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薬の減らし方、そっと教えます
2018年12月25日(火)
月刊公論1月号 薬の減らし方、そっと教えます
「薬嫌いのかかりつけ医」を探そう
分けても分からないのが人間
誰でも年をとるほどに持病が増えます。血圧や糖尿などの生活習慣病だけでなく、不整脈、胸やけ、頻尿、めまい、腰痛、物忘れそしてがん。たくさんの専門医にかかった結果、合計20種類ものお薬に寝ても覚めても振り回されている人がおられます。循環器の専門医、糖尿病の専門医、消化器の専門医、耳鼻科の専門医、泌尿器科の専門医、整形外科の専門医、抗がん剤の専門医・・・・。なんでも専門医にかからないといけない、専門医なら間違いないと勝手に思い込んでいるブランド志向の人がいますが、大病院だけを受診していけば確かにそうなります。現代医療は臓器別縦割りなので年々細分化される一方です。たとえば整形外科といっても腰、頸、膝、肩、肘、指の専門医はそれぞれ分かれています。そのうちに左膝と右膝の専門医に分かれたりして(これは冗談)。
専門分化は一見進歩のように見えるかもしれませんが、実は「退化」の始まりでもあるのです。福岡伸一氏が指摘しているように「分けても分からない」のが人間であり病気というバランスが崩れた状態なのです。ゲノムやiPSといくら医学が進歩しても患者さんの幸福と並行ではありません。老化に伴う異常を病気と見るのか、生理的な現象と見るかで対応が大きく違ってきます。人間をプラモデルのように単なる臓器という部品の集合品と捉えることは時と場合によっては便宜上アリ、なのかもしれません。しかし人間をひとつの国や地球に例えたらどんなイメージになるのか。各臓器がメッセージ物質を出してバランスをとりあいながら“動的平衡”を保っている姿こそが、生きている人間です。バランスの崩れを治すために医療があります。しかし専門分化しすぎたために病気の全体像を俯瞰する医師の能力は年々低下の一途です。
薬のセカンドオピニオン?
あなたの主治医は誰ですか?かかりつけ医はいますか?いくら何人もの名医にかかっていても、そう聞かれて即答できる人が何人いるのでしょうか。主治医やかかりつけ医の定義は、病気だけでなく仕事や生活上の相談も含めてなんでも相談に乗ってくれて必要とあれば、専門医を紹介してくれる町医者のことです。減薬の第一歩は、まずはかかりつけ医を探すことからです。総合診療という看板を掲げている診療所をのぞいてみてください。医者選びは腕だけでなく相性がいいことも大切です。医者は患者を選べませんが、患者は医者を自由に選べます。国民皆保険制度の土台はフリーアクセスですから、できれば自宅から近い医師がお勧めです。遠くの名医より近くの親切なかかりつけ医、の時代です。
「20もあるお薬を減らして欲しい」と言って遠くから来院される人がいます。「私がかかりつけ医になるのですか?」と聞くと、「いや、そうではありません。薬のセカンドオピニオンを聞きに来ました」と返ってきました。私はそのような依頼はすべて断っています。なぜならその薬を出している医師にまず相談すべき疑問だからです。薬の処方は、医師と患者の診療契約にもとづいてなされています。診療所の場合はまず問診票に記入する行為自体が診療契約とみなされます。病院なら入院申し込み書がそれです。すでに構築された医師・患者関係に私のような第三者が入ることはルール違反になります。では、セカンドオピニオンとする自費受診はどうか?それは、アリかもしれません。しかし薬の是非をセカンドオピニオンに求める元気があるのなら、納得できるかかりつけ医を是非とも見つけて欲しいもの。「大病院信仰いつまで続けますか」という本も書いている私ですが、ある年齢になれば、ある介護度になれば近所のかかりつけ医に薬を一元化することを考えましょう。
かかりつけ薬局に聞いてみよう
「かかりつけ医に薬を減らしたいと言ったら激怒された」。よく聞く話です。でもそんな医者をかかりつけ医に選んでいるのは貴方の自由意志なのですよ。そう話すと、キョトンとされました。いろんな人間がいるように、医者もいろいろなのです。薬が大好きな医者もいれば私のように大嫌いな医者もいます。「病気は食事と運動で治すもの」がモットーの私は食事や歩行の本も書いています。医者の差はまさにピンキリですが、選ぶのはどこまでも患者さん側です。それをしないで、遠くからやって来て自分のかかりつけ医の文句を言ったところでどうすることもできません。
でもそんな迷える患者さんに朗報があります。それはかかりつけ薬局やかかりつけ薬剤師の活用です。多剤処方(ポリファーマシー)の解決は臓器別縦割りという文化が根強い医者任せでは難しい。そこで貴方の想いを町の薬局の薬剤師さんに相談してみてはどうでしょうか。国は減薬作業への報酬を医師だけでなく薬局にもつけました。兵庫県宝塚市のように地域ぐるみで減薬に取り組む自治体が出てきました。減薬という難問解決は薬剤師が鍵を握っているのです。薬嫌いの医者をかかりつけ医に選ぶことが、とにかく早道です。最近「降圧剤は一生飲むもの」と考える医師がまだ6割もいるという調査結果が公表されました。私のような減薬推進医はまだまだ少数派で、時に厳しいバッシングを受けます。しかし減薬だけで嘘のように生き返った患者さんをたくさん診てきたので、すべては患者さんのためという想いで様々な圧力と闘っています。医療の本道は食事と運動という養生法の指南です。薬は必要最小限量を期間限定で使うものです。
PS)
毎日、本当に忙しい。
外来も在宅もフル回転。
朝から晩まで飯を食べる時間もトイレタイムもとれない。
クリスマスの夜も医師会の地域包括ケア委員会。
ああ、ボクもクリスマスしたいよう。
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