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夜間の訪問看護

2018年10月30日(火)

在宅医療における夜間対応は、ある意味「要」であり
訪問看護師さんたちの献身的な努力が鍵を握っている。
男性看護師への思いを、医療タイムス10月号に書いた。→こちら

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医療タイムス10月号   夜間訪問と男性看護師
 
 いわゆる女医問題が議論されているが、今回、男性看護師の需要について考えてみたい。

 国を挙げて「地域包括ケア」が推進されている。これはとりもなおさず「地域看取り」も含んでいる。当たり前のことだが人が死ぬ時は昼夜を問わない。看取りの時刻は、日勤帯、準夜帯、深夜帯が1:1:1となるはずだ。病院ならいざ知らず、在宅看取りの現場で一番に走ってくれるのは訪問看護師さんである。訪問看護師が頑張ってくれたら、医師の深夜帯の看取り往診は翌朝でも構わないことになる。夜間帯に動いてくれる訪問看護師さんが私の命を守ってくれている。もし夜間帯のすべてに往診すれば、間違いなく私は過労死する。私の命は訪問看護師の夜間対応にかかっている、と言っても過言ではない。

 看護師のうち訪問看護に従事しているものはわずか2.8%である。これは「病院から地域へ」というスローガンのなかで極めて異常な数字だと思う。本来は、一桁多い28%の看護師が在宅医療に関わるべきであろうが、命綱ともいえる訪問看護の現状を強く憂う。また在宅医の高齢化が指摘されているが、訪問看護師も高齢化している。若い看護師は夜間帯の出動を嫌う。配偶者の世話や子育てという事情もある。またゆとり教育や働き方改革の時代である。しかし昔のいわゆる「奴隷世代」と呼ばれる時代の医師や看護師が在宅医療の土台を担っている地域が多い。いろんな事情があるだろうが、夜間出動がネックになり、訪問看護の世界に飛び込まない看護師が少なくないのは事実だ。

 夜間の在宅訪問には危険が伴う。交通事故だけでなく、暴漢に襲われるかもしれない。天候が悪いと特に心配だ。管理者としていつもハラハラドキドキしている。しかし男性看護師だとその不安は半減する。私のクリニックにも男性訪問看護師がいるが、夜間の出動時には本当に貴重な存在である。そして私の命の守り神である。本稿では「在宅」という男性看護師が活躍できる大きなフィールドの存在を広く知って欲しい。さらに地域包括ケア推進のためには男性訪問看護師の育成に国を挙げて力を入れてはどうか。誤解を招く表現かもしれないが、看護学校の入学時に「地域枠」ならぬ「訪問看護師枠」を設けて欲しいくらいだ。さらに付け加えるなら、自衛隊看護学校を卒業して自衛隊病院の勤務経験がある女性看護師は訪問看護に向いている。夜間の行軍訓練などで悪条件下での任務執行に慣れているからだ。自衛隊を経験した医療者は男女を問わず大歓迎である。

 町医者が提供する在宅医療は、まさに肉体労働である。自力でそこにたどり着き倒れている人を運び手当をしなければならない。多職種連携と言われるが、臨時の対応はほぼ医師か看護師に限られている。ケアマネや介護福祉士には「往診」という概念は無いだろう。患者さんからのSOSに対応する「往診力」こそが地域包括ケアの原動力であろう。従って、どれだけ機動力が高い看護師と良い関係性を構築できるかが、今後の診療所経営の大きなカギになる。ひと昔前には看護師で診療所経営が変わることは考えられなかった。しかし現代では医師の力量よりも看護師の力量が問われている。そんな状況の中、男性看護師にもっと着目したい。看護学生の時からもっと訪問看護の教育に力を入れて欲しい。以上が、町医者の看護師への本音である。

