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要介護5の認知症や人工呼吸器装着ALSの発熱にどう対応する

2020年05月16日(土)

要介護5の認知症や人工呼吸器装着ALSが発熱したら。
誰もが「コロナかな?」と思ってしまうのが本当の話。
在宅医療連合学会のガイドラインを参考にして欲しい。
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要介護5の認知症や人工呼吸器装着ALSが発熱した!
そんな連絡が毎日ある。

在宅患者さんの発熱に私達は
どう向き合えばいいのか。

介護施設での発熱患者さんに
どう向き合えばいいのか。


私達は、日々、悩んでいる。

怯えている。

誰も助けてくれない。

教えてくれない。


そこに、在宅医療連合学会からガイドラインが出た。

長文だが、結局、
・電話でよく聞いて
・感染予防をして
・保健所と相談して
・上手に対応する、しかない。

時間のない人は、下線(私が勝手に引いた)と太字だけでも見てね。

最後のQ&Aが特に参考になる。



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在宅医療における新型コロナウィルス感染症対応Q&A 
2020年4月 
 
はじめに  本在宅医療連合学会は2020年3月会員に向けて、新型コロナウィルス感染症(以下COVID-19と 表記)が在宅医療現場に与える影響に関するアンケート調査を実施しました。その回答中で、多くの不安 や困難といった課題が表出されていました。そこでこの度、当学会はこの調査結果を踏まえ、「在宅医療 におけるCOVID-19対策のQ&A集」を作成し、在宅医療現場の医師および協働する医療・介護の多職 種の適切な感染症対策の一助となる活動を行うこととしました。 現在、COVID-19 感染者数の爆発的増加を目前とし、感染経路が不明な感染者が全国的に報告されて います。在宅で療養する人(以下療養者と表記)は高齢あるいは基礎疾患や障害を持ち、通常の外来等へ の受診が困難であり、時に介護サービス等を利用する等の特性を持ち、当該ウィルスの感染リスクある いは重症化リスクは極めて高いと予測されます。しかし、病院と異なる環境である在宅医療現場におけ るCOVID-19対応に関して明確な指針は出されていません。 今回作成したQ&A集は日本在宅医療連合学会・新型コロナウィルス対策ワーキンググループのメンバ ーが調査した研究結果やエキスパート・オピニョンを集約したものです。新型コロナウィルスに関して は未知の部分が多く、今後、新事実が解明され、新たな知見がでた場合にはQ&Aの内容も変わっていく ものと予想されます。そのため、このQ&A集は今後も状況の変化に応じ改定が必要です。会員の皆様か らの情報提供を歓迎しますので、日本在宅医療連合学会 zaitaku@juntendo.ac.jp まで「COVID-19に関 する情報」としてお寄せください。 一般社団法人 日本在宅医療連合学会 代表理事会長 蘆野吉和 


以下の記載内容は、2020年4月30日現在の情報を反映しています。また、今回は主に自宅での在宅 医療の実践に対しての、COVID-19に関連する項目に限定し、高齢者施設における在宅医療や訪問看 護サービスおよび訪問看護サービスに関する項目はあまり入っていません。今後は、これらについても 新規情報を入手しながらアップデートしていきますので、以下のホームページで最新版を確認するよう にしてください。 https://www.jahcm.org/   
 
 
 
Ⅰ COVID-19防御のための基本的知識
1)標準予防策の徹底 COVID-19の感染対策上重要なのは、呼吸器衛⽣/咳エチケットを含む標準予防策の徹底である1)。 標準予防策とは、感染症の有無にかかわらず、あるいは、いかなる病態であるにも関わらず適用され る感染対策であり、患者と医療従事者双方における医療関連感染の危険性を減少させるために標準的に 講じる感染対策である。 標準予防策では湿性⽣体物質である血液、汗を除くすべての体液、分泌物、排泄物、傷のある皮膚、 粘膜(気管、口腔、鼻腔、消化管、眼球、膣等)を感染性があるものとして取り扱う。 標準予防策には、手指消毒、個人防護具(Personal Protective Equipments:以下PPEと表記)、呼吸 器衛⽣・咳エチケット、環境制御(洗浄および消毒)、廃棄物の管理、隔離区域から出た患者ケアに使 用した器具・器材・機器・リネン・洗濯物あるいは廃棄物の梱包および輸送、患者の配置や移動、針刺 し損傷または鋭利物損傷の予防、などの項目がある。 2)状況に応じた隔離予防策の追加 この標準予防策だけでは感染経路が遮断できない病原体に対応する際に経路別予防策を追加するのが 隔離予防策である。経路別予防策としては、接触感染予防策、飛沫感染予防策、空気感染予防策などが あるが、COVID-19の疑いあるいは確定例では、医療施設では基本的には標準予防策、接触感染予防 策、飛沫感染予防策がとられる。では、自宅などの⽣活環境での診察やケアにおいてはどのような予防 策をとるべきなのか、在宅医療に関わる医療職や介護職の大きな疑問、不安となっている。 基本的な考えとして、COVID-19が拡大している現状では、在宅医療においても、誰もがこのウイ ルスを保有している可能性があることを考慮し、全ての療養者の診療において、標準予防策は当然のこ ととして、接触感染予防策、飛沫感染予防策などを状況に応じて追加する対応が必要となる。具体的に は、状況に応じて、PPEを選択し、適切な着脱が必要となる。あまり過剰な防御は貴重なPPEの無駄に つながり、不充分あるいは不適切な防御は療養者およびその家族、関係する医療介護関係者および自分 自身の感染に繋がる。 3)感染経路別予防策とPPEの選択2)  医療施設においては、ウィルスだけでなく耐性菌などの感染に常に曝されているため、個々の職員に 対して感染経路別予防策や適正なPPEの使用方法についての教育が日常的に行われ、職員の多くは病院 が作成した手順に沿って日常業務を行っている。感染対策の最も重要なポイントは、一人でも対応を間 違えるとすべての職員の努力が無駄となってしまう可能性があることである。  一方、在宅医療の現場では、⽣活空間であることより、医療現場のルールをできるだけ持ち込まない で、その家の環境にあわせた対策を行わざるを得ない。しかし、それでも在宅医療に関わる医療および介 護従事者は治療やケアにあたっては標準的予防策をしっかり実践する必要があることは認識すべきであ る。 今回のCOVID-19に対しては病院の医療従事者でさえ感染対策に戸惑いを感じているが、地域によっ ては地域内に蔓延している可能性もあり、在宅医療にかかわる医療および介護従事者も、感染対策を誰 かに任せるのではなく、感染防御に関する基本的な知識をしっかりもち、適切な対応を日常的に行う必 要性がある。 
 
 
 その知識として重要なものが感染経路別予防策と状況に応じたPPEの使用である。  

<感染経路別予防策>3)  ①標準予防策  標準予防策とは医療および介護従事者が日常的に行うべき感染予防対策である。 標準予防策では、血液、汗を除くすべての体液、分泌物、排泄物、傷のある皮膚、粘膜(気管、口腔、 鼻腔、消化管、眼球、膣等)を「感染性があるもの」として取り扱い、リスクに応じた適切な感染対策を 行うことである。特に、身体ケアに関わる病原体の伝播路として、手指を介する経路を断つことが重要で ある。このため擦式アルコール製剤による手指衛⽣を基本として、血液や体液など目に見える汚れがあ るときには、流水と液体石鹸による手指衛⽣を行う。その他の具体的対応を以下に示す。 ・血液や体液に触れるときや、触れる可能性のある時には使い捨ての手袋を着用する。 ・手袋を外すときは、病原体に手指が汚染される可能性があるため、適切に着脱し、直後の手指衛⽣が 必要になる。 ・口腔内の吸引、オムツや尿の処理など、衣類やからだの露出部位が汚染される可能性がある場合は、 ビニールエプロン(使い捨てあるいは消毒して再利用)を着用する。 ・エプロンを脱ぐときには、露出している上腕も考慮した適切な手指衛⽣を行う。 ・療養者に咳やくしゃみなどの呼吸器感染症状があるときには、サージカルマスクを着用する。 ②接触感染予防策  接触感染予防策とは、療養者との接触による感染予防だけでなく、療養者周囲の環境表面にも病原体 が付着している可能性がある場合に行う感染予防対策である。具体的には以下の対応である。 ・療養環境に入る前から使い捨ての手袋とガウンやビニールエプロンを着用し、診察や治療およびケ アを開始する。 ・医療および介護従事者はケアの間自分の眼、鼻、口には決して触らない。 ・ドアノブなどの高頻度接触面の消毒はできるだけ頻回に消毒するように家族や介護施設関係者に指 導する。 ③飛沫感染予防策 療養者に咳やくしゃみなど症状があり、飛沫感染がおこりやすい可能性がある場合に行う感染予防対 策である。今回のCOVID-19では、飛沫感染が起こりやすいため、感染者に接する際には飛沫感染予防 策は必要な感染予防策である。具体的には以下の対応である。 ・ケアするときに、医療・介護従事者および療養者がマスクをする。 ・療養者の1m以内で作業するときはサージカルマスクを使用する。 ・療養者は個室あるいは1m以上の空間分離を行う。 ・療養者が激しく咳き込んでいて、本人がマスクを着用できない時は、ゴーグルやフェイスシールドの 装着を検討する ・室内の換気を保つ。 ④空気感染予防策 病原体が長距離(1m超)にわたり感染性が持続する飛沫核の吸入を介して伝播する場合に行う予防策 である。 換気が不十分な室内で、エアゾル発⽣手技(例えば喀痰吸引など)を実施する場合などに適応される。 
 
