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消化管薬理学への期待

2018年08月31日(金)

「消化管薬理学」という研究領域があるのを御存知か?
口から入ると消化管から吸収されて様々な反応が起きる。
食べ物や薬剤には、「腸内フローラ」が待ち受けている。
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「消化管薬理学」という学問分野があるる。

食べ物を食べた時、あるいは薬物を投与した時に、
消化管でどのような反応が起きるのかを研究する。

昨今の腸内フローラブームは単なる流行ではなく、
生命の本質にかなり近い研究領域であると思う。

生命体は消化管からエネルギーや薬物を吸収した後に
消化管ホルモンに代表される内分泌機構のみならず、
迷走神経などの神経伝達により脳細胞と密接に交流している。

「脳より腸が上位である」という発生学的な真実を学べば、
内科学のほとんどの現象が腸におけるイベントに由来している。

糖尿病治療薬には9系統ある。
実際に糖尿病高齢者を目の前にした時、薬剤選択に迷う。

HbA1cがかなり悪いから、SU剤にしようかなあ、
いや低血糖が怖いからDPP4阻害薬で様子を見ようかと。

そんな時、消化管薬理学の立場で考えるなら、消化管ホルモン
を介するDPP4阻害薬やメトホルミンが選択肢となるはず。

メトホルミンは高齢者には慎重投与と、添付文書にはある。
eGFR30以下ないしクレアチニン値1.5以上は禁忌である。

もしそうでなければ、元気な肥満気味の高齢者にも使用できる。
この2剤はきわめて生理的な作用が故に低血糖を起こしにくい。

もし病院からSU剤やインスリンを投与されていても、食事療法と歩行、
消化管薬理学的観点からの説明で生理的な薬剤選択に導くことができる。
 
一方、病院で人工栄養になり外来ないし在宅に戻ってくる患者さんがいる。
現在胃ろうは減少の一途であるが経鼻栄養と高カロリー点滴が増えている。

病院の診療報酬体系からそうならざるを得ない側面もあるが、
在宅復帰後の栄養管理に消化管薬理学の知識を活かしたい。

結論から言えば30年以上前から言われていることだが、経腸栄養(胃ろう)が望ましい。

しかしこんな当たり前の理屈さえ目の前の利益に負けてしまうのが保険診療の性(さが)。

長期間、口や胃や腸を使わないと、口腔内の嫌気性菌が増加して、消化管粘膜は萎縮して
消化管ホルモンによるフィードバック機構やホメオスターシス機構そのものが退化する。

それは取りも直さず、脳の劣化に直結するのに・・・・
海馬の炎症や萎縮、黒質線条体におけるドーパミン産生の低下など悪循環に陥る。

従ってできるだけ経腸栄養、それも胃ろう栄養に変更すべきである
その根拠のエビデンスを示すのが消化管薬理学であり期待している。

「さいごまで口から食べられる街づくり」という食支援は地域包括ケアの中核だ。
そのためには消化管薬理学の多職種での情報共有が欠かせない時代になってきた。


「先生、だんだん食べられへんようになったんやけど」
「病院から頚に点滴を付けて家に帰ってきたんやけど」

そんな相談に乗ることも、今どきの”かかりつけ医”の役割だと思う。

ーーーーーーーーーーーーーー
 

最近、宮崎大学の中里雅光教授による消化管薬理学の講義を拝聴した。
 
・腸内の情報は神経を介して脳に伝わる
・高脂肪食は海馬に炎症を起こす
・そもそも腸管から多くの臓器が発生する
 
パーキンソン病とはαシヌクレンが腸に溜まる病気だが、
神経難病腸起源説の立場からは消化管薬理学に期待する。

MS(多発性硬化症)の脱髄には消化管免疫が関与している。
間欠絶食で、脱髄病変が改善する。
IL17産生リンパ球が上がり、制御性T細胞が減るのだ。
 
GLP1は食後30分に分泌される=予測的反応がある=神経を介している
 
・セリンプロテアーゼ
・DPP4は肥満で増加する悪玉サイトカイン
・筋肉は最大の内分泌臓器

さて、メトホルミン=グアニジン=単純な構造=分解されないのが特徴の古い薬だ。
メトホルミンを飲んでPETをすると腸が光る=大腸での取り込みを増やしている。

迷走神経を介するので メトホルミン内服は静脈内投与よりも作用が強い。

メトホルミンで腸内最近相が改善する。
ラクトバチルス増やしてグルコース感受性を変える
=GLP-1分泌を亢進する=インクレチン様作用
 

以上、一般の人には難解だろうが、点滴よりも口からが生理的であるという話だ。

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この記事へのコメント

素人のコメントです。
「含嗽」は「がんそう」と読み、うがいすることなので、うがい用のヨード液はもともと多少は飲み込んだり口腔粘膜から吸収されることを想定して製造されているので、確かに微量を、牛乳と混ぜて冷蔵庫で24時間以上放置して飲んでも、何ら悪影響はないだろうと。お料理にも使えるというのがいいですね。
平田医師の”基準的沃化脂乳液”がいずれ「癌の特効薬」あるいはサプリメントとしてマスコミに載るのかわかりませんが、やってみる価値はあるように感じます。
ただし、その人の甲状腺の状態によって適・不適、あるいは禁忌が、あるような気がします。
(予防意義も含めて私は現時点ではやりません。私の身体は家系的に癌より血管系だと思うので、癌に対してはあまり神経質にならないようにしています。。。。癌検診も受けたことないし多分今後も受けないだろうと。今後もし、癌であることが明白になったら”基準的沃化脂乳液”を飲んでみるかな。。。でも私は若い頃、甲状腺嚢腫がある、と言われたことがあります。放置してそのまま30年以上経ってますけど。)

Posted by 匿名 at 2018年08月31日 03:12 | 返信

内容が、難しくて理解できません。
でも「チェルノブイリ原子力発電所の事故で、周辺の国々の子供達に甲状腺癌が多発して、最大で累積50グレイの高線量を被爆した。これは、汚染された地産の牛乳を通じ、甲状腺に蓄積される性質を持ち、半減期のみじかい単位時間当たりでは高線量である放射性ヨウ素を多量に摂取した為であり、また子供の身体および器官が小さい為大人よりも累積線量が高くなるためでもある。IAEAの報告によると「事故発生時に0歳から14歳だった子供で、1800件記録された甲状腺がんであったが、これは通常よりはるかに多い」と記されている。発症した小児甲状腺がんは、大型で活動的なタイプであり、早期に発見されていたら処置することができた。処置は、外科手術と、転移に対するヨウ素131治療が必要である」と、Wikipediaに載っています。テレビの映像でも、ベラルーシュの子供達が、ヨード液を飲まされる映像がありました。高知市の平田医博のコメントは、難しくて理解できませんけど、どこかで聞いたようなお言葉でした。

Posted by にゃんにゃん at 2018年09月02日 12:01 | 返信

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