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ケアマネさんの涙

2018年04月12日(木)

外来でずっと診ていた認知症の患者さんがいた。
いつも笑顔で調子が良く穏やかさを保っていた。
しかしいつの間にか、来院されなくなった。
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家族が「もっと良くしよう」と他の医療機関を受診されたのだ。
要は浮気をされたのだが、フリーアクセスなので患者の自由だ。

大病院や専門医をグルグル周り、高用量の抗認知症薬や抗精神病薬を
処方された上に、薬のアレルギーで皮膚が真っ赤に腫れあがっていた。

今は、皮膚科にも通ってアレルギーに関する様々な検査を自費で受けさせられて
抗認知症薬やいくつかの薬が陽性だったのでさらなる検査が必要、と言われたと。


半年ぶりに、私の目の前に現れた患者さんは、以前とは全くの別人であった。
笑顔は消え、表情は険しく、足腰もフラフラで「どうしたの?」という感じ。

家族は、申し訳なさそうに「すみません」と小声で謝られた。
私は「いいですよ、よくあることだからね」とサラッと流す。


歩行がおぼつかないので、在宅で診ることにした。
家の方がゆっくり診られるので、翌日に訪問した。


アルツハイマー型認知症に前頭側頭型認知症(FTD)が合併していた。
FTDのなかでも「意味性認知症」がメインで、周辺症状が著明だった。

・言葉がまったく通じず、意思疎通ができない。
・奥さんに暴力を振るう。
・入れ歯をトイレに捨てる・・・・

半年前まであれほど、穏やかだったのに・・・


でもこれは周辺症状ではなく薬の副作用だ。


私は抗認知症薬を含む全ての薬を中止し翌日ウインタミン10mgを持参。
アレルギーの検査に行く必要がないことも説明すると、家族は安堵された。

3日後、担当のケアマネさんからFAXが届いたので、いつものように
「ケア会議が必要。私は次は○曜日の○時に訪問します」、とだけ書いた。

1週間後に訪問すると、その人はケアマネさんと散歩に出ていて家族のみ。
歩けなかったのに歩けるようになり、しかも満面の笑みで帰ってこられた。

初対面のそのケアマネさんは、私の顔を見るなり睨みつけてこう言ってきた。
「長尾先生はケアマネが嫌いなんですね。悪口ばかり言っているでしょう」。

私は「そうじゃないですよ。ケアマネさんの味方ですよ。ただし悪いケアマネ
さんにはキツイこと言いますけど。それは勉強して欲しいと思うから」と返答。

そのケアマネさんに認知症に関する初歩的な質問をしたがほとんど知らなかった。
そこで、この人の病状、抗認知症薬の中止、困った症状への対処法等を説明した。

1時間近く話すうちにそのケアマネさんの「偏見」が徐々に薄れてきたと感じた。
私の認知症に関するいろんな説明を疑いながらも少しは信じてくれそうな気配だ。

患者さんが、「まあ、仲良くしてや!」と笑顔で中に入ってくれる。

先週は、ゼロ点だった意味性認知症のテストを再度してみた。

「右手で左肩をたたいて」と言うと、左手を挙げたので、「惜しい!」と。

「今、春か秋か?」と聞くと、即座に「秋!」と言うので、また「惜しい!」。

「じゃあ、今朝か夕方か?」と聞くと「朝!」なので、これも「惜しい!」。

こんな問答を繰り返すうちに笑顔が戻り、冗談を言い始めた。
わずか10分後には「右手」と「左肩」が分かるようになった。

うーん、先週の意味性認知症は半分以上治っているじゃないか。
これも薬害だったのか、いや私の誤診だったのか。

家族は「見違えるように穏やかになりました」と大喜び。
そう、極く少量のウインタミンが丁度あっているからだ。

ケアマネさんがいろいろと質問してきたので、いろいろと丁寧に説明をした。
そのケアマネさんは、1冊の大学ノートにその人の記録を詳細に書いていた。


半年前に浮気した日から今日までのその患者さんだけの「ケアマネ日記」を
詳細につけておられたので「本当に熱心なケアマネさんやなあ」と感心した。