 
 具体的には以下の対応である。 ・適切に換気された部屋を利用する。かならずしも陰圧室でなくてもいいが、あれば利用する。 ・1m以内で作業する場合は、最低でもサージカルマスクを着用する。 ・エアゾルの発⽣手技に際しては、N95マスク、手袋、長袖ガウンおよびゴーグルなどを装着する。

<PPE>  PPE は感染対策の要であり、現在もっとも不足しているものであるため、状況に応じて適正に使用 することが求められている。PPE の不適切な使用および必要な場面で使用せず治療やケアを行うことは 自分と療養者だけでなく地域を危険に曝すことになることを常に念頭に置くべきであり、必要なPPEの 確保は国を含めた行政および医師会等の団体、そして本学会の使命でもある。

①手袋:健常な皮膚に対するケアであれば手袋を着用する必要はない。しかし、血液、汗を除くすべて の体液、分泌物、排泄物、傷のある皮膚、粘膜(気管、口腔、鼻腔、消化管、眼球、膣等) 、体液に触れ る場合、感染性のあるウィルスで汚染されていると考えられる皮膚等の処置の時などでは着用する必要 がある。また、濃厚接触により感染の恐れがある場合には手袋を二重に着用する必要がある。
②マスク:分泌物や排泄物などが飛散して、鼻や口を汚染しそうなケアや処置時あるいは咳などで飛沫 を吸入する可能性がある場合にはサージカルマスク(5μmより大きい飛沫粒子を防護)を着用する。咳 やくしゃみをしている療養者ではできればマスク(特にサージカルマスクではなくてもいい)をしても らう。  現状では、サージカルマスクも不足しており、再利用することも認められている。サージカルマスク をはずす時にはマスクの外面を内側にして折りたたむことで接触感染をさける。 N95マスクは微細な飛沫核が発⽣する感染症(肺結核、麻疹、水痘など)やSARS、高病原性鳥インフ ルエンザなどの感染力の高い療養者のケアなど、限定された状況で使用するものであり、COVID-19 で は喀痰吸引などの際に使用する。 COVID-19においてN95マスクを使うのはエアロゾルが発⽣するような手技(気管内吸引、気管内挿 管、下気道検体採取等)に限定されているが、非常に不足していることから、本来使い捨てのものである が、再利用が認められている。再利用の方法は滅菌器を使う方法、新型コロナウィルスはプラスティッ ク、ステンレス、紙の上では72時間しか⽣存できないことが報告されていることから、通気性のきれい なバックに保管し毎日取り換えて5日サイクルで使用する方法もある。 ③ガウンあるいはエプロン:口腔内の吸引、オムツや尿の処理など、衣類やからだの露出部位が汚染さ れる可能性がある場合は、使い捨てのビニールエプロンを着用する。嘔吐や下痢などでウィルス等によ る環境の汚染があると考えられる場合や、接触感染する病原体や感染症をもっている場合には、あらか じめグローブとエプロンを着用してからケアを始める。  前腕まで汚染されるリスクがあるときには、袖のある使い捨てのガウンが必要である。  長袖のガウンを利用する場面とは、エアロゾルが発⽣するような手技、上気道や気道検体の採取(長 袖ガウンが不足している時は袖のないエプロンも可能)、体位変換や車いす移乗など、前腕や上腕が療養 者に触れるケアを行うとき(長袖ガウンが不足している時は袖のないエプロンも可能)、などである。  ガウンの供給量が限られている場合には、エアロゾル発⽣手技、濃厚接触を伴う活動に優先的に使 う。 ④ゴーグル、フェイスシールド:療養者が激しく咳き込んでいて、本人がマスクを着用できない時、検 体を採取するとき、エアロゾルなどが発⽣する手技を行うときに使用する。 ⑤キャップ、シューカバー:キャップは、髪の毛が汚染される可能性のある場合、シューカバーは、自 身の足が汚染されることを防止するために着用する。シューズカバーは在宅医療の現場では感染対策と して使うことはほとんどない。 4)環境消毒  コロナウイルスはエンベロープを有するため、擦式アルコール手指消毒薬および次亜塩素酸ナトリウ ムは新型コロナウイルスの消毒にも有効である。なお、環境に対する消毒薬の噴霧は十分な消毒効果は ないので、布やペーパータオル等に消毒薬を浸し、ふき取りを行う。 
 


Ⅱ 日本におけるCOVID-19対策の基本的戦略
1)感染拡大防止対策(感染制御)  感染者が少ない場合には、保健所による徹底的な感染拡大予防策が重要である。その要は積極的疫学 調査と呼ばれるもので、感染が確認された(PCR陽性)者に症状が出た時点から約14日間の行動(ど こでだれにどのような状況で接触したか)の聞き取り調査を行うものである。この調査の目的は、曝露源 の特定、濃厚接触者の特定、そして汚染している可能性の環境の特定である。  濃厚接触者の特定は症状出現2日前から隔離開始までの期間に接触した人の中から行い、以下の基 準に基づいて判定されるが、地域における感染状況や感染者の症状の状況あるいは周辺の環境や接触の 状況によっては多少基準の幅を広げてあるいは狭めて判定する場合もある。 
 濃厚接触者の判定基準(2020年4月20日) 
①感染者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者。 ②適切な感染防護(マスクなど)無しに感染者(確定例)を診察、看護若しくは介護していた者。 ③感染者(確定例)の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者。 ④その他:手で触れること又は対面で会話することが可能な距離(目安として1メートル)で、必要な 感染予防策なしで、「感染者(確定例)」と15分以上の接触があった者(周辺の環境や接触の状況等個々 の状況から感染者の感染性を総合的に判断する。 
・なお、④の必要な防護策として、感染者が適切にマスク(布マスクを含む)を着用していること、接 触感染予防として、感染者が接触者との面会前に適切に手指消毒が行われていることを示す。 
 
 
 ・また、医療機関においては、診察後に感染者と確定された場合で、診察時、発熱や上気道症状を有す る等の場合であっても、検体採取やエアゾル発⽣する可能性のある手技を実施していない場合は標準予 防策(サージカルマスクと手指衛⽣の励行)を徹底していれば濃厚接触者とは判定されない。また、検体 採取を行った場合では標準予防策に加え接触予防策と飛沫予防策(サージカルマスク、ゴーグルあるい はフェイスシード、ガウン、手袋)、エアゾル発⽣する可能性のある手技ではさらにN95マスクの着用を 行っていれば濃厚接触者とは判定されない。 
・濃厚接触者と判定された人のうち症状がある人はPCR検査を行い、症状のない人はPCR検査は行 わず(症状が出現した場合にはPCR検査を行う)最終接触日より14日間の健康観察が行われる。 
・ただし、濃厚接触者が医療従事者等、ハイリスクの者に接する機会のある業務に従事し、感染状況の 評価が必要と考えられる場合、クラスターが継続的に発⽣し、疫学調査が必要と判断された際には可能 な限り検査を実施することとなっている。 
・また、医療機関でCOVID-19を疑う肺炎患者が出た場合には、保健所と連携し、速やかにPCR検査を 行うことや、保険適用によるPCR検査を行うことができる体制を整えるよう通知が出されている(令和 2年3月30日) 2)感染者への医療体制の確保  感染者の隔離あるいは治療のための病床の確保、軽症者に対する健康観察のための施設の確保など が現在全国各地で進められている。その一方で感染管理のためのPPEが不足しており、PPEの供給体制 の確立が、病院だけでなく、診療所および在宅医療の現場(訪問介護や施設介護も含めて)今後の重要な 課題である。 3)既存の医療体制(在宅医療を含む)の堅持  感染症拡大時には感染者に対する医療体制の拡充が必要不可欠であるが、その一方で日常的な医療 体制が継続されなければならない。救急医療の破綻や通常診療に対する急性期病院の機能の破綻は地域 にとって大きな脅威である。このため、従来から進められていた地域医療連携体制の強化の一環として、 外来診療における診療所との連携(かかりつけ医への紹介)や在宅医療との連携により病院勤務医の負 担軽減をはかる必要があると思われる。 4)地域住民の不安への対応  COVID-19 拡大により、地域住民の不安が高まっており、その一方で、感染した人や濃厚接触者、 その人達が所属している団体や事業所、院内感染を⽣じている病院や所属する医療従事者やその家族に 非難、中傷や差別が実際におこっている。  この事象に対しての対策も感染症が拡大している際には重要である。  具体的な対策は、不安の解消のための正確な情報発信であり、情報発信においてはリスクコミュニケ ーションが大切である。  また、感染した人、濃厚接触者、関係する事業所、医療従事者等へのねぎらいが聞こえるような環境 を作り出す必要があり、様々な団体や行政が協働してこの対応にあたる体制を作ることが重要と思われ る。 
 
