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雨の千葉で講演 ー良質な在宅医療は救急搬送と入院を減らすー
2019年10月26日(土)
千葉は、このところ大雨にたたられている。
今日も朝から大雨で、服もかばんも足元もずぶ濡れ。
千葉の方が気の毒で、心からお見舞い申し上げます。
今日も朝から大雨で、服もかばんも足元もずぶ濡れ。
千葉の方が気の毒で、心からお見舞い申し上げます。
千葉の幕張メッセで開催されている医療介護EXPOで、
「暮らしの保健室」の秋山正子さんとダブル講演をした。
広大な会場に数えきれないブースが出てたが、
いつもそうだが、自分は講演だけで精一杯だ。
「在宅医療のこれからのかたち」と題して話したが
たくさんの人に聞いて頂き、感謝申し上げたい。
昨夜とはうって変わって、真面目な講演をした。
まるで二重人格のよう。
講演の中で悠翔会のデータをたくさん紹介した。
在宅医療を頑張ったら救急搬送と入院が減った、と。
講演終了後、なんと佐々木理事長が挨拶に来られてビックリ。
「なんや来てるんやったら始まる前に教えてよ」なんて感じ。
丁度、日本医事新報の今週号にこのことを書いた。→こちら
是非、参考にして欲しい。
日本医事新報 2019年10月号 良質な在宅医療は救急搬送と入院を減らす
第3回日本在宅救急医学会
9月7日、都内で第三回在宅救急医学会学術集会が開催された。今回のテーマは「在宅救急診療ガイドライン作成に向けて」であった。第三回大会長の吉田雅博氏は3つの最重要課題を設定した。1)在宅や救急で急変を早くみつけるのはどうするか? 2)急変した時どうするか、不要な搬送を減らせるか? 3)治療後退院した後に注意することは?である。多職種がそれぞれの立場から講演し筆者もシンポジストとして登壇したので本学会をレポートしたい。
救急医療の世界では標準化が進んでいる。様々な指標が作られてデータが集約・蓄積されつつある。親樹会恵泉クリニックの太田祥一氏は、急変対応について1)JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care:外傷初期診療ガイドライン、JMECC(Japan Medical emergency Care Course:内科救急・ICLS講習会)など救急標準教育で用いられている第一印象からのアプローチ、2)第一発見者になることが多い看護師の視点や気づき(特にいつもと何か違う)やSBAR(S:Situation状況、B;:Background A:Assessment 評価、R:Recommendation 提案)、JTAS(Japan Triage and Acuity Scale):救急外来で用いられる救急度判定システム)、3)RRS(Rapid Response System:院内救急対応システム)では急変の前には多くの場合前兆がありそれを事前に察知するためのNEWS(National Early Warning Score)などを紹介した。一方、在宅医療は救急に関するデータが乏しい。しかしその中でも数多くの在宅医療を手掛けている悠翔会の佐々木淳氏が示したデータは衝撃的であった。
事前意思確認により約半数が回避できる
小豆畑病院の小豆畑丈夫氏は「在宅・施設における医療アクセスの判断シート」の意義を報告した。患者の状態を、普段と変わらない、何となく元気がない、咳や熱が出てきた、明らかに普段と違う、意識がおかしい、の5段階に分けた。この判断シートの意義を家族、ケアマネ、施設職員、看護師、医師らにアンケート調査を行った結果、判断シートが在宅医療の現場、特に家族にとって有用であることを示した。
本邦では高齢者の救急搬送が増加する一方で、要請内容では重症度・緊急度が低いことが特徴である。不必要な入院を防部ことができる状態は Ambulatory care-sensitive conditions(ACSCs)と定義されている。その原因として、システム要因、医療者側要因、医学的要因、患者側要因、社会的要因の5つに分類される。悠翔会在宅クリニック品川の井上淑恵氏は、過去3年間の救急搬送患者365例をACSCs分類したところ、48%が回避可能とした。さらに患者側・社会的要因が回避可能群で有意に多く、回避可能群と不可能群で背景を比較したところ、訪問看護師導入と事前意思確認で有意差を認めた。多変量解析では事前意思確認が救急搬送回避因子でありその意義を強調した。
悠翔会では2018年、14181件の緊急対応をしたが、うち7627件は電話再診(電話のみで対応が終了)、6555件は往診で対応した。緊急入院は1842件。患者・家族が相談なく救急要請したケースは10件未満、多くは担当医の判断によるものであった(約半数は電話にて、約半数は往診時の判断)。ちなみに緊急対応した14181件という数字は、東京消防庁の後期高齢者の救急搬送件数の約5.5%に相当、往診した6555件というのは、都立6病院の年間緊急対応件数の約3割に相当する数字だという。
入院関連機能障害の予防法
