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公開が待ちどおしいよう

2019年10月03日(木)

暑いなかでの映画撮影から、はや1ケ月半が経過。
10月の声を聞き、なんだか遠い昔に感じてしまう。
オリンンピック後である来夏の公開が待ち遠しい。
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夏休みの思い出を、日本医事新報に書いた。


日本医事新報9月号  映画「痛くない死に方」撮影日記   →こちら
 
 
在宅医療が映画に
 
 この夏、劇場映画「痛くない死に方」の医療監修者として撮影に同行させて頂いた。今回、その雑感を書かせて頂く。この映画は、拙書「痛い在宅医」(2018年)と「痛くない死に方」(2017年)を原作として、日本映画界を牽引する高橋伴明監督自らが脚本を書きメガホンを取られた。人気俳優の柄本佑さんが主演を務め名だたる有名俳優たちが医療職や患者役を演じた。本映画のテーマは在宅医療、終末期医療、緩和ケア、看取りで、従来の医療映画と全く異質な辛口作品である。高橋監督はインタビューで「65歳を超えたころから自分の死を考えるようになった。この映画が遺作になると思い取り組んでいます」とクランクインの意気込みを語っている。まさに団塊の世代が全員後期高齢者になる2025年問題を強く意識した内容である。

 ドキュメンタリーである「痛い在宅医」という拙書が高橋監督の目に留まり、映画化という幸運に恵まれた。ひとことで述べるなら「在宅における平穏死」を私独自の表現法を用いて描かれた作品である。在宅医療や人生会議が国策となっているが、現実には美談だけで済まされないケースもあり、在宅医療の質の向上が課題になっている。在宅医療には良い点と不便な点があるがその両面を広く知ってもらえる作品である。様々な看取りの場面もリアルに描写されている点も特徴だ。
 
 
ロケは暑いよ
 
 幸運なことに撮影はお盆前後になるとの連絡があった。急遽、お盆休みを利用する形で約2週間の撮影のほとんどに同行することができた。多くの場面に医療用語や医療行為が散りばめられているので医療監修は必須だ。映画撮影はテレビドラマと違いワンカットに最低でも1時間はかかるので2週間は異例に短いそうだ。通常の映画撮影は最短でも1~2ケ月はかかるが、人気俳優さんたちのスケジュールを長く拘束はできないという事情がある。映画撮影とは大きなキャンパスに精巧な絵を描くようにコツコツした根気のいる作業だ。

 始めて監督と初めてお会いしてから、1年近く経過した。正式に映画化が決定してからも脚本の校正、制作会議、俳優の選定、ロケハン、撮影スケジュールの確定、衣装合わせ、小物準備と撮影に入るまで数ケ月を要した。この春には監督と柄本佑さんが当院に来られ、在宅患者さんの家を一緒に回りイメージを膨らませて頂いた。実は撮影そのものよりもロケの準備(ロケハン)のほうがずっと大変な作業であることを知った。ロケ地は、日野市、板橋区、新宿区、お台場などの都内数ケ所だけではなく栃木県まで広範囲に及んだ。

 さて生まれて初めてロケバスとやらに乘った。俳優さんやスタッフさんと一緒であるが、その集合時間はとても早い。連日、午前6時ないし午前7時に集まり撮影は時には深夜まで及んだ。スタッフの睡眠時間は3~4時間という過酷なスケジュールが続いた。おまけに猛暑の中での撮影である。クーラーや扇風機の雑音を避けるためそれらを停止して撮影が行われるが蒸し風呂状態になる。俳優さんもスタッフも全員、汗でビトビチョになる。まさに映画は暑いよ、である。冷房の効いた場所で医者をやっているほうがよっぽど楽だと思った。しかし毎日、朝から晩まで一緒にいると俳優やスタッフと一体感が生まれてくるから不思議だ。撮影の合間に屋外で遠足のように一緒に弁当を食べる時間が一番楽しかった。

 
分かり易い言葉で伝える
 
 我々が日々当然のように使っている言葉がある。しかし市民は音を聞いただけでは何のことか分からない言葉だ。いわゆる医学用語と呼ばれる範疇かもしれない。ある時、台詞に「中等度の認知症」という言葉を追加した。しかし「中等度」が誰も分からなかった。みなさんに「どんな漢字なの?」と聞かれた。あるいは台本に「せん妄」という言葉があっても誰も読めなかった。リハーサルで「せんぼう」と読まれていたので修正した。これもどんな意味か何回も聞かれた。このように私たちが何気なく使っている言葉でも、市民には伝わりにくい言葉があることを改めて思い知った。一般臨床においても工夫の余地がおおいにある。

