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平穏死=自然死=尊厳死

2019年05月20日(月)

きらめきプラス6月号は、平穏死について書いた。→こちら
平穏死=自然死=尊厳死。
当たり前のことが当たり前ではない現代医療。
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きらめきプラス6月号末期がんへの点滴
 
今回のご相談は島根県松江市にお住まいの59歳の女性からのご相談です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・


Q)
65歳の夫が末期の肺がんで、現在療養型病院に入院しています。
夫ができるだけ穏やかに逝けるようにと思い、経鼻栄養も胃瘻も断り、点滴のみで1カ月ほどが経ちました。病院からは点滴についての細かい説明、必要性などは聞かされず、また私もそうするものだと思い、見守ってきたのですが、手足に浮腫が見られるようになりました。
反応は少しありますが、最近では枯枝のように痩せ細った身体に浮腫んだ手足を見るたびに、身体はもう何も受けつけなくていいとしているのに無理に水分栄養を流し込んでいるのではないかと切なくなってきます。病院に点滴をやめてほしいと言うと気を悪くするんじゃないかと悩みましたが、以前、長尾先生が
「最期に良かれと思って、点滴をたくさんすると患者さんを溺れさせてしまう。終末期なのに、高カロリー栄養の点滴をやっている人がいる。その結果、どうなるか。みんな溺れ死にです。平穏死の条件は脱水、それは”枯れる”ということ。亡くなってから気が付いても後悔が残るだけです。リアルタイムに流れのなかで患者さんと家族が感じて、気が付くことがなによりも大事。お医者さんもよくわからないですから、何度も話し合って、家族も含め、そして納得のいくやめ方をしてほしい」と『きらめきプラス』で書かれていることを思い出し、いま病院との話し合いを考えています。また息子も夫を家に戻し、少しの時間でもいいから一緒に家で過ごさせてあげようと言ってくれています。
何かアドバイスをお願いできませんでしょうか。よろしくお願いいたします。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 
A)
「枯れる」という話、よく覚えてくださっていましたね。ありがとうございます。私のまずは手足のむくみはがんに伴う栄養不良、低アルブミン血症によるものです。どんながんでも最終的には徐々にアルブミンが低下していきます。正常値は3.5以上ですが、3.0以下になると手足がむくみます。2.5以下になると顔もむくみます。2.0以下になると命の危険があり、がん性悪液質と呼ばれます。このようにアルブミン値は生命後を予測するうえで最も気になる検査値です。
 
ではアルブミンを上げるにはどうすればいいのか。それは口からしっかり食べることです。タンパク質を補うことです。栄養士さんのアドバイスを求めてください。とは言ってもいくら努力をしてもいつかは必ずアルブミン値は低下していきます。医学的介入で多少遅らせることはできても、人生の終わりが近づく時には避けられないものだと思います。それに抗うために医学は「人工栄養」という方法を開発しました。一つは点滴、ひとつは経管栄養、ひとつは胃ろうです。点滴は腕の静脈からの末梢点滴と中心静脈からの高カロリー輸液があります。夫はおそらく腕から500~1000ml程度の点滴を受けておられるものと推察します。ちなみに腕からは濃いブドウ糖の点滴は血管炎が起こるためできません。だから中心静脈栄養を行っているがん患者さんを見かけます。しかし、そもそもがん細胞はブドウ糖が大好きです。無限に分裂・成長するためには大量のブドウ糖とそれを燃やすための酸素が必要です。これは「がんの増殖機構」に関する研究で明らかになっているのですが、残念ながら多くの臨床医は知りません。ちなみにがんの進展度合いを知るために広く行われているPET検査は放射性フッ素で標識したブドウ糖を注射して、それを取り込んだがん組織が光るものです。がん細胞が飢えたオオカミのようにいち早くブドウ糖を取り込む性質を利用した検査法です。
 
私自身は35年前、末期がん患者さん全員に高カロリー輸液を行っていました。その結果、何が起きたか。たとえば胃がんなど体表から触れることができるがんの塊りは、日々グングン大きくなっていきました。みんな1~2週間で苦しみながら死んでいきました。「どうしてこんなに大量の栄養を与えているのに、良くならないばかりか苦しみが増大してすぐに死んでしまうのか」と10年間ほど、ずっと疑問に思っていました。
 
 しかし医者になって11年目に一人の患者さんが教えてくれました。食道がんの末期状態にあるその患者さんは、一切の点滴を拒否しました。口から飲める1日わずが数百ml程度の水分だけで3ケ月間、死の3日前まで元気に活動されていました。私の中で大きな疑問がわきました。「点滴をしたら早く死ぬ、しなければ予想外に長生きする」。こうした素朴な疑問への答えを求めたのが、その後の20年間になります。すなわち「平穏死=自然死=尊厳死」という考えかたの基本です。
 
 点滴=善、と医者も患者も考えていますが、末期がんに対する1日500ml以上の点滴は以下の2つの点でお勧めしません。1)がん細胞の大好物であるブドウ糖を与える、2)水分を与えることで枯れることができず、溺れさせてします。その結果、何が起きるのか。痰や咳で呼吸が苦しくなります。多くの場合、酸素が投与されますが最悪です。がん細胞内でブドウ糖を燃やすためには酸素が必要だからです。実は、老衰に対しても2)の理由でお勧めしません。1日2リットルの高カロリー点滴は最悪ですが、大病院の多くの患者さんが受けています。その結果多くの患者さんが、酸素吸入→不穏→持続的な深い鎮静、となります。
 
 つまり、逆なのです。天動説と地動説がありますが、17世紀まで前者が真理だと信じられていました。後者を唱えたガリレオガリレイは処刑されました。つまりその時代の常識と反対のことを言えば迫害を受けるのが古今東西、世の常です。だから私も黙っていたほうが平和ですみます。しかし私が溺れ死にさせた1000人の患者さんへの罪滅ぼしと、自分の目の前にいる患者さんの尊厳を守るために活動しています。私の考えは大半の医者に理解されません。いまや日本の医療において点滴は「文化」になっています。「せめて点滴くらい」と思う本人や子供や親戚の心情に配慮するなら1日200mlの点滴ならば悪さはしないことを知っておいてください。枯れることで最期まで何かしら口にできます。話せます。管だらけになりません。緩和ケアも楽です。肺がんでも全く同じです。
 

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この記事へのコメント

久しぶりに先生のブログをゆっくりと読むことができます。今日のブログも、とても勉強になりました!

Posted by 小梅ちゃん at 2019年05月22日 05:25 | 返信

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