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70段の階段のまだ1段目にすぎない

2020年04月25日(土)

「70段の階段のまだ1段目にすぎない!」
今、入稿したばかりの「月刊公論」の原稿だ。
掲載されるのは1ケ月以上先なので仕方ない。
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月刊公論6月号 

70段の階段のまだ1段目にすぎない
疫学調査に基づいた段階的戦略を練る   
長尾和宏



感染者はPCR陽性者の100倍
 
 毎日、世界各国から新たな新型コロナウイルス感染者数が公表されている。いったいどれぐらいの感染者がいるのだろうか。それはどんな検査に基づいた数字なのか。アメリカの複数の州の疫学調査によると感染症数は公表されている数字の50~85倍と推定された。日本においても慶応大学病院で、無症状の入院患者さんにPCR 検査を行ったところ6%が陽性だったという。院内感染ではなく市中感染を大学病院に持ち込んだのであろう。内外の疫学調査を総合するとPCR 検査で確定診断された数十~100倍もの感染者がいると推定されている。つまり日本においては本稿を書いている4月24日現在、100万人程度の感染者がいる。そうなると、もはや市中感染と考えたほうが合理的であろう。

 感染の蔓延防止と経済活動の再開の狭間で政治判断は苦悩しているが、感染者数と死亡者数の推移に呼応した形で政策を講じるべきだ。死亡者数は確定的な数字である。しかし感染者数は日本においては、PCR 陽性のみを数カウントしている。PCRは感度は半数程度なので、半数はカウントされていない。私自身の経験では胸部CT 検査で典型的なコロナ肺炎像を呈していてもPCR 検査で陰性と判定された症例がある。保健所はPCR陰性者の監視の目を緩めるが、私は携帯電話でそのような患者さんを治癒までフォローしている。非常に長い臨床経過をたどるが、通常の風邪や肺炎とは違う新型コロナに特徴的な経過である。もしもPCR 陽性者の100倍の感染者がいるとすれば保健所は感染者100人のうちたった1人だけを病院やホテルに紹介して追跡しているだけで、99人の感染者は野放しである。99人のPCR偽陰性ないしPCRを受けられない人は、医療機関を彷徨難民化している。結果的に職場を退くなど悲惨な結末に追い込まれている。PCR 検査にこだわりすぎて、その他99人の感染者への対応は忘れられているのが現状だ。そんな想像力を持つ政治家が現れることを期待している。

 さて、どれぐらいの人が既に感染したかを調べる方法がいくつかある。血液を用いた抗原検査キットやIgG 抗体検査キット、さらには唾液を検体とした抗原検査も米国では用いられている。こうした簡易検査を用いて東京や大阪などの大都会、中小都市や田舎において各1000人程度を無作為に抽出して市中感染率を早急に調べるべきだ。都市部の医療崩壊や介護崩壊が叫ばれているが、感染蔓延の程度によって施策は変わる。


 
70段のまだ1段目

 3~5年後には60~70%の日本人が感染すると多くの専門家が予想している。集団免疫の当面の到達点である。日本において仮に百万人がすでに感染したと仮定しよう。つまり7千万人に対して百万人である。現在は70段の階段をまだ一段登った段階となる。これから5段、10段、20段、30段・・・と階段を登るにつれ、予防法や検査法や対処法や治療法は当然異なってくるはずだ。

 長い闘いにおいて思い付きの政策では対応できないことは明らかで戦略が必要だ。感染者が半数を超えると未感染者がマイノリテイーに転じる。その人をどのように保護するのか、免疫をつけるのか。すなわち新型ウイルスへの対応はある時点からオーダーメイドに移行する。
 
 現在、感染症法2類相当に指定されているが、どの階段になったら二類から三類、四類、五類に落とすのだろうか。そうした工程表に沿って政策を練り、国民に分かりやすく説明すべきである。現在のような場当たり的な政策では国民の不安や混乱は増すばかりだ。
 
 

変異に呼応した検査や治療法を
 
 ワクチンや特効薬の臨床応用が急がれている。しかし明確な予定はまだ示されていない。新型コロナは3万個の塩基を持つ長いRNA ウイルスである。長いがゆえに変異が激しくワクチン開発にはかなりの時間がかかるだろう。もしできても変異したウイルスには効かない可能性がある。同じことが特効薬にも言える。すでに100種類を超える変異が確認され、3種類に大別されるという。インフルにもAとBがあり1ケ月違いで両方にかかる人がいる。新型コロナも変異種に応じたワクチンや特効薬の開発と考えておくべきだ。