 
 
 
Ⅲ 在宅医療におけるCOVID-19への対応(一般的事項) 
1)在宅医療の現場におけるCOVID-19対策の原則 ①在宅医療の現場にウィルスを持ち込まない、持ち込ませない  療養者の多くは高齢者で免疫能が低下しているため、COVID-19に罹患すると重篤化する可能性が 高い。そして、COVID-19に罹患した場合、診断のためのPCR検査や入院のための移送の問題、人によ っては望まない病院医療を受ける形となる問題、また、治療により病状が改善したとしても、入院による 身体的・認知的機能低下がさらに進むという問題、望まない延命治療を受けるという問題、そして、関係 する多くの地域リソースに一時的な不足を招くなどの多くの問題が噴出することとなる。したがって、 特に在宅医療の現場での COVID-19 対策は徹底してウィルスをもちこまないことが最も効果的な対策 である。療養者は多くの場合一人で外出することができないはずで、ウィルスを持ち込むのは、同居家族 か関係する医療あるいは介護従事者である。したがって、同居家族に対する感染予防の指導および医療 および介護従事者の感染予防対策の教育と現場での実践が重要である。 
②在宅医療に関わる人(医師を含めて)はCOVID-19にかからない、濃厚接触者にならない。  在宅医療に関わる医療および介護従事者が COVID-19 感染者あるいは COVID-19 濃厚接触者にな ると、適切な医療や介護の提供が一時的ではあるが中断となる。したがって、日常診療においても、診療 外の時間における日常⽣活においても、感染者と接触する可能性のある行動を極力避ける必要がある。 
③発熱した療養者に対する臨床推論の力を高める(医師・看護師等)  在宅医療を受けている療養者は発熱することが多い。通常は、尿路感染症や誤嚥性肺炎が多いが、 COVID-19の感染拡大により、発熱がCOVID-19によるものでないかと疑うことは不適切なことではな い。しかし、発熱=COVID-19(疑い)と判断され、過剰なPPEの使用に繋がると、貴重なPPEが枯 渇し、在宅医療サービスの制限、あるいは感染暴露の可能性を高めることとなる。このため、COVID- 19の可能性がどれだけ高いのか低いのかを現場で判断し、その判断に基づき、適切な標準的予防法を実 践する必要がある。この判断の過程が臨床推論であり、具体的には、訪問前の電話等および診察時の情報 収集(療養者の病状および病状経過、これまでの同様の症状の有無、療養者あるいは同居家族がCOVID19曝露の可能性があったのかどうか、他の職種からの情報等)診察時の理学所見あるいは検査所見等に より、総合的に判断するものであるが、これは臨床能力そのものである。常日頃能力を伸ばす努力が必要 である。 
④関係者間で迅速に情報共有を行う  療養者には家族だけでなく多くの職種が関わっている。発熱の情報や、関係する事業所の状況(感染 者の発⽣や濃厚接触者の発⽣など)が逐次共有できないと、適切に対応できない可能性がある。例えば、 訪問診療を終えた後に、関係する介護事業所で2日前に感染者が発⽣した情報が提供されるということ はあってはならない。 ⑤PPEを適正に使う  病院などの医療施設では、複数のCOVID-19患者に対して同じ防護具を使って感染管理がなされているが、在宅の現場では、一人に対し一式の防護具が使われることとなる。すなわち、効率性が悪いため、 適切に使用しないと病院医療を危機に陥れることともなる。適切な使用とは、過剰な防御はしない、感染 対策として必要な場合には、しっかり防御する、必要があるが防護具がない場合には危険な曝露行為は しないこと、そして、PPEは決められた手順で着脱することなどである。 
⑥自分の身を守る  自分の健康管理をしっかり行い、毎日1~2回体温を測り、発熱がある場合や体調がすぐれない時は しっかり休養をとることが大事である。また、訪問診療では、移動があり、人に接触する機会が多いため、 感染症が拡大して状況では多くのストレスに晒されることが多い。このストレスを緩和することも重要 であり、関係する同僚や部下あるいは職種のストレスを緩和する環境を作り出すことも大事である。 
 
2)COVID-19拡大時における日常的な在宅医療の現場での感染予防対策 
COVID-19 が日本全体に拡大している現状では、在宅医療を利用している療養者やその家族および在 宅医療を提供している医療および介護従事者が共に感染防御に取り組む体制が必要である。 そのための必要事項を以下に記載する。 ・療養者及びその同居家族に対し、COVID-19防止についての留意事項を伝える。( 例えば、日本在宅 ケアアライアンスのパンフレットhttps://www.jhhca.jp/covid19/citizen/を活用する) ・訪問する前に、療養者の体調の変化(特に発熱)等がないかどうか、介護家族の体調の変化がないか どうかを含め確認の電話をいれる。 ・事前に入手した情報に基づき、訪問時に携帯するPPEの準備をする。 ・訪問時、本人および介護家族に体調の変化等について再確認し、診療の全経過において必要となる感 染防御対策を事前にシュミレーションしておく。 ・治療やケアを行う場合には、感染防止の標準予防策を守り、原則として手袋、マスクを着用する。直 接、療養者に触れない場合(調理、掃除などの日常支援)でも同様とする。 ・できるだけ不用意に周囲に手を触れないよう心掛ける。 ・自らの体調管理に努め、毎日の体温測定の励行など常に自らの体調に注意を払う。感染の危険性を常 に自覚し、ケアの時間外も責任のある行動に努める。 ・発熱がなくとも、体調不良(発熱、せき、倦怠感、味覚障害等)の場合や、感染の恐れがある場合は、 管理者と相談のうえでケアに従事しない。 ・療養者やその家族に感染の疑いがある等の場合を含め常にケアチームで情報と取り組みを共有する。 在宅医がチーム全体の感染管理・感染予防に責任を持ち、情報提供やアドバイスを行う。 

 
2)発熱療養者への対応 
 発熱はCOVID-19の重要な症状の一つであるが、在宅医療を受けている人が発熱することは珍しい ことではない。したがって、多くの場合 COVID-19 とは無関係である可能性は高いものの、実際に COVID-19 であった場合には、その現場に関わった専門職とその専門職が関係している多くの人々に多 大なる影響を及ぼす可能性が高い。また、多くの療養者は高齢で、様々な疾患を抱えており、病状が重症 化しやすい。そして、これらの事実が、在宅医療に関わる医療および介護従事者を大きな不安に陥れてい る。さらに、PPEが圧倒的に不足し、入手の目途がたたないことがこの不安に拍車をかけている。  医療施設とは違い、なにもかも不足している在宅医療の現場で、発熱療養者にどのように対応するの かは、今後も含めて継続的な課題であるが、特に関係する医療および介護従事者がその後の感染源や濃 厚接触者とならないことを念頭に現在可能な対応手順を記載する。 


手順1:事前の日常的な準備 ・療養者および介護家族へのCOVID-19感染防御に関する注意喚起:パンフレットの配布など ・関係する医療介護チームでの情報共有体制の確立 ・PPEの確保(医師会等を通じた確保ルートの構築を訴える) ・PPEの正しい着脱方法の習得 手順2:診療直前の準備 ・訪問前の情報収集:訪問前に療養者の病状等、療養者あるいは同居家族がCOVID-19曝露の可能性 がないかについて電話等であるいは訪問看護師から情報を得る。 ・上記の情報から、COVID-19 の可能性が極めて高いと判断される場合には、保健所等との相談の上 で、診察せず直接新型コロナ外来の受診を勧めることも考慮する。 ・状況に応じたPPEの準備:呼吸器症状(咳や喀痰等)が高度の場合には、ゴーグル、フェイスシェ イド、ビニールエプロン、ガウン等を準備する。 ・診察スケジュールの調整:可能であれば、訪問診療予定の最後に診察するようにする。 手順3:医師の診察 少なくとも、サージカルマスク、手袋を着用した上で診察を行う。呼吸器症状がある場合には療養者に マスクを着用させ、咳や喀痰が多い場合にはガウンやビニールエプロンを着用する。本人および家族に 症状の経過、病状の経過、およびCOVID-19感染曝露の可能性がないかどうか確認し、この可能性や病 状、および本人や家族の希望・意向を確認した上で、今後の治療方針について本人および家族と話し合 う。 
(軽症・中等症の場合) 症状が軽症あるいは中等症であり、インフルエンザ、誤嚥性肺炎、市中肺炎等が該当せず、COVID-19 が疑われる場合には、保健所と連絡の上で、新型コロナ外来受診を勧める。 
(入院が必要な場合(重症の場合)) 診察で入院治療が必要な病状であることが確認された場合には、保健所等と連絡を取りながら、受け入 れ先を決め、救急車等で搬送する。なお、COVID-19(疑い)療養者の搬送においては、事前に保健所等 (消防署、医師会、病院、行政等)と手順を確認しておく必要がある。 
(入院を希望しない場合) 療養者が病院への入院を希望しない場合、現状では訪問診療での PCR 検査も含めて保健所に連絡し、 対応を相談する(原則的に在宅での PCR 検査は行われていない)。望まない入院につながる検査を行う かどうか、その検査手順や事前の本人の意思確認の手順も含め検討が必要である。 
(入院も検査も希望しない場合) 
 
