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救命センターの悲鳴

2018年06月02日(土)

とりあえず、以下の2つの新聞記事を読んで欲しい。
救命センターも患者さんも現場はこれほど悩んでいるのに、
内閣府と日本救急医学会はリビングウイルを否定している。
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クローズアップ2018:
延命治療中止 医師葛藤 過酷な判断

2018年5月31日 (木)   配信 毎日新聞社
 

  意識不明や認知症で、意思疎通ができない患者を受け入れる救命救急の現場。患者の意思確認を短時間で行うことは困難を極め、救急医は日々、過酷な判断を迫られている。国は今年3月に終末期医療の指針を初改定した。救命以外の現場でも延命治療取りやめの動きが広がるが、尊厳ある最期の迎え方を模索する医師らの葛藤は続いている。【茶谷亮、堀井恵里子】

 ◇患者家族の心も救う

 全国最多の年間1万3000人超の救急搬送者を受け入れる湘南鎌倉総合病院(神奈川県鎌倉市)の救命救急センター。1日40台近い救急車が滑り込み、待ち受ける医師は死と隣り合わせの患者の治療に追われる。6割以上が高齢者だ。

 「すごいスピードで高齢化の波が押し寄せている」。センター長で医師の大淵尚さん(54)の表情は険しい。回復が見込めない終末期患者の搬送も多く、延命治療を取りやめる機会が増えた。昨年中に取りやめた患者は約150人に上り、全員が高齢者だった。

 「じいちゃんは『延命を望まない』と言っていた。治療はやめてください」。近年は患者の回復が見込める場合でも、こんな申し出をする家族も少なくないという。大淵さんは「全てが医者に任されていた時代と違う。今はどんな治療でも家族の同意が必要になるが、わずかな時間で動転する家族と信頼関係を築くのは難しい」と漏らす。

 関東地方の別の救急医は数年前、耳を疑う相談を持ちかけられた。自殺を図り、心肺停止の状態で運ばれてきた男性の家族が、「死因は肺炎などの合併症ということにして、もう殺してくれ」と言うのだ。家族は家を新築したばかりで、多額のローンを抱えていた。自殺になれば、男性に掛けられた保険金が支払われないと懇願されたが、断った。

 家族が経済的な思惑を優先しすぎていないかも見極める必要がある。この救急医は「終末期の意思確認に関する教育なんて受けていないのに、『現場で判断しろ』と言われる。葛藤の連続だ」と悩む。

 国や各医学会が公表する指針には、延命治療の中止が認められる基準が詳細に示されているわけではない。「指針に頼らず、医師が患者や家族と向き合って判断していくしかない」。大淵さんはそう考える。

 大淵さんは4年前、重症肺炎で意識不明に陥った高齢女性の人工呼吸器を、家族と話し合って取り外した経験がある。女性はこのセンターに何度も搬送されていた。

 呼吸器の取り外し行為は、過去に北海道や富山の病院で医師が刑事責任を問われかけ、その懸念から今でも慎重な医療機関が多い。呼吸器を外せば患者は短時間で亡くなるため、医師の精神的な負担が大きいとされる。それでも、大淵さんは呼吸器を外すことも選択肢から外さない。毎日新聞のアンケートに対しても、「みとりを積極的に行うべきだ」「法的に責任を問われる可能性がある」など、各病院の意見は割れた。

 高齢化が進む中、無理に機械で延命される患者は苦しみ、介護を迫られる家族も経済的な重荷を背負わないか。「患者家族の心を救うのも医療のはずだ」。大淵さんは自らの信念や倫理観を信じるが、正解はどこにもない。

 治療の取りやめも決断し、「みとり」も担うようになった救急医。誰にも最期が訪れるからこそ訴える。「自分は、家族は、どう生きたいのか。全ての人に考えてほしい」
 

 ◇改定指針、現場任せ

 厚生労働省が2007年に策定した終末期医療の指針は、医療側を「規制」する意味合いが強かった。延命治療の取りやめは患者本人の決定が基本だとし、医師や看護師など多職種によるチームで判断することを柱としていた。

 その後の10年あまりで社会状況は変化し、患者にとって「尊厳ある最期」をいかに迎えるかという観点で終末期医療のあり方が議論されるようになった。厚労省の17年度の調査では、心臓や呼吸が止まった場合に、心臓マッサージや人工呼吸器などを望まない国民は7割に上っており、各医学会は既に独自の指針を策定している。終末期には延命治療が必ずしも患者のためにならないとの考え方があるからだ。年間の死者数は40年には168万人にまで増える見通しで、医療機関が延命治療に関する判断を迫られるケースは今後も増えると予想される。

