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アルコール依存症の父親にどう向き合う

2018年04月16日(月)

「きらめきプラス」5月号には、「アルコール依存症の父親」で書いた。
ポイントは「諦めないこと」や「周囲に助けを求めること」ではないか。→こちら
難問だけど常にそんな在宅患者さんが何人かおられ、悪戦苦闘している。


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きらめきプラス5月号   盛岡に住んでいる42歳の男性から。
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現在69歳になる父は母と二人で北海道の帯広で暮らしております。
中学校の教師だった父は昔からお酒が好きな人でしたが、退職後ますます酒量が増え、今ではほとんどの時間を家でテレビを見ながらお酒を飲んで過ごしている状況です。先日母から電話あり、いやがる父を母が病院に連れて行き、毎日5合以上の日本酒を飲んでいること、食事の量が減り思う様に話せないことを医師に伝え、CT検査などをしてもらったが、やはり脳が萎縮していると告げられということ。そして、アルコール依存症でお酒を減らすしかないと医師から言われても、父はまったく減らす気持ちはないようで診察後も普段通りお酒を飲み続けていると聞きました。電話で少しお酒を控えるようにと父に話してみたのですが、「うるさい、お前に関係ない」と言うだけで、一向にお酒を控える様子もみえません。酔っても母に暴力を振るったり周囲にご迷惑をかけるようなことはないと聞いていますが、父の体や辛い思いをしている母のこれからのことを考えると心配でたまりません。何かアドバイスを頂ければ幸いです。宜しくお願いします。
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A)
大変ですね。同じような人が私の周囲にも何人かおられます。そもそも私はアルコール依存症の専門家ではありませんが、以下、あくまで個人的な経験からお答えさせて頂きます。
 

世の中には沢山の依存症があります。ニコチン、薬物、覚せい剤、ギャンブル、セックス、そしてアルコール依存症。一般にアルコール依存症の治療は容易ではありません。治療というからには本人に「依存症を治す」という意思があることが前提となりますが、どうやら今は無さそうですね。そうした場合、まずは医療につなげること自体が困難な作業になります。そもそも医療機関に連れていけない、薬を飲まない、などお手上げの人が日本中におられます。アルコールに依存した状態が長期間続くと徐々に脳は委縮して認知機能が低下します。ビタミンB1などのビタミンが不足することもあります。血中ビタミン濃度を測定したうえ、不足しているビタミンを補充するだけで認知機能や運動機能が劇的に改善することもあります。アルコール依存症に伴う認知症は、治る、あるいは治せる認知症であることが多くあります。
 

私からのアドバイスとしては、お父さんには「健康診断を受けましょう」と説得して、お父さまとウマが合いそうな医者に連れていきましょう。少し飲兵衛タイプの町医者を探して事前に打ち合わせをしておきましょう。そして医者の腕とは、目の前に来られた患者さんを「いかにその気にさせるか」です。イヤイヤ連れて来られた人を喜んで病院に来る人に変える魔法のようなコミュニケーションスキルを持った医者は少ないかもしれませんが、各地に必ずいます。帯広にも必ずいますからまずは探してください。本人に禁酒の意思が出てきたら、嫌酒薬を用いた禁酒治療を外来通院で開始します。都市部にはアルコール依存症を専門に扱っている医療機関もあります。そこにつなげることも視野に入れましょう。また断酒会組織が全国各地にあるのでそこに相談するのもいいでしょう。依存症同志がお互いに励まし合うことで禁酒の成功率が高まります。
 

また近くの保健所に行き、地域の保健師さんに相談してください。地域には医師以外に保健師、看護師、PSWさんなどのスタッフもいるので、そこを窓口にしてアルコール依存症に対応している医師や医療機関を紹介してもらうといいでしょう。これは一般的には精神科の領域です。しかし地域によっては内科系の医師が対応している場合もあります。また保健所の保健師さんに家に訪問してもらいましょう。町医者の私にそんな相談があれば、その日のうちに訪問します。2~3回私から訪問して雑談をします。まずは人間的な信頼関係を構築しないと依存症治療につなげることができません。いずれにせよ、禁酒を目指すか、減酒を目指すか、酒に関しては諦めて様子を見るのか、のどれかになるのでしょう。諦めて放置はよくありません。私の経験では、なんとか仲良くなった結果、お父さんと同様なケースで精神科病院に半年間ほど入院して完全禁酒できた人が何人かいました。完全禁酒できない人は休肝日を設けるなどの、減酒で妥協しています。あるいは外来通院で嫌酒薬を飲みながら1日一合だけと決めて、居酒屋の親父として働き続けている人もいます。お父さまはまだ69歳なので何らからの禁酒治療にチャレンジする意義は大きいかと思います。
 

ところでお酒は自分で買ってくるのでしょうか?家族の誰かがお父さまに命じられるまま買いに行くのでしょうか?時々経験するのは、誰かが「可哀そうだ」と酒を買い与えているケースです。このような場合は、買い与える側に課題があることもあります。そして時には本人ではなく買い与える家族が入院対象になる場合も、最近のアルコール依存症の治療においてはあることは知っておいてください。お酒に依存する土台に家族関係が大きく絡んでいることがあります。だから依存症の専門家に一度は現場を診てもらいアドバイスを仰ぐべきです。依存症の研修を受けた上手なケアマネージャーから家に入ってもらう場合もあります。
 

以上のような努力をしても上手くいかない場合も現実にはあります。今は穏やかでも近い将来必ずアルコール依存症に伴う様々な困った症状が出てきます。医療的には肝硬変や肝臓がんの合併や栄養不足、介護的には不潔や排泄の問題なのです。吐血や発熱や意識障害などの急変もあり得ます。救急車を呼んでもアルコール臭のする人は一般病院には入院させてもらえません。アルコール専門病院しか入院を受け付けてもらえないのが現実です。最悪、禁酒を諦めて様子を診ることになったとしても、最低限必要な医療や介護が受けられる体制を準備しておくべきです。そのためにアルコール依存症に理解がある往診もしてくれる“かかりつけ医”を探しておきましょう。またさまざまな介護サービスを受ける上にも理解ある“ケアマネージャー”も必ず探しておきましょう。禁酒を諦めて数年間、在宅療養を支えた結果、自宅で看取った経験もあります。みんなで万策を期しても禁酒ができなかったケースですが、本人は最期まで満足そうな顔をしていたので、「本人は満足だったよね」と家族と話しました。最悪、死に至ることになってもこのように納得できるプロセスを踏んでおくべきだと思います。
 

rアルコール依存症に代表される依存症の人は都会にも地方にもいます。日本のみならず世界中、どこにもいます。社会的に孤立して経済的に困窮した結果、孤独死する人もいます。私の周囲にもいます。お金が無いため在宅医療を受けることもできずに、最期は「孤独死」として警察や警察医に看取られているのです。あるいは法医学の解剖台の上で切り刻まれるのです。こうした事態に至るまでの過程を振り返ると、必ず周囲が介入できるポイントがいくつもあります。医療や介護や福祉が無力な場合、民生委員さんに頼るしかないことも現実にはあるでしょう。大切なことは諦めないこと。周囲に助けを求めることです。以上述べたことを参考にして、まずはお父さまが心を開く人をみつけてください。

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