 
 療養者が入院を希望せず、また、PCR検査や積極的な治療も希望せず、家族も希望しない場合には、 COVID-19 の疑い療養者として自宅療養を継続することも想定される。この場合には、保健所と相談し ながら、利用者、同居家族、サービス提供者ともに、標準予防策に加えて飛沫および接触予防策を徹底し ながら医療および介護を提供することを基本とする。また、感染の疑い濃厚な病状になったときには、在 宅とはいえどしっかりした隔離対策、PPEが必要不可欠である。 

 
3)COVID-19が疑われた場合の在宅医療現場の感染防御対策 
(https://www.jhhca.jp/covid19/action/より一部転記) 
(1)療養者(自宅)の感染が疑われた場合 
症状等で療養者の新型コロナウイルスへの感染が疑われる場合 一般的な診療手続きを経ず、兆候からCOVID-19を疑う場合は、以下の手順を行う。 
手順1 家族あるいは訪問看護師等から在宅医(かかりつけ医を含む)に連絡 
手順2 医師による病状確認 
 
 連絡を受けた在宅医は、以下の手順で診断をする。 ・電話等で病状確認する 
・インフルエンザ、誤嚥性肺炎、市中肺炎等が該当せず、COVID-19 が疑われる場合には、保健所と 連絡の上で、新型コロナ外来(帰国者・接触者外来)の受診を勧める。 
・ (対面の診察を省略する場合)訪問看護からの病状報告(入院が必要な状態等)および周囲の状況か ら、COVID-19 の可能性が極めて高いと判断される場合には、保健所等との相談の上で、対面の診察を 行わず直接、新型コロナ外来の受診を勧めることも考えられる。この場合には、できれば、療養者のこれ までの情報を提供することが望ましい。 

(軽症・中等症の場合) 
診察により症状が軽症あるいは中等症であることが確認された場合は、保健所と連絡をとり、①PCR 検査を行わずそのまま自宅で健康観察を行う、②新型コロナ外来を受診しPCR検査を行う、③保健所の 依頼にて訪問の上でPCR検査を行った上で結果がでるまで自宅で健康観察を行う、の3つの選択肢とな る。新型コロナ外来を受診するためには、移動が必要であり、移動な困難な療養者の場合の移動手段の確 保、移動時の感染拡大防止対策が課題となる。また、PCR検査結果が判明するまでに一旦自宅待機とな る可能性があることも課題である。自宅でPCR検査を行うためには標準予防策に加え接触感染予防策お よび飛沫感染予防策が必要で、このためのPPEが必要不可欠であり、その入手が困難となっていること が大きな課題である。  以上の課題を解決するためには、地域における医師会・行政(保健所)・病院との密接な連携体制と 必要に応じたPPEの確保体制を作る必要がある。 
 
 (入院が必要な場合(重症の場合)) 
診察で入院治療が必要な病状であることが確認された場合には、保健所等と連絡を取りながら、受け入 れ先を決め、救急車等で搬送する。なお、COVID-19(疑い)療養者の搬送においては、事前に保健所等 (消防署、医師会、病院、行政等)と手順を確認しておく必要がある。 

 
(入院を希望しない場合) 
療養者が病院への入院を希望しない場合、現状では訪問診療でのPCR検査はできないため、保健所に 連絡し対応を相談する。その際には、望まない入院につながる検査を行うかどうか、事前指示書の有無を はじめ、ACPを含めた本人の意思確認が重要となる。 
 

(入院も検査も希望しない場合) 
療養者が入院を希望せず、また、PCR検査や積極的な治療も希望せず、家族も希望しない場合には、 新型ウィルス感染症の疑い療養者として自宅療養を継続することも想定される。この場合には、保健所 と相談しながら、利用者、同居家族、サービス提供者ともに、標準予防策に加えて飛沫および接触予防策 を徹底しながら医療介護を提供することを基本とすることとなる。その際は、後述の手順3を参考とす ることとなるが、感染の疑いの濃厚な病状になったときには在宅医療現場の PPE の確保の問題もあり、 重要な検討課題である。 

 
(診察時の留意事項) 
・療養者(疑い療養者を含む)にはマスクを装着してもらう ・標準予防策および飛沫予防策・接触予防策を徹底する(サージカルマスク、手袋、ガウンあるいはビ ニールエプロンの着用) ・診察前の手指消毒および診察終了時等の手指消毒の徹底 
手順3 検査結果が出るまで等の対応 
 症状が軽度のため PCR 検査が行われず経過観察となった場合や、PCR 検査結果判定まで自宅で待 機が必要となった場合、PCR 検査が陰性であるものの COVID-19 が強く疑われ経過観察となった場合 (後日再検査予定)等には次の対応を行う。 
・在宅医療を受けている病状にもよるが、症状が軽度である場合には、訪問サービスは中断 あるいは極力少なくせざるを得ない。 
・緊急で介護等が必要な場合は、医師・看護師のアドバイスを受け、対応。なお、医師・看護師等は、 PPE(サージカルマスク、咳や喀痰が多い場合にはN95マスク、手袋、ゴーグルあるいはフェイスシー ド、ビニールエプロンあるいはガウン、病状によっては防護服)を使用して対応。同居する家族、介護す る家族に対しては、COVID-19濃厚接触者としての対応(自宅での標準予防策、飛沫および接触予防策) を助言する。 
 
 
 (2)同居家族に感染が疑われた場合 

①症状はないが感染の可能性が疑われる場合(最近、海外から帰国した人、ライブハウス・ナイトクラ ブ・スポーツジムなどの、「密集」「密閉」「密着」の環境にあった場合)同居家族に以下の対応を助言す る。 ・体温を定期的に測ってもらう。 (注)検温は、起床時に行う。体温計はできれば療養者とは別のものを使用する。共有する場合はアル コール消毒を行う。アセトアミノフェン等解熱作用のある市販薬をのんでいる場合、頭痛や⽣理痛でロ キソプロフェン等の鎮痛剤を常用している場合などは、発熱の状況がわからない場合があるので、必ず 起床時、薬を飲む前に検温することが重要 ・2週間は、できれば療養者との接触を避ける。 ・療養者の介護を継続しなければならない場合は自らが感染していることを前提に、下記に留意して 利用者の介護を行う。 ・手洗い、手袋、マスク着用を徹底する。 ・触れたものは必ず消毒する。 ・定期的に換気をする。 ・調理に際しても、念のため、手袋、マスクを忘れず着用する。 ・食器などは別に用意する。 ・食事は時間をずらしてとるか、食事中に対面で会話しない。 (注)厚⽣労働省「感染疑いの場合、家庭内で注意する8つのポイント」リーフレットを参照 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000601721.pdf ・ケアマネジャーや訪問サービスを担当している医師、看護師、地域包括支援センター等などに相談 し、代替のサービス提供が可能かを相談。 
②症状(発熱、せき・倦怠感・味覚や嗅覚障害等を含む体調不良)がある場合 
・基本は、療養者の介護は行わないこととし、ケアマネジャーや訪問サービスを担当している医師、看 護師、地域包括支援センター等に相談し、代替のサービス提供が可能かを相談。 ・熱が下がらない場合は医療機関に相談する。 
4)濃厚接触者と認定された場合の在宅医療現場の感染防御対策 
(1)療養者(自宅)が濃厚接触者と認定された場合 
手順1 PCR検査を行うこととなるため、保健所に連絡を行い、PCR検査の実施につなげる 
手順2 PCR検査の結果が出るまでの対応 
・在宅医療を受けている病状にもよるが、症状が軽度である場合には、訪問サービスは中断あるいは極 力少なくせざるを得ない。 
 ・緊急で介護等が必要な場合は、医師・看護師のアドバイスを受け、対応。なお、医師・看護師等は、 PPE(サージカルマスク、咳や喀痰が多い場合にはN95マスク、手袋、ゴーグルあるいはフェイスシー ルド、ビニールエプロンあるいはガウン、病状によっては防護服)を使用して対応。同居する家族、介護 する家族に対しては、COVID-19濃厚接触者としての対応(自宅での標準予防策、飛沫および接触予防 策)を助言する。 

 
(2)同居家族が濃厚接触者と判定された場合 
同居家族に以下の対応を助言する。 
手順1 保健所の指示でPCR検査を受ける。 
手順2 結果がでるまで、以下のことを遵守する。 
・療養者、在宅ケア従事者とは接触しない ・タオル、食器等は別にする ・マスクを着用する ・直接触れた環境はその都度アルコールで消毒する(部屋やトイレなどのドアノブ等) ・自室からなるべく出ない、定期的に換気をする ・ゴミは、持ち出さない 
手順3 PCR検査陽性となって入院する場合で療養者の介護体制の強化が必要な場合は、ケアマネジ ャーや訪問サービスを担当している医師、看護師などの助言を受け対応する。 


