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在宅医療に参入する人、撤退する人
2018年05月04日(金)
医療タイムス5月号は「在宅医療に参入する人、撤退する人」で書いた。→こちら
年々、診療報酬規則が複雑化するので、撤退をする開業医が増えている。
5~10年後には、「介護医療院」が主役となる日が来るに違いない。
年々、診療報酬規則が複雑化するので、撤退をする開業医が増えている。
5~10年後には、「介護医療院」が主役となる日が来るに違いない。
医療タイムス5月号 在宅医療に参入する人、撤退する人
強力な在宅誘導政策が10年以上続いている。今春の診療報酬改訂は急性期病院には厳しい一方、開業医には「かかりつけ医機能」という名目で引き続き在宅誘導が続いている。特筆すべきは医療機関同志の連携のみならず、複数の医療機関で一人の患者さんを診ることが認められたことだ。医療の高度化や専門分化や患者・家族のニーズに対応した形になっている。ある介護施設では、1人の入所者さんに対して内科、皮膚科、精神科、歯科など3~4軒の医療機関が対応することが施設のステイタスになっているという。あるいは末期がんへの在宅酸素が認められたこともあり、多くの看取りが酸素吸入下で行われている。一見、良さげな話かもしれないが、連携はより複雑化し「管」は増える一方である。
極端な言い方をすれば、在宅医療に従事する喜びとはプライマリケアや総合診療、あるいは家庭医療の楽しさであった。生活視点が濃い医療は文句なしに楽しい。しかし今や「総合」なんて言葉は、「連携」の掛け声の波に打ち消されそうである。総合診療には30年以上前から常にアゲンストの風が吹き続け、年々風力が増大している。今回の診療報酬改定の中味を聞いて「在宅医療を辞める」決心をした老医が何人かおられた。制度が複雑すぎてもはやついて行けない、と言う。来月還暦を迎える私自身にもこのアゲンストの風はこたえる。医療と介護の連携をいくら謳っても、まずは医療機関内や訪問看護師との連携だけでも結構な仕事量である。簡単なことでも形式的な書類の作成ばかりに追われる制度設計。そろそろ潮時かな、と思う人の気持ちがよく理解できる。
一方、新時代の「かかりつけ医機能」に順応できる医師は若い世代である。「今から在宅医療に新規参入したいのですが何から始めたらいいのでしょうか」という質問を時々受ける。「そうねえ、ICTによる多職種連携ができないと無理かもね」という言葉で逃げているが、今後の開業医は連携が上手くないといくら腕が良くても生き残れないだろう。しかし医師はそもそもコミュニケーションに関する教育を受けていない。学生時代のクラブ活動や医師になってからの社会活動などを通じてコミュニケーションとICTのスキルとに長けた医師こそが名医になれる時代になってきた。
このように在宅医療の現場はますます「病院化」しつつある。皮肉な言い方をすれば在宅医療の本質とは真反対の方角に政策誘導されている、と感じるのは私だけか。1人の患者さんに病気別に何人もの「○○専門医」がついて協働して診るのであれば、病院と同じことである。それならば良質な慢性期病院や新設された介護医療院のほうがずっと家族のニーズにあっている。本人が「これでいい」と言っても家族が許さないのが在宅医療や総合診療の悩みである。特に急増する認知症の在宅医療に関してはまだほぼ手つかず状態だと言っていい。在宅でも施設でも無理という認知症の人を誰がどこで看るのか。精神病院なのか、介護医療院なのか。いくらACP時代とはいえ、成年後見や医療後見抜きでは無理であろう。しかし肝心の法整備が追いついていない。地域包括ケアという言葉が益々躍るが、自助、互助頼りだけでは自ずと限界がある。問題山積の中での在宅医療である。新に参入する人は撤退する人の意見をよく聞いてから、傾向と対策を練るべきだろう。
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PS)
この号には先日のエンドオブライフケア協会3周年記念イベント
のレポート記事も載っているので、興味がある人は読んで欲しい。→こちら
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この記事へのコメント
初めまして。
先生のブログで励まされたり、勉強させて頂いております。
介護家族の立場です。
エンドオブライフケア協会のシンポジウムが気になっていました。
記事をアップして下さり本当にありがとうございます。
在宅医療に関わる医師が「喜び・楽しさ」を持ち合わせて下さることは、家族にとって最期までお付き合いいただける、極上の出会いだと思います。
今後想定される、認知症を患う人の増加と看取り難民をどうするのかという視点は、スタートラインにさえ立っていないのが地域社会の現状だと思います。深く考えされられました。
Posted by あんこ at 2018年05月04日 04:20 | 返信
介護の難民になっちゃうのかなって考えるとますます認知症になるのが怖くなりますね。認知症の利用者が他の病気で入院して、退院しても、元のデイサービスには戻れない邪魔ものがいなくなった、腐ったミカンが一つあると他のミカンまで腐るそうです。デイサービスの管理者はどうしても排除したいから、ケアマネを攻撃します。一日も早く在宅に戻りたいとリハビリに励む利用者が元のデイサービスに戻れません。それは、人手や経験不足が原因なんでしょうけど、選ぶってなんでしょう。みんなで排除するってなんでしょう。見守りすらできないデイサービスに頭下げて戻ってもらいたくはないです。デイサービスの管理者さん、威張る前にもう一度現場戻って出直してこいと言いたい。わたしは絶対に負けません。
Posted by ふーちゃん at 2018年05月06日 07:08 | 返信
総合医ではなく専門医による在宅医療にシフトせざるをえない理由を考えてみました。
1)総合医(在宅医)と名乗っているが、実体は総合的に診れていない医者が多い
2)総合医と言っても全医療分野を知識と技術を完璧に網羅しきれるだけのスーパーな医者は少ない
3)この10~20年の開業医の大半が元専門医なので、専門医連携のほうが参入しやすい
4)患者側の専門医信仰が根強いので、在宅なのに大病院の専門医の外来に通いたがる患者が多い
5)この20年で医療のレベルが急速に上がりすぎたので、1人の総合医でカバーするのは無理
医療の高度化に比例して、患者側の要求が天井知らずとなり、医療的に終末期になっても、よりベストの医療を強く求める傾向にあるので、かかりつけ医から専門医にシフトせざるをえないのではないか。
おそらく医療が高度化していない50年前なら誰でも参入できたと思いますが、今はハードル高すぎ。
Posted by マッドネス at 2018年05月08日 10:30 | 返信
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