また抗原や抗体キットもどの変異種を検出するものか詳しく調べてから臨床応用を許可するべきだ。ここは日本独自の細かな戦略を練りたい。まだ70段の階段をまだ一段上っただけである。あと69段の階段をどうやって登るのか。それは正確な疫学調査に基づきフレーズ別に戦略を練るべきだ。ポストコロナを論じるのは時期尚早である。

 我が国でもドライブスルーPCR 検査が広がっている。近く、簡易キットによる抗原や抗体検査も可能になるかもしれない。しかし検査はやればいいというものではない。検査結果は陰性か陽性かではなく定量的に捉えるべきだ。人によっては抗体を獲得できない。つまりウイルスが持続感染する人がいる。ウイルス量が刻々と変動することが予想される。同じく持続感染をするウイルスとして B 型肝炎ウイルスやヘルペスウイルスの経過が参考になる。B型肝炎ウイルスは感染初期に免疫獲得でウイルスを排除する人がいる一方、一生持続感染で過ごす方もいる。その間にウイルス量は変動する。一方、水痘は小児期に罹患して神経根に残り、免疫能が低下した時に帯状疱疹という形で再び姿を現す。外国では疲労度を唾液中のヘルペスウイルス量で判定すると聞く。日本もPCR検査に固執することなく慎重に新しいウイルスの特異な行動と個人別の生体反応を考慮しないといけない。


PS)
日本赤十字社制作のアニメ https://youtu.be/rbNuikVDrN4


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この記事へのコメント

日本赤十字社制作のアニメ、今、見ました。
このウイルス戦争は、心や感情の戦争でもあるのですね。

Posted by 匿名 at 2020年04月25日 06:19 | 返信

昨日、市内の中規模病院へ行きました。目的は眼科受診です。まぶたの腫れと目のゴロゴロと充血が10日ほど継続していて、土日を前に不安だったので。
また、この数日、37.5以下だけど37.1~3℃くらいの体温。昨日も37.3℃でした。咳も出始めている。
不安は、お医者様がよくおっしゃる「インターネットの間違った知識」かもしれない「コロナの超初期症状が結膜炎。結膜炎を経て、咳や発熱となる・・・」 実際その通りかもしれず・・・

病院入り口で検温していて、おでこをピピッとやると36.3℃・・・
ここで黙って通れば良いものを「それ、間違ってるでしょ。37.3℃だったよ。昔の10分計で測ってきた。」  
「え? 本当ですか? じゃ、もう一回」 首で測るとちょっと上がったけど36.8℃。  
私はくすくす笑った。 結局、「腋で測ってください。」 
私「え〜〜黙って通ればよかった〜〜」 結果37.3℃。 37.5℃以下なので合格、通してくれた。

初めての眼科医師だったけど真面目そうな人だった。結膜炎ではなく強膜?角膜?結膜?に、ゴミのようなものがついていて自然に取れなくなっている、何やら(過労などで)新陳代謝ができない状態??? みたいなことらしい。(次回、行った時にもう少し詳しく、原因と再発防止方法を聞くつもりだが。)
その医師は処置後、数日で治りますからもし治らなければまた来てください、と自信ありげだった。

結膜炎ではなかったのだ。
医師は熱や咳の方を心配していた。しかし37.5℃を超えていないのでどうしようもない。

この1ヶ月めちゃくちゃ疲れていた。
あまり深く心配せず平常心でゆっくりマイペースで生活するのが良いと思う。

それにしても、病院入り口での検温のいい加減さ、は何と言うべきか、笑い話で済ませる?????

Posted by 匿名 at 2020年04月25日 06:35 | 返信

・体温計とパルスオキシメーターで計測
・外出自粛
・手洗い、マスク着用の励行
・一日一万歩目標の歩行

愚直なまでに、毎日実行しています。

階段、70段あがれば雨はあがるということですね?
頑張ります!

Posted by ワイドショー大好き主婦 at 2020年04月25日 08:08 | 返信

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