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尊厳死と安楽死を混同していないか

2020年07月30日(木)

京都嘱託殺人事件の報道を眺めているが、
一言では言えない問題が、たくさんある。
せめて尊厳死と安楽死は区別して欲しい。

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そもそも今回は、安楽死事件ではない。
嘱託殺人である。ここを間違わないで。

仮に「安楽死に近い殺人」であったとしても
「尊厳死」とは全く関係はない。

おかしな記事が多い。


●ALS嘱託殺人で医師2人逮捕、「安楽死」の議論や法整備はなぜ進まないのか(ダイヤモンド・オンライン) 
https://news.yahoo.co.jp/articles/63ce469979107dd1ee1a725c17972565b5ca26fc

「治療か尊厳死か」、って、記事の冒頭から間違っている。
ここで使う言葉は「安楽死」、だろう。



●「医療倫理に背く行為」日本ALS協会などコメント(産経新聞)
https://news.yahoo.co.jp/articles/9078c911485832d9a47d45e769566fb50c51a901

この記事は正しい。
ALS協会と尊厳死協会は同様の主張だ。

しかし他のメデイアでは、ALSの当事者やALS関係者は
「尊厳死や安楽死に反対」と発信しており、両者を混同している。



●蓮舫氏、「京都安楽死事件」で見解「とてもじゃないが『尊厳死』の議論を始めようとはならない」(スポーツ報知)
https://news.yahoo.co.jp/articles/3305a4ea4e8ff535b0b28dad210a276667b02d28


●「尊厳死の法整備の議論を」維新代表の松井氏 (産経新聞) 
https://news.yahoo.co.jp/articles/ad08e0984824888dedfad6a64be6c304ca376d38


蓮舫さんは間違えている。
松井さんは間違えてはいないだろうが、分かっているのかな。


●石原慎太郎さんのツイッター発言にフジテレビの平井信夫氏がコメント
https://www.fnn.jp/articles/-/67861?s=09

これも「尊厳死」と書かれているが、おそらく「尊厳ある死=安楽死」という意図か。



私の知る限り、尊厳死と安楽死を分かっている政治家は数人程度。
だから議論に発展しない。


以前、月刊文芸春秋で「安楽死・尊厳死を有識者100人に聞く」
という企画があったが、有識者の95%が間違って記述していた。

結局、言葉の定義を正確に知ってから使うべきだ。
しかし、ほとんどのメデイアはそれが分からない。


今日もメデイア取材があるが、まずはその点を申し上げたい。


分かり易い本を書いている。
「長尾和宏の死の授業」

せめてこれを読んでから取材して欲しいな。


以上は、日本国内だけの話。

世界は、Death with diginity=安楽死、の話、一色。


以下、ドイツの知人から届いたメール。



日本では「尊厳死、安楽死、平穏死、自然死、嘱託殺人」という
法的にあいまいな表現が混在して使われているようで、先ず表現の
定義を誰か(裁判所?)が公的に明確にする必要がありますね?
 
ドイツでは安楽死(Euthanasie)という表現は、ナチス政府が
この言葉を悪用して施行したユダヤ人および身体‐ 精神的障害者の
殺戮の歴史のためにタブー語と言えます。


尊厳死という言葉も使われません。それに相当する表現として、
消極的な死への手助け」延命処置の不適用、および中断 (尊厳死)
間接的な死への手助け」死期を早める可能性のある鎮静処置 (尊厳死)
があり、それに加えて「自殺幇助」があります。この行為は、積極的・
直接的死への手助け(日本語では安楽死)とは別に扱われます。
日本ではこの二つの表現:自殺幇助と安楽死が(尊厳死協会の見解でも)
同じに扱われているようですが、自殺か、他殺かの違いに微妙に関わる、
やはり別に扱うべき概念であると思います。

ドイツでは最近の裁判で、個人的に施される(営業ではない)自殺幇助が
法的に認められました。それを訴えてきた者の一人である、比較的若い
ALS患者がテレビで紹介された時に、彼の弟が報道陣のインタビューに
「兄がどうしてもと望むなら、処方された薬を彼に手渡します」と
苦しそうな表情で答えていました。
 
