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「アカシアハイツ」を考える

2020年05月28日(木)

老健施設で集団感染が起きて保健所が「看取り」を指示。
その結果、87人が集団感染して、15人が命を失った。
札幌の「アカシアハイツ」の事例は、現在進行形である。
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北海道でもほとんどテレビで報道されていないようだ。
理由は知らない。

  4月26日の時点で、保健所はこの施設を見捨てたのか。

  札幌市は①重症者を入院させず、②「施設内でみとりを求め」た。
  国の指針では「介護老人保健施設の入所者が感染した場合「原則入院」」
  同ハイツでは、1階を「陰性」の入所者、2階を「陽性」の入所者と分けたが、
  しかし人手不足のため夜間は看護師が1人で勤務して1、2階を行き来していた。”
 
 
〇朝日新聞 5月15日
 北海道)死者10人、老健で何が 茨戸アカシアハイツ
 https://www.asahi.com/articles/ASN5G72S5N5GIIPE001.html
 
 
〇FNN 5月19日 
【独自】クラスター施設で母が死亡 携帯電話で最期の別れ
 https://www.fnn.jp/articles/-/43757
 
 
 〇読売新聞 5月24日
保健所は「施設内で看取って」、感染者が続々死亡…関係者証言
https://www.yomiuri.co.jp/national/20200524-OYT1T50066/



  運営は、社会福祉法人・札幌恵友会。
  
  現在HPで、茨戸アカシアハイツのために寄付金募集中だ。
  http://www.keiyu-kai.org/
 
  HPを開けると職員も急募。
  看護師さんの夜勤は、なんと85000円。


----------------------------------

以下、「長尾和宏の痛くない死に方」(まぐまぐ5月22日版)から引用。→こちら


Q)
介護施設で命の選別――恐ろしいです。
 
長尾先生 毎日毎日大変お疲れ様です。
札幌で一番のクラスターとなった施設、「茨戸アカシアハイツ」に80代の伯母がいます。
この施設で、<命の選別>が行われたことをご存じですか?
入所者100人ほどの介護老健施設です。ニュースなどでご存じかもしれませんが、「茨戸アカシアハイツ」のクラスターの経緯は以下です。
「茨戸アカシアハイツ」をめぐる新型コロナウイルスの感染拡大
4月21日 隣接するデイケアセンターで1人の感染確認
26日 茨戸アカシアハイツで入所者1人の感染確認
  28日 札幌市が施設をクラスター(感染者集団)と認定
  30日 施設内で入所者2人が死亡
5月 1日  札幌市が施設の感染者の隔離を開始
  3日  感染者が50人超に
  12日 施設にいた陽性者1人が初めて入院
  16日 札幌市が現地対策本部を設置
  18日 感染者が87人、死者15人に
以下、UHBのニュースより:
現地対策本部が設置された介護老人保健施設「茨戸アカシアハイツ」で、当初札幌市が重症者を病院に入院させず、施設内で「みとり」を求めていたことがわかりました。
国は介護老人保険施設の入所者が感染した場合「原則入院」させる方針ですが、札幌市は書面で「施設に無症状者や軽症者は可能な限り当該施設で生活させ、入所者の状態が悪化した時に入院が必要な場合は、札幌市が入院先を調整する」と独自の指示を出していました。
ただ5月11日まで本格的に病院へ入院させる対応はとらず、施設関係者によりますと、医師が「施設内でのみとり」を求めていたということです。
札幌市保健所の三觜所長はUHBの取材に…「(保健所の医師が入院が)間に合わない場合があればみとりをお願いするかもしれないというようなことを施設に言って、そのような経験が過去にあるのか施設とのやりとりがあった」
 
 私の伯母は今のところ「陰性」ですが、中で多くの入所者が、治療らしい治療をさせてもらえず、見殺しになったことに驚き、恐怖を覚えています。一体、どういう状況で15人のおじいちゃん、おばあちゃんは亡くなっていったのでしょう? 
緊急事態なので仕方がないで片づけてしまっていいのでしょうか?
不信感が拭えません。
 落ち着いたら、伯母を他の施設に移すことも考えていますが、どの施設もこうなのでしょうか? 先生がご存じのことを教えていただけますと幸いです。
 

