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間違いだらけの119番

2018年10月08日(月)

「発熱したら即119番=最善の介護」と信じて疑わない施設もあるが、
そもそも我々は119番についてどれだけのことを知っているのだろう。
最近のネットニュースから、大切だと思う119番の記事を拾ってみた。
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搬送人員は増加中、搬送時間は平均39分18秒
救急自動車の出動状況をさぐる

・救急自動車が通報を受けてから現場に到着するまでの平均時間は2016年中では8分30秒、病院に収容するまでは39分18秒。
・救急自動車による搬送人員は増加中。軽症者数が大幅に増加していたが、ここ数年では中等症者が大きく増加に。
・高齢者の搬送者比率は人口構成比をはるかに上回る。

増加する需要に伴い遅延化する救急搬送

総務省消防庁は2017年12月20日、2017年版の消防白書を発表した。それによると119番通報を受けてから対象患者を病院に搬送するまでの全国平均時間は、2016年(中)においては39分18秒であったことが明らかになった。これは前年の2015年の39分24秒と比べて6秒短縮されている。また通報を受けてから現場に到着する時間は8分30秒となり、こちらも2015年の8分36秒と比べ6秒短縮された。
直近年では前年比で時間短縮を果たした救急搬送体制だが、昨今では遅延化が問題視されている。次に示すのは消防庁内のサイトから抽出可能な数字を用い、「救急自動車による現場到着時間平均と病院収容時間平均」、さらにそこから「現場到着後・病院収容までの時間」を算出してグラフにしたものだが、次第に時間が延びている実情がうかがえる。

↑ 救急自動車による現場到着時間平均と病院収容時間平均
↑ 救急自動車による現場到着時間平均と病院収容時間平均
↑ 救急自動車による現場到着時間平均と現場到着後病院収容までの時間平均
↑ 救急自動車による現場到着時間平均と現場到着後病院収容までの時間平均
「現場到着時間」とは通報を受けてから現場に着くまで、「病院収容時間」とは通報を受けてから現場に到着し、対象患者を収容して病院に収容するまでの時間を意味する。いずれの時間も年々増加の傾向を見せているのが分かる。現場に到着するまでの時間も、そしてその後病院に収容されるまでの時間双方とも少しずつ延びていた。ここ数年でようやく天井感を見せた雰囲気ではある。

進む搬送者の高齢化

「病院収容時間」などの時間が延びている原因はいくつか推測でき、白書でも問題点として指摘している。そのうちの大きなものが「軽症患者、あるいは救急搬送が不必要な事例による出動が増え、救急活動がオーバーフロー気味となっている」と「高齢者の呼び出しによる出動回数の増加」。それを裏付けるデータを確認していく。
まずは傷病程度別運搬人員の状況。もっとも古い1998年から直近の2016年までのデータをもとに算出して比較したもの。軽症者比率はほぼ横ばいで、中等症者(3週間未満の入院が必要な病症な者)比率が増加、重症者以上が減少している。

↑ 救急自動車による傷病程度別搬送人員の状況(全国、比率)
↑ 救急自動車による傷病程度別搬送人員の状況(全国、比率)
ただしこれは全搬送者数に対する比率。1998年当時は約354万人だった搬送者も10年後の2008年には約468万人、そして直近の2016年では約562万人にまで増加している。その上で比率に変化があまり無いことから、軽症の搬送者数は増加していることが分かる。もっともここ数年ではそれ以上に、中等症者が増加しているが。

↑ 救急自動車による傷病程度別搬送人員の状況(人、全国)
↑ 救急自動車による傷病程度別搬送人員の状況(人、全国)
怪我にしても病気にしても本人自身ではその重度が判断しにくい。「軽症に思えるのなら救急自動車は呼ぶな」との意見に正当性は無い。しかし同時に、数字の上ではこのようなデータが出ている事実を認識しておく必要はある。
もう一つは年齢階層別区分。消防庁でも年齢階層別構成に係わる問題については近年注視しており、2008年以降からデータを公開している。

↑ 救急自動車による年齢区分別事故種別搬送
↑ 救急自動車による年齢区分別事故種別搬送
明らかに高齢者の比率が上昇しているのが確認できる。また確定値が出ている直近の国勢調査(2015年実施)の人口比も併記したが、高齢者の搬送比率が人口比よりはるかに多いのも一目瞭然。
病状の悪化や怪我の発生比率を考えれば、高齢者搬送比率が人口比率より高いのは当然。しかし一方で、総務省などの統計データによる人口比率の変移と比べても、非常に高い上昇率を示しているのが気になるところだ。

