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息苦しい人が増えている

2020年04月17日(金)

今週は、息苦しさを訴える人が増えている。
連日の報道の影響もあるのだあるのだろう。
しかし息苦しさだけで、はPCRの対象外だ。
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「息苦しい」と訴える人が増えている。

富川アナや石田純一さんの影響が大きい。
あの報道を見ていたら私も息苦しくなる。


看護師さんや保健師さんやサービス業に多い。

1)コロナ肺炎ではないか
2)自分がウイルスをばらまいているのではないか
3)家族や上司から「行ってこい」と言われたから来た。



1)の人には、息苦しさだけではPCRの対象にならない、
発熱がないとコロナ肺炎の検査はしないことを説明する。

尼崎市では、38.5d度X4日以上が
PCR検査の最低条件なので自宅安静で様子を見るしかない。


2)の人は、責任感が強く、気が弱い。
とてもいい人が、自責の念に苦しんでいる。

とりあえず経過観察をお願いしているが、
携帯電話に何度もかかってくるのが特徴だ。


3)の人も、説明にも時間がかかり、困っている。
「コロナの有無は誰も診断できない」と説明する。

「息苦しい」と言っただけで「病院へ」と指示する家族や
上司が多いが、それだけで医療機関に来られても、困る。

屋外で距離をとって、じっくりと問診をする。
呼吸の視診だけで、呼吸不全があるかどうか分かる。

診察をしないのは、お互いに濃厚接触を避けるため。
そう張り紙をしているのだが理解されない人もいる。

CTを希望される人には、発熱が必須条件であることを伝える。
コロナスコアが5点以上ないと、CT検査は完全に過剰医療だ。

以上は、すべて無料でボランテイアだ。
しかし理解されず、憤慨して暴言を浴びせられることもある。

しかしほぼ全ての医療機関が「あっち行け!」という状況の中で、
少しでも地域の人のために、という想いでやっているので想定内。



今週は、毎日、大きなニュースが多い。

きっと明治維新はこんな状況だったのだろう。

徐々に徐々に、しかし一年たてば、全く違う世界に激変する。



・緊急事態宣言
・PCRの要件厳格化
・有名人の続々感染、が重なっている。

そこに北海道大学の西浦教授の
「無策だと41万人が死亡」という発言の影響も大きい。


私まで「そう言われたら息苦しいかな?」という気がしてくる。
得体のしれない緊張感が続くと、確かに息が苦しくなってくる。

パンデミック+インフォデミック、への過剰反応という要素もある。
政府が「経済か命か」から、「命を優先」に切り替えた週でもある。


よく問診すると
・パニック障害
・過呼吸症候群
・慢性心不全の急性増悪
・COPDの急性増悪
・MAC症の急性増悪
・ただの肺炎
・がん闘病中の胸水貯留
・自然気胸・・・・だったりもする。


こうした難問に立ち向かうことは誰でもできない。
普段から総合診療をしている医師しか、できない。


コロナと判明すれば専門医にバトンタッチすればいい。

PCRの検体採取は、専門家に任せる。

私たちは、そこに至る前の、沢山の風邪症状のある人や
ただただ不安を訴える人に、逃げずに対応しているだけ。


要は、防波堤の役割である。
PCRのトリアージをやっている。

敷居の高いPCR検査だが、陽性率は低い。

国会議員から全国データを入手した。


3月24日から30日・・・10%
3月31日から4月6日・・・10.6%
4月7日から13日・・・15.1%


案外低いなあ、という印象。
尼崎市はもっ高そうだが。

今のところ、陽性者数に比例している。


通常診療と在宅医療と沢山のお看取りと並行して
そのような「人間防波堤」にもなっているだけだ。


無料相談だけの人にも、携帯電話を教えて、メールでやり取りもする。
保険証のチェックもしていないので、どこの誰か分からない人もいる。

国会で現金10万円給付が議論される中、
相談だけで保険診療するには抵抗がある。


しかしそれでも、文句を言われたり、罵倒されることも。
「濃厚接触を避ける」意味が分からない人がまだ沢山いる。

それでもめげずに、地域の人に尽くすことが私達の使命だと思う。
これはまさに、「言うは易し、行うは難し」で、極めて難問だ。

もしも自分が発熱したら、すべてがパーになる。(診療停止=廃業かも?)
何百、何千人に迷惑をかけてしまうかもしれない立場にいる。

かつてないストレスで交感神経は緊張しっぱなしだ。
普段ならスポーツと音楽で発散するが今はできない。



だから敵前逃亡するのか、防御しながら立ち向かうのか。

どちらも賭けになるが、私は後者を選んだ。

パーになればなったでいい。
風評被害で潰れても、それは神のお告げ。

アホな町医者やなあ、と笑い物になる。

それで結構。

100人の職員の健康と雇用をしっかりと守るのも自分の仕事だ。
職員は毎日、13時から30分間の長尾放送をzoomで聞いている。

今日も全職員に檄を飛ばす。

先が見えない戦争、だと思う。

その中で私達が守るものは何?

・自分の命?
・家族の命?
・患者さんの命?

