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尊厳死協会の見解

2020年07月28日(火)

嘱託殺人事件に関する日本尊厳死協会の
見解が、協会のHPに掲載された。→こちら
今後、尊厳死の議論を深めていきたい。
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2020年7月27日
公益財団法人日本尊厳死協会
 
ALS患者に対する嘱託殺人事件報道に関する日本尊厳死協会の見解
 
 
はじめに、ALS(筋萎縮性側索硬化症)という神経難病を患いながらも最期まで懸命に生き抜かれた女性の勇気を称え、ご冥福をお祈り申し上げます。公益財団法人日本尊厳死協会はこのたびのALS患者に対する嘱託殺人事件報道に関し、以下の見解を表明します。
 
 私たち日本尊厳死協会は、延命治療の拒否を文書で示した「リビングウイル」の普及啓発を行うことを目的とした、10万人余の会員を有する市民団体です。まず協会として申し上げたいことは、尊厳死と安楽死は異なる概念であるということです。多くのメデイアや有識者が両者を混同して報じられています。今後の議論を深めるうえで、二つの言葉をはっきりと区別して使って頂くことをお願いします。
 
協会はリビングウイルに基づいて延命治療を差し控え、充分な緩和ケアを施されて自然に迎える死を尊厳死と定義しています。それに対し、安楽死は積極的に生を絶つ行為の結果としての死で、日本では安楽死は一般的に認められておらず、自殺ほう助は犯罪です。報道されている情報のみで、今回の医師が行った処置の詳細が不明ですが、医行為としては社会的規範を逸脱しており、医師の倫理規定違反は明白で、到底容認できるものではありません。
 
1991年、東海大学病院で末期がんの入院患者に薬物を投与し患者を死に至らしめたとして、担当医が殺人罪に問われた刑事事件がありました。日本において、医師による安楽死の正当性が問われた、現在までで唯一の事件ですが、横浜地裁の判決(1995年)では医師による積極的安楽死として許容されるための4要件として、
1.患者が耐えがたい激しい肉体的苦痛に苦しんでいること
 2.患者の死が避けられず、その死期が迫っていること
 3.患者の肉体的苦痛を除去・緩和するために方法を尽くし、ほかに代替手段がないこと
 4.生命の短縮を承諾する患者の明示の意思表示があること
が示されています。
今回の事件は上記の要件を満たしておらず、加えて、苦痛の救済方法に関しての十分な話し合いが、本人と本人の医療とケアに関わっていた人々と行われた形跡がないことを考慮すると、この医師たちの行為は社会的コンセンサスを得ていない、思い込みによる判断からの行為という非難を免れない、と結論付けられます。
 
横浜地裁の安楽死4要件には肉体的苦痛に関する記載がありますが、患者の苦痛は肉体的苦痛よりも他の苦痛であったと推察します。緩和ケアの世界では全人的苦痛と言われるものがあり、1)肉体的苦痛、2)精神的苦痛、3)社会的苦痛、そして4)スピリチュアル・ペインです。スピリチュアル・ペインとは、生きる意味や価値を見失うことによる苦痛と定義されています。
 
死にたいという言葉の裏には必ず、満たされていない痛みがあります。特に、家族への負担を強いることや社会参加の機会が奪われることなどからくる社会的苦痛、自分の生きる意味や価値を見失う苦痛や苦悩であるスピリチュアル・ペインです。本人が抱えるこれらの苦痛苦悩に、周りの人は本人に代わって答えを出すことができません。生きる意味を求めて模索する患者の苦痛を共有するケアマネジメントが望まれますが、いまだ日本社会の病者、生活弱者に対する不十分なサポート体制が、多くの不幸な尊属殺人や嘱託殺人を招いていると考えられます。
 
種々の調査によると現在、7~8割の日本人が安楽死の法的整備を望んでいるという現実があります。安楽死の権利はスイス、オランダ、米国、カナダ、オーストラリア等で認められています。また、スイスやオランダでは、肉体的苦痛のみならず、スピリチャル・ペインによる安楽死、また認知症が進行したら安楽死を行って欲しいという事前指示も認められています。協会は尊厳死に賛同していますが、安楽死には反対の立場です。
 
