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膵臓がんで死なないためには
2017年10月24日(火)
月刊公論11月号の連載には「膵臓がんで死なないためには」で書いた。→こちら
膵臓がんは非常にタチの悪いがんで知人の訃報が届いたばかりでもある。
だから「時々エコーをしましょう」と言ってはいるがこれでは甘いかも。
膵臓がんは非常にタチの悪いがんで知人の訃報が届いたばかりでもある。
だから「時々エコーをしましょう」と言ってはいるがこれでは甘いかも。
公論11月号 糖尿病は膵臓の病気
膵臓がんで死なないためには
膵臓がん 早期発見の条件
膵臓がんは5年生存率が7.7%と、難治性がんの代表格である。しかしもしⅠ期で発見できれば41.3%に上がる。すなわち命を救うためには膵臓がんを1~2cm以内のリンパ節転移が無い段階で発見するしか手がない。では膵臓がんを早期発見するためにはどうすればいいのか。まずは膵臓がんのリスクファクターを知っておきたい。1糖尿病、2過度な飲酒、3喫煙、4慢性膵炎、5家族歴の5点だ。いくつか当てはまる人には年に1回は腹部エコー検査を勧めている。そして膵管の拡張やのう胞の多発を認める人は、超音波内視鏡ができる専門施設に紹介したい。膵臓がんの早期発見には超音波内視鏡が有用であるからだ。すでに膵臓がんの早期発見で成果を上げている自治体がある。
広島県尾道市では07年から開業医と専門病院の密接な連携で膵臓がんの治療成績が向上している。市内の開業医が問診と腹部エコーで拾い上げた患者さんを、市内の専門病院に紹介しそこで超音波内視鏡による精密検査を行っている。こうした町ぐるみの取り組みを8年以上続けることで尾道市における5年生存率は18.5%と国の平均の2倍以上に向上したという。膵臓がんのステージにはがんが膵管内にとどまる0期がある。もし0期で発見できれば手術だけで完治し抗がん剤治療は不要だ。しかし国の統計では0期の患者さんは膵臓がんのわずか1.1%しかいない。しかし尾道プロジェクトでは4.6%(21人)と4倍も高い。かかりつけ医がリスクファクターをチェックすることが大切だ。こうした膵臓がんの早期発見プロジェクトは全国の自治体に広がりつつある。山梨県でも6年前から大規模なプロジェクトが始まり成果を上げている。全国で実施されているメタボ検診は内臓肥満をターゲットとしているが、喫煙や糖尿病もチェックする。最近はエコーで頸動脈の動脈硬化の評価を行う自治体も増えているが、可能なら膵臓も対象にして欲しい。
一方、血液検査による膵臓がんの早期発見の試みも始まっている。慢性膵炎などの患者さんの血液中の「アポA2アイソフォーム」というたんぱく質を測定して拾い上げた人に精密検査を行うという試みが国立がん研究センターなどが中心となり鹿児島県内では50歳以上の人を対象に実施されている。さらにCA19-9などの既存の腫瘍マーカーやマイクロRNAなどの新しいマーカーの組み合わせによる早期発見に期待が高まっている。
アルコールと慢性膵炎
毎年1万8000人が新たに慢性膵炎と診断されている。男性は女性より4.6倍多く、75%がアルコールの大量飲酒が原因である。一方、女性の半数はアルコールではなく特発性とされている。アルコールは肝細胞だけでなく膵臓の細胞をも破壊する。缶ビール2本ないし日本酒2合を毎日飲み続ける人が慢性膵炎になり易い。女性はアルコールに弱い分、大量飲酒者でなくても慢性膵炎にまで至る人がいる。慢性膵炎の自覚症状とは、みぞおちや背中の痛みや吐き気などだ。便に肉眼で見て脂肪が混じる“脂肪便”の有無は自己チェックが可能だ。病状が進行するに従い下痢で体重が減少し栄養状態が悪化する。多くの場合、糖尿病を合併してくる。慢性膵炎の診断は血液検査や尿検査で消化酵素の異常上昇や画像診断で行う。腹部エコー、CT、MRI検査において膵管の拡張や膵石を認める。
慢性膵炎の人にはアルコール依存症の人が少なくなく、脳の萎縮や肝硬変なども合併していることがよくある。以前は精神病院に長期入院して禁酒を要する病気であった。しかし最近は軽症例は外来通院で嫌酒薬や精神安定剤や睡眠薬などを服用しながら、完全禁酒を目指す人も増えている。腹痛や下痢などの症状に対して消化剤やたんぱく分解酵素阻害薬などを処方するが、完全禁酒できないとせっかくのお薬も意味が無い。進行した慢性膵炎の背部痛などの諸症状はとても辛い。また血糖管理や栄養管理など様々な制限が必要になりとても厄介だ。だから慢性膵炎こそ早期に診断して、完全禁酒など早期介入が必要だ。そして慢性膵炎の経過中に膵臓がんが合併してくることを念頭においておかなければいけない。
糖尿病と膵臓
糖尿病は膵臓から出るインスリンの放出が低下したり、効きにくきなる病気である。インスリンとは1921年に発見された100年近い歴史があるホルモンの代名詞。血液の中に入り全身を巡り血液中のブドウ糖を肝臓や筋肉のなかに取り込む作用がある。取り込まれたブドウ糖は皮下脂肪やグリコーゲンという形に変えて貯蓄される。血糖が高ければ分泌されるインスリンの量も増え、それに比例して貯蓄の量も増えるので体重は増える。だから糖尿病にならないためには血糖値が上昇しにくい食品(低GI食という)を選んだほうが有利だ。GI値が小さいほどインスリンが過剰に分泌されないので太りにくい。ブドウ糖のGI値を100とすると、白米は85、コーンフレークは75、おそばは54、玄米は50。GI値が低いほど「スローな食べ物」とも呼ばれている。もし炭水化物を食べる時は低GI食にした方がインスリンの枯渇を防げる。つまり肥満者においては膵臓に負担をかけない食べ物や食べ方こそが糖尿病治療の本質である。
たとえ空腹時血糖が100mg/dl以下と正常範囲であっても食後1時間の血糖値が140mg/dl以上に上がる「血糖値スパイク」は膵臓に負担をかける。血糖値が急上昇するとβ細胞がそれを感知してインスリンが沢山出てしまうからだ。しかし野菜→肉や魚のおかず→ご飯(少し目)の順で食べると血糖値スパイクは生じない。つまり同じ食事内容であっても食べる順番で太るかどうかが決まってくる。さらに同じ食事であっても短時間でのドカ食いよりチビチビ分けて食べたほうが膵臓に負担をかけない食べ方である。今の食事が膵臓にどれくらの負担をかけているのか。そんな想像をしながら食欲の秋、よく噛んで楽しく食べたい。
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この記事へのコメント
膵臓がん…
ほんとに怖いです
看護学校時代の友人のことです
40代後半の女性です 昨年の11月末体調を崩し近医へ受診。公立病院での精査の結果、膵臓がんでした
12月初旬に LINEで「抗がん剤投与のため入院したのよ」と言われた時には ビックリ!
なんと声をかけたらよいのかわからず…ただただ 悔しかった
なんで ○○ちゃんが 膵臓がんにならなきゃいけないの…と
あれよあれよと状態悪化し 3月21日に旅立ってしまいました
ほんとに 膵臓がんは駆け足です
立って歩いていたのに…
笑顔で話していたのに…
どうにもできないんですよね
Posted by 訪問看護師 宮ちゃん at 2017年10月24日 09:49 | 返信
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