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開業医でPCRや簡易検査をすることに反対する

2020年03月02日(月)

総理が「開業医でも保険診療でウイルス検査ができる」
ような趣旨を話したが、その施策に大反対する一人だ。
クルーズ船に続いて、第二の大失策を食い止めたい!!

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以下、佐々木先生の在宅医療カレッジのFBに
森田先生が書かれた文章を転載させて頂く。
とても分かり易い内容なので。

@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

PCR検査は特異度は高い検査なのですが、感度は高くないのです。

これ、超簡単に言うと、
「陽性」と言う結果は信頼性が高いものの、
「陰性」と言う結果は信頼性が低い、
ということ。

『検査結果は「陰性」でしたが、でもまだ陽性の可能性があります』

というのが本当の説明。

いまの我々のミッションとは何でしょうか?
言うまでもなく、それは

「コロナウイルスによる健康被害(特に後遺症を残すような重症化や死亡例)を極力減らし、この危機を乗り切ること」

です。

そのためには韓国のように「一日何万件でも検査をして徹底的に患者を洗い出す」と言う方法もあれば、「そもそも検査は信頼性が高くないので全員を検査対象にはせず対象を限定し、その代わり重症症例への対応を万全にする」と言う方法もあります。

韓国と日本、どちらが正解か、それはその国の医療事情や国民感情にもよるでしょうし、一概には言えません。

しかし、「検査を増やせばすべてがうまくいく」という単純なものではない、ということは強調しておきたいところです


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検査は、それが必要な人に、公的な機関で行うべき。
場所は、現在のように非公表ではなく、公表すべき。

たとえば市役所の横の公園にテントを張り、中国のような
「仮設式仮設式CT」を設置して、保健所職員が行うべき。

足りなければ、医師会の有志が宇宙服のような防護服を着て
換気のいい場所で検体を採取すべき。

大切なことは、そこで
・症状のある人や
・医師の判断で必要とされた人を
断ることなく、検査ができる体制だ。
結果は、そこで少し待ってもらい告げるべきだ。


動線が分離されていない開業医や中小病院でやることは
院内感染のリスクから絶対に避けて欲しい。

正々堂々と、検査が必要な人に速やかに検査できる体制を
各自治体に設置して、市民の不安に応えるべきだ。

それをしないと、大混乱になる。


@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@


以下は、昨日、「月刊公論」に入稿したばかりの私の論考だ。
時期を逸すると意味がなくなるので、掲載前に転載しておく。


公論4月号   クルーズ船における大失策をどう活かす
       ウイルス検査の落とし穴と急がれる高齢者対策   長尾和宏
 
大失策をCDCとして活かせ
 新型コロナウイルス対策において政府はダイアモンドプリンセス号を横浜港の大黒ふ頭に2週間停泊させるという措置を講じた。その結果は、大量の船内感染を引き越し数名の死者を出すことになった。つまり世紀の大失策を演じる結果となったが、船内に潜入した大学教授がまるでワイドショーのレポーターのようにYOU TUBEで感染症対策の不備を実況中継した。おまけに外交人記者クラブにおいて英語で世界に日本の失策を拡散し日本売りを招いた。その結果、欧米からは日本もアジアのホットスポットと見られることになり東京五輪の開催への影響が懸念されている。名誉挽回とばかりに安倍総理は2月29日に週間程度の全国の小中高の学校休業を要請した。一連の政治判断は賛否両論のあるところだが、未知の感染症対策における我が国の意思決定プロセスについて考えてみたい。
 日本における感染症対策に決定的に不足しているのは米国のCDC(疾病対策機センター)のような感染症のプロ集団である。欧米はもちろんアジアやアフリカにもCDCが設置されて意思決定の一翼を担っているが日本はそんな機関が無い。今後の政策の誤差を少なくするためにはクルーズ船の教訓を活かすべく至急にCDCを設置すべきだ。ちなみに筆者は2月5日からずっとマイブログで「閉じ込めれば全員が感染するのですぐに下船させるべきだ」と主張していたが、残念ながら一町医者の声は届かなかった。
 
PCRや簡易検査の是非
 日本において新型コロナウイルスのPCR(遺伝子増幅検査)や簡易検査キットの実施数が少ないことがテレビのワイドショーなどで盛んに報道された。たしかに検査体制がブラックボックスであること自体が国民の不安を増大した。しかしそもそも検査をしない限り感染者数は増えない。いや、増やしたくないという思惑もあったのか。保健所に検査を依頼しても断られたと証言した医師がいた。検査能力に限界があるので、もっと民間検査会社を活用すべきだという声もあった。しかし本当に検査数を増やすことで国民は幸福になるのだろうか。
まずは検査の感度が3~5割程度であることを知るべきだ。陽性の場合はそれでいいだろうが、陰性ならば安心、とはいかないことに注意が必要だ。ウイルス量が少なかったり、咽頭にはいないが肺の奥にいたり、病期によって陽性に出たり出なかったりするので、白か黒かの絶対的な指標にはならない。あくまでひとつの目安に過ぎず、ある時期に陰性と判定された人が後にウイルスをまき散らす可能性が充分ある。実際、退院した患者さんの14%が再陽性になることが指摘されている。ウイルス検査が保険適応になり一般の医療機関でもインフルと同様に行えるようになったら大混乱が起きるだろう。不安神経症の人は自費ででも毎日検査に来るだろう。職場や地域や学校では差別が心配だ。検体採取した医師や看護師が院内感染すれば医療崩壊を引き起こす。陽性者が判明した会社や組織は大混乱に陥る。そもそも治療法のない8割が軽症であることが分かっている感染症に対して風邪症状ないし無症状者に不安定な検査を広く行うことは利益よりも不利益のほうが大きい。だから重症者の確定診断だけに対象を絞ってきた政府の判断は結果的に正しかった。
 
