した一般書が多く並んでいる。なんと日本国民の5%以上が発達障害だという。なかでも大人の発達障害が最近大きな注目を浴びている。コンサータとストラテラという治療薬が登場して以来、発達障害は医療の対象疾患となっている。後者は登録の必要が無いので筆者のような一般医も処方できる。発達障害のひとつである子供のADHD(注意欠陥性多動性障害)は知能指数が高く才能に溢れるが、3割が大人に持ちこして大人のADHDとなる。これは「整理整頓ができない、衝動買いする」に特徴づれられる。一方、アスペルガー症候群は「人の気持ちが理解できない」のが特徴である。そして大人のADHDの半数にアスペルガー症候群が合併している。

 大人の発達障害は歴史的著名人に多くいる。ほとんどが世界遺産になっているアントニオ・ガウデイは三次元空間の把握が上手い一方、聴覚不全があり歌詞が覚えられなかったという。種の起源を提唱したチャールズ・ダーウインも視覚には優れたが14歳になっても文字が読めなかった。このように天才と発達障害は同居している。あるいはルーズベルトやチャーチルなどの世界的に著名な政治家も発達障害であったという。大人のADHDは1977年にヘンリー・マンとスタンリー・グリーンスパンがを論文化したが医学会は認めなかった。1990年にアラン・ザメトキンが大人のADHDは集中時に前頭葉の血流低下をN  Eng Medに報告している。1993年にはダニエル・エイメンは94歳のADHDを報告している。いずれにせよ大人の発達障害が理解されたのは2000年以降のことだ。直近では55歳以上のもの忘れの12%がADHDであるという高知大学精神科からの報告がある。(上村直人ら ADHD in Old Age 老年精神医学雑誌2017;  28 増刊号Ⅱ、176)。認知症と大人の発達障害を鑑別する必要性が高まっている。

 
MCIと誤診しない
 
 最近、「私、若年性認知症じゃないでしょうか?」と訴えて受診される40代、50代の人が時々おられる。あるいは、「MCI(軽度認知障害)じゃないでしょうか?」と受診する人も少なくない。NHKなどで30、40代の若年性認知症の人が堂々とカミングアウトしている影響もあるのだろう。果たして検査をしてみるとMMSEや長谷川式は高得点で画像診断上も脳委縮を認めずどのような病態なのか疑問に思う例がある。そんな時には「高学歴、整理整頓ができない、衝動買いの有無」を問診することで発達障害であることが分かる。多動スコアや注意スコアが高ければADHDの可能性が高くその薬物療法が著効する。発達障害を若年性認知症やMCIと誤診しないことを肝に銘じたい。また実臨床ではADHDとピック病の鑑別が重要である。一方、意外にも大人の発達障害はレビー小体型認知症に至ることが多いというから話は単純ではない。
 
発達障害と遺伝的素因
 
 ADHDは遺伝的基礎のある障害であることが1990年代から示されている。第6染色体のHLA遺伝子、第5染色体のドーパミントランスポーター遺伝子、第11染色体のD4レセプター遺伝子の異常などが報告されている。片親がADHDだと子供の6割にADHDが出る。両親ともADHDだと子供の88%がADHDになるという。「分かっているのにできない」脳①(ダニエル・エイメン著、ニキ・リンコ訳 家風社2001)

 遺伝的素因に加えて種々の後天的要因も加わるので、発達障害は疾患スペクトラムという概念で眺めないとその診断は複雑だ。またいわゆる4大認知症に分類されているものも実際には多くは混合型であり時間の経過とともにその割合は劇的に変化する。がんの確定診断のように唯一絶対なものではなく、認知症や発達障害の診断は相対的で動的なものだと捉えるべきだ。発達障害にも診断基準があるが「何項目以上なら確実」というスコア診断である。そこに遺伝的要素を加味すると話は複雑になる。従って将来的には精神疾患や発達障害の診断もAI(人工知能)が活用されるべき分野だろう。そして診断のみならず種々の薬剤選択や最適用量の決定にも抗がん剤の選択と同様にAIによる補助が欠かせなくなるのではないかと夢想した。また認知症や発達障害をこうした疾患スペクトラムという概念で眺めると、視野が大きく開けるような気がした。