もちろん全部大切。
でも敢えて優先順位をつけるとしたら・・・


人工呼吸器を巡る命の選別が議論されているが、
私達最前線は、自分の生き方、を問われている。

嬉しい事に、また幸いな事に
まだ脱落者は一人もいない。




PS)

触らずに問診して、怒って帰られた方、本当にゴメンナサイ。

それは、私が貴方にうつしたら迷惑をかけるかも、なのです。

国の指示どおり熱が無ければ自宅で安静にしていてください。

どうかご理解ください。


















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この記事へのコメント

選別者外来では、診察室の医者は防護服完備で衝立で向かい合って問診だけしてますね。
検査対象者は別の陰圧室に誘導して、別の人がPCR検査をする。役割分担が明確です。
問診も立派な診察なのですが、それを理解してくれない人が多いようです。
接触しない方法としては電話診療・オンライン診療もありますね。対面診察はハイリスクですので。
初期の肺炎にリスクを冒して無防備で聴診するから、医者が感染してしまうのでしょう。
実際に聴診やレントゲン検査は異常が確認できない事が多く、初期の肺炎診断には役に立たないです。
酸素飽和度は小さい測定器を置いておき、各自測定してもらう。
94%以下で発熱、せきを伴っていれば、CT検査かPCR検査の対象になるでしょうか?
90~92%だとすぐ酸素投与、入院ですね。重症化一歩前です。
心理的呼吸苦を除外するためには、酸素飽和度測定器をレンタル配布するのが最適ではないでしょうか?

Posted by マッドネス at 2020年04月17日 11:50 | 返信

長尾先生、本当にありがとうございます。
何となく不安で息苦しいなあと感じている今、先生のお言葉を読んで励まされ気力が少し戻ってきました。
これからもよろしくお願いします。

Posted by 長尾先生のサポーター at 2020年04月17日 01:41 | 返信

閉塞感とは、こういうことなのか、と分かった気がする。
息苦しい、と先生の顔を拝見できる地域・距離の人が羨ましい。
青空診療しかも無料とは贅沢な極み。
怒鳴った患者さんは、先生に甘えたかったのかも知れないですね。
我が子(大人ですが)が、仕事休業になって、心からホッとしている。
電車通勤が心配で心配で、毎日落ち着かなかった。
対策本部中枢を取材した番組を見た時、北大の教授が仰るのを聞きながら、
遅い・遅い、と言われる日本の対応だったけれど、パニックを避けるため? と
そう思ったことがありました。
冷静な日本人のようでいて、ある種平和に浸った国だから、ふとしたデマで
買い急ぎ騒動が起きたりしていたし、パニックが起きる事を心配したでしょう。
データを見て、ひたすらデータを見てタイミングを見計らっているのだな、と
思いました。固唾を飲むような思いで番組を見ていました。
教授が仰しゃった「無対策なら41万人が死亡」という発表が凍みます。

Posted by もも at 2020年04月17日 01:49 | 返信

2年前の今頃、救急搬送され救命していただいた病院。先月陽性者が出て外来一時中止、今月救急外来に黄信号、来月の検査再診予定がどうなるか。
地元老人会のクラブ、体育系10・教養系7が6月まで活動休止。一つのクラブ講師を拝命しているが、会場が閉鎖しているので動けない。4カ月のブランクで済むはずがなく、1年間休止となりそうだ。
フィットネスクラブの代行インストラクターもやっていたが、クラブ閉鎖で本業のインストラクターの方々はどうしているだろうか。公民館にサークル登録して自主的に文化活動をされていた方々はどうしているのだろうか。

道を歩いている人も、覇気がなく心なしか下向き加減。長尾先生おっしゃるとおり、世間全体が「息苦しさ」に覆われている。
見えない相手との付き合い、仕事、生活、学びの不安・・・。
「ここ1,2週間」「この3連休」「最低でも7割」。長いマラソンなのに、100m、100mと鞭で追い立てられているようだ。
アメリカでは「大統領選ファースト」。日本では「2020ファースト」だった。

「息苦しさ」に、仕事に身が入らない。「曜日」の感覚はあるが「月日」の感覚に乏しくなった。「2020」ってなんだった、「令和の時代」ってなんだった。
「国難だ」「戦時だ」と叫ぶ人。「緊急時だ」「非常時だ」と叫ぶ人。
いたるところで、「医療崩壊」が差し迫ってきた。なんとも息苦しい。

近くの公園から、離れた大きな公園に行ってみた。ガラガラだった。そこで好きなルーティン、老人会クラブ60分プログラムの復習。(なんという片仮名英語!)
10年以上やっていない「套路」の中に、シニア向けの「宝」が眠っていないか。体幹を鍛え、免疫力を高めるシンプルな身体技法はないか。
毎日、外に出でて鍛錬しよう。同類に出会うかもしれない。

Posted by 鍵山いさお at 2020年04月17日 08:01 | 返信

先生何時もいろんな発信ありがとうございます❗こんな心細いとき先生のブログがとても為になり、心強いです。先生のブログが何日かないときは先生大丈夫か心配でした。今はカラオケが出来なくなっている先生が心配です。一人で背負わずに、無理しないでください。まだまだ長くなりそうですから。私は孫たちと山登りに行ったり、友達と携帯で元気確認でストレス発散です。先生ウイルスに負けるな‼️

Posted by イルカ at 2020年04月17日 10:06 | 返信

これから半年…

ほんとに 「優しさ」が少なくなってきました
コロナ渦になって
見えないものが見えてきた…って感じです

自分らしく輝いていくことって
本当に難しい時代になってきましたね

Posted by 宮ちゃん at 2020年10月16日 10:48 | 返信

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