「抗認知症薬の適量処方を実現する会」の活動も説明して関東支部は
ケアマネさんがリーダーであることを教えると、興味を持ってくれた。

「認知症はちゃんとした医療をすれば、少なくとも害は与えないはず」
「現にこの人はたった1週間で失った半年間をほぼ取り戻しているし」。

そして
「私は誰から嫌われても悪口を言われてもいい。
 目の前の患者さんさえハッピーになればね」と、エエカッコも言うてみた。

すると、そのケアマネさんは「それは私も同じです」と即、返してきた。

「ええ?」

「私も嫌われてもいいんです。利用者さんが幸せになるならば。
 でも、すぐに思ったことを言ってしまうのが欠点なんです」と。

私は「じゃあ、俺と同じやん。日本中にはこの人のように薬害にあっている認知症の人が
何十万人もいるんや。それを発見していい医師に繋げることができるのはケアマネや」と。

「良かったら一緒に闘ってくれんか?」と
手持ちの勉強会のチラシなどを渡した。

そのケアマネさんの眼の奥がうるんでいた。
車に乗り込む私の眼も思わず少しうるんだ。

「こんなケアマネさんも、おるんや・・・」

初対面のケアマネさんと心が通じた、と思った。(私の妄想かも)
でもそんなご縁をい頂いたのはその認知症の人のおかげでもある。

そして、半年間の浮気と多大なる浮気の代償があったからこそ、
長尾の言うことやっていることを、改めて信じてもらえるのだ。

以下、決してお世辞ではない。

利用者さんをハッピーにすることに熱心なケアマネさんが、大好きだ。
そして「ケアマネさんこそが日本の認知症在宅」の変革の主役である。




PS)
夜の診療の後は、消化器病研究会の世話人会に出席。
その後、看取り期の患者さんを往診し、家族に説明。

その後、医師会の認知症対応委員会に、参加した。
求められたので言いたいことの1%だけ発言した。

尼崎には「認知症サポート医」が18名いるが
あまり活動していない現状との話題になった。

私は「認知症サポート医ではない」ではなく「サポート医にはなれない」
と発言したら、行政の方たちが驚かれていたので、私のほうが驚いた。

認知症サポート医はどんな医師でも講習を受ければなれるのではない。
定員枠があるので(尼崎は1回に3人)理事クラスでないとなれない。

申し込んでも、理事やコネが優先するので門前払い。
要は名誉職ないし医者によっては一種の利権である。

私のような一介の町医者には、講習を受ける機会すら与えてもらえない。
新オレンジプランのこうした矛盾は大臣レクでも直接説明したが無視だ。

連日の国会質疑を聞いていても分かるように、当たり前のことが
まったく当たり前でないのが日本だからどうすることもできない。

まあ、そんなややこしい資格や肩書など無くてもいいし、診療報酬も不要だ。
眼の前で苦しんでいる人を薬害から救い出して笑顔にできたら医者の本望だ。

その後、次の新規の若い在宅患者さんの初回訪問へ。
もう深夜に近い時間なので、ついつい話し込んでしまい、また遅くなった。


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※本ブログは転載・引用を固くお断りいたします。

この記事へのコメント

今朝、出勤前にこのブログ読んでわたしも、うるうるしました。わたしも一緒に戦いたいです。でも、どうやって戦えばいいのか。来月の尼崎の講演に行かせていただきます!!

Posted by ふーちゃん at 2018年04月12日 09:06 | 返信

いつもブログ拝見させていただいております。
地域医療に対する先生の行動力に敬意を表します。
ケアマネが利用者の為に涙するのなら、介護の根本を変える努力をすべきです。
施設介護から在宅介護への転換は利用者の為です、その為の努力をケアマネはすべきです。

Posted by 和賀 at 2018年04月14日 06:57 | 返信

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