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アルコール依存症が増えている
2020年05月24日(日)
きらめきプラス4月号 長尾和宏
今回は秋田県大舘市でご両親と同居しながらパート勤めをしている42歳の女性からのご相談です。
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Q)
現在64歳の父は、42歳の時、うつ病とアルコール依存症で精神科に入院したことがありますが、その後お酒をやめて無事60歳で定年退職しました。しかし仕事をやめてからはもともとこれといった趣味もなく家に引きこもりのようになってしまった父は、毎日のように5合以上の日本酒や焼酎を飲むようになりました。4カ月前に自宅で意識を失い病院で検査を受け、そのまま2週間ほど入院。医師から「いつ死んでもおかしくないぐらいに肝臓の数値が高くなっている。専門の病院で診てもらったほうがよい」と説明があり、母と私が何度か「精神科に入院して断酒しょう」と父を説得しましたが、その度に父が「あんな刑務所みたいなところは二度と嫌だ」「俺はいつ死んでもいいんだ」と開き直って、会話になりませんでした。退院後はしばらくお酒をやめていたので安心していたのですが、最近またお酒を飲むようになり、お酒の量も入院前より増えています。この1カ月間は食事もろくにとらず、朝からお酒を飲んでいます。普段は静かでやさしい父なのですが、今ではお酒が入ると私や母に暴言を吐いたり、わけのわからないことを叫んだりしています。先が見えない状態で、母も私も途方に暮れている状態です。何か一言でも先生にアドバイスを貰えたらと思い投稿させて頂きました。よろしくお願いします。
A)
ご家族は大変なご苦労をされているかと思います。医学的にはアルコール依存症、社会的にはセルフネグレクトです。全く同じような患者さんを沢山診てきたのでその経験を書きます。
結論からいえば精神病院に入らないと死んでしまいます。アルコール依存症は「静かなる自殺」とも言われています。かなり依存度が高そうなので外来通院での断酒治療では極めて困難かと思います。一般的に「高度の依存症」の治療はかなり難しく、アルコール専門病棟に半年くらい入院するしか手がありません。退院後も専門の訪問看護や断酒会が関わり、長期的な支援が必要な病気です。入院させできれば未来が開きますが、しないと未来は暗いです。
問題はどうやって入院させるか、です。本人は断固拒否します。私のような「かかりつけ医」に往診してもらい入院治療を説得するという方法もありますが、なかなかうまくいかないことが多いです。酒を飲んでは暴れるようですが、暴力を振るうのでしょうか?もしも周囲に手を上げるようならすぐに110番して警察に介入してもらってください。暴力は犯罪ですからその現場を警察に見てもらい「措置入院」につなげるという手もあります。実際に入院の是非判断は措置入院の免許を持っている精神科医しかできませんが、そこに至るまでに警察組織やかかりつけ医を使うべきです。
いろんな手を使っても入院がかなわなければ、自宅でそのまま見るしかないというケースも実際は少なくありません。その際は、在宅医療で対応するしか方法がありません。主治医を請け負ってくれる在宅医を探してください。完全断酒ではなく、減酒指導と肝障害の合併症管理を目標にするのです。何もしないよりはまだマシ、という考え方です。訪問看護師やPSW(精神専門のワーカーさん)などの保健所スタッフにも助けを求めてください。一般にアルコール依存症を家で診てくれる医師や訪問看護師は多くはありませんが、探せばいるはずです。保健所に相談して情報を得てください。お父様はまだ64歳なので介護保険の二号保険者で介護認定を受けるには特定疾患病名が必要ですので、そこは在宅医とよく相談してみてください。介護認定が受けられないなら訪問看護は医療保険で受けてください。看護師の言葉のほうが心に響く場合があります。
これまでお父様と同様の患者さんを在宅で最期まで診て、看取った経験が数人あります。みなさん2年~数年間、自宅で好きなように過ごされました。50代、60代です。家族はもはや諦めて覚悟していました。ただ、お酒を買ってくる家族が甘やかしていると判断した場合は厳しく注意しました。こうした家族をイネーブラーと呼びますが、誰かがそうなっていないか気をつけてください。善かれと思ってやっている行為が病気にしていないかです。場合によっては、本人ではなくイネーブラー家族を引き離すこともあります。
入院はしなくても本人が少しでも前向きになれば、地域の断酒会やダルクという断酒支援団体と関わってください。そうした関わりで本人の気持ちが変わり精神病院に入院した人もいます。ただし、私達が一番困るのは医療拒否です。「先生も看護師も来てくれるな!」と言われたら万事休すなので、そうならないように気を付けて会話します。そんな患者さんに慣れているスタッフでないと関われないでしょう。
結局、毎日お酒を飲みながら徐々に寝たきりになり、食が細くなり、眠るように自宅で亡くなった人も3人いました。みな「人生会議」を何度も行い、家族は在宅看取りの覚悟をしていたので、亡くなった時も「仕方がない」と淡々と受け入れておられました。何かの役に立てば幸いです。
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40代のアルコール依存症は迷わず、精神病院に入院すべきだ。
80代のアルコール依存症は、まさにケースバイケースである。
PS)
「病院が怖い」という人のために、
「ドライブスルー診療」と
「屋外診療」を始めました。
私達も新しい診療様式を模索しています。
さすがに在宅は、変わりませんが。
コロナチャンネル#035
「サイトカインストーム」って何やねん?