 大人の発達障害が若年性認知症と誤診される一方、発達障害をベースにして認知症を合併してくるようなケースもある。また認知症の介護者が発達障害である場合も散見する。そんな場合うまく介護できず在宅療養が困難になるケースを時々経験する。周囲の気持ちを察する能力に劣る人は介護が得意ではないので、在宅療養よりも施設療養の方が推奨される。今後、増え続ける認知症の在宅療養が地域包括ケアシステムの大きな課題になっている。今後は認知症の人だけでなく家族や介護者も発達障害という視点で観察して介護不適応者に適切な助言をすることも私たちの仕事になる。発達障害の人は一般の会社組織にはなじめず最終的に介護や福祉系の職種に流れることが多いことも知っておくべきだ。もし介護家族や介護職員が高度の発達障害である場合、虐待や介護殺人などの不幸な事件が懸念される。従って認知症診療に発達障害の知識は必須である。
 
 
 
「認知症、薬増やす医者、認知症」

 ある雑誌に「認知症、薬増やす医者、認知症」という川柳が載っていた。たしかにピック病と診断されながらもドネペジル10mgを出して暴れているという介護認定の医師意見書を見かけるので笑えない。多くの患者さんの尊厳を奪ってきた「抗認知症薬の増量規定」という悪しき習慣は、私が代表理事を務める「一般社団法人・抗認知症薬の適量処方を実現する会」の活動が実り2016年6月に撤廃された。しかし日本医師会を通じてその通知が届いたのは1年後であった。このように規則が撤廃されても肝心の周知が充分でないため、興奮して暴れている認知症の人に最高量の抗認知症薬が投与され続けたり、減量ないし中止をしないどころか反対に増量されるケースが現在でも少なくない。筆者は「認知症の薬をやめると認知症が良くなるって本当ですか?」(現代書林)という本を書いている関係上、全国の一般市民から多くの副作用の情報提供を頂く。だから前述の川柳を笑えない。

 しかし河野先生の講演を拝聴し少し謎が解けた気がした。もしかしたら患者や家族の訴えをよく聞かずに一方的に薬を増量することは発達障害による「こだわり」なのかもしれないと。特に高学歴の代表的職業である医師はアスペルガー率が高いことや夫婦とも医師の場合、子供が発達障害である割合が高い話は有名である。そのように解釈すると多剤投与や一方的な増量が腑に落ちるような気がしてきた。ちなみに河野先生も私もアスペルガーを自認しているが(笑)。「社会性をともなわない学力は害のほうが大きい」という翔和学園(東京都中野区)のポリシーを一同噛みしめた。本研究会にはコウノメソッドという言葉を初めて聞いたという医師も多く参加されていた。座長を務めた私は日本医事新報社から出版されたばかりの「コウノメソッド流認知症診療スピードマスター」を一読することをお勧めした。

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この記事へのコメント

嶋田和子氏の「発達障害の薬物療法を考える(彩流社)」から、私は大阪のふくずみアレルギー科の吹角 隆之医師を知りました。次にリンクを貼ります。
http://fukuzumi-allergy.com/knowledge/dd/

長尾ブログ読者の方やお知り合いの方が、他の医師から「発達障害」と診断を受けてクスリを飲むように指示されたら(医者とケンカせずにその場は黙って処方薬を受け取るが、絶対に飲まないで)、
まずこの医師のウェブサイトを詳細に読んで、可能であれば大阪まで行って吹角医師に診てもらうことをお勧めします。
吹角医師のところまで行くことが不可能であれば、電話なり手紙なりで間接的に指導を仰ぐことも可能だと思います。

