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両親の本音を「忖度」する
2018年05月16日(水)
今回の質問は、米子市にお住まいになっている33歳の男性からいただきました。
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福岡に住んでいる、将来の両親の介護についてアドバイスをいただければと思い、ご連絡させていただきました。
父(61歳)はもともと足に障害をもっている為、車椅子の生活で時計修理工として働き、私と弟を育ててくれました。母(59歳)は今も家事をしながら父の足代わりとなって父の仕事を手伝っています。二人とも、特に大きな病気をしたこともなく、今も元気で生活しているので、まだ介護について考えるのは早いのかも知れませんが、私も弟も結婚して他県に住んでいるので、いざとなって慌てることがないように少しでも何らかの準備をしておこうと考えています。
先日、あらためて弟と話し合い、二人で今から介護の準備しておこうとを決め、そのことを両親に伝えたのですが「あんたたちの世話にならないから、心配しなくても大丈夫」と笑うだけで、二人の希望や考えを聞くことはできませんでした。
お金の面や心の面、心構えなど、これからどのような準備をしたらよいのでしょうか。
介護の知識もなくまた介護の大変さも何も分かっていないので、漠然とした質問となってしまい申し訳ございませんが、宜しくお願い致します。
A)なんと親孝行な息子たちでしょうか。まだ33歳というと自分自身の生活や仕事で目いっぱいだと思うのですが、親の介護の心構えまでしておこうとは、どれほど深い両親の愛情を受けてこられたのでしょう。感動しました。米子と福岡と少し離れていますが、昔ながらの家族のように心はちゃんと繋がっている親子だなあ、と微笑ましくなりました。またこんな子供たちの親ならきっと「子供の世話にはならないから心配せんでいい」と言うでしょうね。
さて、心構えへのアドバイスとしてはまづは医療保険・介護保険について社会常識としてよく知っておくことです。医療保険は58歳、介護保険は18歳ですが、歴史も文化も全く異なる制度です。医療と介護の二本立てで高齢者の療養生活が支えられています。両者とも保険料+税金+自己負担で成り立っています。医療保険は誰でもどこでもフリーアクセスですが、介護保険は介護認定を受けた上でケアマネージャーを通してしかサービスを受けることができません。たったこれだけのことですが、大半の大人はほとんど知りません。学校で習わないからです。サラリーマンならば、毎月のお給料から何万円かの健康保険料だけでなく40歳以上は何千円かの介護保険料を天引きされています。2つの保険料がなぜそんな額になるのか、誰が決めてどのように使われているのか調べてください。実はかなり複雑な仕組みになっています。イザ介護が必要になってから大慌てする人が多いのですが、普段からある程度は知っておきましょう。
次に様々な療養形態についても知っておいてください。漠然と在宅介護か施設介護かと思われがちですが決してそんな単純ではありません。両者のハイブリッドのような療養形態がいくつかあります。デイサービスやショートステイ、小規模多機能やお泊りデイ。介護施設ならば、特養、老健、介護療養病床、そして新設されたばかりの介護医療院、老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など様々な選択肢があります。自己負担額もまさにピンキリです。
医者選びも重要です。介護認定を受けるには主治医意見書が必要です。病院の医師も書きますが、できれば近くにもかかりつけ医をもってその医師に書いてもらったほうがなにかといいでしょう。かかりつけ医とは、様々な疾患を総合的に診て必要となれば往診や在宅医療も提供してくれる医師のことです。今は元気ということですが、風邪をひいたときなどに近所の親切そうな開業医を探しておきましょう。
現在、200床以下の病院もかかりつけ医になれます。私は何冊か「医者選び」の本を書いているので賢い医者選びを知っておいてください。在宅医療に関しては週刊朝日ムック「さいごまで自宅でみてくれるいいお医者さん」を是非買ってください。私が監修しました。たった980円で貴方が欲しい情報を全て得ることができる大変有意義な冊子です。一方、残念ならが「いいケアマネ選び」や「いい看護師選び」という本はまだこの世に存在しません。それだけ難しいテーマなのです。しかしいつかは書いてみたいと思っています。