 
5)感染者と認定された場合の在宅医療現場の感染防御対策 
 
①療養者が感染者と診断された場合 
 療養者が感染者と診断された場合には、すでにPCR検査等で関係している管轄保健所の指示により 指定された入院機関で治療を隔離となる。結果がでるまで自宅待機していたのであれば、病院までの移 送についても管轄保健所と対応を相談する。症状が軽症であっても、療養者は何らかの基礎疾患を有し 病状悪化する可能性があることより、本人が入院を拒まなければ入院観察となるはずである。本人が入 院を拒んだり、病状がすでに感染前から悪化しており、自宅での看取りを希望したりしている場合には、 家族および保健所と対応を話し合う。 
 
②同居家族が感染者と診断された場合 
 同居家族が感染者と診断された場合には、療養者も感染者あるいは濃厚接触者となる可能性があり、 感染者となった場合には入院となるが、濃厚接触者との判定がなされた時、あるいは判定がなされない 時に介護者がいない状況になるようであれば、ケアマネジャーと相談の上で介護体制を再構築するか、 施設等への一時的な入所を考慮する。ただし、濃厚接触者と判定された場合には、PCR検査を行ってい ないと受け入れてもらえない可能性があり、その場合にはその旨を保健所に伝え、PCR検査について相 談する。 


 
6)感染疑いあるいは濃厚接触者と判定された療養者の療養環境の確保 
 感染疑い、あるいは濃厚接触者と判定された場合の療養環境の確保については、以下の点に留意す る。これらの点について、サービス提供者と療養者(疑いを含む)・家族と認識を共有する。 
・可能であれば療養者を換気の良い個室(つまり、開いている窓と開いているドアのある部屋)に配置 する。 ・療養者の動線を極力少なくし、共有部分(キッチン、バスルーム、トイレ等)を最小限に抑える。 ・共有部分の換気を確保(例えば窓を開いたままにする)する。 ・同居家族は別の部屋に滞在する。分離が難しい場合はカーテンなどで仕切り、マスクをして2m以上 離れて過ごす。 ・療養者の手指衛⽣(手洗いあるいはアルコールベースの手拭き)は食事の前、トイレの使用後、手が 汚れた時等も含めこまめに行う。手が目に見えて汚れていない場合は、アルコールベースの手拭き、目に 見える汚れた手には、石鹸と水を使用する。 ・石鹸と水で手を洗うときは、使い捨てのペーパータオルを使用して手を乾かす。これらが利用できな い場合は、清潔な布タオルを使用し、濡れたら交換する。 ・飛沫予防として、マスクを着用してもらう。咳やくしゃみがある人はできるだけ医療用マスクを渡し 使用してもらう。医療用マスクに耐えられない人は、咳やくしゃみをするときは、口と鼻を使い捨ての紙 ティッシュあるいはハンカチ、タオルで覆う。口と鼻を覆うために使用された材料は、使用後に適切に廃 棄または洗浄する。 ・介護者の数を制限する。理想的には、健康状態が良く、基礎疾患や免疫不全状態のない人を1人割り 当てる。 ・家族内でケアをするひとは、一人に限定する。 ・ケアをする人は、下記に留意する。  -マスク・手袋を着用。他の部屋には持ち出さない。  -利用者の体液などがついた服に触るときも同様。  -手洗い、アルコール消毒を徹底する。  -ドアノブなど、共有部分を消毒する。環境消毒には、次亜塩素酸ナトリウム(0.05%)あるいはア ルコールを用いる。  -定期的に換気をする。 

 
7)医療あるいは介護スタッフがCOVID-19感染者と認定された場合の療養者への対応 
療養者およびその家族は濃厚接触者と認定される可能性があるため、その可能性を低くするために、サ ービス提供にあたっては以下のことに留意する  ・毎日検温し、発熱がある場合には、無理に働かない ・在宅医療の現場では常にマスクを着用し、手指消毒をこまめに行う。 ・療養者に治療や介護で直接触れる場合には要領よくできるだけ短い時間で行う 
 療養者あるいは家族が濃厚接触者と認定されるかどうかは管轄保健所の感染者本人への聞き取り調 査(積極的疫学調査)で判定されため、その結果を受けて、療養者、家族、関係者が連絡を取り合い今後 の訪問サービス計画を再検討する。




Ⅳ 在宅医療現場におけるCOVID-19のQ&A


CQ1:療養者を診察する際のマスクや防護着の適切な使用法はどのようにすべきか

Ⅳ 在宅医療現場におけるCOVID-19のQ&A CQ1:療養者を診察する際のマスクや防護着の適切な使用法はどのようにすべきか? 
原則として、いかなる診療においても(感染症の有無に関わらず)標準予防策を行うべきである。これ は療養者・医療/介護職双方の医療関連感染の危険性を減少させるためである。 すなわち、すべての処置において手指衛⽣を徹底し、呼吸器症状を呈する療養者の診察時はサージカル マスクを着用する。病原体に接触する可能性があるときはディスポーザブル手袋やガウンを着用する。 これに加え、COVID-19の流行地域もしくはCOVID-19を事前の問診で疑う療養者を診察する場合は標 準予防策に加え、飛沫・接触予防策を行う。すなわち、サージカルマスク・ガウン・ディスポーザブル手 袋を着用する。これに加え、療養者を直接ケアする場合は飛沫が発⽣する恐れがあるため、目の保護(フ ェイスシールド・ゴーグル)を装着する。なお、エアロゾルが発⽣する可能性がある手技(気道吸引・下 気道検体採取など)を行う場合はサージカルマスクの代わりにN95マスクを着用するべきである1)。 しかしながら、医療資源が不足している現状においては完璧な標準予防策をすべての療養者に行うこ とが難しい場合がある。①流行地域でない ②不特定多数との接触がない(デイサービス・ショートステ イ含む) ③直近2週間外出していない ④介護者・同居者などに上気道症状がない のいずれも満たす場 合においてはサージカルマスクのみ装着し診療することも許容されうる。なお、この場合においても手 指衛⽣は徹底し、口、鼻、目を診療中に触ることを避けるべきである。 


 
CQ1-1:一人で訪問した場合の、防護具等の着脱はどのようにしたらよいか。 

PPEの着脱の仕方は特に重要である。PPEの着脱は原則1人でも可能であるが、一処置ごとに消毒用 アルコールが必要であり、1人で脱衣を行った際は、消毒用アルコールの容器が汚染される可能性がある ことに留意する。(最後に容器の外面をアルコールなどで拭き取りなどを行うことが望ましい。) 手洗いで代用することも不可能ではないが、COVID-19 を強く疑う療養者の自宅もしくは施設では、 自宅内もしくは施設内の手洗い場を使用することは適切ではない。 
 
CQ1-2:防護具の脱衣場所および脱衣した防護具等の処理はどうしたらよいか。 

COVID-19 が疑われる療養者の居宅もしくは施設を退出するときは、原則として防護具は玄関を出て から外す。可能であれば、外した後の防護具についてはディスポーザブルのものは、プラ袋に入れて廃棄 を患家または施設に依頼する。廃棄方法については他の感染性廃棄物と同様であり、「廃棄物処理法に基 づく完成⽣廃棄物処理マニュアル」を参照のこと2)。 ディスポーザブルでない防護具に関しては、通常の洗濯(洗濯方法・洗剤の種類)で問題ない。ただし、 可能であれば他の洗濯物と分けて洗濯を行うこと、その衣類に推奨されている最高温度の設定の湯で洗 濯させることが望ましい。なお、汚染された衣類を扱うときは手袋を着用し、扱った後は直ちに手指衛⽣ を行うこと3)。 
 
 
<参考文献> 1) 国立感染症研究所:新型コロナウイルス感染症に対する感染管理(2020年4月27日改訂版) https



CQ2:発熱した療養者の具体的診察法はどのようにすべきか? 
 
