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合理的に備える
2020年07月21日(火)
公論2020年8月号 第二波に合理的に備える 長尾和宏
開業医をもっと活用すべき
蚊帳の外の開業医
コロナの第一波において開業医は完全に蚊帳の外であった。PCR検査が保険適応になったと言っても行政検査なので開業医ではできない。第一波が小休止した現在でも保健所の指示なく行うことはできない現実は、全く報じられていない。保健所の指示でPCRセンターのようなところに医師会員が手上げで出務して検体採取を手伝っている。陽性の人は保健所の指示で病院やホテルに入院ないし隔離される。開業医がコロナの治療に関わることは皆無である。関わりたくても関われない。要介護5の在宅患者さんや施設入所者さんにも関われない。これが前号で「せめて高齢者だけでも2類を5類に落とすべき」と主張した理由である。大阪では死亡者の8割が70歳以上であった。全国でも死亡者の9割以上が60歳以上である。死亡者を減らす、という視点からはコロナは完全に高齢者問題である。
今、全国の医療機関は閑散としている。市民は院内感染を過度に恐れかつてない受診抑制がおきている。わずかな利益率で延命してきた病院経営はまさに瀕死の状態にある。一方、開業医も診療科にもよるがかつてない患者数減少で経営危機に陥っている。病院には公的資金が投入され救済されても開業医には「不要な医療が減っただけ」と救済の手は延びない。
開業医、すなわち診療所は全国に10万軒もあるという。第二波においては第一波で蚊帳の外におかれ、今も閑古鳥が鳴く開業医を活用すべきではないだろうか。
唾液でインフルとコロナを同時診断
唾液を検体としたPCR検査が普及する見込みである。一方、唾液を検体としたコロナ抗原検査も開発され秋には実用化されるという。PCR検査のほうが精度が高い一方、高価な機械や費用が必要だ。今後、いつかは市中感染になることを想定すれば、唾液での抗原検査キットの普及が望まれる。しかしいまだにコロナは指定感染症で、唾液検査も行政検査であろう。一般診療所において開業医の判断で実施できるかどうかは、不透明である。
この冬は、コロナに加えてインフルの流行も重なると予測する専門家が多い。そうなると従来のインフルの簡易検査をこれまでのようにできない。鼻汁を採取する時にコロナウイルスをまき散らす可能性があるからだ。だから屋外でPPE装備でインフルの検体採取を行うことになるのだろう。インフルがマイナスならば、保健所に連絡して唾液の抗原検査をすることになるのか。しかしこんな煩雑なシステムで第二波に対応できるのだろうか。
私は、インフルもコロナも唾液と検体にした抗原キットで診断すべきだと思う。同時に検査できる簡易キットの開発を急ぐべきだ。さらに保健所の指示で行う行政検査ではなく、開業医の判断で一般診療所において行えるようにするべきだ。そのためにはコロナもインフルと同様の5類に落とす必要がある。診療所を受診して30分以内にインフルかコロナか、はたまた同時感染なのかを診断できるシステムを整備すべきだ。
さらに、インフルとコロナの唾液での抗原診断キットを妊娠検査薬のように薬局で販売できればなおいい。三千円程度で販売すれば医療機関を受診するより安いし、なによりも医療保険財政を圧迫しない。自宅で自分で唾液を垂らしたキット結果を写メに撮り、それを開業医で見せることで検体を介した院内感染のリスクが大幅に減る。
軽症者は開業医で診断・治療
コロナは2類感染症であるのでPCR陽性者は病院かホテル等に「隔離」することができる。しかし「隔離してもいい」が、いつの間にか「隔離しなければならない」と誤解されてはいないだろか。その結果、高齢者施設でコロナ疑いの高齢者がいても、PCR検査を受けて陽性となれば「どこかに連れ去られる」と懸念して「疑い患者さんを隠蔽する」という傾向があった。その結果、全国各地の医療機関や介護施設での大規模クラスターや集団感染につながったのではないか。本来は、地域における感染者情報をリアルタイムで共有することが最重要であるが、法律の縛りと差別・偏見が歪んだ対策になっていないだろうか。
そもそもコロナ感染者の8割は無症状ないし軽症者である。その人を感染症病棟に隔離する必要が本当にあるのだろうか。筆者は無症状ないし軽症者は「自宅隔離」で十分であると考え、第一波で実践した。詳細は省くがオンライン診療をフル活用し軽快まで見届けた。
CTで明らかなコロナ肺炎があってもPCR陰性者が何人かいて、保健所はそうしたコロナ肺炎(画像的にほぼ確実)のあるPCR陰性者にはノータッチであったからだ。驚くべきことに政府は「PCR陰性の感染者はいない」という誤った前提で政策が立案されているのだ。
第二波を想定した時、大部分が軽症ないし無症状である感染者は開業医で診断・治療すべきと考える。開業医でできる治療とは、アビガンでもレムデシベルでもない。ノーベル賞の大村教授が推す「イベルメクチン」である。私達は在宅や施設で常にいる疥癬の患者さんに普段使っている安価な薬がコロナに効くというのだから使うだろう。イベルメクチンはコロナに保険適応が無いので無償提供する。といっても千円二千円程度だ。採血で炎症反応やDダイマーを調べ、高値であれば血栓症予防のためにフサンを点滴する。これも30年前から使い慣れている膵炎治療薬である。施設患者さんにも使いやすい。
コロナは高齢者問題である。ならば地域の開業医が診療所や自宅や施設で即診断して、即治療できる「合理的な体制」を整えるべきだ。
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合わせて、専門誌である日本医事新報7月号も読んで欲しい。
「開業医にも武器を!」→こちら
それにしても、患者さんが多い。
外来も在宅も、毎日、本当に忙しい。
今日は産業医業務もあり秒刻みだった。
赴任初日の女医さんと朝一の看取り。
朝から晩まで手取り足取り(?)だ。
クタクタになりながら、夜も往診に精を出す。
暑い夏のほうが、性にあっているのかなあ?
PS)
コロナチャンネル#093
三浦春馬さんを悼む――今、死にたいと思っているすべての人へ
https://youtu.be/yUz2vz-mGG4
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この記事へのコメント
長尾先生の『コロナチャンネル』。追っかける方は楽ちんですが、間もなく100日、よくも続きますね。失敗したので登録はできていませんが、未登録でも毎日勉強させていただいている方は登録されている方よりも遥かに多いと思います。
新進気鋭の俳優の方、疎くて知らなかったのですが、「居合術」も肥やしにしておられたとか、鬼気迫るものを感じ鳥肌が立ちます。
関西を代表する落語家が、「探求」のすえ自死されたときの衝撃を想い出します。
一昨日の投稿で、上野由岐子、藤井聡太の「探求」と書きましたが、「探究」の誤りでした。研ぎ澄まされていく「探究心」。素人が覗き見ることのできない凄さ、命とのやりとりの深淵を垣間見る思いです。
Posted by 鍵山いさお at 2020年07月22日 12:33 | 返信
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