さらに「やめどき」と「平穏死」という2つのキーワードについて勉強しておいてください。沢山の薬を飲んでいる人がいますが、多くの薬は期間限定で“やめどき”があります。たとえば抗がん剤を最期まで飲んだ人は、家族は後悔しています。いい時期に辞めて勝ち逃げをすることを勧めています。拙書「抗がん剤10のやめどき」や「薬のやめどき」(いずれもブックマン社)を参考にしてください。これらの本はアジアの国々でも翻訳本が出ています。高齢者介護の問題は、アジアに共通する大きなテーマだからです。
私は「平穏死10の条件」など、「平穏死」と題した本を数冊書いています。最近では「痛くない死に方」など本人向けに書いていたのですが、最近の高齢者はもう充分に終活をしている方が増えてきました。実態としては、親の穏やかな最期を邪魔しているのは家族、子供たちです。日本は先進国で唯一、本人の意思を尊重する法律がありません。そのために家族の意思が絶対的に強く、医師はそれに逆らうと訴えられる可能性があります。また平穏死とは一言で言うと「枯れる」ことなのですが、情けないことにそれを知らない病院医療者が大半です。終末期の脱水は悪ではなく「友」なのですが、2時間かけて説明しても理解してもらえません。
平穏死を知っている医師はいまだ1割程度でしょうか。看取りの法律である医師法20条を正しく知っている医師はもっと少ないのが現状です。毎週、医師にそんなことを教えています。最期に寄り添ってくれるのは実際には訪問看護師さんですが、死亡診断書を書けるのは医師しかいません。だから終末期医療や緩和医療に実績のある医師を知っておくべきでしょう。がんでもがん以外でも様々な痛みに対して緩和ケアが受けられますが、医療用麻薬を処方できるのも医師だけです。従って、制度の理解とともに福岡県なら福岡県の地元で看取りの実績のある医師や看護師、そしてケアマネに直接質問してみるのもいいでしょう。全国各地の医師会や自治体が必ず在宅療養に関する市民フォーラムを開催しています。
最後にお願いしたいことはリビングウイルの作成です。穏やかな最期を叶えるためには、リビングウイルがあるととても助かります。自治体や病院・施設が作成しているところもありますが、一般財団法人日本尊厳死協会なら年会費2000円でリビングウイルを作成・管理できます。会報が送られてくるので勉強もできます。この機会に両親ともども子供さんも是非一緒に入会してください。リビングウイルは15歳から作成できるので10代の会員さんもおられます。そして福岡に帰った時には、是非、両親の将来についての考えを聞いておいてください。今は「心配はかけない」と言っていても、急病や事故や認知症になった時には、子供が意思決定することになります。大好きな両親の想いを叶えるためにはまだ元気なうちから両親の本音を上手に聞き出しておき、イザという時にはその意思を親の「尊厳」として上手に「忖度」してあげてください。
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この記事へのコメント
福岡は過剰医療盛んな地域という印象があります。
特に学齢期の「はみ出し子供」つまり、虐めっ子、虐められっ子、登校拒否、騒がしい、落ち着きがない、教師の言うことをきかない etc.など、学校側が手を焼く学童に対する「子供狩り」が盛んだ、とのこと。子供を狩って捕まえて、どうするのか、というと「医療につなげる」のです。児童精神科なる分野がある、というか作られたそうで、そういった医療機関を受診させて、情緒不安定、気分障害、注意欠陥多動性障害、うつ病、発達障害、などの「病名」をつけて「おとなしくなるオクスリ」を飲ませる。すると、学校側はラクチン。
九州北部と大阪は特にこの傾向が強いみたい。
・・・ということは、認知症に対する医療も同様・・・・
どんどん「病気」にしてオクスリを飲ませる。
足に障害ある御父上ということは、すでに長年、医者にかかっておられると読めます。その医師が、脳を破壊するクスリを使わない「まともな」医師であることを祈っています。
クスリを処方されたら、処方箋は受け取るが、しばらくは飲まずに様子をみることも一つの方法です。クスリは飲んでも飲まなくても同じだったり、飲むと余計に具合が悪くなる場合もある。
ネットで調べたり、複数の薬局で聞いて飲むべきか否か、よく考えることです。困ったら長尾クリニックを受診して長尾先生の意見を聞いてください。
Posted by 匿名 at 2018年05月18日 04:59 | 返信
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