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西城秀樹さんのリハビリ闘病に学ぶ
2018年06月26日(火)
月刊公論7月号 西城秀樹さんのリハビリ闘病に学ぶ
脳梗塞予防は危険因子を減らすこと
2度の脳梗塞をリハビリで克服
西城秀樹さんが5月16日に亡くなられた。享年63歳。急性心不全で緊急入院してそのまま帰らぬ人となった。今回、西城さんのリハビリ生活を振り返ってみたい。
西城さんは48歳と56歳時に二度の脳梗塞を患った。そのあと脊髄損傷や脳梗塞などのリハビリを専門とする施設で3年以上リハビリを続けていた。ジャパンリハビリワークアウトを最初に訪れたのは2015年のこと。めまいや手のしびれや麻痺している右半身の痛みが強くて、1人では5秒間も立っておられない状態、いわゆる車椅子生活だった。そこでリハビリの目標は「一人で立って真っすぐ歩けること」に設定された。そのメニューとはマシンによる下半身強化や体を宙に浮かせて行う“空中トレーニング”などであった。最初の1年間は週5、6日のハイペースでリハビリに通った。彼はハードなメニユーに弱音をあげそうになりながらも頑張って続けた。そして1ケ月で立てるようになった。2ケ月でしびれが治まり、6ケ月でめまいが消失するなど目に見えてリハビリの効果が出た。2016年夏、ホノルル空港で西城さんが目撃されている。広いロビーでは長女に車椅子を押してもらっていたが、チェックインを進める間は自分の脚で歩いていた。
さすがに疲労が激しいため2年目からはリハビリのペースを少し落としたが食事療法とともに努力を続けた。そのモチベーションは、4年後に控えたデビュー50周年イベントと一番下の子が20歳になるまで元気でいたいことだった。「もう一度ステージに立つ」という大きな目標もあった。倒れた4月25日もいつもどおり3時間のトレーニングを行った。しかしその夜に突然意識を失い病院に救急搬送され、意識が戻らないまま3週間後の5月16日に亡くなった。心臓に急なトラブルが生じたようだ。
通院か入院か訪問か
リハビリという医療があったからこそ西城さんの奇跡的な回復があった。再びステージに立てた。一般に脳梗塞後のリハビリを受ける場所は大きく3つある。通院、入院、訪問である。西城さんのように通院でリハビリを受ける場合、医療保険を使うことが多い。しかしいくつかの制限があり、発症後一定期間以内と明確に定められている。適応外の人には自費でのリハビリやトレーニングという方法もある。入院して行うリハビリも通院リハビリと同様である。発症からあまり時間が経っていない急性期に重点が置かれている。しかし一定の時間が経過したあとの慢性期のリハビリを希望する人も多い。日本慢性期医療協会(日慢協)の会員の病院のなかには「24時間リハビリ」といって寝ても覚めてもリハビリを提供してくれるところもある。一方、自宅に理学療法師などのリハビリの専門スタッフが訪問して提供する「訪問リハビリ」も広く行われている。国は慢性期のリハビリはできるだけ介護保険下で訪問リハビリという形で提供する、という方針である。デイサービスにリハビリがついたデイケア(通所リハビリテーションという)も人気が高い。担当ケアマネージャーとよく相談してケアプランに組み込んでもらう必要がある。もちろん医師の指示書も必要だ。
もうひとつ知っておきたい視点は、そのリハビリが医療保険下で提供されるか介護保険下であるのかという点だ。2つの保険は発足以来の歴史も管轄部局も大きく異なる制度だ。要介護認定がある患者さんは介護保険下で通所リハビリないし訪問リハビリで提供することになっている。介護保険優先の法則という。介護保険と医療保険とではリハビリ報酬体系も異なるうえに自己負担の割合も異なる。たとえば医療保険なら3割負担であるけども、介護保険なら1割負担と負担割合に大きな差があることも知っておきたい。
脳梗塞の原因と予防
西城さんが二度も脳梗塞になった理由を考えてみたい。一般に脳梗塞は動脈硬化の危険因子が無い人には起こりにくい。喫煙習慣、生活習慣病、ストレスなどの危険因子がいくつか重なっている人に血管のトラブルが起こり易い。西城さんはヘビースモーカーであった。加えて人気スターが故の不規則な食生活とストレスもあったのだろう。40歳台から糖尿病を患い20年間もインスリン注射をしていたというから、かなり長い糖尿病歴があった。また大のサウナ好きであったそうだが、サウナのなかに長くいて脱水になると脳梗塞を発症し易い。つまり危険因子がいくつか重なった結果、脳梗塞を発症し、そして遂には急性心不全に至ったのであろう。