意外に思われるかもしれませんが、その真意は「まずは尊厳死ができる国にしよう」という想いです。というのも日本は先進国で唯一、「リビングウイルの法的担保」が無い国で、終末期議論の最後進国です。また充分な緩和ケアが提供できれば安楽死は要らないのではないか、という趣旨です。協会の会員の中にも安楽死の議論を望む声が多くあがっていますが、社会の意識改革を待たずに、安易に安楽死を容認すべきではないと考えます。
 
 リビングウイルとは生前の遺言状です。終末期医療における自己決定権に関する国会議員の議論が行き詰まったため、厚労省は「人生会議(ACP)」で決めようということに方針転換しました。そこで協会は、「リビングウイルを人生会議の入り口にしましょう」という形で発信してきました。「人生会議の主人公は本人である」、と。しかし現実にはリビングウイルを表明している日本人はまだわずかです。高度の認知症などですでに表明できない人もいます。
 
リビングウイルは終末期医療に関する自己決定です。これは憲法で保障された幸福追求権に基づきます。しかしそもそも「死の権利はあるのか?」という視点で見れば、安楽死も同じことが言えます。協会は世界約30ケ国からなる「死の権利・世界連合」にも参画し理事を輩出しています。世界における「死の権利」とは安楽死(医師による介助死)を認めることですが、世界もおおいに悩んでいます。一方、日本国内における「死の権利」とは今のところまだ尊厳死議論の段階に留まっています。
 
今回の事件を契機に多くの日本人が死をタブー視せず、リビングウイル、尊厳死、そして「死の権利」の議論を深め、国民の納得する終末期医療に変容することを期待しています。

-----------------------ー


今後、新聞各紙でも紹介されるだろう。

個人的には「小説 安楽死特区」を読んで考えて欲しい。


私の言いたいことは、この小説の中に書いた。


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京都の事件は安楽死、ではない。
嘱託殺人という刑事事件である。

そこは間違えてはいけない。
私もしっかり区別している。


しかし、亡くなったALS女性は
「安楽死」と思っているだろう。

つまり、安楽死の「安楽」という形容詞は
当事者ではない第三者がつけた形容詞にすぎない。


あるいは、あの世にいるご本人は
「自殺」と思っているのかもしれない。

自殺は、
キリスト教では、地獄に落ちて悪魔に怒られる。
では、仏教においては、仏さんはなんというか?


以下、高橋ヨロンさんのメルマガにあった
江田智昭氏(僧侶)のお言葉である。

二人とも知り合いなので、ちょっとだけ無断で引用させて頂く。


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■「仏教」では「自殺」をどのように捉えるか?
 仏教における自殺の位置づけを詳しく調べてみると、実は自殺という概念は仏教の中の戒律には存在しません。そもそも、戒律とは他人同士のトラブルを未然に防ぐものであり、自らの命を自らが断つという行為は、仏教の戒律では対象外となっているのです。もちろん、他人の命を断つことは「不殺生戒」があり、明確に禁じられています。しかし、自殺に関してはそうではないのです。
 戒律の研究で有名な花園大学の佐々木閑教授は「仏教と自死に関する国際シンポジウム」の中で「仏教は自殺を犯罪とみなす宗教であるかのように誤解している人がいるが、そうではない」と明確に語られています。また、世俗的な意味においても、仏教的な意味においても自殺は悪に入らないともおっしゃっています。このような点はキリスト教・イスラム教などの他の宗教と大きく異なるところと言えるかもしれません。
 では、お釈迦様は自殺が起こったときに実際にどのような反応をされたのでしょうか?『雑阿含経』の中にお釈迦様の弟子であるヴァッカリが重い病に罹って苦しみ、最終的に自殺してしまったというエピソードがあります。ヴァッカリが自殺をしたと弟子から聞かされたとき、お釈迦様は「ヴァッカリは完全な涅槃に入ったのである」(涅槃とは、煩悩のない悟りの世界や境地のこと)とおっしゃったのですが、これ以外のことを何も述べませんでした。つまり、お釈迦様は自殺に関して、良いとか悪いとかの価値判断をしなかったのです。
 