療養者が発熱することは珍しいことではないが、COVID-19 による発熱の可能性を否定できないこと が不安を助長し、対応を複雑にさせている。このため、対面で診察する以前にCOVID-19に関連する情 報(症状や病状の経過だけでなく家族も含めた新型コロナウイルス感染の機会の有無)を確認すること が重要である。 具体的には、療養者・家族および施設職員に可能な限り協力していただき、電話などによる問診で新型 コロナウイルス感染の可能性の検証を行う必要がある。 一般的に在宅診療を受けている療養者においては自身で外に出歩くことは極めて少ないため、感染経 路を①家族等の同居者 ②医療職・介護職 ③通所サービス利用もしくは短期入所サービス利用者に絞る ことができる。従って、「COVID-19患者との濃厚接触歴」「介護者や家族内の上気道感染症の有無」「通 所している施設での上気道症状の発症(職員を含む)」などを問診する。 一般的に高齢者はライノウィルスを始め、上気道感染を起こす「風邪症候群」の原因となるウィルスに 罹患しにくいと言われている1,2)。従って、市中において新型コロナウイルスが流行している状況下では、 高齢の療養者において典型的な上気道症状(咳嗽・咽頭痛)を認めた場合もCOVID-19罹患の可能性は 高いと考えてよい。(ただし無症候性感染もありえるため、症状がないからと言って COVID-19 を否定 するものではない) 上記に加え、周辺地域でのCOVID-19の流行(疫学的見地)を加味し臨床推論を行う。 

 
CQ2-1:聴診を含めた身体診察の是非について 

・COVID-19 の可能性が低い場合、聴診器は使用可能であるが、使用後に必ずアルコールで消毒を行 う。査読前論文ではあるが、PCRによる確定診断を受けている患者(全例酸素投与を行っている)に対 し、電子聴診器を用いたところ両側下肺のcoarse breath soundが最も多く聴取されたという報告が存在 する3)。 ・COVID-19 の可能性が高いときは、聴診器を装着する際に汚染のリスクがあるため、その使用を最 小限とする(必要がなければ使用しなくてもよい)。 ・血圧計はカフがディスポーザブルのもの、もしくはナイロン製のものが推奨される。布製のカフの使 用は消毒に難渋することが予測されるため、使用を避けることが望ましい。 ・臨床症状とSpO2値が乖離する(「歩行可能にも関わらずSpO2が低値」など)ことがしばしば見ら れるため、パルスオキシメーターを積極的に使用する。 
・呼吸数を視診で確認し、積極的に診断に利用すること。 


 
CQ2-2:インフルエンザ検査の是非について 

・インフルエンザ迅速検査や COVID-19 の PCR 検査など上気道の検体を採取する手技では、当該 患者が新型コロナウイルスに感染していた場合に飛沫感染の恐れがあり、適切に感染防御できる場合 を除いて原則施行すべきではない。なお、この場合の感染防御とは、十分な換気ができる環境の下、飛 沫感染・接触感染予防のための防護具(サージカルマスク・ディスポーザブル手袋・長袖ガウン・ゴー グルまたはアイシールド)を正しく装着し、正しく脱衣することを指す4)。 ・臨床的にインフルエンザ感染症を疑う場合は検査を行うことなく、病歴・身体診察のみでも診断お よび投薬は可能である。  ・インフルエンザ迅速検査がたとえ陽性であってもCOVID-19との合併感染(co-infection)の可能性が あり、新型コロナウィルス感染を否定できるものではない5)。 
 
CQ2-3:超音波検査やレントゲン検査の是非について 

・聴診器の代わりに超音波検査による肺エコーを施行することの有用性が指摘されており、プローベ などをカバーで覆った状態で使用することは考慮される6)。 ・胸部X線検査は使用可能であるが、接触予防策に十分留意する必要がある。(カセッテやハンドスイ ッチをビニール袋でカバーする・使用後に機器を十分消毒する など) ・中国全土のCOVID-19による入院患者を対象とした観察研究において、胸部X線検査は59.1%のみ 異常を示した 7)。従って、胸部X線検査の感度は低く、COVID-19の除外のためには使用できない。入 院を要さない軽症症例ではさらに感度は低いと予想される。また異常所見が指摘されてもそれが COVID-19を示唆するものとも言い切れない 8,9)。ただし、ポータブルX線には高次医療機関搬送後に、 患者を X 線撮影室に搬入する必要性が省け、感染拡大予防に寄与しうるメリットを有するため 9)、X 線 検査を在宅で施行可能な施設が、高次医療機関への搬送を考慮する際には搬送先の医師ともその必要性 を相談する必要がある。 

 
CQ2-4:使用した聴診器、血圧計、パルスオキシメーターの消毒や管理法はどのようにしたらいいか。
 
・体温計、血圧計は可能であれば療養者宅にあるものを使用させてもらうことで、感染リスクおよび消 毒の作業を減らすことができる。 ・COVID-19を疑う場合で、医療機関側から医療機器(血圧計や体温計などのノンクリティカル/セミ クリティカル器具)を貸し出すことが可能な場合は、それらを貸し出し療養者専用の医療機器として使 用してもらうことで、感染リスクおよび消毒の作業を減らすことができる。 ・いずれの療養者においても使用した機器は入念に消毒を行う必要がある。拭き取り可能なもの(聴診 器・血圧計のカフ以外の部分・超音波機器・ポータブル X 線機器など)は大きな汚れを落とした後、消 毒用アルコールもしくは0.1%次亜塩素酸ナトリウムで清拭する。拭き取り不可能なもの(血圧計のカフ など)は0.1%次亜塩素酸ナトリウムに浸漬する。 
 
 
 

CQ3:本人並び家族への感染予防策の説明はどのように行うか?

 
在宅現場における感染防止対策は療養者および家族の協力なしでは実行不可能である。このため、療養 者および家族が行う感染防止対策を医師が直接説明し、理解を得ておくことは重要である。また、発熱時 など、状況によってはマスクや手袋の他に、ガウン(ビニールエプロン)、ゴーグル(フェイスシールド) などを着用して訪問することとなるため、その点についても訪問前に丁寧な説明を行い、同意を得るこ とが望ましい。 説明するべき内容は以下の通りである。なお、日本在宅ケアアライアンスでは本人・家族向けの説明の パンフレットを作成しており、これを使って説明することも可能である。(次ページ参照) ・新型コロナウィルス感染症が蔓延している現状では、だれが感染してもおかしくなく、密接にかかわ ることとなる在宅療養者も感染している可能性を念頭において治療やケアにあたらざるを得ないこと。 ・万が一、在宅療養者が感染した場合、重篤化する可能性が高いこと ・在宅療養者への感染は、家族、見舞い客、医療および介護関係者からの可能性が高いこと。このため、 家族の方を含めての協力が必要であり、医療および介護関係者も同様に細心の感染防護対策を行ってい ること。 ・医療および介護関係者はその仕事の性質上常に感染のリスクに晒されているため、状況に応じた感染 防護対策を実施しているが、関係者から新型コロナウィルス感染者が出た場合、在宅診療を一時中止せ ざるを得ない事態になる可能性があること、また在宅療養者が「濃厚接触者」となる可能性があるこ と。 ・上記の理由から、医療者が感染しないため、また医療者から療養者へ感染させないために全ての居宅訪 問で状況に応じた個人防護具の装着を行っていること ・感染防護具としてディスポーザブル手袋・サージカルマスク・ガウン・キャップ・アイガード・N95マ スクなどがあり、状況に応じて使いわけ、特に熱がある場合や新型コロナウィルス感染症の可能性が高 いと疑われる場合には居宅訪問前から装着すること ・在宅療養者および介護家族は毎日体温を測定してもらい、発熱および上気道症状を有する場合には 訪問前に連絡して欲しいこと ・訪問前に室内の換気を行ってもらうこと(目安として30-60分程度) ・訪問中は在宅療養者や家族もマスク(布製マスクも可)を装着してほしいこと ・その他日常的に気を付けてほしいこと 


 
CQ4:治癒退院後のサービス開始はいつから行うべきか。 

現時点(2020年4月28日時点)では入院患者の退院基準として、有症状患者では症状が消失してか ら、無症状患者では陽性の確認から24時間後、PCR検査が2回連続(24時間毎測定)陰性であること が条件であり、また、この時点で就業制限は解除される1)。従って退院後は通常診療と同様に、標準予防 策を継続しつつ訪問診療・介護を開始する(あるいは再開する)ことが可能となる。しかし稀な事例とし て退院後に再度PCR検査陽性となる人が確認されたことより、退院後4週間は①一般的な衛⽣対策の徹 底、②健康状態(体温測定など)の毎日のチェック、③症状が出た場合の早めの連絡が要請されている。 また、いくつかの文献(査読前論文を含む)で、概ね3週間~1ヶ月程度の間、咽頭スワブ・鼻腔スワブ・ 喀痰および便の PCR でウィルスの検出が報告されており 2-4)、退院後のウィルスの検出と感染性との関 連については不明ではあるが、安全を期す場合には感染成立から約 1 ヶ月間は接触・飛沫予防策の徹底 を継続することが望ましい。 
CQ4-1:治癒退院後の訪問時の感染予防対策はどうするべきか。 

 
すでに述べたように、療養者の退院直後からの在宅サービスの導入においては、COVID-19 による症 状はないことから、基本的には標準予防策と接触予防策の対応でよいと思われる。ただし、排泄物のケア に従事することも多い看護職・介護職では、医療用手袋にはピンホールと呼ばれる微細な穿孔が約 10% の割合で⽣じていると報告されており5)、糞口感染が起こる可能性も否定できないため、排泄物のケアに 従事する際は手袋を二重に装着することが望ましい。 なお、前述したように2回連続でPCR検査陰性で退院した患者が、再陽性となったケースが散見され ているが、これは感染性ウィルスの検出より感度が100-1000倍程度高いこと、回復期にはPCR陽性・ 陰性を繰り返しウィルスは消退していくこと、PCRの検査精度などが原因として考えられる。また9例 の観察研究ではあるが、PCR 検査が陽性であっても 10 日目以降でウィルス培養が陽性となる可能性は 極めて低いと報告されており、PCR 検査の結果が感染性と必ずしも相関しているわけではないことにも 注意する必要がある4)。 


 
CQ4-2:多職種連携上の注意点は何か。 

退院後に在宅医療を再開する場合、以上の留意点についての情報共有が必要と思われる。 この情報共有のために通常は対面による担当者会議が開かれるが、関係者が閉鎖空間に密集すること は感染リスクを助長させるため、ウェブ会議を利用するなどの工夫を行うことが望ましい。 
 


CQ5:自院スタッフから感染者が出た場合、2週間の間は電話再診と緊急往診の対応でよいか? 

