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リビングウイルとは"いのちの遺言状"
2018年10月16日(火)
「死んでからでは遅い、リビングウイル(LW)」
LWとは“いのちの遺言状”
今回はリビングウイル(LW)について解説します。LWという概念が日本に入ってきたのは1976年、昭和51年のことです。LWの日本語訳は定まっていませんが、私たちは「いのちの遺言状」と呼んでいます。LWとは病気により死期が近い(不治かつ末期)と判断された時、延命治療は断る一方、充分な緩和ケを受けたいという文章による意思表示です。当初は末期がんの最期に人工呼吸器を装着することが一般的でした。私自身も研修医時代は意味が無いと分かっていても儀式的に全例に人工呼吸器を装着していました。それが嫌だと思う市民が集まりLWを書き、現在の日本尊厳死協会の原型を作りました。 LWのポイントは3つあります。「人間としての尊厳を保って死を迎えるために、生命を引き延ばすだけの延命治療を拒否すること」、「自分の精神が健在な状態のときに書かれたものであること」、「不治の病にあり、末期状態にあるときに延命治療の拒否が効力を発揮すること」です。3つ目の文言は、効果が期待できるようなときには積極的に治療を受ける、という意味を含んでいます。
一方、遺言状とは死んでからの財産分与に関する本人意思を表明した文書で、公証役場などで作成します。遺言状は法的な裏ずけがありますが、これを「法的担保がなされている」と言います。残念ながら日本ではLWの法的担保はなされていません。数年前に内閣法制局が「終末期の医療における患者意思の尊重に関する法律案」の素案がマスコミに公表されましたが、国会への上程は一度もなされていません。LWの法的担保を推進する議員連盟には約200人の超党派の議員が参加していますが、障害者団体などの反対のためこの数年間、国会におけるこの議論は停滞しています。
欧米各国ではLWは法的担保されています。アジアに目を向けると台湾では2000年に法的担保を終え、2回の改正を経ています。また韓国では2016年に国会で法的担保が決まり、2017年から施行されています。日本においてLWの法的担保がなされる見込みは現状ではゼロという状態です。そんな中、日本尊厳死協会では亡くなられた家族に毎年アンケートを取っていますが、90%以上の家族が「LWが役に立ち尊厳死できた」と回答しています。LWを書いておけばたとえそれを担保する法律が無くても9割以上が叶う、ということが分かっています。
日本尊厳死協会はLWの啓発団体
日本尊厳死協会はLWの普及啓発を行う市民団体で、一般財団法人格を有しています。最期のときまで自分らしく生き延命治療を拒否したいと考える人なら誰でも2000円で入会できます。まず定型のLWに署名します。そしてできれば家族や知り合いなど「代諾者」にも理解を求めてサインをもらってください。現在の協会のLWは、そのような「事前指示書型(AD)」になっています。サインした原本は協会本部で厳重に保管して、そのコピーをお返しします。一部は自分で保管し、あとは家族や主治医に渡しておきます。ます。LWカードは常に携帯してください。急病や交通事故でいつ必要になるのか分かりません。「かかりつけ医」や「救急病院」を受診する時、必ずそのLWやLWカードのコピーをカルテに挟んでもらってください。LWカードをペンダントのようにして常に首からぶら下げている人もいます。
ちなみにLWは公証役場で作成してもいいし、自治体や医師会や病院・介護施設などで独自に作成しているところも増えてきました。日本尊厳死協会の会員数は約11万人で国民の0.1%に相当しますが、協会以外でLWを作成している人も含めると現在、国民の3.2%がLWを有していると推定されています。しかし欧米でのLWの表明率と比較すると、ひとケタ以上低い数字に留まっています。だから日本ではさらなるLW普及・啓発が必要と考えます。
ACPの核はLW
厚生労働省は2018年4月、「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」を公表しました。今回の改訂では1)患者の考え方が変わり得ることを踏まえ患者との話し合いを繰り返す、2)患者が自らの意思を伝えられない状態になる可能性を踏まえ、「患者の意思を推定する者」を事前に話し合う、3)病院以外の介護施設や在宅の現場も想定し、話し合った内容はその都度、文書にまとめておく作業も強調されています。また「本人の意思を推定する者」については、「自分が決められない時に備えて決めておくということで1人ではなく複数でもよい、とするなど認知症時代を想定したものになりました。以上は「アドバンスケアクラニング(ACP)」と呼ばれ啓発が進んでいます。
医療の発達に伴い、治療の選択肢は増加の一途です。また高齢化に伴い、治療をどこまでやるのかが問われています。日本は家族の権限が極めて大きいですが、本人の希望と家族の希望が相反することが少なくありません。そこでACPという概念を隅々まで普及させることが国策となりました。元気なうちから本人・家族を含み多職種みんなで話し合いを重ねることがACP、つまり「心づもり」です。
しかし本人意思(LW)の尊重は医療の基本、生命倫理における大原則です。しかし残念ながら日本は多くの場合、1人称、2人称、3人称の想いがバラバラです。だからLWを核としてACPをしっかり行うことが今後の日本の終末期医療の姿とされています。LWを「忖度」する行為がACPですが、その核になるものはLWであることを決して忘れてはいけません。 いずれにせよ、死んでからでは遅いのです。本人や家族に残るのは後悔だけです。だから元気な時にLWを書き、ACP(こころづもり)」を行いましょう。LWは15歳から書けるので、10代の会員さんもおられます。興味のある人は日本尊厳死協会のHPをご覧ください。
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