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在宅医療 競合から協働へ

2018年03月07日(水)

医療タイムス3月号の連載は「在宅医療 競合から協働へ」で書いた。→こちら
地域地域でどんなネットワークを構築するかが、問われる時代となる。
多職種協働のなかでのドクターネットである。

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医療タイムス3月号   在宅医療  競合から協働へ
 
 町医者の視点で診療報酬改定の概要を一読した。もはや在宅誘導というより、在宅も行う「かかりつけ医」でないと生き残れないという方向性が明確にされたと感じた。私が一番評価したいのは複数医療機関からの訪問を認める、という点である。これまで一患者一医療機関が原則であったが、今春から大幅に緩和されるという。在宅医療の裾野を広げるという目的に叶う、画期的な転換であると思う。

 在宅医療への新規参入の最も大きなハードルはなんといっても365日24時間対応であった。働き方改革が議論されている中、一馬力の開業医だけがなぜ365日24時間対応なのか。誰がどう考えても無理に決まっている。講演で「真面目に在宅医療をやると医者のほうが先に死にます」といつも冗談のように言ってきたが、決して冗談ではない。医師の働き方改革の観点からは真反対の業務を義務づけられてきたのだ。ところが今春からは患者さんの病態に合わせて診療所同士が自由に連携して診療できるようになるのだ。

 これは連携型・機能強化型・在宅療養支援診療所の規制緩和の一部でもあるのだろうが、大きなインパクトがあるはずだ。「夜中の往診は無理」というA診療所と「夜中も往診するよ」というB診療所が患者毎に自由に連携していいのだ。B診療所はもしかしたら、C在宅療養支援病院になるかもしれない。地域によれば急性期病院かもしれない。皮膚疾患や眼疾患の管理も無理をしなくてもよくなる。地域によれば地域密着型の慢性期病院が夜間対応で大活躍するかもしれない。在宅医療においても堂々と診診連携できる。A診療所の高齢医師はB診療所の若手医師にバックアップしてもらいながら、長年診てきた患者さんを最期まで診ることが可能となる。

  また訪問看護師の報酬の改定も同じ方向を見ている。24時間対応ができる機能強化型・訪問看護ステーションがA診療所の高齢医師の命を守ることになる。なぜならB診療所の若手医師が夏休みという時もあるからだ。「連携の規制緩和」と「訪問看護ステーション強化」という両面からの担保があってこそ、在宅への新規参入のハードルが大幅に下がるだろう。もちろん不要な連携や過剰な連携などのモラルハザードの担保も必要だ。それが地区医師会の役割だ。適切な連携を指南したり、過剰連携を監視する役割が求められる。

  病院から地域へ、という流れは2040年まで変わらないだろう。ならば、各診療所は身の丈にあった在宅医療における診診連携を模索するしかない。今春の診療報酬改定は在宅医療を競合から協働へと大きく転換させる好契機となる。地元、尼崎市医師会でも今年から医師会の横に「あまつなぎ」を併設した。患者さん個々のニーズを満たす地域連携や市民からの相談を医師会と行政が協働してサポートする機関だ。地域のかかりつけ医にしっかり“つないだ”後は、自由度の高い連携を推進を見守る。地域包括ケア推進には適度な規制緩和が必須だ。あとは良好な関係性構築が肝要だ。地域単位の多職種勉強会のあとは飲みニケーションで腹の見える連携を模索したい。診療場経営は新たなステージに入る。もし競合するとすればこうした連携型診療所VS自前で完結させることができる在宅専門クリニックなのかもしれない。

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以下フランスのパリを視察中の佐々木淳先生のFBから勝手に抜粋する。
とても参考になる内容で、佐々木先生の実績と吸収力がにじみ出ている。


●最短5分で医師が到着! パリの民間往診サービス。
●常時50人の医師がパリ市内を巡回。年間40万件の往診に対応。
●高度な専門性に支えられた150人の医師による自律型組織。

1966年に創設され、以来フランスで50年以上にわたって24時間の往診サービスを
提供する非営利医療機関、SOS-MEDECINS(SOSメドサン)。
 

創設以来発展を続け、現在全仏に63組織を展開、パリだけでも年間40万件の往診に対応、
患者からの往診依頼に平均1時間以内、緊急時は最短5分で対応することも可能というこの組織。
 

■SOSメドサンの往診サービスは初診対応が中心

SOSメドサンの往診サービスは、日本の在宅医療とは異なり、文字通りの「往診」。
対応患者の大部分は初診です。
日本の訪問診療のように継続的・計画的な医学管理がベースにあるわけではなく、
医師たちは、自らのフィジカルアセスメント能力を頼りに、初診患者を相手に診断と治療を行います。
その対象は小児から高齢者まで、社会的課題が中心と思われるケースもあれば、
急性冠疾患やアナフィラキシーショックなどの対応が必要になることもあります。
少ない情報とわずかな診断デバイスだけで最適な対応をしていくためには、
相応の臨床能力が求められるはずです。

■150人の医師団はすべて「アソシエ」
パリのSOSメドサンには150人の医師が「アソシエ」として登録しています。
アソシエとは、その組織のいわば「株主」。雇用される立場ではありません。
NPOのサービスプラットフォームを利用しながら、自分が働きたいときに、働きたいだけ働く、
という自由なワークスタイルです。具体的には、常勤医師として給与をもらうのではなく、
一人で診療をして、診療収入を得ながら、その一部(診療収入の10~12%程度の金額)を
プラットフォーム利用料(コールセンターやシステムなどの組織運営コスト)として組織に支払う、
という形になっています。

