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新型肺炎 10のQ&A
2020年02月23日(日)
新型コロナウイルス感染症に関する質問を沢山いただく。
まぐまぐの有料メルマガで配信した記事を転載しておく。
あくまで町医者視点だけどなにかの参考になれば幸いだ。
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まぐまぐ! 緊急提言 町医者だから言いたい! ~新型肺炎Q&A~
Q1 日本は今、収束に向かっているのですか? それとももっと拡大すると思いますか?
A1)
結論から言えば、どちらの可能性もあります。そもそも以下の2点を前提として知っておくべきです。1)PCR検査をしない限り感染者になりえません。しかし検査体制は貧弱なのでよほどのことが無い限り検査されません。つまり陽性者=感染者、ではありません。私の想像ですが、後者の数は前者とケタが1つか2つ違うと思います。2)今、公表されている感染者数は約1ケ月前の数字だと思ったほうがいいでしょう。潜伏期が2週間、検査から公表まで1週間と、公表されている数字は決してリアルタイム数ではなく過去の幻影のような数字だと思いながら眺めるべきです。今の実態は公表数とケタが違うはずです。
さて、今後の動向はまさに政治次第です。大阪府のように全イベントを中止したり、中国政府のように人と人の間を1m以上空けることを遵守すれば間違いなく収束に向かいます。2009年の新型インフル騒動を振り返ると明確な収束まで半年以上はかかっています。しかしオリンピックもあるのでそんな悠長なことは言っておられません。今すぐ、国を挙げて非常事態宣言をして人と人の接触を制限するしか手が無いと思っています。
Q2 市販のマスクはどこまで意味がありますか?
A2)
なんとなくマスクを着けている人がほとんどだと想像しますが、今一度、マスクの意味を考えましょう。自分のため?周囲のため?大半の人は前者で付けているのでしょうか。しかし今は主に後者のために着用するものです。だから今だけでも咳エチケットを守らない非国民には厳罰を科すくらいの勢いで国民啓発をすべきでは。もちろんマスクの種類やマスクの着用法も大切です。しかしマスクよりも第三者との距離感がもっと大切です。エアロゾル感染があるか無いかが議論されていますが、私は当初からエアロゾル感染があるという前提で発信してきました。だから市販のマスクは感染予防にはあまり意味がないと考えます。特殊な防塵マスクでないと感染防御にはならないのでは。つまりマスクは咳エチケットのためには意味があります。
Q3 なぜ、死者が高齢者にばかり集中しているのでしょうか?
子どもが死なないのはなぜですか?
A3)
高齢者が亡くなり易いのは、肺炎が死因の第四位であることとほぼ共通ではないか。
1)免疫能が低下して、2)老化に伴い気管支粘膜の蠕動低下があるため喀痰の排出能が悪く、3)肺炎になっていても熱が出にくい、ために診断が遅れがち、と考えます。一方、子供が死なないのは免疫能が高いからでしょう。インフルで子供が死ぬのはウイルス感染によるサイトカインストーム(炎症に伴い大量に放出されるホルモン様物質が悪さをするような状態)が起きやすい体質の子がいるからです。単純化するなら高熱発症タイプ=サイトカインストームが起こり得る、とイメージしてください。一方、新型コロナ=微熱持続タイプなので、小児のサイトカインストームは起きにくい。そして正常な免疫機能が発揮されやすい、のではないかと想像します。
Q4 検査をしたいのに、病院で検査ができないのはおかしくないですか?
A4)
国が検査に本気じゃなかった、からでしょうか。感染者数の数字を大きくしたくない、という思惑も働いたのでしょうか(過去形です)。もし本気で全例検査しようと思ったなら、いたって簡単なことです。国が民間検査会社に大号令をかければいいだけのことです。それをしなかった今、公表されている数字はすべて大本営発表の数字です。
ただし、すでに市中感染になったと推定される現時点では、検査をする意義は時間の経過とともに低下する一方です。すでに感染して自然治癒した「無自覚のまま感染終了者」も沢山いることでしょう。今、必要なのは個々の検査よりも人と人の接触を避ける期間限定の法的措置ではないでしょうか。すなわちもはや検査を推奨する時期を逸しています。感染症対策はなにをおいても初動につきます。11年前の新型インフル騒動の時もそうでしたが、検査体制ができあがった時には感染は収束していました。日本はCDCもありませんし、感染症対策においては、残念ながら今も後進国です。
Q5 町のクリニックで新型肺炎が疑われたとき、その後はどうなるのですか?