吹角医師のWebサイトには「発達障害の発生原因には食物アレルギー(フードアレルギー)、化学物質(農薬)、重金属、潜在性感染症など風呂おけモデルの全ての蛇口が関与しています」と書かれています。「風呂おけモデル」とは
http://fukuzumi-allergy.com/knowledge/food-allergy/
また、
http://fukuzumi-allergy.com/knowledge/dd/
の、「Leaky Gut Syndrome(LGS) 腸管壁浸漏症候群」は、
なるほど、と納得しました。
この風呂おけモデルとリーキーガット(直訳すると「漏れる腸」・・・?)、すごく説得力あります。

長尾先生なら、この吹角医師の真実をご理解なさること可能と思います。
薬害に蝕まれる人が一人でも少なくなることを祈ります。

Posted by 匿名 at 2017年10月06日 02:58 | 返信

「発達障害の人は一般の会社組織にはなじめず最終的に介護や福祉系の職種に流れることが多いことも知っておくべきだ」⇒ さもありなん

私宅は両親とも介護施設生活なので、老健&特養&私企業の老人介護施設2件と多種。
老健&特養の介護職の方々には、あまり違和感ありませんでした。とてもしっかりした良い方たちでした。唯一特養の看護師がひどかった。病棟看護師丸出しで、私がマスクをして面会に行くと「風邪をひいているなら他の人に移ると困るから完全に治してから来てください」って・・・
今の私企業の介護施設の正規職員さんはわずか10名。そのうち発達障害確実が施設長を筆頭に3人います。入居者は54名なので監査に引っかからない職員数を確保せねばならず、派遣職員(であることがようやくわかってきた)で補っている。
結局、発達障害の職員が古株なので、新規採用になった人はほどなく辞めてしまう。だから派遣を雇う。派遣もくるくる人が変わる。入居者である父も時たま遊びに来る父の友人も、「ここはよく人が変わるね。いつも違う人がいるよ・・・」
そうなのですね。
施設長とナースと機能訓練師が発達障害確実。だから、新規採用しても働きづらくてすぐに辞める。だから、いつまでたっても派遣ばかりなのです。ようやく理解できました。
・・・引っ越し先、探さナイト。でも、90歳なので、移動はタイヘンです。

Posted by 匿名 at 2017年10月06日 05:33 | 返信

他の人は分かりませんけど、私自身は、発達障害だと思います。
家計簿が付けられない、片づけられないので、年がら年中、探し物をしている。
小学校時代から、先生が漫談を始めると、他のことを考えてしまって、授業が耳に入らない。
母に大声で、叱られると、もう何も考えられない。この歳になっても、お向かいのお母さんが、大声で子供を叱っているのを聞くと、こちらまで怖くなって不安になってしまいます。
でも、他の方達も、大抵発達障害の方が多いんじゃないかと、疑っています(笑)。
でもだからと言って精神障害とか、知能が低いとかでは無くて、この論文には「夫々別の才能がある」と書いて下さっているように思うので、何となく「助かった」と思います。

Posted by にゃんにゃん at 2017年10月06日 05:51 | 返信

河野先生も長尾先生も「アスペを自認」していらっしゃるとのこと!これは親近感です!私も隠れアスペ(アスペルガーのグレーゾーン)だからです。アスペには「独特のマイペース」さがありますよね。

Posted by CASIO at 2017年10月06日 12:20 | 返信

発達障害およびアスペルガー症候群が男性に多いというのは後天的原因だと思います。私は高齢者一歩手前の女性ですが、私もアスペ寄り発達障害の要素が強いです。しかし、女子であるがゆえに成長の過程で矯正されてきました。
「矯正された」といってもクスリは無しです。50年前には「発達障害」ブームは無かったし、私のような学童・学生は他にもいました。教師も寛容でした。

