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認知症の透析もユマニチュードで
2019年06月19日(水)
きらめきプラス7月号
今回は、二世帯住宅で実母(要介護2)の介護をしている女性(網走市在住、40代主婦)からのご相談です。
Q)
「78歳になる母は3年前から人工透析を受けていますが、2年ほど前からもの忘れがひどくなってきたため、もの忘れ内科へ連れて行ったところ、アルツハイマー型認知症と診断されました。最近は認知症の症状も進んできて、些細なことで怒って興奮することが目立ち始めました。人工透析を受ける日は私が車で送り迎えをしていますが、先月急に病院から「透析中にかなり興奮され、大きな声で叫んだり、刺している針を自分で抜いてしまうので、このままの状態では当院での透析は無理なので、どこか入院可能な病院で透析をやるように相談してください」と言われてしまい、今は車で2時間ほどかかる別の病院で人工透析をお願いしています。先日、また病院に迷惑をかけてはいけないと思い、看護師さんに前の病院で言われたことを話したところ「とてもおとなしくされていますよ」と言われ、一安心していますが、この地域には入院できる病院もなく、また以前のようなことが起こり、この病院でも断られたらと思うと心配でたまりません。私としてはこのまま自宅で介護しながら母を看取りたいと考えているのですが、母のような認知症で人工透析を受けている方はどのようにして過ごしているのでしょうか。これからどうすればよいのかアドバイスをお願いしたいのですが、よろしくお願いいたします」
A)
私は多くの在宅患者さんを診ていますが、人工透析を受けている要介護者が常に数人おられます。そして程度の差はあれ、認知機能が低下した方もおられます。以下こうした個人的な経験をもとにお話しします。
まず「興奮する」とのことですが、抗認知症薬を飲んでいないか確認してください。4種類ある抗認知症薬は基本的に興奮薬ですから薬の副作用で異様に興奮することがあります。よく分からなければ、抗認知症薬を1週間程度中止して様子を見てください。さらにたとえば胃薬であるH2ブロッカーなどの「せん妄」を誘発する可能性がある薬を飲んでいないかもチェックしてください。薬の副作用による興奮を認知症だと誤診されているケースが多くあります。よく分からなければかかりつけの薬剤師さんに聞いてください。
次に、いわゆる認知症の「周辺症状」と呼ばれる興奮は、介護する人の「関わり方」で大きく変容することを知ってください。ベストセラーになった「ユマニチュード」のように認知症の人の尊厳を大切にした接し方をしている介護者に対しては「意味もなく興奮する」ということはあまりないはずです。もし興奮するのであれば、何か興奮する理由があると考えて、接し方をチェックしてみてください。実際、次の透析病院では看護師さんは「おとなしくされています」と話されているので、原因はお母さま側ではなく、透析スタッフ側にある可能性があるのではと思いました。介護する側の関り方ひとつで180度違う態度になるのが認知症です。透析病院によっては認知症の方への関わり方の研修を受けているところとそうでないところがあります。透析においても「ユマニチュード」がキーワードになります。
それでも「興奮して透析できない」という状況であれば、まさに医療の出番かもしれません。本当に周辺症状としての興奮で透析が困難な状況であれば穏やかにする薬剤を少量だけ使う場合もあります。時には抗精神病薬と呼ばれる部類の薬剤を使って透析生活を維持する時もあります。しかし抗精神病薬は劇薬ですし、まして腎機能が極端に低下している人にはごくごく少量で驚くほど効きます。もし効きすぎると意識レベルが低下したり大変なことになりますから、まさに「さじ加減」が大切です。やむを得ず抗精神病薬を使用する場合は、最小必要量を期間限定で使うことが鉄則であることを知ってください。もし透析の先生が分からないと言われるのでれば、抗精神病薬を使い慣れている専門医に相談すべきでしょう。認知症を診る実力のある医師であれば必ずやお母さまの透析が可能なように試行錯誤しながらでも工夫をしてくれるはずです。