高齢者問題なのに対策なし
 そもそも新型コロナウイルス感染症は高齢者がハイリスクである。高齢者が感染すると重症肺炎になり易いことが分かっている。中国における80歳以上の感染者の致死率は21.9%なので日本においても子供だけではなく高齢者にも目を向けるべきだ。後期高齢者は要介護認定率が高く、在宅療養や施設で療養している人も多い。実際、高齢者施設では常に誰かが肺炎症状を起こしているが多くは在宅医療で対応している。平時は誤嚥性肺炎として加療するが、この時期は保健所に届け出るべきかどうかという相談を何件か受けた。もしも陽性と出たらテレビで臨時ニュースが流れて施設の介護職員は全員濃厚接触者として強制的に検査を受けることになる。検査が陰性でも2週間の自宅安静を命じられれば事実上、その施設は閉鎖となる。経済的基盤が脆弱な小規模事業所は倒産するだろう。すなわち、高齢者施設においては保健所通報=介護施設の自殺、という想像力をもった施策が必要である。ダイアモンドプリンセス号では帰る家がある人が軟禁されたが、介護施設には帰る家が無い人が多くいる。介護崩壊させない施策を国民に提案すべきだ。
 新型コロナウイルス感染症は3月1日現在、感染症法2類に指定されている。陽性が出れば、強制入院となる。そもそも大量の陽性者を受け入れるベッドがあるのだろうか。また80代、90代の高齢者の重症肺炎に一律に人工呼吸器を装着するのだろうか。そうなると施設において微熱が2日以上続き息苦しさを訴える人を保健所に通報することが全体の利益にも個人の利益にもならない可能性がある。すなわち生命倫理的な問題も絡んでくるので個別に丁寧に検討すべきだ。まさに国が進める「人生会議」であるが、政府はそれに気が付いていない。ならば有識者や有志を集めて丸一日かけて施策を練るべきではないか。私はそうした「国民人生会議」を提案している。高齢者こそ現場の知恵を結集すべきである。そして柔軟な個別対応を可能にするためには、少なくとも後期高齢者においては感染症法2類を外して季節性インフルと同様の5類に落とすなどの政治判断が早急に必要と考える。


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高齢者施設問題に関しては、明日3月3日(火)15:40~
参議院の予算委員会で梅村聡議員(医師)が質問に立つ。
是非、NHKの生中継で観て、現場の意見を書きこんで欲しい。



PS)

今日(昨日)は、日曜日だったけど大忙しだった。
前日に午前3時の看取り、今朝は午前7時の看取り。

午後も緊急往診で右往左往で、気が付けば日が暮れた。
日曜日の午後から夜が、在宅医療で一番忙しい時、だ。

ついに兵庫県で第一号が出て近くの病院に入院。
実は、もう既に何千人もいるんじゃないかなあ。


 
 



 

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この記事へのコメント

今回の内容、まったく同意。PCR検査一般拡大には大反対ですが、質問です。
高齢者が重症化ハイリスクですのでこちらを優先的に守らなければならないことはよく理解できますが、施設の集団感染を防止するためには高齢者を感染者にできるだけ接触させないことが優先されます。
いちばんウイルスを持ち込むのは1に施設の職員、2に面会者家族、3に施設訪問診療医になりますが
最近2は多くの施設で面会謝絶になりましたが、1と3は避けようがないです。
1と3の人にはたとえ不確実でも無症候状態でも定期的にPCR検査をしたほうがいいでしょうか?
特に3の外来診療を兼任しているは、保ウイルスのハイリスク者ですので、持ち込むリスクが一般人より高いのではないかと施設側も警戒するのではないでしょうか?
非発症者、無症候保ウイルス者が多数存在することが、感染拡大防止を困難にしている気がします。
誰が無症候保ウイルス者はわからないが、発症者と同程度ウイルスを保持しているようですので、
市民全員が自分も保ウイルス者の可能性ありと考えて、公共の場所や対人的環境ではマスクを着用したほうがいいのではないかと考えます。

コロナ検査の保険適用自体は反対しませんが、やはり気管支炎、肺炎など相応の下気道炎症例とその濃厚接触者に限るべきだと思います。軽症の上気道炎患者にまで検査を拡充するのは賛成できません。

Posted by マッドネス at 2020年03月02日 11:14 | 返信

新型コロナ肺炎は詳しい事はわかりませんけれど、病気はいつも「疲れた人」に取りつくと思います。
長尾先生も、早めはやめに休みを取って、睡眠と栄養を取って下さい。
あんまり集会とか、研修会とか計画しないようになさった方が良いと思いますけど。
「私は風邪ひかない」等と言わないで用心が肝心です。
中国の漢方医のおすすめの「清肺排毒湯」って販売してるんですか?

Posted by にゃんにゃん at 2020年03月02日 01:11 | 返信

長尾先生は、議員にツテがあるようなので、そちらへ情報伝達っていうのはできないんでしょうか?
結局、あと出しじゃんけんばっかになってしまっているのでそう思いました。
やっぱり法律を作る側に回らないと何もならないんだと痛感しております。

Posted by とおりすがり at 2020年03月02日 02:42 | 返信

長尾先生のご意見、ご提案、全面的に支持します。大賛成です!日本医師会が動いてくれますことを心から願っております。日常業務で大変お疲れのところ、最前線で働く医療従事者のみんなが心で思っていることを文章にしてしっかりまとめていだだきましたことを、心より深く感謝申し上げます。

Posted by 遠い声 at 2020年03月02日 11:27 | 返信

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