このたびURLを下記に変更しました。
お気に入り等に登録されている方は、新URLへの変更をお願いします。
新URL http://blog.drnagao.com

「小説 安楽死特区」を書いた理由

2020年01月20日(月)

日本医事新報の1月号の連載は 
「小説 安楽死特区」を書いた理由、で書いた。
医師や看護師にも読んで欲しい。
2つの応援
クリックお願いします!
   →   人気ブログランキングへ    →   にほんブログ村 病気ブログ 医者・医師へ
 
 

日本医事新報1月号  「小説 安楽死特区」を書いた理由  長尾和宏    →こちら
         
市民の7割が安楽死に賛成
2019年末に「小説 安楽死特区」(ブックマン社)という書籍が世に出た。過去10年間、医学書や一般書を50冊以上書いてきたが、本書は初めての小説なので読者の反応が不安だった。さっそくある重鎮からタイトルを見ただけで「けしからん」というお叱りを受けた。しかし幸いなことにアマゾンの文芸部門1位になり発売1週間で重版された。応援して頂いた皆様に感謝申し上げる。なぜこんな小説を書いたのか、また各方面から頂いた様々な感想を今回、ご紹介したい。
本書を書こうと思った動機は単純である。近年、様々なメデイアによる調査では市民の7~8割が安楽死に賛成している。長生きして最期は潔く、という望みだろうか。またある高校で高校生自身が行ったアンケート調査でも7割の高校生が「安楽死に賛成」と回答した。案外ドライなのか、それとも高齢者の社会保障費の負担を懸念しているのだろうか。いずれにせよ日本は空前の安楽死ブームにあるといっていいだろう。著名人のなかには書籍やテレビで「日本でも安楽死の法制化を!」と声高に叫ぶ人を見かける。
しかしその前に聞きたいことがある。そもそも安楽死と尊厳死を区別しているのだろうか?もちろん両者は別物だ。一般財団法人日本尊厳死協会は安楽死に反対している。以前、有名な言論誌で「安楽死・尊厳死特集」が組まれていた。100名もの有識者に安楽死の賛否を問いその論拠が記されていた。しかしそもそも尊厳死と安楽死を混同したり間違えている人が大半であった。両者の区別がついていると筆者が判断できた有識者はたった数人だけ。日本を代表する有識者の見識がその程度であるなら一般の方や高校生の理解度はさらに低いのだろう。その一方で安楽死願望だけがどんどん膨らんでいく日本人の死生観に大きな違和感を覚えていた。そこで私はまずは両者の違いを小説という形で描いてみよう、と思い立った。群像劇にして考えてみよう。しかしさすがに慣れない作業に3年間も費やすことになった。
 
 
リビングウイル裁判と法制化は全く別物
2019年11月に結審した「リビングウイル裁判」(詳細は前号で述べた)といわゆる「リビングウイルの法制化」はまったく別物である。この基本的なことですら誤解している人が多い。そもそも両者は次元がまったく違う。前者を一次元とするならば後者は三次元くらいの大きな差がある。しかし先日、ある医学会の大御所が「日本でもリビングウイルが法制化されたが・・・」と講演されていて驚いた。もちろん講演終了後、慌てて説明申し上げたが、医学界のリーダーにおいてもリビングウイルや尊厳死・安楽死に関しては充分に理解されていないようだ。ちなみにリビングウイルという言葉を2019年11月まで死語にしてきた国家は世界中で日本だけである。一方、リビングウイルの法制化については10年以上前から議員立法を目指す議員連盟はあるもののこの数年、ほとんど動きがない。つまりリビングウイルは社会的には認められているようだが法的にはまだ認められていない、先進国では唯一の国のままだ。しかしリビングウイルを尊重した自然死は在宅現場においては概ね可能であるので社会的には認められつつある。
尊厳死はリビングウイルの法的担保がなくても可能である。私は在宅でお看取りした1200人はほぼ全員が尊厳死であった。リビングウイルはなくても何らかの本人の意思が確認ないし推定できて人生会議のような話し合いを経て尊厳死されている。一方、欧米諸国においても安楽死はその法律がないとできない。日本において尊厳死に関する法律は現時点では全く見通しがたたない現状、安楽死の法律など到底無理筋であろう。つまり現時点では多くの市民の安楽死願望は叶わぬ夢なのである。しかし願望と憧れだけは膨らむ。
東京五輪後の日本経済の落ち込みが予想されている。一方、政府の基本方針は「規制緩和」である。先進医療に関しても全国各地に「特区」が定められている。そうであるならば多くの国民が望む「安楽死法制化」を国が法律で決めた「特区」でのみ許可されたと仮定したらどうなるのか。いろいろ夢想した。できるだけリアリテイのある安楽死のシミュレーションをしてみた。
 