私は極端に認知機能と生活機能が低下した要介護5の透析患者さんを在宅で最期まで診たことが3例ほどあります。以上の工夫をしながら10年単位で透析を受けた果てに、もはや意思疎通ができない、食事がほとんど入らないという方を自宅で看取りました。そのような状態の方は、腎機能だけでなく心機能や肝機能も低下しています。複数の臓器の機能が低下した病態を「多臓器不全」と呼びます。当たり前のことですが透析で無限に生きられるわけではありません。透析の限界とは多臓器不全です。そうなると透析に連れ出すこともできなくなります。家族から透析に行けないとの申し入れを透析病院に伝えました。結局、2週間後、穏やかに自宅で旅たたれました。今後、そんな事態が増えるのではと予想しています。
お母さまの場合は、まだまだそんな段階ではなさそうですね。だから接し方と薬剤の力を借りてなんとか透析治療を継続する努力をなさってください。笑顔で暮らすことは充分可能に思えます。しかし一方、いつかは(何年後かは分かりませんが)多臓器不全に陥り、透析に通えなくなる時が来るでしょう。その時に在宅で過ごすのか、最期の最期まで病院に入院して透析を受けるのかは患者さん側の自由です。大切なことはそうしたことを透析のスタッフと何度も話し合うことです。昨年から「人生会議」が国策となりましたが透析患者さんこそ人生会議をしっかりやるべき病態だと思います。ポイントは比較的元気な時から始めることです。いくら興奮気味といっても上手に接すれば本人の希望を聞き出すことは可能なはず。もし機会があればみんながいる席で「お母さん、病院に通うのが難しくなったら入院する?」と明るい雰囲気で聞いてみてください。
@@@@@@@@@@@@@@@@@
ps)
福生病院の件。
日本透析学会は「福生病院に問題なし」との見解を公表した。
結局、毎日新聞の一連の報道は、「捏造」が明らかになった。
しかし、肝心の毎日新聞は、今もって、訂正も謝罪もない。
「終わってるなあ」と思っていたら、捏造報道はまだまだあるようだ。
「虚偽」「根本的な間違い」の『毎日新聞』記事に強く抗議する →こちら
毎日新聞「報道の暴力」に対する厳重抗議 →こちら
毎日に限らず、メデイアの偏向ぶりは酷くなる一方。
自分の足で情報を得て、自分の頭で考えるしかない。
ところで、
これも予言(→こちら)どおりに、大変なことになってきた。
慰安婦問題テーマの映画「主戦場」に反響 公開延長やアンコール上映相次ぐ(西日本新聞) - Yahoo!ニュース →こちら
これに対して、ケントギルバートさんが本気で怒っている。→こちら
「主戦場」と「天皇と軍隊」は、観ておきたい。
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この記事へのコメント
透析の実情(日常)を知っていたなら、毎日新聞の記者が "アンチ福生病院"なる記事を
書けはしなっかったと思います。知らないからこそ、生命の倫理とごっちゃにして、
"なんとなく正義" を振りかざして、VS的な内容に仕立てて書いたのだと思います。
透析を行っている状態が、辛いとか苦しいとかの患者本人の心情的基準を柱に据える状態
であるならいざ知らず、心理面どころか、身体的に限界=(透析の効果と身体的負担との駆け引き)を
考えた時に、他者から見て(医師側から見て)負担(苦痛)の方が勝る状態を 「さもありなん」的な
答えを持つタイミングがあるのだと思います。そもそも、患者さん本人が勘違いしているケースが
あるような気もするのですが、透析は治療であって治療にあらず(病状を快癒していくものとは違う)。 あくまでも、腎臓機能が本来果たす役割(水分除去)を行うだけの行為であるということを明確にした方が、話は分かりやすいと思います。意外なことに、透析行為によって血液中のビタミン(?)バランス
であるとかを調整はできないと最近知りました。ただ単に "水引き" と聞きました。
報道がチャチな業界になったということはよく分かります。
Posted by もも at 2019年06月20日 08:36 | 返信
透析クリニックさんが、透析の送迎を施設向けにも行って、施設と連携して、透析患者でも特養入所できるよう頑張られていました。併せて、透析食を宅配されたり、透析送迎時間帯以外で、リフト車両が空いている際に、送迎ボラもしたいなと、医療介護連携支援センターに相談ありました。
私は、広報して皆さんのお役に立つようにしたかったですが、この透析クリニックの儲けに繋がる・・・・・クリニックの儲けに関与できない・・・・となりました。
Posted by 峯 通子 at 2019年06月22日 06:09 | 返信
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