■苦しみの原因から距離を置くこと
 
 上記のようにお釈迦様は自殺に関しての善悪を一切明言しませんでしたが、仏教の目的は「抜苦与楽」といわれています。この言葉は『大智度論』の中の「大慈与一切衆生楽、大悲抜一切衆生苦」に由来しており、この世界の人々の苦しみを除き(抜苦)、幸せの境地に到達すること(与楽)を意味した言葉です。このように「苦しみを除くこと」が仏教の目的であるため、自殺に関して言うならば、自殺を考えている人が抱える膨大な苦しみを取り除くことが仏教の一つの大きなテーマとなるのです。
 それではどのようにすれば苦しみが取り除かれるのでしょうか?人によって苦しみの原因は実に様々です。仕事・お金・プライベートの問題など、わたしたちは数えきれないくらいの問題や悩みを抱えて生きています。そして、残念ながらそのような苦しみは一生消えることはありません。多かれ少なかれ何かしらの苦しみと常に共存しながら生きていかなければならないのです。人生の中に苦しみがある限り、それらが深刻になって鬱状態に陥り、自殺に至ってしまうという事態が自分自身の身に起こっても何ら不思議なことではありません。精神のバランスを崩せば、どんな人の身にも自殺は起こりうるのです。
 もし、自分が自殺したいと思うくらい追い込まれたときは、とりあえず自分を一番悩ませている原因から一旦距離を置く勇気が必要となります。確かに自分が逃げることによって発生する迷惑や損害、そこで失われる信頼などを考えると、容易に逃げることは絶対にできません。これらを失うことは大きな恐怖であり、責任感の強い人ほどこの恐怖心が強くなります。おそらく三浦春馬さんはこれらの問題でとてつもなく大きな葛藤を抱えていたのではないかと思います。発生する迷惑や損害を頭の中で計算してしまうとなかなか逃げるという決断ができなくなってしまうのです。
 しかし、いままで多くのケースを見て思うことは、大きな苦しみの原因となるものと一旦距離を置いて、休息をとるくらいしか解決策がないような気がします。とりあえず心を落ち着ける時間を確保する。これが大切です。わたしが傾聴ボランティアをしていた際には「苦しみの原因から一旦距離を置いて休息しましょう」、「あなたには絶対に生き続けてほしい」―この2つのことを必ず伝えていました。この世界に踏ん張って生きていれば、何かが変わるときが来るかもしれないからです。
 
--------------------


そうか、
・ちょっと休憩しましょう。
・絶対に生き続けてほしい、である。


私はいつもそう言ってきたけど
間違っていなかったのだ・・・

とにかく生きる。。

単純だけど、難しい。



PS)
コロナチャンネル#100

ALS嘱託殺人――これ、尊厳死とは全然違うからね!
https://youtu.be/xIyktk-ACAg
 











 
 

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この記事へのコメント

長尾先生、コロナチャンネル百回、本当にありがとうごさいます。

人間にとって、とてもとても大切な課題が一度に押し寄せて来ました。
《生と死と病》全員が一致し納得する正解は、無いでしょう。
しかし、日々《思考の整理》をしながら生きて行かれたらと思います。
《思考が停止》すると、全てが失われてしまうような気がします。
自身の体験した事に、自身の待ち合わせている最大限の想像力を働かせ、他者をも尊重出来たらよいなと考えます。
先生、今日もありがとうごさいます。

Posted by 轟 瞳 at 2020年07月28日 02:55 | 返信

日本尊厳死協会の見解として「十分な緩和ケアが提供できれば安楽死は必要ない」というところが気になりました。

今の日本でうつ病と周辺疾患に対して十分なフォローができており、自殺者が外国と比べて少ないということであれば納得できるのですが、実際はそうではないようです。長尾先生の担当される患者さんに対してはうまくいっていると想像するのですが、日本全体を見るとそう劇的に変わるとは思えず、この考え方ではうまくいかないでしょう。

コロナチャンネル#100の中で、「人工呼吸器を付ける前の呼吸苦に対してモルヒネを使う」というのも気になりました。これは苦しみをとるためにはいい方法ですが、ひょっとしてその時期を終末期と捉え、呼吸機能を落として亡くなるリスクが増えることを容認しているのだろうかと思いました。個人的には賛成ですが、反対意見は多そうです。

