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「褥瘡」 誰がどのようにどこまでケアすべきか

2018年09月13日(木)

第三回尼崎在宅医療塾が開催され、130人が参加した。
今回のテーマは、「褥瘡」。
専門医の講演のあと多職種によるシンポジウムがあった。

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「褥瘡」とは →こちら

45万人の尼崎市には、施設や在宅におそらく何百人、
いや何千人もの褥瘡患者さんがいることだろう。

発赤の段階で早期に発見して治療開始が大切であり、さらに
深い褥瘡を発見したら皮膚科往診ないし入院をとの話だった。

しかし往診する皮膚科専門医はたった4人しかいない。
全部、往診していたら、者も倒れてしまわないか心配。

そして「治癒まで6~12ケ月かかる」とされる深い褥瘡を
受け入れる病院がいったいどれだけあるのかな、と思った。

入院しても「陰圧療法」は行っている病院は無いという。
では、治るまでに死んでしまわないのかな、と思った。


いつもお世話になっている尊敬する皮膚科専門医が1時間に
160枚ものスライドを使って、熱のこもった講演をされた。

評価、処置、ポジショニング、栄養、予防・・・
どれも大切なのだが、分かっていてもできてしまうのが「褥瘡」。

みなさんの議論を聞いていて思ったことを、書いてみたい。


そもそもすべての褥瘡を「治さなくてはいけないのか」
キュアとケアの観点からは、治せないものもあるのでは。

医師や看護師しか褥瘡処置は、許されない。
ただ家族へのスキンケアは認められている。

また「褥瘡学会」と「ラップ療法」の対立構図もあり、
「ラップ療法」の位置づけは、現場では混乱している。

「誰」が「どのように」、そして「どこまで」処置するのか、
議論の余地は大きい。

そして「栄養が大切だ」と言うが、食べたくても食べられないのが現状だ。
本気で改善させようと思うなら、胃ろうや高カロリー輸液しか方法は無い。

さらに、「予後」との関連無しで、褥瘡ケアは語れないのではないか。
終末期の褥瘡なら「完治」ではなく、「ケア」でもいいのではないか。


「褥瘡は早期に発見して、完治させたないといけない」という主張には
在宅の現場、特に多くの看取りに接しているものとして違和感があった。


さらに、さらに、これは発見と言ってもいいのかも。

それは、「平穏死」の患者さんには「褥瘡」は少ない。

少なくとも褥瘡で悩むことは、それほど多くない印象がある。

その理由をよくよく考えてみると

・平穏死は死の直前までADLが良い=寝たきりにならない
・枯れているので褥瘡ができにくい=溺れると褥瘡ができやすい、からか。


思い返すと、胃ろうからの栄養注入量が多い人や、
点滴量の多い人に褥瘡が多いような印象があるな。


今、この夏に看取った約10人を思い出してみると、
全員に「褥瘡」という意識が無かったことに気づく。


「過剰な延命治療が褥瘡を増やしている?」という気もしてきたぞ。

深い褥瘡ができると訪問看護師に特別指示書が出たり、複数の医療機関が
比較的瀕回に関わるので、月に医療・介護費が50万円くらいはかかる。

仮に半年間、在宅で深い褥瘡を治そうとすると薬剤費なども含めると
500万円くらいの社会保障費がかかるのでは、と試算してしまった。

尼崎市にそうした患者さんが1000人いたら、それだけで50億円。
いったい誰が、そのお金を払う? もちろん税金である。

思わず、「褥瘡亡国論という言葉が浮かんでしまった。
最近までは「オブチーボ亡国論」だったが、どちらが大きい問題なのか。

「抗がん剤議論」もそこまで考えないとできないように褥瘡ケアについても
こう考えないと、単に「完治を目標」だけでは議論できないのではと思った。

このタイトルにも掲げたように「誰がどのようにどこまでケアすべきか」。
いま、「いたって簡便で分かりやすい褥瘡ケア」の啓発が求められている。

いずれにせよ我が街、尼崎の在宅医療は年々明らかに進化している。
医師会や地域包括ケア委員会が主導して、いい方向に向かっている。





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※本ブログは転載・引用を固くお断りいたします。

この記事へのコメント

以前、介護研修の時に知り合った方の話が印象に
残っています。介護福祉施設に勤務するその方曰く、
「入所者が病状悪化すると、隣設する○○病院に入院するが、
必ず褥瘡を作って戻って来る。が..当方には褥瘡を治す秘策が
ある。少々荒療治ではあるが、必ず綺麗に治る。」
「そしてまた病状が悪化し入院し、必ず褥瘡を作って戻ってくる。」
..とイタチゴッコな話を聞かせてくれました。
確か、褥瘡治療のポイントは『塩』だったと思います。

Posted by もも at 2018年09月15日 08:35 | 返信

福祉職の立場で褥瘡とは、手出し出来ない領域です。
でも、先生の記事を読むとクライアントに提示できる選択肢は一つじゃないのかもって思います。
もっと勉強しないといけません!!反省です。

Posted by 尼崎の社会福祉士 at 2018年09月16日 10:53 | 返信

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