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この記事へのコメント

在宅医療を志す医師および看護師が少ない一番大きな理由は、24時間拘束のような働き方にならざるを得ないから、だと思います。
高齢家族が介護施設で生活していましたが、そこで働いていた看護師さんは、元は病院勤務で夜勤もやっていたが、夜勤はあまりにしんどい、ここは給料は安いけど夜勤がないからいい、と言っていました。その介護施設は、介護師の夜勤者だけで、看護師は当番制オンコールでした(基本、夜は自宅に居ることができる)。

私はいつも思うのですが、医師や看護師、介護師の勤務時間を、24時間を3人体制、たとえば22時から6時、6時から14時、14時から22時、と、時間で割り切ることはできないのでしょうか? 
ある介護施設の介護師の夜勤時間は、17時から翌日10時まで、というクレイジーな長時間労働でした。これでは、それこそ心身ともにフラフラボロボロになってしまう。そして翌日は休みで次の日は朝から出勤。こうなると生活リズムがめちゃくちゃ。
夜勤専門で働いている人もいるようです。むしろその方が生活時間を作りやすいのではないかと思うのです。
私は、出勤する曜日と時間が決まっている仕事を選びたいです。

Posted by 匿名 at 2018年10月31日 02:44 | 返信

長尾先生は、現場で実際に働かれているため、本質的な問題の指摘が的を得ている上に、こうすればいいんじゃないかという、今まで誰も思いつかなかったような斬新かもしれないけれどかなり良いアイデアの解決方法の提案もされていらっしゃいます。これからの医療改革を、長尾先生に担っていただけたら、新しい希望が生まれるはずだと思います。なんとかならないでしょうか。ところで、うちだけかもしれないですが、お看取りの時間帯ですが、ほとんどが、週末休日と夜間帯です。生れ出る時も、死にゆく時も、何故か深夜が多いように感じますが、色々な状況にあの世からの使者は合わせてくれていてのことなのかもしれませんね。ではまた、お元気で。

Posted by 遠い声 at 2018年10月31日 12:53 | 返信

ほんとに肉体労働です
でも わたしは負けない…だよ

Posted by 宮ちゃん at 2018年10月31日 11:52 | 返信

看護、介護界のみならず、24hr.対応の業種は
他にもありますし、人が便利を追及したばかりに
世の中の迅速対応が要求され、流通業界は正に夜勤対応が
求められています。そういったところに労働として、
正規雇用されにくい層の人が登用されている現状にも
物言いがある人も多い現代社会ではないでしょうか。
お正月・元日営業のスーパーやデパートのニーズにも、
そこに働く人々(出勤を余儀なくされる人)が多く存在する訳で
どうなのかなァ??と訝しく思うことが多々あります。

介護・看護界に於いて、夜勤専門に従事する男性が居ました。
複数箇所の掛け持ち仕事のようでした。夜勤と日勤を繰り返す
不規則な勤務よりも、ある種、生活ペースは一定していて、加えて
夜勤手当が加算されるので、収入的には満足できる金額かと
想像します。昼間の雑多な仕事が省かれて、何かの時のために
本来の責務に専念できる立場であり、充実しているように見えました。

Posted by もも at 2018年11月01日 07:38 | 返信

私は業界人ではなく被介護者家族だった者です。その過程で知ったことは、医療・介護業界の勤務時間は、日中勤務、準夜勤、夜勤、という区分けになっている、日中勤務時間はいわゆるオフィスタイム(9時5時ベース)ですが、準夜勤は夜7時頃までが勤務時間で、夜勤は18時前後に出勤して翌朝9時前後まで勤務という超超長い勤務時間。
夜勤は、仮眠できることを前提に長時間勤務になっているようですが、現実的には眠るなんてimpossible.
これを3交代シフト制で日々勤務時間が変わり、休日もバラバラ、なんて、私ならとてもではないけどできません。
業界への就業意欲を上げるには、勤務時間の工夫が重要だと思います。

Posted by 匿名 at 2018年11月03日 12:43 | 返信

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