搬送・入院を減らすことは患者のQOLのみならず、救急医療システムという医療資源を守るという意味でも重要である。以下、佐々木氏の発表から引用させて頂く。要介護者が入院すると身体機能・認知機能がともに低下してしまう(入院関連機能障害)。その主たる要因は、環境変化のストレス(リロケーションダメージ)と、安易な食事制限・動作制限による医原性のサルコペニアである。高齢者にとっては入院そのものがリスクになる。悠翔会の在宅高齢者の緊急入院は約30%が肺炎、約15%が骨折によるもの。肺炎で入院した高齢者は入院中に約30%が死亡、退院できた人たちは平均で要介護度が1.7悪化していた。骨折で入院した高齢者についても、やはり10%弱が入院中に死亡、退院できた人たちは平均で要介護度が1.5悪化していた。入院は死亡や要介護度悪化というリスクを伴う。実際、多くの高齢者はフレイル以降、骨折や肺炎などのさまざまな病気を繰り返し、病気そのものあるいは病気の治療のための入院により、徐々に心身の機能を低下させていく。「何かあったら病院へ」ではなく「病院に行かなくても済むようにする」ことが大切である。つまり、予防医学である。
佐々木氏は在宅医療における予防法は4つあるという。①一次予防:発症予防 肺炎や骨折を起こさないこと。むせるので食形態を落とすとか、転ぶと危ないから歩かせない、などの日常生活の制限は、短期的にはリスクヘッジになるかもしれないが、中長期的にはリスクが大きくなる危険がある。②二次予防:早期発見・早期治療 早めに見つけて入院が必要になるほど重症化する前に治療してしまう。高齢者の肺炎は症状が出にくく、非典型的だ。熱が出ない人、咳や痰が出ない人も少なくない。気軽に相談し合えるケアチーム内の良好な関係構築が重要だ。 ③三次予防:早期退院 高齢者は10日間の入院で、7年分の骨格筋を失うという報告もある。入院による機能低下を防ぐためには、1日も早く地域に戻せることが大切だ。病院側と在宅側が入院時から退院を見据えた情報共有を行い、治療のゴールを明確にしておきたい。④四次予防?:ACP 人生が最終段階に近づくと治療をしてもしなくても残された時間はそんなに変わらない、という時期が訪れる。そのような状況において、残り時間を延ばすために積極的に治療をしていくのか、それとも残り時間をその人の優先順位に応じて過ごすのか、あらかじめ話し合っておくことで望まぬ入院を強いられる可能性が少なくなる。
良質な在宅医療は救急搬送を減らす
悠翔会では毎年、担当在宅患者数が増えているが緊急対応件数は減ってきているという。2018年の平均管理患者数は前年よりも400人多かったが、緊急対応件数は約3000件少なくなっている(2017年の緊急対応件数は17207件)。その理由は、レスキューオーダーとACPである。レスキューオーダーとは予期される体調変化に対して対応を準備しておくこと。何が起こりうるのかということをあらかじめ患者や家族やケアチーム内で共有し、必要な薬剤などを自宅に配備しておけば何かあった時にセルフケアが可能になる。「急変」とは「予期せぬ体調変化」であるとするのであれば、予測可能なものはそもそも急変とは言わないのかもしれない。つまり、レスキューオーダーによって急変そのものを減らしてしまうという発想である。 急変が減れば当然、入院も減る。悠翔会の在宅高齢者は訪問診療開始前の1年間に平均約42日入院している一方、訪問診療中の患者の平均入院日数は10.6日。つまり一人あたり約30日、入院を削減できているという。
さらに往診の対応力も重要だ。入院が必要と判断される前に治療を開始できれば、入院しなくてもある程度安全に治療ができる。悠翔会の休日夜間対応チームは休日夜間にコールを受けてから、平均38分で患者宅に到着、診療を開始できている。これは救急車を要請し、病院を受診し実際に診察を受けるまでの平均時間よりも短いというから驚きの数字である。また足立区内のある特養では、施設のスタッフと在宅医(嘱託医)がしっかり連携・協働することで、年間延べ入院日数を94%も削減することができ(1707日→98日)、看取り率は100%に近づき、入居者満足度・職員満足度は上がったという。悠翔会のデータは良質な在宅医療が救急搬送と入院を減らせることを証明している。今後、在宅医療の質が問われてくるが、救急搬送や入院をどれだけ減らせるかも重要な指標になることを確信した。
PS)
講演終了後も大雨で、タクシーもなかなかつかまらない。
京葉線も雨で遅れていて都内での会議にも大幅遅刻した。
東京駅のタクシー乗り場は長蛇の列だが、車が来ない。
結局、地下鉄と徒歩で、ふたたびずぶ濡れになった。
ボロボロのまま、国会へ移動し、梅村聡議員と2時間懇談。
「地域包括ケアを地域医療構想に組み込むべきだ」と解説。
その後、知人を虎ノ門病院にお見舞いした。
移転したばかりの虎の門病院をしっかり見てきた。
その後、新刊の打ち合わせを終えて帰阪した。
新幹線は満員だけど、大阪は雨がやんでいた。
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この記事へのコメント
先日の医療介護EXPOで、先生のご講演を拝聴した者です。
介護の観点から共生社会の実現を標榜する者として、「医者の仕事は街づくり」という先生のお言葉に、感銘いたしました。
また、先生のお話を伺いたいと思いました。
Posted by 高瀬貴一 at 2019年10月28日 12:52 | 返信
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