父が完璧アスペ寄り発達障害なので、母は父にべったり寄り添って「管理指導」していましたので父にかかりきり。ですから、私に対しては「自分でできるやろ?」「あんたは自分でやって!!」ということになる、ので、私は自立せざるを得なかった。

これが男子であれば「家事一切できなくても覚えなくても構わない、カネさえ稼げるようになればよい」そのために、お勉強を一生懸命やって官庁あるいは一流企業に就職する、あるいは一芸に秀でる、が、最重要事項で人生の目標となる。
たとえば、シャツのボタンが一つ取れてしまったらお母さんか縫い付けてくれる、そうでなければボタンが取れたまま着るか、捨てる。
母の代わりの「日常介護人」が、「妻」。
かくして「メシ、風呂、寝る」の単語だけ発する亭主ができあがるのです。その「なれの果て」が、認知症まがいの高齢男性。

日常生活は、「家事」という名のめんどくさい雑用の連続で成り立っています。そのめんどくさい雑用をやらずに、「仕事」とか「芸術」という類の、一つのことばかりやっていると、脳の一部だけを使うので、そこだけ特殊に発達してバランス悪い人格になるようです。

以前は、プロフェッショナルな職業人や芸術家のような存在を羨ましいと思ったこともありました。けれども両親の介護にかかわる過程で、私は、人間を見る観点が変わりました。
社会的に成功している華々しい存在を見ても、「ああ、この人の脳も特殊な構造だから、ご家族はタイヘンだろうな」と思います。
たぶん長尾先生も・・・

Posted by 匿名 at 2017年10月07日 01:53 | 返信

"衝動買い" についてを考えると、「そうか脳の作用と深く
関係があるのか」と今更ながら思います。
"ストレス発散のためにショッピング " が若い頃には定番だった
けれど、最近は減りました。人混みに出掛ける億劫さの為かと
思っていたけれど、それだけではなく、今では買う時・迷う時の
ワクワク感が、かなり減少したのだと気が付きました。
同時に、故人の遺品整理に疲れる日々では、物への執着が減少する
のも当然な気がします。「物」には人各々の思い入れがあるために
当人にとっては、"価値ある品物 " と脳にインプットされている
のかも知れません。けれども、その処理に関わっていると、なんだか
人の怨念?というか、"思い " が重くのしかかるような...疲れる日々です。
我が身に置き換え、物に執着しない自分に変化しなければ..と思いを新に
する昨今です。

Posted by もも at 2017年10月08日 01:15 | 返信

研究会で河野先生のお話に刺激を受け、紹介された参考書を読みました。発達障害の「障害(disorder)」の捉え方には、留意すべきだと思いました。長尾先生や河野先生が、自ら「私はアスペルガー」と語られるのは、その点を考慮されてのことと思います。社会生活を送りながら、発達のアンバランスや凸凹という特性と向き合っている個々人に対する意識をバージョンアップしなければならないなと感じました。

認知症の中核症状や周辺症状のように、発達障害も同様に中核症状、周辺症状があるそうです。
その症状の影響により社会生活の維持が困難となった場合に、適切な診断、治療が個人の在宅生活あるいは人生そのものを守るという意味で、貴重な発表をしてくださったと思います。
大人の発達障害に早期に対応することで、若年性やMCIと見紛う認知症様症状を未然にコントロールすることができるのであれば、大変有効な予防といってよいのではないかと思いました。

さらに今回の発表からこれからの可能性に目を向けると、表層の様々な症状の背後に潜む発達障害の存在とその傾向を探り対処することで、精神薬漬けの対処療法から救われる隠れた当事者も多数現れるのではないか。マイルドコンサータのような「発達障害のコウノメソッド」の開発につながり、地域の総合医のかかわる領域が広がっていくのではないかと期待しました。
発達障害は社会的に大きなテーマだという知識を、今回の研究会で得ることができました。引き続き多角的に学んでいきたいと思っています。

Posted by jcns at 2017年10月16日 11:42 | 返信

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