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膵臓癌ステージⅣbを生きる、石弘光さん

2018年01月27日(土)

膵臓癌ステージⅣbを生きる、石弘光さんと会食した。
石さんは一橋大学学長であり、退任後も放送大学学長、
政府税制調査会会長などを務められた偉大な経済学者。



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今晩の在宅医と厚労省の勉強会は、
「小児の在宅医療」がテーマであった。

明日は築地なる朝日新聞社で講演会、
明後日は日比谷公園の中のホールで講演会。
 
今日は、膵臓がんサバイバーである石弘光(いしひろみつ)氏と
築地でお寿司を食べた。

石さんは、元一橋大学学長であり、退任後も放送大学学長、
政府税制調査会会長などを務められた偉大な経済学者です。
 
一昨年の夏、膵臓がんステージ4Bと診断されました。
膵臓の嚢胞ががん化したタイプの膵臓癌なので、進行がやや遅いタイプ。

誰でもある日突然、膵臓がんステージ4Bと言われたらショックを受ける。
しかし石さんは冷静に事実を受け止め、抗がん剤治療を続けておられます。
 
 
「がんと共存するために必要なのは、体力、気力、情報力だね」
 
登山とスキーで鍛えた体は80歳とは思えないほど若々しく、
お顔色の血色もすこぶるよく、お寿司もぺろりと食べられていました。

昼時の人気の寿司屋には大勢のお客さんがいましたが、きっと誰一人、
この男性がステージ4の膵臓がんだとは、想像しないことでしょう。

偉い経済学者さんなのに、全然奢ったところがなく、カカッ快活に笑う姿は健康そのもの。
抗がん剤の副作用で、髪の毛はありません。普段は帽子を被っておられます。

しかしそのスキンヘッドにおしゃれなスーツ姿がまたお似合い。
まるでどこぞのヤクザの組長さんのよう。
 
石さんは、多くのがん治療の本を読んで勉強されたらしく、光栄にも、私の本
『抗がん剤 10のやめどき』と『長尾先生、近藤誠理論のどこが間違っているのでしょうか』
も熟読してくださっていて、それがご縁で今日の会食となりました。
 
「今は大変よく抗がん剤が効いていますよ。しかしいずれ、やめどき、がくるでしょう。
 長尾先生、僕が知りたいのはね、抗がん剤をやめた後、どうなるか? ということ
 ですよ」と私に質問をしてきました。

私は「まあ、人それぞれですねえ」とお答えしました。
 
副作用がなくなって元気なまま数年生きておられる方もいれば、ずーっと、
力尽きて亡くなる方もいます。だから、人それぞれとしか答えられません。

 
『抗がん剤 10のやめどき』のサブタイトルは、
「あなたの治療、延命ですか? 縮命ですか?」という、いささか過激な言葉。

大病院の先生が見たら、「延命に決まっているだろう!」と怒りだすかもしれません。

でも、石さんは、私の本に共感をしてくれました。そしてやめどきの後の運命は
「人それぞれ」であるとよくわかっていながら、あえて私に質問をしてきたのです。
 
「人それぞれか。そうでしょうねえ。だからこそ、やめどきは医者じゃなくて
 自分で決めるしかないのでしょうね」
 
 その通りです! 
 
「がんと共存するために必要なのは、体力、気力、情報力だね」と
石先生は言いましたが、情報力というのは単に情報を収集するだけでは、だめ。

集めた情報を以下に自分で吟味し、どう決断できるかまでを含めてが
本当の情報力(リテラシー)と言えるのではないでしょうか。
 
良い医療を受けるということは、この情報力(リテラシー)を
十二分に働かせることが大切です。

しかし同時に、石さんはこうも仰いました。
 
「しかし、僕みたいながん患者は、医者はやりにくいだろうね」
 
「そんなことはありませんよ、逆に、とてもやりやすいし楽しいのではないでしょうか。
 治療とは、医療者と患者の協働作業なんです。
 パートナーが素晴らしい情報力を持っていれば医者としても遣り甲斐があるはずですよ」
  と私は答えしました。
 
そう、医療とは協働作業です。
 
何もこれは、がんに限った話ではありません。
認知症の場合は、医療者と患者さんと、家族との協働作業になる。

お看取りだって、そうです。
ひとりでできるものではないのです。
 
石弘光さんが昨秋に出された闘病記
『末期がんでも元気に生きる ---「がんとの共存」を目指して』
http://urx.blue/IekQ
 
で、こんなことを仰っています。
 
 ──(私は)元来、楽観的な人間なのです。何も怖れることはない。
 自然に任せていくという感じでしょうか。
好奇心は失っていません。部屋に閉じこもって、くよくよ考えることはなく、
毎日、外に出かけます。うちの女房もカラっとしていますから、
二人で「あと、どのくらい持つかな」「こんなことをしてみよう」などと
平気で話し合っています。
 
がんとの共存に必要なもの。
それは、死を受け入れながら泰然自若と生きる、ということかもしれません。
 
20歳も先輩の石さんに私の方が元気をもらったひとときでした。
 
それにしても、久しぶりに築地市場を歩きましたが、この昔ながらの雰囲気が
あと少しで失われると思うととても残念。

この魚の匂いが染みついた、ゴミゴミ、ガチャガチャ、威勢のいいこの町の空気をそ
のまま豊洲にもっていければいいのに。でもそれは、無理でしょうね。

ところで尼崎の私のクリニックの南にも「築地」があるって知っていますか?
実は、「これが本当の築地なんです」と尼崎市の元教育長に習いました。

今日の午後、東京の築地にある朝日新聞社で、在宅医療の講演をします。
新聞各紙に載っているような情報だけでなく、リアルな在宅を語ります。


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この記事へのコメント

長尾先生、ありがとうございます。
先生の真意であると思って来た「抗がん剤治療のやめ時は、患者が決めるもの」という事を、再度、記事にして下さって。
癌患者である私は、ほっとしています。石先生も仰っている「体力 気力 情報力」を維持し、深化させて、がん治療生活を送りたいと思います。患者も、しっかり判断して行動する。これが大事だと、長尾先生のプログを拝見する度、思い返しています。

Posted by 樫の木 at 2018年01月29日 11:35 | 返信

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