A5)
相談に来られたら保健所の相談窓口の電話番号を教える、だけです。受け付けもしません。これは国から指示です。その後は・・・。聞いた話ですが、電話がなかなかつながらないそうです。
新型肺炎の疑いのある人は所定の医療機関を紹介され、そこで検体採取し結果が出るまで6時間程度、密室に監禁されます。もし陽性ならどこかの指定病院に強制入院になります。措置入院なので医療費は無料だそうです。個人的には今後は町医者も関われるように法改正をすべきと思います。具体的には感染症法2類からインフルと同様に5類に下げるか、新型コロナ特措法を立法して即施行すべきだと思います。すべて厚労省ではなく政治家の仕事です。しかし今の国会は桜と領収書で混乱中です。
Q6 中国では、喫煙者の男性が多く罹患しているとの発表がありました。それはなぜ?
A6)
当たり前のことです。新型肺炎は痰が多く出て上手く排出されないタイプの肺炎です。喫煙者は痰の切れが悪いので肺炎になり易い。それが男性に多い理由のひとつかもしれません。臨床医として男性のほうが痰に弱いと思います。道に痰を吐いている人はたいてい男性です。そんな人が新型肺炎になるのでしょうか。本来、政府はタバコのことをちゃんと言うべきですが、絶対にしません。それはJTは今も国営産業だからです。財務官僚の天下り先になっています。拙書「禁煙で人生を変えよう」(エピック)にも書きましたが、天下りしたら4300万円もの年収がもらえるのです。国家公務員がタバコ会社にバンバン天下っている国は世界中で日本だけです。テレビでタバコのCMを流している国も日本だけです。一見、関係なさそうなタバコと国家の闇も、実は新型コロナ騒動と関係しているのだと思います。
Q7 日本で拡大したのは、日本人が抗生物質を大量摂取してきたことと関係あるのでは?
A7)
現時点では直接的な因果関係は分かりません。抗生物質の過剰使用は薬剤耐性細菌の問題です。今回はウイルス問題なので、一応別に考えています。
ただし、もし関係あるとしたら日本人の腸内フローラの変質です。日本人は小児期から大量の抗生物質を飲んで腸内細菌叢が悪い状態になっています。ピロリ菌の除菌においても大量の抗生剤を飲んでは結構、下痢します。これは腸内細菌叢の悪化を意味します。また多くの高齢者はPPIという強力な酸分泌抑制剤を長期的に服用しているので胃袋の細菌やウイルスを飲んだ時の消毒機能が低下しています。すると必然的に腸内フローラが乱れます。その結果、ウイルス感染に弱い体質に変質することを懸念しています。具体的には、小腸の腸内フローラや小腸の後半に多く分布しているパイエル板の機能低下を心配しています。つまり長期的には抗生剤の過剰使用が、ウイルス感染にも関わる可能性が充分あります。
Q8 今後国が求められる対策はどんなものだと思われますか?