自院スタッフから感染者が出た場合においても、一律に定期訪問を中止する必要はない。ただし、濃厚 接触者と判定された人は最終接触日から14日間の自宅待機を行い、診療所や往診車両を含めた療養者が 接触したと思われる部分は十分に消毒用エタノールあるいは 0.05%次亜塩素酸ナトリウムで環境消毒を 行う。 しかし、濃厚接触者が多数存在し、現行の診療体制の維持が不可能な場合は診療規模の縮小(訪問診 療、訪問看護の回数を減らす等)あるいは情報通信機器を用いたオンライン診療の導入なども考慮する。 それでも体制が整わない場合には一時休診もやむを得ない。診療規模の縮小および、休診は地域の療養 者と、地域の医療体制に大きな影響を及ぼすため、感染者が発⽣してもできるだけ濃厚接触者が少なく なるよう、リスク分散に関する工夫を行うべきである。 以下に対応例を示す。 ・発熱や上気道症状を発症したスタッフ(事務スタッフを含め)は、勤務途中であっても速やかに帰宅・ 自宅待機を指示する ・発熱および上気道症状を有する療養者を診察する医療スタッフを固定する ・訪問診療にチーム制を敷いている場合、チームメンバーや往診車両を固定する(例えば医師 A と看護 師B、医師Cと事務スタッフDを固定して診療に当たる など) ・カンファレンスでの集合を避け、オンライン会議や直行・直帰のシステムなどを活用する ・食事休憩は時間差を設け、食事の際も向かい合って食事せず、食事中の会話も可能な限り控えるように する 
 
 Q5-1:在宅医療に関わる自院スタッフから感染者が発⽣した場合、関係している在宅療養者やその 家族への対応はどうするか  
 
 感染者が出た場合、管轄の保健所による積極的疫学調査が始まる。具体的には感染した人に対し、発症 2週間前の行動調査を行い、暴露源の調査および濃厚接触者の特定が行われる。通常、発症2日前からの 接触者から、濃厚接触者の要件に当てはまる人が特定される。 国立感染症研究所による濃厚接触者の要件は以下のとおりである1)。 ・ 患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者 ・ 適切な感染防護無しに患者(確定例)を診察、看護若しくは介護していた者 ・ 患者(確定例)の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者 ・ その他: 手で触れることの出来る距離(目安として 1 メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患 者(確定例)」と 15 分以上の接触があった者(周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を 総合的 に判断する)。 なお、この濃厚接触の定義は疾患のサーベイランスを目的としており、感染していないことを確実に保 証するものではないが、適切な手指衛⽣およびマスクの装着を双方が行っていた場合、濃厚接触の定義 は原則として満たさないと考える。従って、個人の健康管理と共に、診療やケアの際にはすべての療養 者・医療職の双方が適切な手指衛⽣とマスクの装着を行うことが望ましい。 なお、積極的疫学調査自体は保健所が行うものであるが、在宅療養者およびその家族に対し、電話等で 事実を説明し、保健所に協力してもらいたい旨を伝えることが望ましい。 
 



CQ6:診療所・病院訪問看護ステーション等の環境管理・ゾーニングはどのように行うべきか。 
 
診療所・訪問看護ステーションは原則グリーンゾーン(ウィルスの汚染がない場所)となるよう務め るべきである。しかしながら、発熱・上気道症状の患者に対する外来診療や訪問看護を行っている診療 所・訪問看護ステーションもあるため、以下のように対応することが望ましい。 ・人員に余裕があれば上記の発熱・上気道症状を有する患者の外来診療に従事するスタッフと在宅診療 に従事するスタッフは可能な限り分けることが望ましい ・その場合、上記のような患者を診察する際の動線と、訪問診療に従事するスタッフの動線は交わらない ようにゾーニングすることが望ましい ・上記を徹底しても、感染のリスクは残存するため、オフィスや待機室・休憩室でも多人数の集合は避け、 各人マスクの着用を行う ・業務時間中は手指衛⽣をした直後でない限りは顔の周り(特に目・口・鼻)を触らないようにすること が望ましい 


 
CQ7:療養者の COVID-19 感染を疑う場合、療養の場である自宅のゾーニングはどのように行うべ きか。 
 
訪問前に療養者宅へ電話連絡を行い、以下の内容を問い合わせ、COVID-19 の可能性についてこれ までの病状経過も念頭に予測をしておく。COVID-19 の疑いがある場合には、症状(咳やくしゃみ等) や居住環境を考慮し、個人防護具を準備し療養者宅の玄関で着用する。なお、その際は事前に療養者・家 族へ十分な説明を怠らない。COVID-19の疑いがない場合には標準予防策で対応する。 ・本人に最近発熱・上気道症状がないか ・デイサービスやショートステイなどで発熱・上気道症状の報告はないか ・家族に発熱・上気道症状がないか ・家族は最近2週間以内に遠方(COOVID-19蔓延地域)に出かけたことはないか ・本人および家族に最近2週間以内に遠方(COVID-19蔓延地域)から来た人との接触歴はないか これに加え、訪問前からの換気も併せて依頼しておく。十分な換気に加え、適切なゾーニング・PPEの 装着によって感染リスクは大きく抑制できることが実証されている1)。 なお、療養者宅で飲食物を提供されても、感染リスクを考慮し、遠慮することを予め療養者・家族へ説 明しておく。 


 
CQ7-1:在宅療養者のCOVID-19感染を疑う場合、療養の場である自宅の環境管理と家族への指導 はどのように行うべきか。 

 在宅療養者のCOVID-19感染を疑う場合、家族の感染リスクを最小化するための支援は在宅医の重 要なミッションである。COVID-19 を疑う療養者もしくは診断確定した療養者の自宅療養の環境管理お よび家族への指導は以下の原則を参考に、療養者の自宅療養環境を熟知している医療職が、現状に即し た指導を行うこと。
1. 感染者と他の同居者の部屋を可能な限り分ける 2. 感染者の介護をする人は、できるだけ限られた方(一人が望ましい)にする  3. できるだけ全員がマスクを使用する 4. 小まめにうがい・手洗いをする 5. 日中はできるだけ換気をする。  6. 取っ手、ノブなど共用する部分を消毒する  7. 汚れたリネン、衣服を洗濯する 8. ゴミは密閉して捨てる 9. 療養者はもちろん、介護に当たる家族・同居者も不要不急の外出を避ける 10. 家族・同居者も毎日健康状態の観察を行う 

 
 
CQ8:往診車両の環境管理はどのように行うべきか。 

 療養者宅での標準予防策および接触予防策(時に飛沫予防策)を適切に行っていれば往診車両内は原 則グリーンゾーンになっているはずであるが、PPE の着脱が不適切で手指が汚れている可能性もある。 従って、往診車両を使用後は手指が頻繁に触れる部分(ドアレバー・ハンドル・シフトレバー・ウインカ ースイッチ・ワイパースイッチなど)をアルコールなどで定期的に(毎日)消毒することが望ましい。 


 
CQ9:自力通院困難者の外来への受診方法(移動)はどうするか。 

 自力通院困難な療養者でCOVID-19を強く疑った場合は、管轄保健所と相談し、移動手段を決定す る。移動手段としては以下の原則が適応されるが、管轄する保健所と相談の上で決定すること。 ・家族同伴のもと、自家用車で受診を行う。この際、同乗者は車内の換気をよくし、療養者・同乗者と もにマスクを着用する。 ・介護タクシーや公共交通機関(タクシーを含む)は感染伝播の観点から推奨されない。 ・自家用車が用意できない場合は管轄の保健所と相談の上、対応を決める。 ・緊急性がある場合には、救急車による搬送を検討する。この際、救急要請時にCOVID-19の疑いが あることを正確に伝える。なお、COVID-19 関連の救急車の使用については、医師会と管轄する消防本 部との間で事前に協議しておくことが重要である。 

 
 
CQ10:COVID-19と誤嚥性肺炎との鑑別は在宅でどうすべきか? 