https://youtu.be/HCHsZ_U2aR4
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この記事へのコメント
宣言解除前、神戸ナンバーで堂々と(!?)動ける地域をドライブ中に偶然、長尾クリニックの前を通りました。
「医療介護よろず相談室」の大きな看板が目に入り、「よろず相談」という言葉が何かこう温かみがあるというか、
何だかじーんときました。尼崎には頼りになるクリニックがあっていいですね。
夕方6時頃でしたか、玄関脇のテント下にスタッフさんがお1人立っておられました。
その日は台風1号崩れの余波で風が強く、外での診療も風の影響はいかがかと思った次第です。
今朝は8時台に散歩に出て、汗がダラダラ、マスクも蒸れ蒸れ。これからの暑さが思いやられます。
先生もスタッフの皆さんも、どうぞお大事になさって下さいね(いつも言葉だけの「口だけオンナ」で申し訳なし)
別記事でもタバコの事が。自粛期間中も毎週歯医者さんに呼ばれていた主人、
80歳超の元気な先生から「1箱も吸うたらあかん、19本までにしとき」と迷?珍?アドバイスを受けてきました。
タバコ吸っても90歳以上生きた親族、70代で逝った吸わない親族の話も聞いたと。
人間、自分の都合のよい方に目が向きがち、気が傾きがちです。変な後押ししないでいただきたい(涙)
コロナで重症化した人の喫煙歴(家族が吸うかも含めて)私も知りたいです。
Posted by taco at 2020年05月24日 10:35 | 返信
おはようございます。
タバコ吸いたい人、辞められない人に吸うな!と言ってるのではないです。
嗜好品なので自由です、吸ってる人はフィルターごし、副流煙周りに人は直接です。
マナーを守って吸ってほしいのです。『死んでもいいからタバコ吸いたい』ってニコ中の人は言います。
私の父もずっと吸ってましたし、肝臓がん(C型肝炎→肝硬変→がん)で亡くなりました。
主治医は吸っても良いっ言ってました。
(好きなものは止めない、精神的な面もあってでしょう、余命わかってたから)
長年、一緒のにいた母は、ぼうこう癌になりました。原因は粉塵吸うような仕事か喫煙者に多い、だからと言って父の副流煙で、ぼうこう癌になったと証明はできないけど。
吸っても癌にならない人、吸わなくても癌になる人、タバコのせいばかりではないと思ってます!
Posted by rico at 2020年05月25日 09:13 | 返信
在宅医療は健幸医療 その通りだと思います
喫煙しながら 吸入をされています男性の 動悸の相談を受けましたので 長尾クリニックに受診するように何度も言っておきました 受診されるかどうか分かりませんがよろしくお願いします。
Posted by 薬剤師 井澤康夫 at 2020年05月26日 10:06 | 返信
おはようございます。
すみません言葉足らずでしたね。「変な後押し」は元気な歯医者さんのアドバイスのことです。
マナーを守って吸ってますが、本当は止めてもらいたいのです。
受動喫煙歴半世紀以上の私はもう慣れたとはいえ、
本人の健康もありますし、周りの方にもご迷惑ですから。
tacoからricoへの返信 at 2020年05月26日 11:38 | 返信
先日上に書きました男性は無事 診察に行かれたそうです。次回もしこられたら タバコを止めるように言って戴ければ
幸いです。
Posted by 薬剤師 井澤康夫 at 2020年06月04日 09:02 | 返信
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