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穏やかな最期と穏やかでない闘病
2020年01月03日(金)
昨年も元旦の朝からお看取りがあったが、
今年も正月からお看取りのため往診した。
天気と同様に清々しく、皆が平穏な最期。
今年も正月からお看取りのため往診した。
天気と同様に清々しく、皆が平穏な最期。
看取りが近いとは思っていたが、寝ている間に逝かれた。
苦しみも痛みもない穏やかな最期は在宅で実現しやすい。
家族も落ち着いていて、笑顔で談笑。
二度目の在宅看取りだ聞き、妙に納得した。
当院の場合、平穏死が年間140人ほどある。
まさに日常であるが、病院や施設ではなかなか叶いにくい。
今日一日だけでも病院や施設でいろんなことがあった。
1)知人のご家族から入院中の末期がん患者さんの相談に1時間。
末期がんで病院で苦しみもがいているという。
しかし正月なので(?)ロキソニン以外の緩和ケアが受けられないと。
昨日「余命3ケ月」とい言われたが、今日は「鎮静」を勧められたと。
どう返事したらいいのか、という相談だが、診ていないので不可能だ。
分子標的薬を1回のみ受けたら、それで寝たきりになったとも。
病院は遠方であるが、近所に緩和ケアに長けた在宅医はいないそうだ。
2)末期がんで状態が極めて不良であるが、病院が退院させてくれないという悩み相談。
しかし元旦からずっと外泊中で自宅ですごく苦しんでいるとのこと。
入院中なので保険診療規則では開業医は一切関わることができない。
だから病院に戻るか退院するかどちらかなのだが、どちらも無理だと。
なんて相談されても、こちらもどうどうすることもできない。
少なくとも年末年始は病院よりも在宅のほうが格段に充実している。
医師も看護師も、大晦日も元旦も普段と同様に働いているからだ。
それにしても病院が退院させてくれない、という相談をよく受ける。
在宅医に依頼=敗北、と考えているからだろうが、なんとかならないか。
3)施設での発熱、嘔吐、転倒への対応は大変であるが、
施設に看護師が居てくれるだけでも本当に助かる。
しかし「加算」を取る(要は儲ける)ためだけに血圧だけ測る
バイト看護師を週に1回だけおいているグループホームがある。
結局、外からの訪問看護はボランテイアになる。
意味のない訪問看護に介護保険が使われている現実。
厚労省さん、しっかり制度設計してよ、といつも思う。
しかし厚労省はえエライ先生の意見だけ聞いて町医者の意見など無視。
ああ1ケ月だけ厚労大臣になってヘンな規則を全部正したい、という妄想発作が襲う。
4)施設で転倒したと電話があったので診にいったら、大きなタンコブが。
しかし機嫌よく食事をして体操もしているので、まあ大丈夫かなあ?
と思いつつも心配になったのでCTを撮ると頭蓋内出血があり入院に。
3日から外来を開けていて良かった、とホッと胸をなでおろした。
正月から愚痴っても仕方ない。
しかし穏やかな晴天と真っ黒い嵐が混在しているのが
在宅もやってる町医者の年末年始の率直な感想である。
医療が患者さんファーストであるなら、療養の場を問わずに
良質な医療や緩和ケアが受けられるべきだけど、現実は違う。
PS)
今年も早くも3日間が経過してしまった。
ほんと正月なんてアッという言う間だね。
忘年会もデイナーショーも身内の新年会も
記憶はまるで走馬燈のように、逃げていく。
NHKの紅白歌合戦で記憶に残っているのは、
北野たけしの歌だけ。
「夢は捨てたと言わないで」→こちら
あれはビックリした。感動した。
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この記事へのコメント
医療が患者さんファーストであるなら、・・・な、わけ、ないでしょ。
医療産業ファーストでしょ。
「病院」という箱物を維持するのに医療機器や設備投資で「一大産業」となり、
オクスリのストック・常時補給で製薬会社の儲けが予測できる。そのために一定種類の薬を一定量、常に、必要でなくとも「お決まり処方して消費する」
病気が増えるほど患者という名のお客さんが増えて儲かるのが医療産業。
その真似をしている介護産業はある程度儲かっている様子。
極力オクスリ使わず無用な検査しない「見守り医療」は儲からない。
だから、死が近い高齢者は「医療産業に組み込まれて無用に苦しむ」か「放置される」か、となる。
Posted by 匿名 at 2020年01月04日 12:29 | 返信
私達が、お正月で休んでいある間に、人々の穏やかな看取りや、どうすることもできない相談に悩む長尾先生は偉いなあと思います。
Posted by 匿名 at 2020年01月04日 09:50 | 返信
4)施設で転倒した・・・CTを撮ると頭蓋内出血があり入院に。
その人は「機嫌よく食事をして体操もしている」が、入院すると拘束されるのでしょうね。
訪問診療医師経由で、肺炎で入院した90歳の父は、一人では歩けない状態だった。
その時の、比較的えばってないナースさんのお言葉。
「拘束はめったにやりません。けど、拘束同意書にサインしてください。安心していいですよ。拘束しませんから。でも拘束同意書にサインしてもらわないと私たちが困るんです。」
「普段は歩けない人でも急に歩いて転倒することもあるんですよ。危ないでしょ?」
私「・・・だから拘束するんですか? 本人、もう90歳だし、自力で歩けるくらいなら入院させませんけど・・」
一人娘の私は拘束同意書にサインしなかった。
その代り「転倒してもCT撮りません(頭の中で出血あっても開頭手術しないから。)、
転倒して骨折しても仕方ありません、万一死亡しても仕方ありません、
ただし、苦痛緩和処置は最大限必ずお願いします。」という内容の書面にサインした。
父は、大きな窓のあるその病室で、数日後に亡くなった。
息が楽になるから、と、酸素吸入器をつけさせても、自分ではずしてしまう人だった。
父を縛り付けて、24時間点滴を行えば、父は存命したのかもしれない、
しかし、これでよかったのだ、と、何度も、自分一人で納得している。
Posted by 匿名 at 2020年01月04日 01:47 | 返信
2020年も長尾先生どうかお元気でよろしくお願いいたします。めげそうになると長尾先生のブログ見て、なんとか頑張れている私です。例年のことではありますが、私も仕事始めはお看取りでした。朝夕と老健と特養で穏やかな平穏死。在宅でも施設でも平穏死は日常の延長上にあるものですが、やはり特別です。認知症であってもご自分の最後はわかっていっらしゃる感じがします。しっかり手を握ってうなずいてそのうち眠るようにという方、すーすー眠っているうちに下顎呼吸になってという方、どの方もせいいっぱい生き抜かれてのご立派な最期。悲しみと共に、その人生の終わりには、惜しみない拍手がふさわしいように思います。その拍手が聴けるその時まで私も死ぬまで生きる所存でおります。
Posted by 遠い声 at 2020年01月05日 01:25 | 返信
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