A)
驚きました。知りませんでした。

私はコロナから逃げずにコロナ肺炎を早期発見する診療をしているので過激なように見えるかもしれませんが、今回のコロナ診療に関してはことさら保守的で慎重です。未知の感染症に対しては謙虚でいないといけない、独断はよくない、と思うからです。

先日、老夫婦だけの在宅患者さん(Aさん、Bさん)が同時に発熱しました。誤嚥性肺炎だと思いましたが、時節柄1%はコロナの感染を疑うことは当然で、どのように行動すべきか非常に迷いました。保健所にPCR検査を要請すべきか、しない方がいいのか。奥さんとケアマネさんは「しないで欲しい」と言われました。強制入院や風評を恐れてです。私は一晩迷いましたが、「PCRをしてから考えよう」と考えました。つまり「高度認知症といえども指定感染症だからいったんは保健所を通しておこう」と。というのは、その方が数日前に通っていたデイサービスや毎日入っているホームヘルパーさんたちの顔が浮かんだからです。その夫婦は最悪の結果でも悔いがないかもしれませんが、介護スタッフや当院のスタッフ、その家族のことを考えると万一にも備えないといけなないのです。

つまりコロナは単に個人の問題にとどまらず、周囲や社会の問題でもあるのです。それが2類の指定感染症という意味です。5類の季節性インフルであれば、ここまで至りません。疥癬であれば、万一、集団感染しても罪には問われないでしょう。コロナは、未知がゆえに、集団感染した場合、社会的にも大きな影響があります。だから感染の有無だけでも調べることができるのなら調べて、もしも陽性ならしかるべき措置を講じるべきでしょう。東京の有名在宅医は保健所から依頼されて在宅患者さんを自宅でPCR検体を採取していると聞き、驚きました。尼崎ではそうはいかないので、私は手持ちの抗体検査を行いました。血液検体によるIgM抗体とIgG抗体です。もしもIgM抗体が陽性なら、ここは保健所に相談しようと腹を決めました。果たして、両方とも陰性でした。そして抗生剤に反応して2日後には解熱して、胸をなでおろしました。しかしもしIgM抗体が陽性だったら、私は保健所に相談するつもりでした。不本意な面もあるのですが、天秤にかけたら、その選択しかありません。まあその後の経過はとても想像できませんが。
 
さて、北海道のケースは、「保健所を通さなかった」ことが問題だと思いました。しかしそうではなく、保健所長さんが「みとり」を指示したとのこと。高齢者は十人十色、百人百色で、施設に入っているからと言って、医者が勝手に判断をすることは絶対に許されません。本人と家族の意見を尊重し、保健所の意見を聞きながら。管理医師が看護師と介護スタッフにしっかり手当を指示して施設内で様子を見た結果、亡くなられたのなら仕方がないでしょう。しかしどうではなかった。そして集団感染で巻き添えを作ってしまった。高齢者はコロナの致死率が若者の100倍も高いのでとにかく集団感染による巻き添えが怖いのです。感染の有無を確認すれば「施設内の隔離」や「それなりの防具」にも濃淡がつけられたはずです。
 
病気の種類を問わず施設内で看取ること自体は問題ありません。しかし北海道の事例は本人や家族と相談せずに、保健所の判断だけで勝手に看取りをした点は検証の余地があります。どんな状況であれ助けられる命は全力で助けることが医療の基本です。そのためには、「診断」と「隔離」につきます。隔離の徹底で救えた命があるはずです。慎重かつ丁寧に判断・行動すれば、間違いなく何人かは助けることができたでしょう。状況が落ち着けば是非、この北海道の事例を市民と在宅関係者で十分議論すべきです。それが第二波に備える、という意味です。また亡くなられた15人の高齢者への最大のご供養だと思います。

追記)