一つの答えが出ない問題こそ、話し合うことが必要ですね。


世界も毎日、悩んでいる。

日本ももっと悩まないと。

殺人=けしからん、で終わらせずに、当事者の気持ちになって
喧々諤々の議論を、公開の場で、交わすべきだ。




PS)
コロナチャンネル#102

高橋泰教授のコロナ7段階モデルを支持します!
https://youtu.be/z3Z5b4GxbIE





















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この記事へのコメント

尊厳死と安楽死を区別するのは一般人レベルではおそらく無理です。例えば「嘱託殺人ではあるが尊厳は守られた」と考える方はそこそこいらっしゃるでしょう。

もっとシンプルに、「耐えがたい心や体の痛みが続く場合」に胃瘻や人工呼吸器を使わない選択がスムーズにできるか、それらを導入したあとに中止する選択ができるか、それだけ議論すればいいと思います。安楽死と尊厳死の共通する部分で、ここからスタートするのがいいと思います。まずは認知症高齢者から。

「50年前だったら亡くなっていた」くらいのことは「自然なこと」として容認すべきだと思います。医療が進歩して助からないはずの人が助かるのはいいのですが、それによって新たな苦しみは生み出してはいけないでしょう。

Posted by 広島の赤牛 at 2020年07月30日 07:05 | 返信

今回の事件を読売新聞の記事で読んで、家族のコメントを見て思ったこと。
人の命って、自分だけのものなのだろうかって。

Posted by マキプ at 2020年07月30日 08:20 | 返信

ぼくは、尊厳死協会に入会するまでは「尊厳死」という言葉を知らなかった。「安楽死」という言葉は知っていた。それも、言葉どおり「安楽な死」という意味においてである。
巷では、安楽死も尊厳死も同義語として理解している方が多い。これは尊厳死協会の活動の結果として、「尊厳死」という言葉が世間に流布し定着し、「市民権」を得てきたからと言えよう。ただし、それは尊厳死協会のいう意味においてではない。マスメディアや「知識人」が両語を腑分けせず論じてきたことが影響している。

なれど両語の混同は、マスメディアや知識人の無知や不勉強のせいばかりにするわけにもいかない。
「安楽死」には、病死にしろ自死にしろ「安楽」がいいに決まっている、死期を速めたいという、願望が込められている。
「尊厳死」にも、苦痛なく自然に平穏で人として尊厳された死を迎えたいという、願望が込められている。
だから、「安楽死ではなく尊厳死だ」と言いたいのは山々なぼくも、あえて否を唱えるのに、言葉をいくつか重ねなくてはならず、「自殺ほう助」や「嘱託殺人」は刑法犯に問われますよと「脅す」ようなコメントになってしまうので、長尾先生にお任せするほかない。

あれこれ説明せずその言葉の、音声や字体のみで氷解できればいいのだが、と思う。
近代日本の先人が欧米の語彙を「和訳」した苦労が偲ばれる。
大陸や半島から「ヤマ」とか「倭」とか呼ばれていたころ、古代中世近世の倭人は、「和製英語」ならぬ「漢語」「和製漢語」を駆使してきた。「和魂漢才」「和魂洋才」という地下水脈は、この100年ズタズタになっているように思える。「鬼畜米英」から「日米同盟」へ。
ここ20年の「日本政治語」。小泉の「ワンフレーズ」から、安倍官僚の「行政造語」のオンパレード。まったくうんざりだ。いまやクニのトップは雲隠れ。お好きな「国難」はいずこへ。

Posted by 鍵山いさお at 2020年07月30日 09:48 | 返信

マキプさん。
命は自分だけのものですよ。
皆のものとか、家族のものとか、社会的役割とか考えるのは恐ろしいことですよ。
これを徹底しないと、皆の邪魔だから楽に死なせてやろう、ということになります。
なぜ日本で安楽死(医師による自殺幇助)をさせられないのかと言うと、命が自分だけのモノでないので、社会的に価値がないから死ね、とかにすぐなるからです。
欧米の安楽死は完全に個人の自己決定権に基づいています。命は自分だけのモノという思想の極北です。ナチスは障害者を安楽死させましたが、これは、命は自分だけのモノではなく、社会的役割もある、と考えたからです。
社会的役割を果たせない劣った命なんだから、社会が殺しても良い、ということですね。
命は自分だけのモノではない、というとなんか格好良く見えますが裏を返すとこうなるわけです。