A8)
まずは情報開示です。未知との闘いなので、情報量が多いほど対策が立てやすい。90点は無理でも、60点が目指せる。個人情報保護との兼ね合いが微妙ですが、市民が安心できるために必要と判断される情報はリアルタイムで出すべきです。本来ここは国がしっかり情報管理すべきところですが、重要な情報を消してしまうことが常態化しているので残念ながら期待できません。だったら自治体や民間が頑張るしかありません。たとえば和歌山県を見習うべきでしょう。
クルーズ船の情報も見事に隠蔽されていました。船内に取り残されていた当事者に感染者の情報が知らされていなかったことには驚きました。国家にとってはまさに有事ですから、せめてこれからでも現場の有識者を集めて毎日公開会議を開催し、3月中にピークを迎えるための対策を練りどんどん実行に移すべきです。時間との闘いになります。
具体的には人が集まることを避け、常に距離を空けることしかありません。つまりマスクや消毒や検査などのフェーズではなく、完全に「公衆衛生対策」になります。ウイルスは綱渡りのように人間を介して人間に伝播するので世界中の人間が2週間程度、2メートル以上の距離を空ければすぐに収束します。大切なことは「やるのであれば徹底的にやる」ことです。中途半端こそが致命的なのです。ダイアモンドプリンセス号がその好例です。現在行われている中国の感染症対策がとても参考になります。
Q9 長尾先生のご経験知から、過去のSARSや、新型インフルエンザと比べて、
今回のコロナウィルスは、どのくらい「ヤバイ」と考えられますか?
A9)
今回のウイルス自体は全然ヤバイとは思いません。ヤバイのは国家の危機管理、政治の機能不全です。
クルーズ船の陽性者のうち無症状者が半数もいる事実こそが新型コロナウイルスの弱毒性を象徴しています。今回、死者が出ているのは全て肺炎発見の「遅れ」だと想像します。キーワードは4日以上の37.5度の微熱とだるさと息苦しさです。他覚的には呼吸数22以上がいい指標になります。昔からある高齢者肺炎の特徴と同じことです。気管支喘息がある高齢者は特に気を配って観察すべきです。
新型肺炎は気管からの分泌液が多いために重傷者は一時的に人工呼吸器が必要なことがあります。しかし肺炎診断のタイミングが遅かったり呼吸器の数が足りないことが予想されています。繰り返しますが、ウイルスが怖いのではなく、怖いのは肺炎です。ウイルスのことは忘れてでも、「肺炎の早期発見」です。死亡者を出さないためには、この一言につきます。
Q10 岩田健太郎先生が様々なメディアで声を上げ始めましたが、
ダイアンモンド・プリンセスに乗船しYOUTUBE動画で警鐘を鳴らした行動が
けしからん、ということですが……専門医の正しい知識よりも、組織統制が
優先されるという考え方に、先生はどう思われますか?
A10)
功罪相半ばでしょうか。功は、感染症対策の中途半端さを電撃的に国民に知らしめた。罪は、感染症対策の中途半端さを世界に知らしめ日本の名誉を電撃的に落とした。「岩田先生の正しい知識」と言われますが、何が正しいのか何者も分かりません。それが感染症です。だから岩田先生の行為を評価するには時間が必要です。
岩田先生が言われることの大半は正論です。しかし理想論で、時期が時期だけに後出しじゃんけんのようにも思いました。病院の管理区分を感染蔓延中の船内にそのまま適応することは簡単ではありません。それよりも私は岩田先生くらい有名な感染症専門医は最初からクルーズ船に関わっているものだと思っていました。まずはそれに驚きました。2時間後に彼を船からつまみ出した政治家は極めて大きな過ちを犯しました。それは岩田先生が有能な専門家だからです。結局、メンツを潰された格好になった政治家が悪者になっていますが当然のことでしょう。惜しむらくは岩田先生にはもっと早くあれを言って欲しかった。私の立場では不可能ですが岩田先生の立場なら初期の段階であれが言えたはずです。そうしたならばより多くの人を救えたかもしれません。
ただ私は別の視点を持っています。そもそも3600人を2週間も横浜港に留め置く必要があったのか、ということです。これは当初からブログに書き、今でも留め置いたこと自体が失敗だったと思っています。具体的には無症状者の自宅安静と遠隔診療や在宅医療での対応法で台湾では具体的に検討されています。岩田先生とは別の考え方です。そんな私見はマイブログに書いてきたとおりです。