 厚労省は終末期医療の実態は把握していないが、17年6月に日本透析医学会で発表された調査結果では、回答した人工透析施設の47%が終末期患者らへの透析をしなかった経験がある。毎日新聞が政令市などの全国74消防機関から回答を得た調査では、うち16機関で心肺蘇生を中止した実例があった。延命治療取りやめは、救命救急センター以外の医療現場でも広がっているとみられる。

 厚労省が3月末に指針を改定し、患者と家族、医師らに繰り返し話し合うよう求めたのは、延命治療の取りやめの判断はそれぞれにとって重いためだ。新指針では、話し合いの結果を文書に残す必要性も強調した。4月に改定された診療報酬は、みとりなどの報酬算定要件に「指針を踏まえた対応」を追加し、医療機関に取り組みを促してもいる。

 ただ、延命を取りやめて患者が死亡した場合、刑事責任を問われる可能性については、指針の「解説編」で「法的側面は引き続き検討する必要がある」としているのみ。尊厳死を認める議員立法の動きも中断しており、医療側が懸念をぬぐえない要因になっている。


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縮む日本の先に:最期の選択/1 
「人工呼吸器・胃ろうやめて」
「意思表明書」が支えに 
夫が残した優しさ
 2018年5月31日 (木)配信 毎日新聞社

縮む日本の先に:最期の選択/1 「人工呼吸器・胃ろうやめて」 「意思表明書」が支えに 夫が残した優しさ

 

 

 一生懸命生きてきました。人生が終わるとしても決して悔いはありません。終末期で意識不明になれば、人工呼吸器はつけず、栄養補給や点滴もやめてください――。

 千葉県松戸市の五十嵐靖夫さんが生前に書き残した延命治療に関する「意思表明書」が、後に妻みさ代さん(68)を救うことになる。

 2016年10月。当時72歳だった靖夫さんはジョギング中に心筋梗塞(こうそく)で倒れ、市立総合医療センターに運ばれた。みさ代さんが駆けつけると、病気知らずだった夫の顔が別人のようにむくみ、人工呼吸器がつけられていた。心肺停止の時間が長く、低酸素脳症の影響で意識不明になった。

 「延命のことを書いたよ」。回復への希望と絶望が交錯する中、元気だった頃に何気なく口にした夫の言葉を思い出し、書斎の戸棚の引き出しから表明書を探し出した。

 お見合い結婚で、娘2人を授かった。配管の設計者だった靖夫さんは、単身赴任や出張で全国を渡り歩き、家を空けることが多かった。それでも、休日には娘をたこ揚げやスケートに連れ出し、赴任先から近況をつづった妻への手紙にも「マイ・ラブ」と添えるほど家族思いだった。

 みさ代さんの両親が営む会社を清算する際、靖夫さんは保証人として多額の負債を背負った。苦労をかけた夫の思いが込められた表明書だからこそ胸にしみた。一文字ずつ目で追うと、聞き慣れた低い声で夫が読み上げているような気がして、むせび泣いた。

 「まだ一緒にいたい」。でも、たんの吸引時に反射的に体をのけぞらせる夫が苦しんでいるように見えてしまう。夫の願いをかなえるしかないと決め、みさ代さんは自らの気持ちを抑え込んだ。

 病院の救命救急センター長を務める村田希吉さん(48)も迷った。数日で自発呼吸が戻ったからだ。胃に穴を開けて栄養を管から送る「胃ろう」などで延命させる選択もあり、すぐには結論が出せなかった。ただ、表明書には医師らへの強い思いも記されている。「医療スタッフの方には心から感謝します。申し訳ありませんが、どうか私の意思を尊重してください」。胃ろうについては「絶対しないで」と強調されていた。

 搬送10日後に改めて脳波を診たが意識が戻る可能性は低かった。延命治療の取りやめが倫理的にどこまで許されるのか基準はないが、「これほどまでにまっすぐな患者の意思と家族の思いがある」。村田さんは、みさ代さんの気持ちを受け入れた。

 治療は1日100ミリリットルの水分補給だけにとどめ、みとりに入った。やせ細る夫の手を自分の手に何度も重ね、別れを惜しんだ。穏やかな表情だった。倒れて25日後、靖夫さんは息を引き取った。

 歌謡曲が好きだった靖夫さん。「愛の終着駅」「舟唄」を葬儀で流すと、みさ代さんは何度もおえつし、あふれる涙を止められなかった。「ありがとう。私も大好きだよ」。夫が赴任先からくれたラブレターの返事を初めて書き、ひつぎに忍ばせた。