結論から言うと、病歴、身体所見および補助的な検査所見だけで誤嚥性肺炎と COVID-19 の鑑別を 100%行うことは不可能である。これはCOVID-19に限らず、すべての疾患において言えることである。 しかしながら、丁寧な問診と身体所見および補助的な検査所見によって可能性を変動させることは可能 である。

【COVID-19らしい所見】
・COVID-19患者との濃厚接触歴がある ・介護者や家族内で上気道感染症患者がいる ・通所している施設での上気道症状の発症(職員を含む)が認められる ・誤嚥性肺炎を疑い適切な抗菌薬治療を行ったが、その後の明確な誤嚥のエピソードがないにも関わら ず症状が改善しない ・喀痰の量に比して、経皮的酸素飽和度の低下が明らかである。 ・血液検査で、白血球数およびリンパ球数、血小板数が低値である1)。 ・軽症例ではプロカルシトニンが低値である2)。 
 
 
 【誤嚥性肺炎らしい所見】
・過去にも誤嚥性肺炎の既往がある ・直近数日で誤嚥のエピソードがある ・COVID-19患者との濃厚接触歴がない ・介護者や家族内で上気道感染症患者はいない ・通所している施設での上気道症状の発症(職員を含む)は認められない ・聴診にて「片側(特に右側)」下肺に肺雑音が聴取される場合 ・誤嚥性肺炎を疑い適切な抗菌薬治療を行い、症状が改善している場合 
 
<参考文献> 1) Guan WJ, et al. Clinical Characteristics of Coronavirus Disease 2019 in China. N Engl J Med. 2020 Feb 



CQ11:施設における感染対策はどう行うか? 

【施設における感染対策の原則】1)

(1)施設外からウィルスを持ち込まない  ・面会の制限(流行地域では面会の禁止)  ・納入業者の立ち入り制限(流行地域では進入禁止の上、玄関で授受を行う)  ・発熱および上気道症状を訴える職員は勤務時間中であっても帰宅させ、可能であれば14日間の自宅 待機を指示する。人員不足から14日間の待機が不可能な場合は、下記の「COVID-19が疑われる医 療・介護職の復職基準」によって復職のタイミングを決定する。2)  ・医療機関受診時に発熱や上気道症状を有する患者と接触しないように努める (2)万一ウィルスが持ち込まれた場合も、施設内でアウトブレイクさせない  ・すべての職員にサージカルマスクの着用を指示する。入手困難な場合は布マスクを使用することも 許容されるが、サージカルマスクの代用とはならない点に留意し入手努力を怠らないこと ・入所者と職員の1日2回の検温および上気道症状の有無を確認する  ・症状を有する入居者は原則、個室内隔離を行い、ケアに当たるスタッフは固定させる  ・ケアに当たる職員は飛沫・接触予防策およびアイガードの装着を行う ・症状を有する入居者とその他の入居者はトイレおよびリネンを分ける。(リネンの洗濯に関しても 可能な限り分けることが望ましい)

【COVID-19が疑われる医療・介護職の復職基準】2)

(1)PCR検査を行った場合 「解熱剤を使用せずに解熱」かつ「呼吸器症状(咳、息切れなど)の改善」かつ「24時間以上の間隔 を空けて採取した鼻咽頭スワブ検体検査が2回とも陰性になる」 (2)PCR検査を行わなかった場合 ・解熱剤を使用せずに解熱し、さらに呼吸器症状が改善してから、少なくとも72時間以上経過していること ・症状が現れてから7日以上経過している のいずれかのうち長い方 
 


CQ12:施設の流入制限の実施の仕方はどう行うか? 

  施設の面会制限に関しては地域の流行状況に応じて判断されるべきである1)。 (1)地域での発⽣を認めていない、もしくは渡航歴・明確な接触歴がある患者のみである状況。この場 合、面会の全面的な制限は行わないが、面会は個室内にとどめ、他の入居者と接触しないように努める (2)地域でCOVID-19患者が発⽣、増加しつつある状況。この場合、原則として面会および業者の立ち 入りを禁止とする (3)地域でCOVID-19が流行しており、軽症症例の自宅療養が行われている状況。この場合、原則とし て面会および業者の立ち入りを禁止とする 以上の3つのパターンに分けることができると考えられる。 
 
<参考文献> 1) 高山 義浩: 高齢者施設における新型コロナウィルス感染症への対策 http://plaza.umin.ac.jp/~ihf/others/covid_e1.pdf http://plaza.umin.ac.jp/~ihf/others/covid_e2.pdf http://plaza.umin.ac.jp/~ihf/others/covid_e3.pdf 



CQ13:複数の医療機関が訪問診療する施設の感染管理はどうしたらいいか? 

数の医療機関が訪問する場合でも、感染管理の原則は変化しない。 ただし施設内で感染者(または疑い)が出た場合には、関係する全医療機関で情報を共有すること、 施設全体のゾーニングやコホーティングが必要な場合にイニシアチブをとる医療機関をあらかじめ決め ておくことが重要である。また施設が連携している病院に依頼し、感染管理認定看護師の派遣を行うな どの方法も考えられる。 
 
 
 
 CQ14:訪問看護ステーションに感染者が現れ休止した場合、代わる事業所がすぐ見つからない。
こ のような時にはどのように対応するか? 

 訪問看護ステーションが感染者の発⽣により休止してしまった際、さらに代替の事業所がすぐに見 つからない場合は以下のような対応策が考えられる。 ・安否確認のため、訪問看護師から居宅へ定期的な電話連絡を行う ・訪問看護の必要最低限の業務を、訪問診療所および訪問介護で一時的にカバーする。その際に訪問診療 所や訪問介護事業所が一時的に他の業務を縮小することは許容されると考える。 このような自体に陥らないためにも、看護ステーション内でのクラスター発⽣の予防、他の訪問看護ス テーションとの連携を行っておくことが望ましい。さらに、連携する訪問診療所や訪問介護事業所とも 予め閉鎖時の対応を協議しておくこと。 

 
CQ15::介護事業所の職員への感染対策知識の教育はどうしたらいいか? 

介護事業所の職員への感染対策の教育に関しては、可能な限り感染症の知識を有する職種(医師や感染 管理認定看護師)が行うことが望ましい。なお、個人防護具の装着の訓練においては可能な限り机上の講 義形式だけでなく、実際の個人防護具の着脱まで実演・実習を行うことが望ましい。その際、上記の専門 知識を有するスタッフに確認しながら行うことを推奨する。 


 
CQ16:医療者自らの感染と、他者へ感染を拡大する可能性に対する不安。どう対応すべきか?

COVID-19 が拡大している現状において、ウィルスを保持している可能性を否定できない療養者と免 疫力の低下している療養者および協働している医療・介護職等と関わっている医療者は、自らの感染リ スク、そして他者に感染を拡大させるリスクが0にならない。しかし、以下を行うことで、リスクはかな り低く抑えられる。 ①在宅の現場の状況や療養者の状況に応じた適切な標準予防策や手指衛⽣を励行する。 ②個人保護具を使用する場合その着脱の際の手順をしっかり守る ③体調不良を感じれば無理して働かない ④勤務時間外であってもできるだけ密集した場所、密閉した空間、密接した状況での会話等を避ける また、自分だけの努力だけでなく、療養者や家族および連携している医療・介護職の協力を求めること (できれば感染対策について説明し指導する)でさらにリスクを減らすことができる。その際、予め「療 養者や家族へ感染対策を十分に行っているが、それでも感染リスクは 0 にはならない」ということを説 明しておくことも自身の不安の軽減につながるであろう。 さらに、COVID-19蔓延期では、病状に応じて、訪問診療の頻度を少なくし、オンライン診療やICT による多職種との連携の機会を増やすことで、接触機会を最小限にし、経営不安も少なくすることがで きるので、この機会に取り組むことも推奨したい。 先行きの見えない中で多くのストレスに晒される医療者が、自分をケアし、関係する人に必要なセルフ ケアを勧めることで、必要としている人々への対応をし続けることができる。このセルフケアの具体的 項目がCenter for the study of traumatic stressから示されているため、概略を示す。
・食事や睡眠などの⽣理的欲求を十分に満たす ・可能な限り、休息を十分に取る・休息時間は罪悪感なく十分に休む ・同僚とつながり、話をしたり聞いたりする ・建設的なコミュニケーションを取る ・家族と連絡を取り合う ・お互いの違いを尊重する ・確かな情報を常に入手する努力を行う ・メディアに触れる時間を制限する ・自己の感情状態をセルフチェックする ・自己の働きを褒め、自己肯定感を高める <参考文献> 1) Center for the Study of Traumatic Stress: Caring for Patients’ Mental Well-Being During Coronavirus 


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PS)

国立認知症大学の学生さんへ!ご無沙汰です。

5月26日(火)の講義は、「介護施設における発熱患者さんへの対応」を
ZOOM配信で行います。→こちら

宜しくお願いします。



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この記事へのコメント

おはようございます。

在宅介護の合間に、記事読んでますが、日々疲れはあるが、時間はない!
一人で介護してるので〜
太線の最初しか読めてないです。
もし、母が完成して重篤になっても人口呼吸器は装着しないで、逝ってもらいます。
それより、私が感染したら大問題!

Posted by rico at 2020年05月17日 09:19 | 返信

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