 映画はもちろん一般市民を対象としている。誰にでも伝わるようにするには様々な工夫が必要だ。医療の現場ではそれを怠るとコミュニケーションギャップが生じ医療不信を招く一因になる。情報の非対称性という言葉があるが、患者さんは圧倒的に情報弱者である。だから医学用語の監修には特に気を配った。多くの医療ドラマや医療映画では、監修を専門とする医療職が現場に張り付くという。しかし今回の映画は在宅ならではの特殊性に加えてあまりにも個性的な台詞が並ぶので私のような現場の人間でないと困難だった。しかし私一人では役不足なので何人かの都内の在宅医や訪問看護師さんにも協力を得ることができたいへん有難かった。特に桜新町アーバンクリニックの遠矢純一郎先生と立川在宅ケアクリニックの井尾和雄先生には多大なご尽力を頂いた。もしお二人の協力が無ければこの映画は成立しなかった。この場をお借りして感謝申し上げる。


 
映画も多職種連携

 映画の撮影現場は常に30~50名ものスタッフで溢れている。しかしそれぞれに明確な役割があり無駄な人材は一人もいない。今回の撮影では、総指揮官である3人のプロデユ―サーが見守るなか、現場の最高責任者である監督の下には2人の助監督とアシスタントデレクター(AD)などがいた。助監督の「次は本番!」と声を聞くとスタッフが一斉に「本番!」と復唱し、ADがカチンを鳴らした直後に監督が「スタート!」との声を発して芝居が始まる。スタッフ全員が息を潜めて撮影に集中する時間は映画独特の世界だ。

 なぜこんなにも多くのスタッフが必要なのか。それは現代医療ともどこか似て役割が細分化しているからだ。たとえば一人の俳優さんに付く人の役割も完全に分業化している。衣装屋さんは服の準備だけで、着こなしはスタイリストさん、時計やアクセサリーなどの小物は小物係さん、化粧はメイクさんと役割が明確に分かれている。カメラも照明も中枢はそれぞれの専門家が担うが、機材の移動や設置を担うには多くのスタッフたちも必要だ。同様にマイクと録音も専門家がそれだけを担っている。たいへんなのは美術さんだ。大道具から小物まであらゆる備品の準備をするのだが、医療器具は特殊なので大変な作業だ。たとえば吐血や輸血のシーンなら何日も前から調合した血液(もちろん偽物)の色合いについて何度も相談された。俳優の送迎や支度だけでも沢山のスタッフが必要である。さらにエキストラを確保してお世話する人、現場周辺の交通整理や近隣との調整、スタッフの送迎や水や食料の確保などなど、実に多くの裏方さんに支えられて撮影が成立する。何台ものロケバスが必要な理由、また多大な費用がかかる理由がよく理解できた。

 まさに映画撮影の現場でも多職種連携が重要であることを思い知った。連携が一ケ所でもうまくいかないと撮影は中断し全体が遅れる。ワンシーンの撮影にリハーサルから最低でも10回くらいの演技を要する。スタッフに聞くと高橋監督はOKを出すのが一番早いタイプの監督さんだという。監督によっては何十回もやり直しが続き、終了が深夜何時になるのか分からない人もいるとのこと。この話を聞きながら外科手術が頭に浮かんだ。手術時間が早い外科医とそうでない外科医がいるなあ、と。もちろん早くて上手い、が一番であろう。
無事にクランクアップしたこの映画は来年夏に公開予定である。20年2月末まで協賛を募集中だ。ご協力頂いた方はエンドロールに名前が載るとのこと。協賛の詳細は公式サイト(http://itakunaishinikata.com/)で確認して欲しい。


 
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高齢者住宅新聞でも紹介して頂いた。→こちら


抗認知症薬の記事であるが、最後に映画も紹介されている。

この映画は、まさに「在宅医療と尊厳死」の映画である。


実は、映画はほぼ完成していて、映画祭への出展待ちであるという。
それを記念して10月24日(木)渋谷で高橋伴明監督とトークショーをする。→こちら

このイベントは、R18である。
伴明監督が自ら最高傑作という映画を観てからのトークとなる。


翌朝は、東京ビックサイトで「在宅医療」の講演をする。→こちら
こちらは真面目な講演会で、展示会も楽しめるよ。



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