歴史は繰り返すと言いますが、まさに11年前の新型インフルの時も全く同じようなことがありました。しかし当時の民主党政権における舛添大臣はたとえば私のような現場の民間人の意見を聞く耳がありました。一介の開業医と官邸のルートがありました。電話でやり取りできました。だから封じ込めに成功したのでしょうか。後に世界から称賛されました。しかし今回はその逆になってきました。唯我独尊の政治主導が連日、墓穴を掘っています。被害者は全国民。そんな悲しい物語の第一幕(プリンセス編)に岩田先生が幕を引いた。しかしこれはもはや過去の出来事へのタラレバであり、何年後かの初期対応に活かすべき教訓です。
今はもはや第二幕。闘いはまったく違うフェーズに入ってきています。舞台はクルーズ船ではなく日本全土に広がる市中感染です。(本当は2月1日からそうなのですが、世間が気が付くまで3週間遅れ)。大黒ふ頭パフォーマンスが失墜するなか、同時に全国で一ケタ違う感染拡大が起きているのにそちらに目が向かっていなかったことが問題の本質ではないのか。
今から取るべき公衆衛生的施策には岩田先生はじめ評価が高い社会学者などできるだけ多種多様なメンバーに入って頂き、日本の叡智を結集すべきです。国の将来がかかっています。ウイルスとの戦争です。もしも官邸がそんな発想に変容することができれば、収束の目途が3月中にも立つはずです。叶うならばこの文章が官邸に届いて欲しい。
私は電撃的な発信法を選びません。感情では問題の本質は解決しないと考えるからです。町医者らしく「和」をもって市民の利益に寄与したいです。
PS)
今回、まぐまぐの有料メルマガの記事を特別に転載したけども、
このブログに書けないことは、あちらに書いて配信している。
様々なQ&Aも好評だ。
いずれ本になるだろう。
毎週金曜日の21時に配信。
購読料は月額660円(税込み)。
最初の1ケ月は購読料無料。(お試し)
3年目になるが購読者がどんどん増えている。
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昨夜も購読して頂いている医師2人に偶然お会いした。
沢山の医師にも読んで頂いているようで、有難いです。
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この記事へのコメント
ウイルス検査して新型だと分かったから騒いでるだけで、これ検査する方法なかったら、「今年の風邪は少し治りが悪い」で終わってるでしょうね。
こんなもんに騒いで隔離とかイベント中止とかバカみたいです。
殆どが無症状か、少し熱っぽい程度で済むウイルスを食い止めることなどできるわけがないし、その意義もないです。
高齢者や持病持ちは死ぬかもしれませんが、そんなのは他の病気でも死にますからね。どうでも良いことで大騒ぎしてるとしか思えないです。
日本国民も大半の本音はそうだから、隔離とか移動禁止とか出しても従うわけがないです。
Posted by 匿名 at 2020年02月23日 11:03 | 返信
Q7は面白い質問ですね。
長尾先生は早くから脳と腸の関係や腸の役割の重大さを書いておられますが、同様の記事を近頃よく見かけます。
60歳台半ばの私は、抗生物質漬けの世代ではないのでまだマシなのでしょうね。もう少し年配の団塊の世代がおクスリ大好きみたい。
しかし私は花粉に悩んでいます。今週に入ってテキメンに目が痒く鼻水クシャミ連発。コロナと間違えられそう。それともコロナかも。「コロナの初期に結膜炎になる」という記事がありました。眼科学会が言ってるとか。
Posted by 匿名 at 2020年02月24日 04:28 | 返信
新型肺炎も大事でしょうが、旧型の社畜型ウイルスもタチが悪いです
イベントや催しを中止しても、満員電車は中止されていませんしね
今でこそ7度台の熱発で休みを取れるところが増えてきていると感覚はありますが、社畜型ウイルスにより、7度台でも仕事へ行くよう脳がプログラミング化されているようです
挙句の果てに、会社で体温自慢し、「熱発にしても仕事をしに来た」と同僚にマウントを取る症状まで出るようですから厄介です。
Posted by 匿名 at 2020年02月24日 12:25 | 返信
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