↑ 高齢者の総人口比率推移(~2017年)(総務省統計局・統計トピックスより作成)
↑ 高齢者の総人口比率推移(~2017年)(総務省統計局・統計トピックスより作成)
あるいは「高齢者」(65歳以上)区分の中でもよりリスクの高い年齢層の比率・絶対数の増加によって、必然的に搬送人数が増えていると見た方が妥当かもしれない。
消防庁でも限られたリソースの中で、できる限りの効率運用を成して状況の改善を図るべく、さまざまな施策を打ちだしている。消防本部の拡大(広域化)により管轄区分に伴う問題点(距離的には近いが管轄外のため出動対象とならず、現場に車両が到着する時間が遅れること)、人員配置の効率化と充実、体制の基盤強化などを推し量ったり、複数の消防司令本部の業務を1か所の消防指令センターで共同運用する「消防指令業務の共同運用」などがよい例である。
しかし急増する対応事例には応じきれず、病院収容時間などが延びてしまっているのが現状。状況の改善のためには救急体制の抜本的な改革(例えば論議に挙がっている、救急搬送の一部有料化による、実際には救急自動車を必要としない病症者の利用減少模索)や、投入リソースの増強が求められよう。
■関連記事:
救急車有料化、賛成は4割・反対6割
冷蔵庫の中には「もしも」の時の大切な情報…「緊急情報キット」とは
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。


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冷蔵庫の中には「もしも」の時の大切な情報
「緊急情報キット」とは : ガベージニュース

「緊急情報キット」
先日姉妹サイトの【「ライトニング・ストレージ」の記事】でも紹介したが、かかりつけの医療機関、処方せんなどの各種医療系情報を集約したパッケージを冷蔵庫に保管しておく、「緊急情報キット」(救急情報キット、など名前はいくつかある)というツールの存在・考え方を知ることができた。【6月の熱中症での病院搬送者、去年の3.07倍・6980人に】などにもあるように、今年の特殊事情で室内で熱中症となる高齢者の数が増加していることから、活用される機会は今後も増加するものと思われる。今回は情報の再整理も合わせ、当方居住地区である東京都・練馬区の資料を中心に紹介していくことにしよう。


↑ 「冷蔵庫にもしもの備え「緊急情報キット」(練馬区のものではない) 。
「冷蔵庫にもしもの備え「緊急情報キット」(練馬区のものではない)

東京都練馬区では【「救急情報キット」を希望者に配付しています】というページを設け、「救急情報キット」についての説明が行われている。それによると、



●概要説明
安心して暮らせる地域づくりを推進するため、ひとり暮らしの高齢者や高齢者のみの世帯の方、障害をお持ちの方、健康に不安を抱える方に、「救急情報キット」を配付しています。

救急情報キットは、救急および緊急時に迅速な支援が行えるよう、緊急連絡先やかかりつけ医などの情報を専用の容器に入れ、自宅の冷蔵庫に保管することで、万一の場合に備えることを目的とするものです。

●救急情報キットの使い方
1. 救急情報などを救急情報キット容器の中に入れて、冷蔵庫に保管しておきます。冷蔵庫は、台所にあるので救急隊が見つけやすいためです。
2. 玄関ドアの内側と冷蔵庫のドアに、「救急情報キット」のあることを示すステッカーを貼ります。
3. 救急車を呼び、救急隊が来た時に、救急隊員は、玄関や冷蔵庫のステッカーを見て、「救急情報キット」があることを知り、必要に応じて冷蔵庫を開け、救急情報などを確認します。
4. 救急情報などを参考に、迅速かつ適切な救急活動を行います。

●救急情報キットに入れるもの
1. 救急情報(かかりつけ医や持病、薬の内容などを記入)
2. 写真(本人の確認ができるもの)
3. 健康保険証の写し
4. かかりつけ医の診察券の写し
5. 普段飲んでいる、お薬の説明書の写し

とある。

考え方としては上の動画や練馬区の説明で大体理解できるはずだが、「電話をした本人が、救急隊が駆け付けた時に応対が難しい状態になっている」「周囲の人が異変に気がついて救急隊が派遣されたが、本人は応対が困難な状態だった」などの場合、その要救助者本人の医療関係の情報をすぐに正しく把握し、その後の対応・救命を迅速に行うようにするのが目的。

練馬区の救急情報キットまた冷蔵庫に色々な情報をまとめ、一つの容器に納めておくのは、「冷蔵庫ならば第三者である救急隊員が初見の室内に入っても、場所がすぐにわかる」「一つの容器に各種情報をまとめておけば、あちこち探し回る必要性が無い」などの長所があるため。さらに上記説明には無いが、冷蔵庫は頻繁に開け閉めする場所であり、内容の確認や最新情報への差し替えも容易であると共に、思い返しによる確認も手間がかからないというポイントがある。

指摘されれば「確かにその通り」で、まさにコロンブスの卵的なところもある。発想としては極めてすぐれている。有益に使われる事態が起きないのが一番だが、発生したとしても、今セット・キットが配されていれば、確実にリスクを減らすことが可能となる。治療を行う際には、薬の飲み合わせなど気を付けねばならないことは多いし、持病などの各種情報、さらにかかりつけの医師が居れば確認を取ることもできるからだ。