舞台は2024年の東京
これまで尊厳死関連の本を10冊以上書いてきた。できるだけ分かり易く書いたつもりですが、概念的で分かりにくいという声もたくさん頂いた。ならば「小説」という形で尊厳死を自由に表現してみたい。4年前に世に出た「抗がん剤・10のやめどき」は小説仕立てであったが、ノンフィクションが混じっていた。従って今回が「初めて」の本格小説である。がんの終末期、認知症の終末期、臓器不全症の終末期、それぞれを描いた。これまで書いてきた本のエッセンスをふんだんに散りばめた。小説という表現手段はエンターテイメントであると同時に市民がある命題を考える近道でもある。もちろん医療や介護の関係者にも読んでもらうことも意識した。本書の感想は読み手によって様々だろう。「感想を自由に語る会」みたいなものが病院や施設や教育機関で開催されることが私の夢である。
特区をどこに設定するかに関しては少々迷った。東京か大阪か、あるいは北海道や沖縄をはじめとする地方とするか。結局、2024年の東京の汐留地区を特区に設定した。東京五輪後というキーワードを意識した。しかし関西の場面も多く具体的な地名もたくさん出すことでリアリテイを意識した。安楽死を絵空事としてではなくリアルに描きたかった。読んで頂ければ分かるだろうが私らしき老人も登場する。実は私自身なのだが。これまで自分が書いてきた本のなかで一番読んで欲しい一冊にしたかった。今、振り返るとこの小説を書くために沢山の本を書いてきた気がする。
 
様々な批判を受けて
 何人かの医師を含む有識者からさっそく読後感想を頂いた。ある人からは、「社会保障費が足りないから安楽死なんてあり得ない」と。また「人工透析が健康保険から外されることもあり得ないから修正すべきだ」とのご批判も頂戴した。私は「しかしこれはあくまで小説なのでその辺はエンターテイメントとしてご理解を」と返信した。タイトルにちゃんと「小説」と銘打っていても、現状が破綻するようなシナリオは医療界からは強く嫌われるものだとあらためて感じた。
 またある人からはこんな感想を頂いた。「いつ安楽死するの」と。これ以上はネタバレになるが、要は「もっとスッキリと安楽死させてよ」という声も頂戴した。また「映画ジョーカーを思い出した。登場人物がみな強烈な個性で誰もがジョーカーに思えた」という声も。こんな感想が一番嬉しい。繰り返すがこれはあくまで「小説」である。正解がない命題にもがき苦しむ人間模様を在宅医療に携わる医師の立場から自由に描いただけだ。人気映画「ジョーカー」のジョーカーの心の闇を描くような筆力は私には無い。しかし在宅医療や終末期医療に関する問題提起はなんとかできたのではないかと思っている。嬉しいことに早々に映画化のオファーも頂いた。
「是非とも続きを書いてほしい」という要望も頂いた。たしかに今読み返せば220ページ足らずの分量では尊厳死・安楽死への想いを充分に描ききれていないかもしれない。そして「第二弾はいつ出るの」との質問も。もし第一弾がそれなりに評価されたら、続編を書こうかなと思った。そこに「なんで東京やねん、お前がおる尼崎での安楽死やろが」という声も飛んできた。そこで「よーし、次は尼崎を舞台に続編を書いたろか」という想いが持ち上がってきた。以上、私の初夢である。
 


@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@


おかげさまで、書店には「3刷り」が並んでいるそうだ。

石破茂さんや高橋伴明さんから、感想文を寄せて頂いた。→こちら

昨年以来、講演会が終わると「本当に特区を作って下さいよ」
との要望を頂くがそれは政治家の仕事であり町医者には無理。


でも多くの要望を頂いたので、続編を書こうとは思っている。
次の特区は尼崎にして描いてみたい。

といっても日々の診療でヘロヘロで10個の連載で、とても
手が回らないので、たぶん2~3年はかかりそうな気がする。


まあ、このブログが終わらないうちに、第二弾を出したい。

恥ずかしながらこのブログだけがストレス発散、である。



PS)
新型肺炎に警戒!
























 

2つのランキングに参加しています。両方クリックお願い致します。皆様の応援が日々ブログを書く原動力になっています。

お一人、一日一票有効です。

人気ブログランキングへ ← 応援クリックお願い致します!

(ブログランキング)

にほんブログ村 病気ブログ 医者・医師へ ← こちらもぜひ応援クリックお願い致します!

(日本ブログ村)

※本ブログは転載・引用を固くお断りいたします。

この記事へのコメント

安楽死とは、尊厳死とは、の定義が、世の中には、まだ不明確の状態かと思います。この書物は、皆さんが、そのことを知る、或いは知ろうとする、良い、大きな切っ掛けになるといいなと思います。2、3年先の(と言わず、もう少し早く)、次号を楽しみにしています。

Posted by 小澤 和夫 at 2020年01月21日 11:47 | 返信

コメントする

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:

このたびURLを下記に変更しました。
お気に入り等に登録されている方は、新URLへの変更をお願いします。
新URL http://blog.drnagao.com


過去の日記一覧

ひとりも、死なせへん

安楽死特区

糖尿病と膵臓がん

病気の9割は歩くだけで治るPART2

男の孤独死

痛い在宅医

歩き方で人生が変わる

薬のやめどき

痛くない死に方

医者通いせずに90歳まで元気で生きる人の7つの習慣

認知症は歩くだけで良くなる

がんは人生を二度生きられる

親の老いを受け入れる

認知症の薬をやめると認知症がよくなる人がいるって本当ですか?

病気の9割は歩くだけで治る!

その医者のかかり方は損です

長尾先生、近藤誠理論のどこが間違っているのですか

家族よ、ボケと闘うな!

ばあちゃん、介護施設を間違えたらもっとボケるで!

抗がん剤 10の「やめどき」

「平穏死」10の条件

胃ろうという選択、しない選択

  • にほんブログ村 病気ブログ 医療・医者へ