 最期の選択が正しかったのか、みさ代さんは今も分からない。でも、「人生に悔いはない」と記した夫の優しさに支えられている。【服部陽】=つづく

     ◇

 団塊の世代全員が後期高齢者となる2025年には、75歳以上が人口の2割を占める。超高齢社会に突入し、医療費や介護費も膨らむ。いかに「人生の最終段階」を迎えるか。延命治療の在り方について国も新たに指針を改定した。厳しい判断を求められる患者や家族、医師らの思いを追った。

………………………………………………………………………………………………………

 ◇指示書作成8%

 終末期に望む治療方針について、自ら意思決定できなくなる場合に備え、あらかじめ示しておく方法の一つが事前指示書の作成だ。多くの国民が必要性に賛成しているが、実際に作成した人はごくわずかで、認識と行動とのずれが浮き彫りになっている。

 厚生労働省が実施した終末期医療に関する意識調査の結果(今年3月公表)では、回答した国民の66%が指示書の作成に賛成。5年前の前回調査時(69・7%)とほぼ同じ割合だった。一方、賛成した人のうち実際に作成しているのは8・1%。3・2%だった前回調査から微増したが少数にとどまっている。

 終末期医療の現場では患者が望む治療方針が分からず、家族や医師らが悩むことが少なくない。厚労省は3月に改定した指針で、患者の意思について家族や医師らと話し合った内容を文書にする重要性を初明記。事前指示書を導入する医療機関も増えている。

 

@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

こうした記事は、たいてい、共同通信社や毎日新聞社からだ。


大手新聞は、ACPという国策については一生懸命に書いている。
しかし肝心のビングウイル(LW)や本人意思の尊重に関しては書かない。


政権に「忖度」するしないと営業停止に。
これはテレビなどのマスメデイアも同じ。

しかし大きな時代の節目に居る、と感じる。

昭和はが激動の時代だった。
戦争、オリンピックと万博、沖縄返還、高度成長。

一方、平成はトンデモ時代であった。
バブル崩壊、地下鉄サリン、神戸と東北の震災、そしてウソつき政治。

元号が変わるということ自体に、大きな期待を寄せている。
40年前に日本に入ってきた「リビングウイル」がようやく動き始めるはず。

平成の30年間は、リビングウイルにとっても「失われた30年間」であった。
しかし新しい元号のもとで「LWを核としたACP」を法的に担保して欲しい。

私は終末期医療において
・政治と
・医療界の責任は重い、と考える。











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この記事へのコメント

「終末期医療において
・政治と
・医療界の責任は重い、と考える。」
まったく同感です。
もうひとつ、自分で考えず自分の主張を持たず、周囲の顔色をうかがいながら「お国の方針」に盲従してきた日本国民の責任も、きわめて重いのです。

Posted by 匿名 at 2018年06月02日 04:57 | 返信

生涯初めて、救急搬送していただいた。
「構音障害」という医学用語も、あとで知った。
後期高齢者保険証も尊厳死協会員証も、手元のリュックの中にあり、心配なし。
救急車の中では、すでに発語が困難になっていたが、瞬間、復活したり、「戻ったり」を繰り返した。
翌朝には帰宅したいなあ、と思っていたが、どっこい、検査、点滴セット後、15分おきのテストが待っていた。
「お名前、生年月日は?」から始まる。
なんとか、名前をごじゃごじゃ言ったあと、生年月日は?となり、
「西暦」で言うべきか、「元号」を冠すべきか、一瞬、戸惑ったが、
意識は明晰で、西暦で通すことにした。
後日、手にはめられたバンドには、西暦の生年月日が印字されていたことを知った。

長尾先生、新しい「元号」に期待されないほうが、いいですよ。
天皇の時空支配記号で、日本史を時期区分するには、無理がある。
「1945年なき昭和時代」というのは、まったくの喰わせモノだ。
壊憲論者の「明治史観」に直結する「昭和史観」!
「大東亜虚栄圏」の正当化が、顕われてくる。
「新しい元号」のもとで、立法、司法,行政に並ぶ、日本軍の「時代」が、やって来る。

Posted by 鍵山いさお at 2018年06月02日 08:54 | 返信

先生おはようございます。わたし、両親も夫も見送ってきたので介護はしなくていいけど、成人した息子たちのために、わたしの人生の最後は「延命」はしたくないときちんと文章で残しておかなくてはと思いました。来年で50歳なので残りの10年は一生懸命仕事して60歳になったら、もう欲は言いません。いつお迎えがきてもいいかなって思います。先生のブログで両親のことを思い出し、涙が出ました。

Posted by ふーちゃん at 2018年06月03日 06:45 | 返信

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