Posted by 匿名 at 2020年07月31日 10:12 | 返信

長尾先生の紹介記事を全部読んでみた。
蓮舫は「とてもじゃないが、『尊厳死』の議論を始めようとはならない」と言い、松井一郎は「『尊厳死』について真正面から受け止め国会で議論しましょう」と言う。方向は違うが、「安楽死=尊厳死」ととらえている点で共通している。

れいわの船後靖彦議員に「歳費返納」を要求した維新の音喜多駿議員や足立康文議員は、早速松井代表に呼応している。フジテレビの平井文夫も「維新だけが『尊厳死の法整備の議論をすべき』と言っている」と評価し、「石原慎太郎が『武士道の切腹の際の苦しみを救うための介錯の美徳も知らぬ検察の愚かさに腹が立つ』との発信に、さすが慎太郎さんと感心した」と応じた。

え!元気ハツラツ慎太郎さんの発信を開いてみよう。
「業病のALSに侵され自殺のための身動きも出来ぬ女性が尊厳死を願って相談した二人の医師が薬を与えて出したことで『殺害』容疑で起訴(ママ)された。」「裁判の折り私は是非とも医師たちの弁護人として法廷に立ちたい。」7.27
維新の呼びかけに応じたのは、「老人狩り」や「優生思想」で名を馳せたメディアや知識人である。数年前、フジテレビアナで維新公認候補となった長谷川豊は、「自業自得の透析患者など全員実費負担にさせよ。無理だど泣くならそのまま殺せ。」と言ってのけていた。医師二人の決起は、国会に風穴を開けることにも成功したといえよう。

「ソンゲンシ」という音韻、「尊厳死」という漢字体。
「国会」では、提唱者の意図とは真逆の立法通念となろうとしているのであろうか。

Posted by 鍵山いさお at 2020年07月31日 03:58 | 返信

メルマガ読ませていただきました。私みたいなそこらへんの医者でなく長尾先生のような立場では(普通きれいごとしか言えません)相当難しいことだと思いますが、その中でのおそらく最善の策だと思います。反論ばかり書いているように見えますが、ずっと尊敬しております。

Posted by 広島の赤牛 at 2020年08月01日 08:43 | 返信

尊厳死や「死ぬ権利」という言葉の捉え方、あるいは距離感は一人ひとり違うと思います。
「死にたい」人の気持ちに寄り添い、尊重することも大事ですが
心身の状況で一括りにして決められてしまうのでなく、一人ひとりの思いが反映され
「生きたい」人が安心して生き続けられる世の中であって欲しいです。

生きるとはどういうことなのか、考える中で出会ったお話のことを。
「神戸新聞NEXT」サイト内の「眠りの森のじきしん」という連載記事。小学2年生の男の子が交通事故に遭い「脳死に近い状態」と診断されながら、お母様と二人三脚で3年生の時に復学し、通い続け、小学校卒業目前に亡くなるまでの物語です。
もしも本人が意思表示出来なくなった場合、生きるかどうかを決めるのは、医学のみによるのではなく、家族(あるいはごく近しい人)の気持ちが大事なんだなと、改めて思いました。
また同じ神戸新聞のサイト内に「いのちをめぐる物語」と題して、施設、病院、個人宅で終末期を過ごす高齢者や患者ご本人、家族やサポートする方々を取材し、「命」の終わりについて考える特集記事もあります。

先生の記事の内容から離れていてすみません。
ただ出来ることなら、本人も家族も周りも、それなりに受容出来るような、そんな逝き方が出来ればいいのかなと思います。

Posted by taco at 2020年08月01日 07:16 | 返信

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