なので日本尊厳死協会としては立場上そう言わざるを得ないのでしょうけど、日本を変えるにはちょっと弱いかなとも思ってしまいます。きれいごとだと言われる人は多いでしょう。個人的にはもう少し攻めた発言が欲しいです。

別のところにも書きましたが、ALSの方の胃瘻や人工呼吸器については認知症高齢者のケースと考え方が同じなのか変えるべきなのか。違うとしたら判断基準は「若い」「判断力がある」ことではないと思いますが、「亡くなるまでの期間が不明、終末期ではない」というところでしょうか。逆に亡くなるまでの期間が短い方が我慢できると思いますので、個人的には疑問です。

リビングウィルは時間経過によって変えてもいいってことになると、ALSの方も同じことが言えるかもしれません。

リビングウィルについて、「3.外傷や神経、心臓、肺などの病気、あるいは遺伝性の病気により、人工呼吸器等の生命維持装置を使い生活されている方にとって、生命維持に関わる措置は延命措置ではないことは言うまでもありません。」とありますが、「言うまでもない」ですませてはいけないと思います。死にたいという考えが持続的に出てきた段階で、生命維持装置は延命装置になってしまうんじゃないでしょうか。

Posted by 広島の赤牛 at 2020年07月28日 08:47 | 返信

コロナチャンネル毎日拝見しています。登録者1,000人を一つの目標との事で昨日友達に紹介して登録して貰いました。これからも宜しくお願い致します。

Posted by 森のくまさん at 2020年07月28日 08:34 | 返信

長尾先生は大変ですね。今更なセリフかも知れないけれど、改めて、大変な立ち位置に
いらっしゃると思いました。御自分のブログとは言え、全てを個人の見解で済ます訳にはいかず、です。
たくさんの役職を兼ねておられるので、各々の立場で言えない事もあるでしょうし、少しの発言でも
反響の凄まじさは、誹謗中傷の類では済まなそうな御苦労を思います。
尊厳死・平穏死についても、民衆が現実味を帯びて考えるタイミングを迎える頃というのは、
当然、平時ではなく切羽詰まった時であるようです。
最近何かの番組で見ましたが、有料老人介護施設入所時に「平穏死希望」と書類に記入していた人が、
もしも罹患した場合:「コロナでは死にたくない、治療して欲しい。」と翻った例もあるようです。
リビングウィルの深度というか、リビングウィルそのものにも、価値観の幅があるのかも知れません。

Posted by もも at 2020年07月29日 12:06 | 返信

何年か前に「巻子の言霊」というご本があって、巻子さんと言う主婦が交通事故にあいました。
一方的に若者が無謀な運転をした対向車に正面衝突されて「閉じ込め症候群」と言う手も足も、ご自分の体が一切動かせない状態になって、アイコンタクトで「私を殺して下さい」とご夫君に哀願なさった。
ご本を読んだ私は「巻子さんは、お嬢様の仰るところによると、是非ご夫君のお子様を産みたかったと仰っていたらしい。そんな奥様を安楽死はできないでしょう。」と申し上げてしまいました。
その後何年の経ちますが、車を運転していますと、巻子さんも車を運転していて突然不幸に見舞われたのだなあと思いだし、ご夫婦の問題に、赤の他人の私が軽薄な事を申し上げたと、つくづく自分がいやになることがあります。今回の京都の事件は、聞く所によると彼女が、治る事のない病に、徐々に身体の不自由になることに泣いたところ、いずれの方かが「周囲の方達は皆、貴方のことを思って最善を尽くしているのだから、そのように死にたいという事は感謝の気持ちが無いではないか!」と言われて悔しかったと仰ったときいています。彼女を殺したのはその方の物の言いかたであったと思います。ヨーロッパでは「安楽死」は認められる国もあるのでしょう。難病に人は皆、死ぬべき等とは思っていませんが、周囲に言葉に傷ついた患者さんが「安楽死をしたい」と思うのも、許されると思います。山本医師ともう一人の医師がどういう動機で「殺人幇助」をしたのかは、不明ですが、一応彼女の思いを助けたのではないかとの思いは私にはあります。
巻子さんの件も、私のような部外者が、あれこれ申し上げることはなかったのにと、あれからよく思う事があります。

Posted by にゃんにゃん at 2020年08月01日 10:05 | 返信

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