尊厳死協会の役員として一言申し上げますが、これは尊厳死ではありません。

また「尊厳死させた」とか「させられた」という言葉も存在しません。

尊厳死はあくまで本人意思の尊重であり、アカシアハイツは保健所長の指示でした。

くれぐれも誤解無きよう、お願いします。

テレビのアナウンサーやコメンテーターも、100%間違えて報じています。

皆さまも第二波に備えてるべく、
自分のこととして考えておいてください。

アカシアハイツは、現在進行形です。

クラウドファンデイングにも宜しく。



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この記事へのコメント

北海道の施設クラスターは千歳市の施設の報道を見たことがあります。施設長が出演していましたが。
ヨーロッパの万単位の死者の半数以上は、施設入所の高齢者だそうです。
施設入所者をすべて救急搬送しようとしても、今の医療体制では受け入れ先がない。やはり高齢者コロナ専門病院が必要なのでしょう。どの人にどこまでの医療をするか濃淡を決めておく必要があります。
本人や家族に何の相談もなく医療を受けさせなかったのであれば、それは看取りではなく見殺し?
コロナに感染したとしても、高齢者の場合はコロナが直接死因とは限らない。
普段、入所者を診察も介護もしていない保健所長にいったい何の権限があるのでしょうか?
2類指定だからこういう権限?が平然と許されているのでしょうか?おかしいですね。

Posted by マッドネス at 2020年05月29日 10:07 | 返信

やはり高齢者コロナ専門病院が必要なのでしょう・・・今の特養や老健といった施設では看取りの経験があるところは少ないでしょう。これまでは入所者が急変したら救急車を呼んで対応していたでしょうが、コロナの疑いのある入所者を前に(救急車を呼べない)介護士がパニック状態でしょう。私も高齢者コロナ専門病院しかないと思います。

丘の上の変人からマッドネスへの返信 at 2020年05月29日 10:33 | 返信

コロナ専門病院の立ち上げを長尾先生が
提案されたと、このブログで拝見しました。

十三市民病院が、コロナ専門病院になり
その後、現場がどのようになったか気になって
十三市民病院で働く方のツイッターを見つけ
フォローしています。

なぜコロナ専門病院にしたのか?
と患者さんに叱られたり、
自分の治療がどうなるのか不安で
予約が待ちきれず直接病院に来て
説明を求める患者さんの対応に追われたり、
どのタイミングで専門病院に戻れるのか
不安に思われたりしているそうです。
十三市民病院で働く方々の
精神面でのケアを
提言していただけないでしょうか?

せめて医療従事者に配る
クオカード、
申請ではなく
コロナ受入病院に
一律配布にしていただけませんか?
医療従事者の方、忙殺されている上に、
クオカードの申請書まで書いている余裕が
あるようには思えません。
こちらも提言していただければ、と思います。

Posted by 元保育士 at 2020年05月29日 11:38 | 返信

詳しいことはわかりませんが、私は施設での看取りもありだという考えです。入院させれば全てが解決とも思えませんし、認知症周辺症状(BPSD)のある患者さんは看護師さんのマンパワーをかなり必要とします。特に意味のない徘徊をする人だと大変です。ご家族によっては抗精神病薬での鎮静を望まれないところもありますし、非常に困る場合もあります。

特効薬もない現在、院内感染のリスクと治療効果を天秤にかけるとなんとも言えなくなります。人道的には入院かな、と考えざるを得ませんが、果たしてそれでいいのかなとも思います。

嘱託医のいる老健では肺炎の治療まではできるはずです。抗生剤の効かない肺炎として、食事がとれない間は点滴をして、自然に回復すればそれでよし、亡くなったら看取り、ということであれば一つの方法だと思います。自分の親が認知症になったら個人的にはそのような対応でいいと思います。

受け入れ先病院があるのに、ご家族の意向も聞かずに一律にそういう対応をしていたとすれば問題ですね。多分今回はそういうことだろうと思います。これを教訓に、今後は「認知症対応型コロナ病院」をお願いしたいです。

Posted by 広島の赤牛 at 2020年05月30日 09:01 | 返信

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