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昼間は6馬力、夜間は1馬力
2018年07月03日(火)
医療タイムス7月号 一馬力の在宅医療の未来
平穏死や在宅医療に関する講演を頼まれて、週末は全国を回っている。そこでよく聞こえてくるのは「国が言うほど当地区では在宅医療は進んでいない」という声。たしかに全国的に「在宅医の高齢化」が指摘されている。そして国が謳うほどには新たに在宅医療に取り組む医師は増えていないようにも映る。果たして、一馬力の診療所における在宅医療にどんな未来があるのだろうか?その答えは、「地域によってさまざま」と言うしかない。たとえば在宅医療に熱心な医師会とそうでない医師会がある。自治体もしかり。かかりつけ医制度が医療界や市民にどこまで浸透するのか未知数だが、確かなことがいくつかある。
第一に、地域包括ケアという国策は今後、20年間は変わらないだろうこと。地域包括ケアに勝る名案が新たに登場する可能性は低い。第二に、全国各地ですでに一部の若い開業医はICTを駆使した開業医同志の連携に取り組んでいること。だから「一馬力」という言葉自体が近い将来、死語になるかもしれない。診療所経営の観点からは、これからの新規開業組は在宅医療無しでは、あるいは開業医同志の「連携」無しでは、到底やっていけない時代ではないのか。第三に、病院が提供する在宅医療の可能性はとても大きいと感じる。特に200床以下の地域密着型の在宅療養支援病院が提供する在宅医療の量は自ずと増加するはずだ。一方、大病院もサテライトクリニックや訪問看護ステーションを併設するなど、在宅参入が相次いでいる。あるいは今春から新設された介護医療院を運営する医療法人も在宅医療に続々と参入するだろう。近い将来、地域差はあっても診療所ではなく病院が在宅医療の主役になる日が来るような気がしてならない。
そうなると診療所と病院・施設との垣根はさらに低くなり、在宅医療はシームレスに向かう。一人の年配医師だけで提供さる在宅医療の未来は、かかりつけ患者さんの老衰的な病態に限られてくるだろう。一方マンパワーが豊富な病院や施設により提供される在宅医療にはかなりの伸びしろがある。ただ病院医療がそのまま家に持ち込まれるような在宅医療も増えるだろう。在宅の病院化である。それにより生活支援という在宅医療本来の機能が失われ易くなる。それはとても悲しいことだが、年寄りの感傷かもしれない。
医師の話ばかり書いたが、看護師や薬剤師の動向はどうなのか。大型化を志向する訪問看護ステーションには大きな需要が予想される。薬局経営における訪問薬剤師も同様であろう。しかし訪問看護ステーションや訪問薬局の需要に3割という自己負担が与える影響は少なくないだろう。すでに大病院は統合・集約化の方向にある。同様に在宅医療も都市部においては「連携」を介した統合的な動きが予想される。そうなるほどに、ひとつひとつ物語を大切にしやすい一馬力の在宅医療は存在価値を増してくる、という見方もある。あたかもショピングモールの狭間に残った昔ながらの小売店の役割のような存在だ。
いずれにせよ、今春の診療報酬改定は「在宅初心者」に手厚い内容である。長期的に見れば「在宅医療」というバスに乗るのか乗らないのか、多くの診療所は今大きな岐路に立たされている。診療所経営の観点からはどんな形であってもとりあえずバスに乗ったほうが、より未来があるはずだ。
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