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なじみの喫茶店
2020年05月15日(金)
誰でも、近所に、なじみの店がある。
喫茶店、美容室、居酒屋、ラーメン屋、
町医者、クリーニング屋、風呂屋・・・
喫茶店、美容室、居酒屋、ラーメン屋、
町医者、クリーニング屋、風呂屋・・・
なじみの喫茶店のママを家で看取った。
すっと昔。
20年前。
多忙の中、唯一の楽しみは、なじみの喫茶店で
ランチを食べたりコーヒーを飲んだり、だった。
スポーツ新聞や漫画を読み
冗談が絶えない時間だった。
あの時、僕はまだ40歳。
バリバリ仕事をしていた。
でも「先生、いつか私をこの店で看取ってよ!」と
真顔で言われたが「いや、僕の方が先」と逃げた。
そのママが「私、がんになった」と笑って来院した。
「嘘でしょう?」と言ったが、もちろん本当だった。
長い闘病期間、だった。
いろんなことがあった。
ある時点から、自然に在宅医療に移行した。
それは、ママが元気な時からの約束だった。
検査結果は凄い数字なのに、全く元気で、室内を歩いていた。
痛みもほとんどなく、最小量の麻薬を頓服でと時々飲む程度。
食欲もあり、訪問しても笑顔で食べていた。
診察というより「生きてるー?」、で終わり。
何故かジメジメしたくなかった。
笑顔でサラリと終わりたかった。
何回も死にそうになったけど、奇跡的に生き返った。
5回もそんなことがあったので奇跡という表現は不適切。
結局、家族に「もうあかん」と告げてから半年も生きた。
亡くなる1週間前まで、タクシーを呼び抗がん剤を打ちに行っていた。
「踊る阿呆に見る阿呆」ではないが「抗がん剤のやめ時」は無かった。
ママが良ければ、それでいい。
看護師が世話をやいてくれた。
亡くなる前日は、コーヒーを飲んでいた。
正確には、コーヒーの香りを楽しんでいた。
だって、喫茶店だもの。
僕にも入れようとしたけど、断った。
その24時間後、ママの息が止まった。
24時間前の笑顔のままで永い眠りに。
ママが寝ていた場所は40歳代の僕が
毎日座って食べて、雑談していた席だ。
平穏死・・・
麻薬も不要で
最後まで食べられて
最後まで話せて、笑えて
鎮静も不要で、緩和ケア専門医医が最も嫌う(不都合な)「平穏死」!
町医者が家でがんを簡単に看取ったら、ホスピスは商売あがったり。
なじみのマッサージ屋さんの台で、夢心地だった。
現実と夢が交錯する中で、ママの笑顔が浮かんだ。
僕の大好物だった「キムチチャーハン」の味が脳内で蘇えった。
キビキビと料理を作り、愚痴を言っているママの声が聞こえた。
愛嬌たっぷりの可愛いウエートレスと3人でよく駄弁っていた。
しかし彼女も、がんのため数年前に、この世から居なくなった。
20年くらい前のあの懐かしい時間は二度と戻らない時間だった。
喫茶店で知り合ったお客さん達もみんな、鬼籍に入ってしまった・・・
コロナでこの2ケ月、時間が止まっている。
何かとい忙しいけど、時間は止まっている。
明日から「新しい日常」に戻る、らしい。
しかし日常は、遥か夢の中に遠ざかった。
今年に入り、在宅看取りの50人目あたりがママ。
在宅も往診も看取りも、コロナとは無関係である。
コロナ禍の混乱と、平穏死の穏やかさが交錯する。
不思議な感覚で、マッサージからの帰路を歩いた。
PS)
コロナチャンネル#026_
免疫細胞は何処にいるの?
https://youtu.be/mCkKtxXUIGs
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この記事へのコメント
新型コロナへの対応は、がんへの対応と似ていますね。ひょっとして認知症も。
今の国のやり方は、抗がん剤をガンガン投与して抑え込む方法です。一時的には必要なこともあるかもしれませんが、逆効果かもしれません。検査検査で癌人口を増やし、かたっぱしから治療していくのもそうですね。
その結果、感染者は減りました、しかし国民の幸福度はがた落ちです。そしてまたさらなる波がやってくる不安におびえないといけないようです。
もう新型コロナの全貌はつかめたはずですから、今度は目的を再設定しないといけません。患者数を減らして感染を抑え込むのが目的ではなく、国民全体の幸福度を上げる方向に。もう政府もそのような表明をしているはずですが、今までと対応を変える準備はあるのでしょうか。
そう考えるとやるべきことは検査検査ではなくて、症状の重い人から適切な病院に入院できるような環境作りでしょう。現状では善意で受け入れた患者さんが陽性だったら下手するとその医療機関は風評被害などでつぶれます。新型コロナは特別扱いしない、という啓蒙活動が何より重要だと思います。
Posted by 広島の赤牛 at 2020年05月16日 08:42 | 返信
「なじみの○○」の魅力が分かる年齢になりました。
仕事帰りのサラリーマンが「ちょこっと一杯」を欲するのも、同じくではないでしょうか。
家族・親しい友人・仕事仲間...どれも必要不可欠ですが、その濃い関係性とは別物の
ホッと一息付ける場所&人 その大事さ魅力が分かります。
緊急事態及び自粛に伴って、皆が窮地に追い込まれていますが、脇に置かれてしまいそうな
「なじみの○○」が一番危機的状況かも知れません。
そのオーナーは、勇気を出して、声に出し、いつもの馴染みのお客さんに窮地な状況を話して
みるタイミングかも知れません。困った時はお互い様ですから。
Posted by もも at 2020年05月16日 08:40 | 返信
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