やや残念なのは、今回参考にした練馬区の場合、「配付予定数量が無くなった時点で、救急情報キットの配付は終了させていただきます」との表記があること。一度冷蔵庫に配されれば無くなることは滅多にないが、毎年新たに定年を迎えたり一人暮らしをはじめる高齢者が現れるなどで、需要は必ず創生される。また、必要なのは高齢者に限らない事も考えれば、期限・個数制限を設けるべきではないだろう。年金を手続きする機関や医療機関経由でも配布するのが望ましい。

また、「渡してハイおしまい」ではなく、具体的に設置するまでアドバイスを行うサービスを用意したり、配置方法に関しての講習をボランティアやNPOに対して行うなど、確実に活用され得る環境の整備も求めたいところ。

せっかく有益なアイディアなのだから、「いざ」という時により確実に役に立つよう、打てる手はすべて打っておくのが上策といえよう。
 
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救急車有料化、賛成は4割・反対6割 :
ガベージニュース

救急車ライフネット生命保険は2011年3月30日、AED(Automated External Defibrillator、自動体外式除細動器)と救急医療に関する意識調査結果を発表した。それによると調査母体においては、救急車の有料化への賛成派は約4割であることが分かった。反対派はおよそ6割ほどいることが確認できる。世代別では歳を経るほど賛成派が増える傾向があるようだ(【発表リリース】)。

今調査は2011年1月25日から28日にかけて携帯電話を使ったインターネット経由で行われたもので、有効回答数は1000人。15歳から59歳が回答対象で、男女比は1対1、年齢階層比は10代から50代まで10歳区切りで均等割り当て。

救急車を呼ぶことは公的サービスの利用として原則的に無料だが、【公立病院の治療代未払い急増中】【救急車の病院収容時間などをグラフ化してみる】でも指摘しているように「無料だから」とばかりに安易な出動要請が行われる事態が多発している。このような事態を避け、本当に必要な状況下にある人への救急車を十分に確保するため、救急車の利用を有料化すべきという話がある。

今件について具体的な金額、状況を設定せず、単純に有料化について賛成か反対かを尋ねた結果が次のグラフ。



↑ 救急車の有料化に賛成ですか、反対ですか
救急車の有料化に賛成ですか、反対ですか

全体では賛成派が4割足らず、反対派が6割強となり、反対派が多数派という結果になった。元々無料なサービスを有料化するのだから、反対派が多いのも当然といえる(元々安易に使うつもりなどさらさらない、多数の人にとっては「金銭的なとばっちりを食らう」形となるのだから当然だろう)。

年齢階層別で見ると、経年と共に賛成派が増えるが、特に10代の賛成派は少ない。これは「若年層…お金にあまり余裕が無く、金銭的負担を嫌う」「中堅層以降…お金の負担よりも、自分が急病で倒れた時にすぐに救急車がこれない状況のリスクを嫌う」と考えれば納得がいく。

リリースには両派の具体的コメントが寄せられているが、それぞれ抽出すると、



・賛成派……「安易な利用が減る」「タクシー代わりに救急車を使う人がいるから」
・反対派……「経済的理由で救急車の利用が制限される」「公共のものだから」「他人のために救急車を呼ぶことが難しくなる
 (「基本的には無料が良いが、非常時以外は有料で対応」という意見も)

となり、それぞれもっともな理由が挙げられている。

救急車も救急隊員も有限でしかない以上、今後(高齢者比率の増加で)出動頻度がさらに高まることを考えれば、何らかの「緊急時でない状況での呼び出し・出動」を抑える必要がある。有料化以外の有効な手立てがあれば話は別だが、それが無ければ最終的には有料化(個人的には一部有料化…緊急性が確認できない・救急車を呼ぶのに値しない状況だったと判断されれば請求されるタイプ)の道を歩まざるを得ないのではないだろうか。

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ちなみに、45万人都市である尼崎市には9台の救急車がある。

1台あたりの出動率は、なんと全国一!
すなわち、日本一、救急依頼が多い街。

しかし消防隊員の給与は、決して高くない。
しかし近隣の自治体の消防には変われない。

在宅医療と119番は、関係が深い。
無用な119番もあると思うのだが。

そのあたりの議論をするために、日本在宅救急医学会を設立した。
11月17日(土)に第一回の学会を開催する。(私は懇親会しか行けないが)



先日、台風21号で停電した夜、尼崎の救急搬送依頼はパンクした。
救急では無いのに、パニックになり119番した人が、いたからだ。

119番をもっと知ろう。

交通事故や急病の人の救命に支障が出ない使い方をみんなで考えよう。








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