勤務形態としてはフリーターに近い形でしょうか。車載の医療材料なども組織から提供されるのではなく、
個々の医師が組織から購入することになります。
アソシエの医師たちは診療を担当する時間帯には無線をONにし、
医療器材や医薬品を搭載した自家用車でパリ市内を流します。
近くで往診の依頼があれば、コールセンターから医師に連絡が入り、医師は患者の自宅に向かいます。
ちなみに、勤務時間中は、コールセンターからの診療依頼を断ること、
患者を選択することなどは原則としてできないとのこと。

■診療品質の管理
往診は訪問診療と同じく、現場ではソロプラクティス。
診療品質の管理が課題になります。
SOSメドサンでもこの部分にかなり力を入れています。

このアソシエになるためには、3年間の試用期間を経なければなりません。
そしてアソシエになった後も、フォーマシオンと呼ばれる独自の生涯教育プログラムに
参加し続けることが求められます。
往診を受けた患者からのフィードバックが直接入ることもあります。

医師たちの間には一切のヒエラルキーがなく、高度な専門性とプロフェッショナル・オートノミー
によって支えられた自律型組織だということがわかりました。
ちなみに大部分のアソシエが、救急専門医または総合診療医+救急認定医。
スマジャ医師自身も元SAMU出身の救急専門医だそうです。
 

■SOSメドサンのコールセンターのしくみ

(1)オペレータ
まずコールセンターに電話がかかってきます。最初の電話をとるのはオペレータ。
患者から基本情報の聴取と基本的な問診を行います。
この問診はトリアージプロトコールを兼ねたエクスパートシステムとなっており、
システムに従って問診を進めると、医師の判断が必要なケースがおのずと明確になります。
(なお、すべてのオペレータは業務に必要な医学知識の講習とテストを受けています)
時にSAMUや消防庁から、SOSメドサンに対応の依頼が入ることもあるそうです。

(2)コールセンター医師
コールセンター内には医師が常駐しており、医師の判断が必要な場合はドクターに電話が回され、
そこで、往診サービスで対応可能なのか、SAMUや救急車による病院受診を指示すべきかを判断します。
搬送や受診が必要な場合には、接続先の確保まで行います。
ただし、スマジャ医師は、トリアージはSAMUの仕事、自分たちの仕事は往診すること、
とはっきりと言い切っておられました。
患者が往診を依頼しているのだから、なるべく往診で対応する、というのが原則だそうです。

(3)ディスパッチャー
往診の依頼があれば、ディスパッチャーが患者宅の近くにいる医師に無線で往診を依頼します。
SOSメドサンのオリジナルの往診管理ソフトは2つの画面で構成されており、
一つは地図上(患者宅と医師の現在の所在地が表示)、もう一つは入ってくるコールの緊急性を判断し、
優先順位をつけて並べていくというもの。

ディスパッチャーは、患者の住所と優先順位、医師の所在地を見ながら、
往診がスムーズに提供されるよう調整をしていきます。
ただ、非常に忙しい時には、優先順位の低いケースは数時間待たせてしまうこともあるとのこと。
そのような場合は、コールセンター医師から体調の悪化がないか、などの状況確認の連絡を入れます。

■市民や医師たちのSOSメドサンに対する評価
政府のキャンペーンなどもあり、救急医療サービスは公共財産である、
という認識が広がっており、SAMUや救急車を簡単に呼ぶべきではない、
という風潮の中、SOSメドサンの往診サービスは、
市民にとって重要な選択肢の1つになっていることは間違いありません。

パリだけで年間40万件というSOSメドサンの対応件数は、東京消防庁の年間全搬送件数の50%に相当。
パリの救急搬送が少ないのは、SAMUのトリアージ機能に加え、代替選択肢としての往診サービスが
充実しているからこそ、ともいえるかもしれません。
SOSメドサンは「セクター1」と呼ばれる保険診療のみを行う医療機関。
混合診療が珍しくないフランスにおいては、かなり「まじめ」な存在です。


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私は、佐々木先生の実況中継は東京の近未来のように思える。
10年後には、佐々木先生らを中心にこうなっているのでは。

問題は、地方や田舎の在宅医療だ。
そもそもフリーター医師がいない。

そうなると、一馬力で頑張るしかない。
私のように、1人で365日24時間。

東京都=パリタイプへ、医師会はあまり関係無し。
田舎=医師会主導のプロトタイプ在宅、なのかな。

ついつい、いろんなことを夢想してしまう。
佐々木先生、情報、ありがとうございます。


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この記事へのコメント

 先週血液検査と診断 本日 胃カメラ検査をして頂きました、以前 産経新聞に膵炎の事を書かれておられました  長年の飲酒でとても心配だったのですが 親切なスタッフの皆様と谷口先生の分かりやすい説明で何とか 無罪放免?! 飲酒は控える=やめる ようにと谷口・豊國 両先生からご指摘 指導戴きました。薬剤師の不摂生にならないように 予防と養生をお客様にこれからも言い続けようと思います。先生も飲み過ぎないようにお気をつけ下さい。^^:

Posted by 薬剤師 井澤康夫 at 2018年03月07日 11:38 | 返信

何かがおかしい…とブツブツ言ってしまうわたしです

この4月の改正で 大きな病院の看護師さまが 退院にあたり 1ヶ月の間に5回の訪問ができるようになった
その間に地域の訪問看護に繋げようという考えかと見受けられる

同行訪問となれば 医療期間側に加算がつくようです
なので こちらの予定も聞かず この日に合わせて来てくださいという連絡がある

こんなことが続いたら 小さなステーションに依頼がきたら
大きな病院に振り回されてしまい 新規の依頼を受けることに躊躇してしまう
ひいては ステーションが潰れてしまう

どの時代も 勢力の弱いところが負けてしまう
ただ 好きな看護がしたいだけなのに…
なんだかね…

Posted by 宮ちゃん at 2018年06月28日 11:26 | 返信

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