従って脳梗塞の予防は、重なりあう複数の危険因子をひとつでも減らすことに尽きる。タバコが好きな人ならまず禁煙だし、肥満の人ならまず痩せることが大切だ。糖尿病がある人なら緩やかな糖質制限食を期間限定で行うとともに、毎日歩くという習慣をつけて欲しい。また心房細動という不整脈を持っている人は心臓の中に血栓ができてそれが脳に飛んで重篤な脳梗塞(脳塞栓)を起こすことがある。放置せずに必ず循環器科を受診し血栓ができにくくなる薬を飲んで予防して欲しい。
西城さんの闘病やリハビリに関する情報の多くがマスコミに公開されている。それは自身が病気と闘う姿を広く見せることで人々に元気を与えたい、という意図もあったのではないか。西城さんが死に至る過程には医師から見ると多くの教訓が含まれている。大スターの死を深く悼むとともに西城さんの闘病とリハビリに一人でも多くの人が学んで欲しい。
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この記事へのコメント
こちらへ のリンク記事は「認知症鉄道事故から学ぶこと 閉じ込めなければ罪ですか』になっています。
しばらくPCトラブルでネットを見れなかったのでこの記事も新鮮なイメージで読みました。
「作られた認知症は何万人、何千万人いるのではないか」全く同感です。
また「親が認知症であったのに専門医に診せていなかった」ことを非難する風潮は本当に困ったものです。
認知症の専門医に診せると、認知症ではなくても認知症患者にされてしまう現実を、多くの国民は知らない。
最近特に感じることは、若い世代の多くが「高齢者=認知症」概念を刷り込まれている現実。
おそらく彼らは、「自分達も高齢者になったら認知症になる」恐怖を抱いているのではないか。
Posted by 匿名 at 2018年06月26日 02:56 | 返信
毎年「健診」を受けていた病院で、
「頭部MRIを用いた正常例における神経線維連絡・脳血流量の解析」
に関する研究に協力したのが、二年前。
「正常例」といっても、全身の血管のなかの「血栓」がゼロであるはずがなく、
「微細なマグマ」が、全身を巡回しながら、末端血管を死滅させる。
リハビリ帰りに乗ったタクシーの運転手さんから、
「再発はこわいですよ。ウチの母は、二度目で車いすになり、
三度目で寝たきりに・・・」と、言われた。
退院時に主治医からいただいた文書を読み返した。
「脳梗塞は早い段階の強化リハビリが大事です。
家庭の事情もあり、自主退院としましたが、通常は転院していただきます。
通院して、しっかりとリハビリに取り組んでください。
片側の手足、顔面の脱力や痺れが出現した時は、すぐに救急車を呼んでください。」
先日、「住居侵入罪」「不退去罪」の刑法犯が、「現行犯逮捕」になり家族が泣かないよう、
警官が到着する前に、「渾身の力で」ドアから押し出したが、
110番した同居人が倒れ、救急車を呼んだ。
ぼくも「脱力感」がどっと出て、念のため血圧測定したところ200・110・99だった。
まさかと思い、再度計測したが、エラー。
ぼくも、救急車のご厄介になろうかと思ったが、
冷凍のアイス枕を二つ重ねにし、横たわった。
あの実行犯と、使用者責任あるボスからは、なんの音沙汰もない。
いちど脳梗塞を発症した者は、「再発防止」に責任をもてない。
Posted by 鍵山いさお at 2018年06月27日 04:13 | 返信
(2行脱落しました。)
夕食の配達弁当をレンジから出して、両手で部屋へ持ち帰ろうとしたら、
右手が脱落、弁当がひっくり返りました。バカですね。
Posted by 鍵山いさお at 2018年06月27日 04:39 | 返信
鍵山さんへ
ウチの父は昨年91歳に3ヶ月ほど届かず亡くなりました。77歳で脳梗塞で1ヶ月入院。薬嫌いだった人が、二度と脳梗塞は嫌だと言って、きっちり血栓溶解剤を飲んでいました。82歳で食道がん。本人も私も、脳梗塞の薬が主な原因だと思っていました。・・・まあ、77歳までヘビーチェーンスモーカーでビール党でしたから、医者は「薬のせいで食道がん」を否定するでしょうけど。
脳梗塞のあと、納豆が良いと聞いて、朝夕必ず一パック食べていました。大阪人なので納豆嫌いだったのに・・・
納豆は血栓を溶かす効果があるというのはあちこちで聞きます。血栓は特に就寝中にできやすいので夕食に納豆を食べると良いとのこと。
私はいまだに夜更かしするので夜食に納豆を食べるようにしています。生卵と混ぜて。
おせっかいながら、血栓溶解剤はほどほどに適当にサボって納豆を食べる方が賢明ではないかと思います。
Posted by 匿名 at 2018年06月30日 01:45 | 返信
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