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祖母のタバコ
2020年07月14日(火)
きらめきプラス7月号
今回は盛岡市にお住まいの22歳、女子大生からのご相談でございます。
Q)認知症の祖母(79歳)、麺工場を営んでいる両親と一緒に住んでいますが、祖母がタバコをやめてくれず、困っています。私が「体に悪いからやめようね」と言っても「タバコを吸うと気分が落ち着く」と言って一向にやめる気配はありません。家族がいる場所での喫煙ならまだよいのですが、家族が寝静まっている時間帯にも起きて吸っている時もあります。いつもお世話になっている病院からは、禁煙治療は本人の了承が必要で、認知症の人には難しいと言われました。一日中祖母と一緒にいる両親も、祖母が機嫌よく穏やかに過ごしてくれるのならその方がいいという感じで、最近では祖母に対して何も言わないようになってしまいました。両親の気持ちもわかるのですが、やはり祖母の健康や「火の不始末で火事になったら……」と考えると心配で、なんとか禁煙してもらいたいのですが、なにかよい方法はないでしょうか?
先生にもう一つご質問させていただきたいのですが。これだけさまざまなタバコの健康被害の報告が出ていたり、私たち家族のように悩んでいる人が大勢いるのにかかわらず、日本の政府や行政の禁煙、受動喫煙対策の内容は曖昧な言い回しが多く、とても甘いと感じるのですが。調べれば調べるほど、多くの疑問や怒りを感じてしまうのは私だけなのでしょうか。よろしくお願いいたします。
A)
認知症の方のニコチン依存症はとても悩ましい問題ですね。私自身も毎日、困っています。特に独居の認知症の方は火事が心配です。実際、火事でまる焼けになって亡くなった方がおられました。それも私の訪問の2時間後でした。さっき診たばかりの人が駆けつけた時には真っ黒焦げの遺体になっていてショックでした。無力さを感じました。
新型コロナウイルス(以下、コロナ)が猛威を奮っている現在、禁煙指導が最重要です。後述するように喫煙者の感染率と死亡率が極めて高いからです。しかしマスコミではタバコの話は隠蔽されています。本誌ではタバコの話題を書けますが、書けない(編集者から圧力がかかる)メデイアもあります。まさに言論統制です。今、喫煙者にはこう言っています。「タバコを吸うということはコロナで死にたいと言っているのと同じことですよ」と。それでも止められないのが「依存症」の恐ろしさです。まだコロナが一人も出ていない岩手県ではこの作戦は通じないかもしれませんね。
禁煙治療は本人の意思が必要です。その意思がなければ治療できません。しかし中等度以上の認知症の人の場合は、禁煙の意味が理解できないので禁煙治療は無理かもしれません。唯一禁煙できるのはタバコが入手できない社会環境になることです。国がタバコの販売を中止すればいいだけのこと。それをせずコロナ対策を論じている国の姿勢に大きな疑問があります。私は1ケ月前からコロナ外来をやっていますが、相談の9割が喫煙者です。発熱と咳とタバコが見事に3点セットになっています。この現実に目を背けて、10万円の話ばかりになっていることが不思議でなりません。本気で死者を減らしてコロナ禍を収束させたいのであれば、タバコを全面禁止にするのがいちばん簡単で効果的です。
コロナの発生源となった中国のコロナと喫煙に関するデータを紹介しましょう。武漢で重症化した人の喫煙歴を調査したところ、非喫煙者に比べて喫煙歴がある人のオッズ比(疾患などのかかりやすさを二つの群で比較して示す統計学的な尺度)は 14 でした。日本禁煙学会理事の松崎道幸氏は、武漢では生涯非喫煙者に比べ、喫煙経験のある人の重症化リスクが2・ 19 倍、人工呼吸器装着または死亡のリスクが3・ 24倍であると報告しています。武漢で亡くなった方の多くが喫煙者でした。たいへん衝撃的なデータですが日本ではこの事実が報じられていません。
そもそも日本は受動喫煙防止を謳ったFCTC(タバコ規制枠組条約)に世界181カ国とともに批准しています。しかし国際条約であるFCTCを無視している国です。タバコはコロナに限らず、百害あって一利なしです。本来は国民運動として国が禁煙を呼びかけるべきですが、しません。その理由は極めて単純です。タバコ会社が財務官僚の大切な天下り先になっているからです。天下ると年収約4000万円ももらえるし、なによりもタバコ税もあるので、タバコ会社が潰れたらいちばん困るのが国なのです。世界中で国家がタバコ会社と癒着している国は日本だけです。さらに、いまだにテレビでタバコのCMが流れている国も、日本だけです。諸外国ではテレビでのタバコの広告が原則禁止されていますが、日本だけ違反しています。
現在、日本人の喫煙率は男性が 29 %で女性は8%で約 17 %です。年々、喫煙率は低 下していますが、受動喫煙対策は世界でもっとも遅れています。街なかや店内に喫煙所が設置されていますが、そもそも「分煙」では受動喫煙を防げません。特に新型コロナが蔓延する状態においては、喫煙所がクラスターの発生源になる可能性が非常に高いことが知られています。受動喫煙も大きなリスクになります。コロナのリスクとして高齢者と生活習慣病ばかりが強調されていますが、いちばん大切なリスクが隠蔽されています。東京都医師会をはじめ医師がタバコ問題に積極的に取り組んでいますが、肝 心の国が動きません。今回のコロナ禍において喫煙者や受動喫煙者の重症化リスクが判明しているのに、ほとんど報じられていないのが大変残念でなりません。
お祖母さまのように「タバコがないとイライラする」という人は「ニコチン依存症」という立派な病気です。しかし認知症のため」禁煙外来で治療できないのであれば、貴方が毎日ニコチンパッチを貼ってせめて「減煙」を目指すという方法があります。主治医やそれを購入する薬局の薬剤師さんとよく相談しながら試してみてください。
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今夜は国立認知症大学の講義だった。
熱心に聴講頂いた皆さま、ご苦労さまでした。
ショッキングな内容だったでしょう。
私の本音は、とてもここには書けません。
是非、感想とご意見をお寄せください。
次回は9月8日(火)です。
PS)
コロナチャンネル#086
陽性者急増中!施設や自宅でどう過ごしてもらう?
https://youtu.be/OGt9l2zn1BY
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この記事へのコメント
私の父も、タバコを止めませんでした。母もガミガミ怒ったし、私も止めるようにいったのですけど、だめでした。上行結腸癌や、耳下腺腫瘍の手術をして、脊柱の圧迫骨折をして、寝たきりになって弱って来て、肺炎になって、救急病院に入院して院内感染MRSAに罹患して死にました。
父が嫌だと言っていた中心静脈栄養をされて、私を恨むような目で見ながら死んで行きました。
あんまり苦しんで死んだので、暫くお骨を見るのも怖いくらいでした。
でも考えて見れば「止めろ!」といっているのにタバコを吸い続けた父が悪いのだと、私も開き直っています。私は喫煙の習慣は有りませんが、考え方や腰痛持ちだったり、歩き方や姿勢が、何となく父とそっくりな自分を見つけて、苦笑いしています。
Posted by にゃんにゃん at 2020年07月16日 05:24 | 返信
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